す き
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演奏者 吉田美和:ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル
中村正人:プログラミング(ALBUM VERSIONのみ)、バッキング・ヴォーカル
西川隆宏:マニュピレート、バッキング・ヴォーカル
大谷幸:ピアノ
ジェローム・ブラウン:バッキング・ヴォーカル グレンヴィン・アンソニー・スコット:バッキング・ヴォーカル
シャロン・デボラ・ベスウィック:バッキング・ヴォーカル マリオン・パウエル:バッキング・ヴォーカル
マイク・ピラ:バッキング・ヴォーカル
ALBUM VERSIONではプログラミングによるストリングスを使用
ライヴ履歴 1995年、DWLで登場 2000年、「DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2000 in TAIPEI」、『未来予想図II』とのメドレーで登場
2003年、DWL、『LOVE LOVE LOVE』『眼鏡越しの空』『カノン』『愛してる 愛してた』『どうやって忘れよう?』とのメドレーで登場
2007年、DWL「POWER PLANT SPECIAL LIVE」で登場
とても物悲しいピアノ・バラード。1994年11月4日にシングル発売され(1位獲得)、翌年のアルバム「DELICIOUS」にも収録されました。紅白歌合戦でも歌われています。シングルヴァージョンは、ヴォーカルとコーラス以外ではピアノのみの演奏で、それまでのドリカムナンバーのイメージを大きく覆すことになりました。またアルバムヴァージョンも、その演奏にプログラミングによるシンセストリングスが加えられているだけと、きわめてシンプルです。曲のイメージを決めているピアノは大谷幸さんの演奏。コーラスにはドリカムやマイク・ピラ(プロデューサー)、4人の外国人ヴォーカリストが参加しています。まささん、西川さんは実質的には楽器を演奏していません。ブックレットのこの曲のページには、「生ピアノによる演奏のためペダル音の生じる箇所がありますが、ノイズではありませんのでご了承ください。」とありますが、この音はアウトロでよく聴こえます。なお、この注意書きは同じくピアノ・バラードの『誓い』にも書かれています。
この曲がそれまでのドリカムナンバーと異なるのは、そのアレンジだけではありません。歌詞の雰囲気もどこか違っています。まずはタイトル。愛する気持ちを伝える一番簡潔な言葉「好き」を、ひらがなで、しかも文字の間に隙間を空けて「す き」としているのがとても印象的で、これだけでも悲しさがあふれています。歌詞は、主人公が友達と別れて家に帰り泣き出すまでの様子を描いていますが、その量はとても少なく、まるで詩のように響きます。さらに、歌詞では誰が「す き」なのか、なぜ主人公は泣いているのかが全く登場しません。「あなた」という単語ひとつさえない歌詞は、聴く側に主人公に起きたことを想像させるような仕上がりになっています。また、第2節の「ちょっと失敗」は歌詞にある通り本当につぶやいていて斬新です。中盤にダイナミックなパートを挟み、歌詞内で主人公が泣き出すと、あとはひたすら「す き」の繰り返し。それもただ同じ風に歌うのではなく、時に穏やかに、時に感情的に、最後は高く透き通った叫びとなり、美和さんのヴォーカルが存分に味わえます。
この曲のシングルヴァージョンとアルバムヴァージョンは、たいていの曲のような「一部のカット・追加」の違いではなく、アレンジで違いが見られます。どちらも同じく物悲しいのですが、ストリングスがあるとないとではだいぶ雰囲気が変わります。シングルヴァージョンは完全ピアノのみの演奏なので、美和さんのヴォーカルがより力強く聴こえ、ピアノのメロディラインがはっきりしていて、重々しさが強調されています。その反面アルバムヴァージョンは、ストリングスが重い空気を和らげ、コーラスとマッチした美しいメロディを奏でています。シングルヴァージョンは2003年のバラード・ベスト「DREAMAGE」に、アルバムヴァージョンは2000年のベスト盤「The SOUL」にも収録されているので聞き比べてみてはいかがでしょうか。ファンの間ではどちらのヴァージョンが好きかは分かれるところです。
2つのベスト盤に収録されていることからも分かるように、この曲はファンの間で人気の曲ですが、ライヴでは実は意外と出番が少ないです。これまでDWLでのみ演奏されましたが、うち'99年はなぜか演奏されていません(台湾公演では演奏された)。演奏されたDWLのうち、'95年では薄暗い神秘的な照明のもとワイヤーで高く吊り上げられた美和さんの豪華な衣装が印象的でした。'03年ではメドレーの中で演奏され、こちらはラテン風の味付けがされていました。'07年はファンクラブ会員限定ライヴでのみの披露。
この曲は、後に英語版である『SUKI』が作られ、1996年のサントラ「7月7日、晴れ」に収録されました。こちらも日本語版とは違う独特の味わいがありますが、同サントラでしか聴くことのできないレア・アイテムです。
私はこの曲は大好きな方です。ここまで悲しいドリナンバーは『2人のDIFFERENCE』や『悲しいKiss』など本当に少ししかないんじゃないでしょうか?個人的にはどちらのヴァージョンも好きですが、たまにシングルヴァージョンを聴くと新鮮です。私にとって「LOVE UNLIMITED∞」以外で初めて聴いたドリカムのアルバムは「The SOUL」で、当初はDISC-1だけを聴いていて、ある日ふとDISC-2を聴いてこの曲の物悲しさに圧倒されました。曲順で『三日月』までずっと物悲しかったので、その部分が少し不気味に感じたほどです(汗)。それにしてもこの曲と、1995年の美和さんのソロ・アルバムの『泣きたい』が酷似しているように思えるのは私だけでしょうか?