そうだよ
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演奏者 吉田美和:ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル
中村正人:シンセベース、プログラミング、バッキング・ヴォーカル、パーカッション&一部ドラムスプログラミング(as キング)
西川隆宏:マニュピレート
ポール・ダン:エレキ・ギター(album mixのみ) 高田二郎:アコースティック・ギター
大谷幸:キーボード 岸田容男:ドラムス
他に、プログラミングされたシンセ音
ライヴ履歴 1998年、「SING OR DIE」(ただしDVDには未収録) 1998年「ドリカムの夕べ」、一部会場のみ登場 1999年、DWL「夏の夢」で登場
2009年「“ドリしてます?”」、『go for it !』『いろんな気持ち』『琥珀の月』『サンキュ.』『ROMANCE』『しあわせなからだ』『あはは』とのメドレーで登場(シングル「ねぇ」に音源を収録)
1996年11月25日にシングル発売されたまささん作曲の曲。その翌年にドリカムはヴァージン・レコードに移籍してしまうので、結果的にこのシングルがエピックでの最後のシングルとなってしまいました。また、デビュー以来の共同プロデューサーのマイク・ピラが手がけた最後の作品になってしまいました。この曲はその後1997年11月に発売された移籍後初のアルバム「SING OR DIE」にも収録されました。ただし、シングルヴァージョンとアルバムヴァージョン(album mix)は違うミックスです。それぞれ前者はマイク・ピラ、後者はブライアン・スパーバーによるミキシングが行われています。
さて、このようにドリカムの重要な転換点に発表されたこの曲は、ドリカムの新しいスタイルの音楽でした。当時のドリカムはアメリカ進出を狙って海外で通用する曲作りを模索していました。そもそもレコード会社の移籍自体がアメリカ進出を前提にしたものでした。そのような背景があり、この曲はどちらかというと洋楽を意識したようなアレンジがされています。そのため、「SING OR DIE」発売の際もそうでしたが、この曲の評価はファンの間で賛否両論まっぷたつとなりました。昔のドリカムの音楽スタイルを好む人たちと、ドリカムの新たな可能性に期待をかける人たちに分かれたのです。このことは後にまささんも「『そうだよ』は当時賛否両論まっぷたつだった」と語っているほどです。シングルチャートで4位止まりだったことからも伺えます。
実際にどこがそれまでのドリカムの曲とは違うのか考えてみましょう。まずは、シングル曲としては意外な暗く悲しい、悪く言えば重々しいムード。ハッピーで明るいヒット曲を世に出し続けてきたドリカムを否定する形となりました。それと、複雑なメロディ。それまでの耳に残るような覚えやすい、歌いやすい曲ではなかったのです。ドリカムが新たな方向を模索した第一歩であったのに、皮肉にも従来どおりのキャッチーな曲を期待していたファンの期待を裏切ってしまったのです。突然の方向転換に対する驚き・抵抗感もファンにはあったに違いありません。この後数年間ドリカムはアメリカを意識した活動を行い、曲の作風もそれに影響されたものになっていきます。しかしながら、この曲よりはファンに受け入れられるようなものになっていきます。いわば、この曲はドリカムが新たな作風を模索している途中経過といえるでしょう。アメリカを意識した洋楽的ドリカムのスタイルは、1999年のアルバム「the Monster」で完成を見ます。
次に、album mixとシングルヴァージョンの違いを中心に、サウンド・ヴォーカルについて触れていきます。基本的な構成・サウンドは同じですが、部分的に違った風に聴こえます。特に目立つのがalbum mixにフィーチャーされたエレキ・ギター。シングルヴァージョンにはありません。そのため、シングルヴァージョンはどこかスカスカした雰囲気がします。他にも、シングルヴァージョンにはalbum mixにはないドラムビートや、低音のギターフレーズを聴くことができます。シングルヴァージョンはシングルのみの発売なので、現在手に入れることが難しいです。サウンドは幻想的かつ重々しい雰囲気です。キーボードが多用されていますが、明るいムードは作っていません。ドラムスは岸田容男さんによる力強い演奏です。
美和さんのヴォーカルも物悲しさを帯びていて、終盤には胸の奥から出したような声でパワフルになります。最後は訴えかけるような叫びとなります。非常に歌いづらい曲ですが、美和さんは難なくこなしています。間奏・エンディングの印象的なバッキング・ヴォーカルはまささんも参加。歌詞は、とても愛した恋人に決別する内容で、終わっていく愛を夏の終わりに重ねています。「夏に咲く黄色の花」はもちろんひまわりのこと。美和さんの好きな花で、いまやドリカムの一種の象徴ともなっています。最後の「二度と出てこないで・・・」の部分は息継ぎがなく非常に歌いづらい部分ですが、歌詞カードでは文ごとに区切らずずらずら書いてあって主人公の訴える気持ちを表したかのようです。
この曲にはミュージック・ヴィデオがあり、「DCT CLIPS V1」で見ることができます。使用されている音源はシングルヴァージョン。監督は「ROMANCE」などのミュージック・ヴィデオも担当した山本ヤスユキさんで、幻想的で暖かみのあるCGが多用されています(思えばこの曲には油絵的な雰囲気があります)。同DVDのコメンタリーには、西川さんが読み上げる監督からドリカムへの手紙を聴くことができます。なにしろスタジオにプールの水を張って寒かったそうです。まささん・西川さんの人物評もあり(苦笑)。
また、1998年に「SING OR DIE」の英語ヴァージョンがリリースされた時には、この曲の英語版とそのダンス・ヴァージョンが収録されました。
さて、前述したように人によって好き嫌いが分かれるこの曲ですが、そのせいかライヴでは出番が少ないです。1998年のアルバムツアーの模様は、同時期に発表された曲のみDVD「CHILDREN OF THE SUN」に収録されていますが、なぜかこの曲だけ収録もれになっています。1999年のDWL「夏の夢」ではオリジナルよりキーが低いヴァージョンでした。こちらも幻想的な感じが漂っています。その後2009年にレパートリーに復帰(シングル「ねぇ」に音源を収録)。2007年のDWLでもセットリストの候補に挙がっていたそうです。
私は、ドリカムの曲で以前好きだった曲が後にそれほど好きではなくなることはめったにないのですが、この曲は例外的にそうです。やっぱり、重々しい感じがだんだん鼻についてしまいました・・・(汗)。「嫌い」ということではないのですが、ドリカムファンにとって扱いにくい曲かもしれません・・・。でも、まささんは「現在はドリカムの新境地として認められつつある」と語っています。私も、いつでも前向きなドリカムを応援したいので、この曲をもっとよいものとして受け止めていきたいと思います。たとえば、間奏のバッキング・ヴォーカルは大好きなんですけどね・・・。