DREAMS COME TRUE/the Monster
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プロデューサー:DREAMS COME TRUE レコーディング:後藤昌司、アンディ・ハーマンズ、ブライアン・スパーバー、マイク・ピラ
ミキシング:ローランド・ヘリントン マスタリング:ブラドー・ミラー
録音スタジオ:スターチャイルドスタジオ、セディックスタジオ、ザ・タウン・ハウス、コンパス・ポイントスタジオ、チャンキングスタジオ、アヴァタースタジオ、クリントンスタジオ、音響ハウススタジオ
演奏者 吉田美和:ヴォーカル、バッキングヴォーカル
中村正人:ベース、プログラミング、バッキングヴォーカル(1)
西川隆宏:マニュピレート
デイヴィッド・T・ウォーカー:ギター(9,15)
ポール・ダン:ギター(6,8)、アコースティック・ギター(2,7,13) 高田二郎:アコースティック・ギター(7)
ラウル・ドリヴェイラ:トランペット(2,4,8,11,13) マーティン・ドローヴァー:トランペット(2,4,8,11,13)
ニック・ペンテロウ:サックス(2,4,8,11,13)、ソプラノ・サックス(5) ピーター・トムス:トロンボーン(2,4,8,11,13)
大谷幸:ピアノ(2,7,8,10,13) ミスター・ラック:フルート・サンプル(5) ポール・ジョンソン:ビブラホン(13)
ラルフ・マクドナルド:バッキングヴォーカル、パーカッション(1) バシリ・ジョンソン:バッキングヴォーカル、パーカッション(1)
エロル・ベネット:バッキングヴォーカル、パーカッション(1) スティーヴン・クローン:バッキングヴォーカル、パーカッション(1)
ロビン・クラーク:ヴォーカル(8)、バッキングヴォーカル(4)
フォンジー・ソーントン:ヴォーカル(8)、バッキングヴォーカル(4) タワサ・アジー:ヴォーカル(8)、バッキングヴォーカル(4)
人気度 ★★★☆☆ お勧め度 ★★★★☆ 管理人お気に入り度 ★★★☆☆
ベスト盤度 「The SOUL」2曲、「DREAMAGE」2曲、「DREAMANIA」6曲
シングル度 15曲中4曲 作曲者度 吉田3曲、中村5曲、吉田&中村7曲 トレードカラー・・・モーヴ アルバム略称・・・TM
1997年にヴァージン・レコードに移籍し、年末には新境地を切り開いたアルバム「SING OR DIE」をリリースしたドリカムは、翌年にその全曲の歌詞を英訳して再録音したアルバム「SING OR DIE -WORLDWIDE VERSION-」を全米でリリースしました。そして、そのすぐ後には北米6都市で初の海外ライヴツアーを行いました。まずまずの結果でしたが、ドリカムの夢であったアメリカ進出はとりあえず成功したのです。明くる1999年は、3度目となるDWLの年でした。今回ドリカムは、「一年中楽しめるワンダーランドにしよう」と考え、春・夏・冬の3度に分けてDWLを開催しました。それぞれライヴハウス、ホール、ドームを舞台に新旧入り乱れたドリカムナンバーの演奏が人気を呼びました。
その1999年の4月21日にリリースされたのが、ドリカムにとって10枚目のアルバム「the Monster」でした。収録曲数はこれまでで最多の15曲。曲はリリース前にDWL「春の夢」で収録曲順に演奏されるという形でお披露目が行われました。冒頭のテーマ曲が『FUNKA-MONSTER』でもう一度登場していることから、アルバムを2つのステージで分けて考えることもできます。アルバムタイトル「モンスター」は、前作「SING OR DIE」のブックレットの最後のページに書いてあった言葉からのリンクで、「あなたの心にひそむモンスターを目覚めさせる音楽です」という意味が込められています。このアルバムについてなんといっても特筆すべきなのが、ブックレットのアートワーク。CGを駆使した斬新なもので、アルバムジャケットに見られるようにドリカム3人はモンスターに扮しています。歌詞のページのアートワークは曲それぞれにふさわしいものになっていて、凝ったつくりです。
