DREAMS COME TRUE/BEST OF DREAMS COME TRUE
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プロデューサー:マイク・ピラ、DREAMS COME TRUE レコーディング:マイク・ピラ、後藤昌司、イトウ・タカシ、ピート・フリス
ミキシング:マイク・ピラ マスタリング:クインシー・タナカ、ティム・ヤング、グレッグ・カルビ リマスタリング:クインシー・タナカ
演奏者 吉田美和:ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル、マーチングドラム(17)、フィンガースナップ(17)
中村正人:ベース、プログラミング(except 14)、バッキング・ヴォーカル(except 15)
西川隆宏:シンセサイザー・オペレーション、バッキング・ヴォーカル(except 13,15)、マーチングドラム(17)、フィンガースナップ(17)
モーリス・マイケル:ギター(5,6,9) ポール・ダン:エレクトリック・ギター(15,17)、アコースティック・ギター(17)
逆井オサム:ギター(3,4) 佐々木康彦:ギター(7,8,10〜12)
ピート・グレニスター:ギター(1,2) 高田二郎:ギター(13,16) 吉川忠英:アコースティック・ギター(15)
ラウル・ドリヴェイラ:トランペット(1,2,5,9) マーティン・ドローヴァー:トランペット(9)
ニック・ペンテロウ:サックス(1,2,5,6,9) ピーター・トムス:トロンボーン(9)
佐々木史郎:トランペット(3,4,7,8) 小林太:トランペット(7)
有沢健夫:トランペット(10〜13,16) 飯尾通利:トランペット(10〜13)
瀧川浩水:サックス(3,4,7,8) 竹上良成:サックス(10) 山本一:サックス(11〜13,16)
佐野聡:トロンボーン(7) 野村裕幸:トロンボーン(11〜13)
大谷幸:ピアノ(14,15,17)、エレクトリック・ピアノ(16)、チェンバロ(17)
濱田尚哉:ドラムス(11,13,15,16)、シンバル(15)、マーチングドラム(17) カクタ・ヒロヤス:シンバル(7,8)
明石敏子:一部プログラミング(12,13)
マイク・ピラ:バッキング・ヴォーカル(10,14,16,17) ジョン・ポスマン:フィンガースナップ(17)
ジェローム・ブラウン:バッキング・ヴォーカル(14) グレンヴィン・アンソニー・スコット:バッキング・ヴォーカル(14)
シャロン・デボラ・ベスウィック:バッキング・ヴォーカル(14) マリオン・パウエル:バッキング・ヴォーカル(14)
パワー・プラント・クルーズ:バッキング・ヴォーカル(1)
リン・リン・ガールズ(カネコ・ミカ、イグロ[ノリスエ]・アツコ、ホマン・シホ、ティナ・マワタリ):バッキング・ヴォーカル(7)
人気度 ★★★☆☆ お勧め度 ★★★☆☆ 管理人お気に入り度 ★★★★☆
アルバム度 「DREAMS COME TRUE」2曲、「LOVE GOES ON・・・」3曲、「WONDER 3」3曲、「MILLION KISSES」2曲
「The Swinging Star」2曲、「MAGIC」1曲、「DELICIOUS」2曲、「LOVE UNLIMITED∞」2曲
シングル度 17曲中17曲 作曲者度 吉田8曲、中村6曲、吉田&中村3曲
1997年10月に発売されたドリカム初のベスト・アルバム。収録曲17曲はすべてシングルナンバーで、ほぼ時代順(というよりアルバムの収録順)に収録されています。また、エピック・レコード時代に発表されたシングルのほぼすべて(『雪のクリスマス』『WINTER SONG』『WHEREVER YOU ARE』『そうだよ』以外)を網羅しています。なお、『うれしい!たのしい!大好き!』はシングルのカップリングだった曲であり、ここでは特別に収録されています。
さて、ドリカム初のベスト盤であるこのアルバムは、避けて通れない事柄があります。実は、このアルバムはドリカム非公認なのです。理由を説明しましょう。デビュー以来ドリカムはエピック・レコードに所属していました。しかし1997年8月、アメリカのヴァージン・レコードに移籍します。この移籍はエピック側にとっては「利益が奪われた」ということになります。そこで最後の一稼ぎをしておこうと、エピックはこのベスト盤をドリカム本人の許諾のないまま強行発売したのです。当然ながら、ドリカムはこれに断固として反対、ファンクラブ「POWER PLANT」の会員に「このベスト盤が出たことは私達の本意ではないため購入を控えてほしい」という異例のコメントを出すまでに至りました。そのため現在は廃盤、ドリカムの公式サイトでは紹介すらされない、という不運のアルバムになっています。ドリカムがベスト盤の発売に反対した理由のひとつとして、「すべてのアルバムがベスト盤」という彼らの信念があることも挙げられます。
ということで、このアルバムはドリカムにとっては私たちファンに買われてほしくないアルバムなのですが、収録曲そのものは当然ながら選りすぐりのドリカムナンバー。さらに、ブックレットのアートワークがかなり作りこまれています。さすがドリカムが8年あまり所属していたエピックだけある・・・というのは皮肉的でしょうか。また、このアルバムに秘められたいやな出来事を知らない後追いファンにとっては、純粋に楽しめるベスト盤になっています。実際、この私でさえ最近までこの事実を知らずに「ドリカムの公認アルバム」として楽しんで聴いていました。ですので当サイトでは、誠に勝手ながら「ドリカムの曲の素晴らしさを多くの方に知っていただく」ためにこのベスト盤をあえて勧める言動をします。(ごめんなさい、美和さん・まささん・西川さん・・・)
