DREAMS COME TRUE/THE LOVE ROCKS
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プロデューサー:DREAMS COME TRUE レコーディング:後藤昌司、アル・シュミット、エド・テュートン ミキシング:エド・テュートン
マスタリング:ブラドー・ミラー 録音スタジオ:スターチャイルドスタジオ、キャピトルスタジオ、ソニーミュージックスタジオ
演奏者 吉田美和:ヴォーカル、バッキングヴォーカル、ピアノ(1)、ベル(5)、手拍子(7,12)、シンバル(12)、タンバリン(13)
中村正人:ベース(except 1)、シンセベース(1,10,13)、プログラミング、バッキングヴォーカル、手拍子(7,8,12)
武藤良明:エレクトリックギター(1〜5,7〜10,13)、アコースティックギター(2,8,13)、ナイロンギター(6)
今泉洋:エレクトリックギター(12)、アコースティックギター(11,12)
グレッグ・アダムス:トランペット(3,4,6,8〜10,13)、フリューゲルホルン(4,6)
チャック・ファインドリー:トランペット(3,4,6,8〜10,13)、フリューゲルホルン(4,6)
佐々木史郎:トランペット(5,7)、トランペットソロ(7) 佐久間勲:トランペット(7) 小林太:トランペット(5)
トム・スコット:テナー&バリトンサックス(3,4,6,8〜10,13)、フルート(6)、フルートソロ(6)
スティーヴ・ホルトマン:テナートロンボーン(3,4,6,8〜10,13)、バストロンボーン(4,6,13)
吉田治:テナーサックス(5,7)、バリトンサックス(5) 中路英明:トロンボーン(5) 河合わかば:トロンボーン(7)
大谷幸:エレクトリックピアノ(12) 上杉洋史:エレクトリックピアノ(5)
松本幸弘:ドラムス(5,12)、タンバリン(12) 濱田尚哉:ドラムス(4) パウリーニョ・ダ・コスタ:パーカッション(1,2,4,6,8,9)
大儀見元:パーカッション(7)、手拍子(7)、MC(7)
マーセラス・D・ニーリー:MC(1,5) ダンテ・ラミネス:MC(7) D THE 369:バッキングヴォーカル(7,8)
Full Of Harmony:バッキングヴォーカル(1,2) ラララ・ガールズ:バッキングヴォーカル(1,2) ステ奥:口笛(9)
スクリーミング・ハンド・クラッパーズ:手拍子(12)
人気度 ★★★★☆ お勧め度 ★★★★☆ 管理人お気に入り度 ★★★★☆
ベスト盤度 「THE SOUL 2」4曲
シングル度 13曲中4曲 作曲者度 中村3曲、吉田&中村10曲
トレードカラー・・・青緑 アルバム略称・・・LR
デビュー15周年の2004年末に発売した「DIAMOND 15」は、ドリカム節の健在を知らしめる記念碑的なアルバムとなりました。しかし、それで満足してしまうドリカムではありません。まささん・美和さんの2人は新たなアルバム制作に向けて、スタジオに入ります。そんな中から翌2005年には「何度でも」(2月)と「JET!!!/SUNSHINE」(11月)の2枚のシングルが発売されます。いずれもドラマやCMのタイアップもあり注目を浴びました。同時にライヴ活動にも力を入れ、年初から春までは久々のアルバム・ツアーも行いました。そして、7月2日には世界的なロック・イベント「LIVE 8」に日本代表として出演。新作の曲や『LOVE LOVE LOVE』を歌い、「世界のドリカム」をアピールしたのでした。精力的に活動を続けるドリカムのニューアルバムは、結局その翌年の2006年に発売されることとなりました(美和さんは2005年中に発売したかったそうですが)。
そのアルバムが「THE LOVE ROCKS」。日本語アルバムとしては13枚目。2005年のCD・DVDのテーマでもあった「心が、よく動く。」をここでもスローガンにしています。タイトルの意味は「愛が動く」なので、まさにそのまんまです。前作同様、初回限定盤も発売されました。こちらは、スリーブケースによりもう1つジャケットが作られ、おまけとして2005年にリリースされたシングル曲3曲のミュージック・ヴィデオと、アルバムのメイキング・インタビューを収録したDVDがついていました。チャートでは、再び1位を記録。ドリカム人気の底力を見せ付けました。
