DREAMS COME TRUE/SING OR DIE

1.SING OR DIE 〜opening theme〜   7.そんなの愛じゃない
2.愛するこころ             8.誘惑 〜album mix〜
3.あはは                9.MARRY ME?
4.PEACE !                              10.よろこびのうた
5.ケロケロ                              11.そうだよ 〜album mix〜
6.たんぽぽの堤防                     12.月光
 
発売年月日:1997年11月15日
Virgin/DCT  TOCT-55002
全体収録時間:情報なし
隠しトラックとして『PEACE !』の英語版を収録
チャート最高位:1位
参照:「SING OR DIE -WORLDWIDE VERSION-」(英語版)
        「SING OR DIE 2002:monkey girl odyssey tour special edition」(限定版)
「SING OR DIE」

 プロデューサー:DREAMS COME TRUE  レコーディング:ローランド・ヘリントン、後藤昌司、ブライアン・スパーバー、マイク・ピラ(8,11)

 ミキシング:ローランド・ヘリントン(2〜9,12)、ブライアン・スパーバー(1,10,11)  マスタリング:ブラドー・ミラー

 録音スタジオ:エアスタジオ、スターチャイルドスタジオ、エレクトリック・レディスタジオ

 演奏者  吉田美和:ヴォーカル、バッキングヴォーカル、心臓の鼓動(1)、ケロケロヴォイスパッド(5)、ズールー合唱隊(10)

        中村正人:ベース(except 1,4,6,7,11)、プログラミング、バッキングヴォーカル(except 1〜3,8,10,12)、シンセベース(4,6,7,11)、ケロケロベース(5)、音の編集(1)、島の音(1)

        西川隆宏:マニュピレート(except 1)

        デイヴィッド・T・ウォーカー:ギター(2,3,6,9,10,12)、ギターソロ(9)

        ポール・ダン:ギター(2,3,6,8〜12)、アコースティック・ギター(10)、ギターソロ(6)   高田二郎:アコースティック・ギター(8,11)

        ラウル・ドリヴェイラ:トランペット(2,4,6,8,9,12)   マーティン・ドローヴァー:トランペット(2,4,6,8,9,12)

        ニック・ペンテロウ:サックス(2,4,6,8,9,12)   ピーター・トムス:トロンボーン(2,4,6,8,9,12)

        大谷幸:キーボード(8,11)   ジェス・ベイリー:ピアノ(2〜4,6,9,10,12)、ハモンドオルガン(2)

        ジェフ・ダン:ドラムス(2,3,6,9,10,12)   岸田容男:ドラムス(11)

        ユッスー・ンドゥール:バッキングヴォーカル(10)、ヴォーカルソロ(10)   シキシャ:バッキングヴォーカル、ズールー合唱隊(10)

        相原コージ:マンガ(4)

        キング(=中村正人):ドラムス&パーカッション・プログラミング(except 1)

 人気度 ★★☆☆☆  お勧め度 ★★☆☆☆  管理人お気に入り度 ★★☆☆☆

 ベスト盤度 「The SOUL」2曲、「DREAMAGE」1曲、「DREAMANIA」6曲

 シングル度 12曲中5曲  作曲者度 吉田5曲、中村6曲、吉田&中村1曲  トレードカラー・・・黄緑  アルバム略称・・・SOD


 1996年4月のアルバム「LOVE UNLIMITED∞」で作風の変化を見せ始めていたドリカムですが、その後大きな転換点を迎えます。まずはマイク・ピラ最後のプロデュース作品となったシングル「そうだよ」(1996年11月)それまでのポップ路線を否定したヒップホップ系の同曲は、ファンの間では賛否両論となりました。そして翌年8月7日、ついにそれまでのエピックに代わり、米国のレコード会社ヴァージン・レコードと契約をして世間を驚かせます。これらの「路線変更」の背景には、ドリカムの米国進出への夢がありました。1996年10月には美和さんが雑誌「TIME」の表紙を飾るなど、米国でも徐々にドリカム人気は波及していましたが、ここでドリカムは大きな賭けに出たのです。その足掛かりこそが、シングル「そうだよ」とヴァージンへの移籍に見られたのです。実際、ヴァージン移籍後初のシングルとなった「PEACE!/MARRY ME?」は米国を意識したアレンジがされています。

 そして、その後に発売されたのがこのアルバム「SING OR DIE」。ヴァージン移籍後初のアルバムで通算9枚目になります。タイトルはずばり「歌うか死ぬか」。ドリカムの「歌」で人を幸せにしたいという強い思いが込められたタイトルです。ジャケットやブックレットの写真に見られる3人は心機一転、新たな夢へと向かい輝いているようにも見えます。CDレーベルに書いてある曲タイトルはなぜかみんなローマ字表記で個性的。クレジットはされていませんが、最後の『月光』が終わって30秒ほどすると隠しトラックとして『PEACE!』の英語ヴァージョンが収録されています(のちに「SING OR DIE -WORLDWIDE VERSION-」にも収録)ドリカムの遊び心が感じられます。ブックレットの最後のページに書いてある"let it go,let it blow・・・"の文は次のアルバム「the Monster」の元となっています。前作からは、オープニングテーマに『LOVE LOVE LOVE』のフレーズが挿入されていることでリンクされています。