収録曲は前述の通りすべてシングル曲ですが、ほとんどが大ヒットした曲で一般的にもよく知られている曲ばかり。『晴れたらいいね』『LOVE LOVE LOVE』など、CMやドラマにタイアップされた曲はなんと8曲にのぼります。1989年から1995年まで、全米進出前の「女の子の恋愛を歌ったキャッチーなポップ」が持ち味のドリカム・ナンバーを味わうことができます。また、「ドリカム公認」のベスト盤・企画盤に未収録の曲が4曲あるのも見逃せません。特に記念すべきデビューシングルとなった『あなたに会いたくて』は重要です。ベスト盤「The SOUL」未収録曲では7曲になります。
また、収録曲は『うれしい!〜』以外すべてシングル・ヴァージョンで収録されています。うち、アルバムに収録されていないヴァージョンはなんと11曲。うち6曲は他の企画盤にさえ未収録のヴァージョンです。当時のシングルは廃盤になってしまっているので、シングルヴァージョンを一気に聴くことができるこのベスト盤はマスト・アイテムです。特に『決戦は金曜日』はフェイドアウトしないヴァージョンで注目。また、リマスタリングもされていて、オリジナルアルバムより高音質で聴くことができます。
逆に欠点といえば、1997年以降の曲と、アルバムナンバーが抜け落ちている点でしょう。前者は仕方ないとしても、『未来予想図II』『眼鏡越しの空』『7月7日、晴れ』『a little waltz』『あなたにサラダ』などアルバム収録の名曲が入っていないのは痛いです。また、現在大して評価のない『APPROACH』が収録されていて、大人気の『眼鏡越しの空』が収録されていないことから分かるように、このベスト盤はあくまで「シングル集」であり、実際の人気に見合った選曲はされていません。公平な選曲をしたベスト盤を求めているのなら、「The SOUL」をお勧めします。逆に、昔のドリカムの曲をざっと聴いてみたいという方にはお勧めの一枚です。それではまったらオリジナル・アルバムも買ってください!現在このベスト盤は廃盤ですが、中古品ではよく出回っています。
しかし、こうシングルナンバーだけを集められると興味深いことが分かります。たとえば『す き』『サンキュ.』以外の全曲でドリカム3人のバッキング・ヴォーカルがフィーチャーされていること。この頃のドリカムのスタイルが分かります。また、最初の5曲が美和さん作曲というのも興味深いです。むろんまささんも曲のストックはあったのでしょうが、ごく初期は「シンガーソングライター・吉田美和」を全面に出していたことが分かります。演奏者に日本人が多いのにも注目。シングルナンバー、特に先行シングルは日本で作られた可能性が高いことを示しています。このように、いろいろ考えさせてくれるベスト盤でもあるのです。
アートワークがこれまたニクイ作りをしています。ジャケットは灰色地に3つ巴が切り取られていて、そこから次ページに印刷された美和さん・まささん・西川さんが顔を出しています。その次ページと、裏ジャケットの前のページには、過去のドリカムのアルバム・シングルからの写真をコラージュしてあります。「エピック時代の略図」といえるもので、長年のファンやドリマニアたちの心をくすぐります(使用されている写真の内訳を下に記しておきます)。また、ディスコグラフィも掲載されています。ここまで緻密にやるんだったら、最初にドリカムの許諾を取っていればよかったのに・・・と思うほど素晴らしいアートワークです。
[ジャケットの次ページ]「DREAMS COME TRUE」(ジャケットがフィルムに映っている)、「WONDER 3」(裏ジャケット、CDケース)、シングル「Eyes to me」、シングル「決戦は金曜日」、「The Swinging Star」(ジャケット・CDケース・ブックレットの西川さん)、シングル「go for it!」、「MAGIC」(ジャケットの美和さんとまささん・『go for it !』『I'm a liar』の各ページ)
[裏ジャケットの前のページ]「LOVE GOES ON・・・」(2ページ目)、「MILLION KISSES」(ジャケット)、シングル「晴れたらいいね」、「The Swinging Star」(ブックレットより3枚)、シングル「す き」、シングル「LOVE LOVE LOVE」(ジャケットの3人が散らばっている)、「LOVE UNLIMITED∞」(ブックレット)
以上、このベスト盤の長所を語っていきましたが、誤解のないように言っておきます。私は、ドリカムの許可も得ず利益のためだけにベスト盤を発売したエピックは間違っていたと思います。ドリカムの怒りもとても深く理解できます。しかし、皮肉的にも発売されたベスト盤はドリカムの他のアルバムに負けない水準で、他のベスト盤にない長所があります。エピックが正しかったとは言いません。ドリカムに認めさせようとも思いません。ただ、皮肉的にもこのベスト盤は、少なくとも後追いファンにとっては心をひとつも害さず聴くことができるのです。中身はドリカムの最高水準の曲ばかりですから。私も正直に言うとこのベスト盤は重宝しています(個人的には、出かけた先の大工センターでこのアルバムがかかっていたという思い出もあり・・・)。エピックに利益を与えるためではなく、ドリカムをより多くの人に知ってもらうために、このアルバムをあえて紹介させていただきました。最後に、改めてごめんなさい、美和さん・まささん・西川さん・・・。