収録曲は全部で13曲ですが、面白いことに美和さん単独作曲の曲が1つもありません。これは初めてのことで、逆に美和さんとまささんの共作が圧倒的に占めています。これは、美和さんが作った曲にまささんが手を加えたというのが実際でしょう。かつてより一層「吉田&中村」の作曲タッグが強化されたのです。まささんの単独作曲は3曲(『何度でも』はなぜかアルバム収録にあたり美和さんのクレジットが削除されている)。
作風は全体的に見れば前作「DIAMOND 15」を踏襲していますが、全体的によりシンプルなサウンドになっています。『PROUD OF YOU』『何度でも』などに特に顕著で、シンプルな分メロディや歌声、歌詞が直接胸に響いてくる印象があります。まさに、「心がよく動く」音楽です。「the Monster」も同じようなテーマがありましたが、今度はシンプルなアプローチで来ているのが面白いところです。シンプルなため、前作のようなきらびやかさ・賑やかさは逆に半減しています。また、前作同様初期のテイストを生かしてどこか懐かしい「ドリカムサウンド」を出しています。これは『JET!!!』に一番顕著に表れています。ドリカムらしさが十二分に感じられます。まささんのバッキング・ヴォーカルも、今回は全曲に散りばめられています。全体的に打ち込みサウンド(特にドラム)を使用しているのも初期ドリカムをほうふつさせますが、プログラミングむきだしの違和感を感じさせないあたり、ドリカムの16年の進化を実感させます。もちろんアグレッシブなパートも健在で、レゲトンに挑戦した『SUNSHINE』、まささんテイストたっぷりの『また「つらい」が1UP』『ウソにきまってる』、そしてドリカムのアルバムでは初めてロックがラスト・ナンバーに来た壮大な『SPOON ME,BABY ME』はドリカムの新境地といえるでしょう。シングルに収録されていた4曲も、すべてがシングルと違うロング・ヴァージョンになっていてアルバムの統一感を崩していません。
演奏者を見ると、ギターやブラス・セクションで新たな人材採用をしていて、決して1つのことに囚われないドリカムの姿勢が感じられます。前作に登場したデヴィッド・スピノザやデイヴィッド・T・ウォーカーの姿は見えません。逆に、『めまい』のドラムスにはエピック後期ドリカムで大活躍した濱田尚哉さんがカムバックというファンにはうれしいことも。さらに特徴的なのが、コーラスや手拍子でのゲスト参加が多いこと。『何度でも』ではスクリーミング・ハンド・クラッパーズ(ゲスト3人)が、『愛がROCKするテーマ』『PROUD OF YOU』ではFull Of Harmonyが、『SUNSHINE』『ていうか』ではD THE 369が参加しています。それまでのドリカムにあまり見られなかった傾向で、ソウルフルな印象が強くなっています。前作の『イノセント』や2005年のツアーに参加したマーセラス・ニーリーは今回は2曲でMCを披露、「第2のマイク・ピラ」ぶりを発揮しています。
このアルバムは、良くも悪くも「DIAMOND 15」を踏襲しています。それはよい面で見れば「過去」と「現在」をうまく調和させたドリカム節が持続している証しですし、悪く言えば前作の二番煎じにも取れてしまいます。しかし、よりシンプルにして曲のソウルフルな側面を出しているので、厳密には前作とは作風が異なっています。前作のようなきらびやかさ・賑やかさはありませんが、逆に胸に直接響いてくるむきだしの歌声にとりこになってしまうことでしょう。「DIAMOND 15」ほど高い完成度でない分、気軽に聴くことができます。よりシンプルに、シンプルにした結果が、ドリカムの新境地を見出しています。ファンの間でも人気の一枚でしょう。ヒット曲もあるし、とっつきやすい曲ばかりなのでお勧めします。
私も、相変わらずのドリカム節に安心しています。『JET!!!』はまんま初期ドリカムだし、またしても後半に変てこな曲(『ステ奥』)を入れているし。『何度でも』『空を読む』『めまい』は将来的には大人気ドリカムナンバーになることでしょう。私が持っているのはもちろん初回限定盤。現段階で一番好きな曲は意外かもしれませんが『ていうか』です。(マニアック!)
アルバム発売後、ドリカムはこの新作をひっさげてのアルバム・ツアーに出ました。そしてニューシングル「もしも雪なら/今日だけは」を発売、翌2007年にはいよいよ4年に1度のDWLを控えたのでした。