タイトルに込められたように、このアルバムの収録曲は私たちの心を揺さぶるものがあります。前作と同じく今回も洋楽・アメリカを意識した曲がほとんどですが、少し不安の影も見られた前作に比べ、こちらは自信満々な雰囲気がもろに伝わってきます。曲の大半がダンサブルでグルーヴィーなナンバー。主にクラブやR&Bの趣のある曲が中心です。さらにアレンジはほとんどがプログラミングによるもので、『みつばち』『三日月』など数曲は生楽器が使用されていません。前作はプログラミングと生楽器の割合が中途半端でしっくりこない趣でしたが、今回はプログラミングに重点を置いて、それに似合った曲を多く収録したため、今までになかったような新鮮で刺激的な洋楽スタイルが生まれたのです。作曲者を見ると、洋楽風の曲が多いためかまささん作曲が多いですが、美和さんとまささんの共作が最も多くなっています。どのような形での共作かは分かりませんが、この後2人の共作は一段と増えてゆきます。詞作面では、前作で注目された大人の雰囲気の歌詞が『make me your own』『NUDEの夜』などで踏襲されています。また、『dragonfly』などラヴソングを越えメッセージを含んだような曲もあります。ヴォーカルは一部の曲のコーラスを除きすべて美和さんによるもの(まささん・西川さんは不参加)で、美和さんを前面に出したそれまでと違った感じに聴こえます。このように、以前のドリカムとは全く違う作風であり、このアルバムは斬新で衝撃的な曲がたくさん詰まったアルバムとなったのです。それも、アメリカで直に現地の音楽を体感した経験があったからでしょう。
このアルバムは、前作が賛否両論だったのに対し、ある程度の評価を得ることができました。ダンサブルなアップテンポの曲が集まったことと、先行シングルでヒットした『朝がまた来る』と『なんて恋したんだろ』が収録されていたことが大きな要因でしょう。しかし何よりもアメリカに実際に行ってドリカムが学んだことがうまく生かされていることが、この評価につながったと思います。洋楽的アプローチによる曲作りは、このアルバムでいったん完成を見ることとなります。このアルバムは、一度聴いてみることをお勧めします。ただし!初期ドリカムのヒット曲なんかを連想して聴くと裏切られます、いい意味で。ここにはあの頃のドリカムはいません。アメリカ進出で得たものを素晴らしいマジックによって消化した、胸を震わせるようなモノスゴイ音楽が待っているのです。ダンサブルな曲が好きな方には特にお勧めです。もちろん、従来のドリカムスタイルを垣間見せるヒット曲『朝がまた来る』もありますし、『三日月』『夢で逢ってるから』といった感動的なバラードも数曲あります。15曲入りなので当然演奏時間も長く、ボリュームがあるので損はしません。ヴァージン時代の曲は、その大半が2004年の企画盤「DREAMANIA」に収録されてしまい、オリジナルアルバムの権威が揺らいでいますが、このアルバムに関していえば半分が未収録であり、その中には『三日月』『come closer』『東京ATLAS』といった(隠れた)名曲も含まれています(うち後者はすべてのベスト盤に未収録)。また、アルバム自体に統一感があるため、ぜひオリジナルアルバムで聴くことをお勧めします。なお、2002年には『朝がまた来る』のライヴ・ヴァージョンを追加した限定版も発売されています。現在数が少なくなりつつありますが、見つけたらそちらを買うようにしましょう。ちなみに限定版の演奏時間はちょうど1時間くらいです。
私がこのアルバムを聴いたのは5枚目です。買ったのは限定版。通常版は持っていません(そのためこのアルバムの演奏時間が「情報なし」になっています)。最初聴いた時は、初期ドリカムの曲と雰囲気が全く違うことに圧倒されました。ダンサブルな感じは好きですが、個人的にはバラードナンバーの方がお気に入りです。ことにシングルにも収録された『朝がまた来る』『三日月』『なんて恋したんだろ』『夢で逢ってるから』の4曲はお気に入りです。アートワークも凝っていて、個人的には「MILLION KISSES」「MAGIC」「LOVE GOES ON・・・」に次いで好きなアートワークです。アルバム自体はそれほど好きな方ではないですね・・・(というよりとても好きなアルバムが多すぎるので順位が下がっているだけ)。
1999年をDWLでにぎわせたドリカムは、洋楽を極めるためこの「the Monster」の英語版アルバム「THE MONSTER -universal mix-」を制作する傍ら、日本語の曲ではいったん洋楽色を引っ込めます。やがて21世紀に突入してゆくドリカムはこの後どのような作風を見せるのでしょうか・・・。