 このアルバムを聴くと、ドリカムが新たなチャレンジをしていることと、米国をとても意識していることが分かります。まずスタッフを大幅に入れ替えています。最大の変更は、それまで共同プロデューサー・レコーディング・ミキシングの3役を務め「第4のドリカム」とまで言われたマイク・ピラを外しています(移籍前に録音された2曲を除く)そしてレコーディングとミキシングにローランド・ヘリントンとブライアン・スパーバーの2人を招きました。演奏者も、DYNAMITES UK(ブラス・セクション)を除けばほとんど変わっています。このため、サウンドの雰囲気がそれまでとは一変します。次に収録曲の雰囲気。米国でのヒットを意識してか、ヒップホップ系など洋楽に近いリズム・アレンジが圧倒的です。『PEACE!』『そんなの愛じゃない』『そうだよ』などで端的に見られます。また、前作「LOVE UNLIMITED∞」の作風であった「大人っぽさ」と「壮大さ」を増幅させた曲も多く見られます。前者は『誘惑』『そんなの愛じゃない』、後者は『よろこびのうた』『月光』などです。完成度が高く、しっかりとした構成になっているのも特徴と言えるでしょう。使用楽器は生楽器が多いですが、意外とプログラミングの領域も多く、それは『そんなの愛じゃない』や『そうだよ』で端的に見られます。歌詞についていえば、前作で「愛」をテーマにしたことを引き継いだ曲の歌詞のインパクトが強いです。特に生まれてくる子供に対するよろこびを歌った『よろこびのうた』、愛の大切さを歌った『愛するこころ』は、もはや恋愛をテーマにしたものではなく、ドリカムが歌でみんなに愛を伝えたい、という強い思いがにじみ出ています。それまでのドリカムナンバーの名残りがある曲といえば、『あはは』『たんぽぽの堤防』『MARRY ME?』の3曲だけです。

 さて、このように移籍まで行い米国をかなり意識した曲作りをしたこのアルバムは、ファンにとっては賛否両論分かれるところです。あまりにもの人気でアルバムから急遽シングルカットされた『あはは』や、ファンに定評の高い『よろこびのうた』は別としても、他の曲は人により好き嫌いがはっきり分かれているのが現状です。これは、それまでの作風ががらりと変わったという衝撃もあるとは思いますが、過度の洋楽的アレンジが親しみづらい点を抱えているのも事実です。ファンとしてはドリカムの成長を素直に受け入れたい気持ちはあるのだけど、やはり名残り惜しい・・・という気持ちがあり、残念なことにこのアルバムを境にドリカムファンを離脱した人も多かったそうです。個人的には、マニュピレートのみでの参加となってしまった西川さんがドリカムの米国進出にあまり乗り気がなかったのではないか、と推測していますが(あくまで推測です)。それもファンの心に暗い影を落としてしまったのかもしれません。むろん、ドリカムの成長は歓迎すべきことだと私は思っていますが・・・。

 以上のこともあり、このアルバムは人気のないアルバムのひとつになっています・・・というより、人によって好き嫌いが分かれるアルバムになっています。初心者の方にはあまりお勧めはできません。また、初期ドリカム・ポップを期待すると裏切られます(汗)。しかし、人によっては非常にはまる可能性ありなので全く無視はできません。2004年の企画盤「DREAMANIA」に曲の半数が収録されているので、それを買った人には既に買った曲と重複が多いのが困りものですが、『月光』『たんぽぽの堤防』『愛するこころ』といった隠れた名曲はこのアルバムでしか聴くことができません。また、初心者の方には『あはは』『よろこびのうた』という人気曲を聴ける一枚であるので、結局外せない一枚です。なお、2002年には『愛するこころ』のライヴヴァージョンを追加した限定版もリリースされています。現在数が少なくなってきていますが、見つけたらそちらの方をゲットするといいでしょう(ただし隠しトラックは収録されていません)。

 私がこのアルバムを聴いたのは6枚目です。買ったのは限定版で、通常版は持っていません・・・(いつか買おうとは思っているのですが)。そのため隠しトラックの存在が実際に確認できていない上、全体収録時間は不明です・・・(汗)。その代わりこのアルバムのバンドスコアは持っています(笑)。当初からあまり好きではないアルバムでしたが、現在オリジナル13アルバム+「LOVE OVERFLOWS」の中で一番好きでない(嫌いという意味では決してないです)アルバムになってしまっています・・・(汗)。昔は好きだった『そうだよ』がだんだん鼻につくようになってしまったのも要因ですが・・・。でも『たんぽぽの堤防』は好きですし、『愛するこころ』には素直に感動しますし、『月光』は指折りのお気に入りです。私もどちらかといえば初期ドリカム・ポップの方が好きなのですが、ドリカムの同じ所に立ち止まらない、常にアグレッシブな活動は私は大賛成ですし、文句ばかり言っていてもしょうがないので(苦笑)、素直にその時々のドリカムを受け入れていきたいです。ただ、西川さんが置いてきぼりにされている感じがするのは正直寂しいです・・・。意外なことにこのアルバムはチャートで最高1位を記録しています。しかも次作「the Monster」も1位を記録しています。なんだかんだいって、ファンはドリカムについていったということの表れでしょう。

 さて、このアルバムは無事に米国で受け入れられ、ドリカムは米国進出に成功します。そして1998年、美和さんが全曲に英語詩をつけ再レコーディングしたこのアルバムの英語版「SING OR DIE -WORLDWIDE VERSION-」が全米リリースされ定評を呼びました(その前に日本でも発売された)そして同年には北米6都市でライヴツアーを行います。このようにして米国でも成功したドリカムは、さらなる進化に一歩進むことになるのです。

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