DREAMS COME TRUE/MAGIC
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プロデューサー:マイク・ピラ、DREAMS COME TRUE レコーディング:マイク・ピラ、後藤昌司 ミキシング:マイク・ピラ
マスタリング:ティム・ヤング 録音スタジオ:ヒット・ファクトリー、信濃町スタジオ、マリンスタジオ
演奏者 吉田美和:ヴォーカル、バッキングヴォーカル、とても親しい恋人(3)、ヴォイス(5)、マーチングドラム(8)、手拍子(12)、タップ(12)
中村正人:ベース(except 1,9,12)、プログラミング、バッキングヴォーカル(except 1,6,9)、タップ(9,12)、手拍子(12)
西川隆宏:キーボード、マニュピレート、バッキングヴォーカル(excpet 1,3,8,9)、手拍子(12)、タップ(12)、プロダクションアシスト(9,12)
モーリス・マイケル:ギター(4,5,7,8) ニール・テイラー:ギター(2,5,6,8) 高田二郎:ギター(3,10)
ラウル・ドリヴェイラ:トランペット(2,4〜8,11) マーティン・ドローヴァー:トランペット(2,4〜8,11)
有沢健夫:トランペット(3) 飯尾通利:トランペット(3)
ニック・ペンテロウ:サックス(2,4〜8,11) 山本一:サックス(3)
ピーター・トムス:トロンボーン(2,4〜8,11) 野村裕幸:トロンボーン(3)
大谷幸:ピアノ(1,11) スケイラ・カンガ:ハープ(6,11) ヴィセント・アミーゴ:スパニッシュ・ギター(9)
濱田尚哉:ドラムス(1,3,6〜8,10,11)、パーカッション(1)、マーチング・ドラム(8)、シンバル(11)、手拍子(12)
ジェローム・ブラウン:バッキングヴォーカル(11,12) グレンヴィン・アンソニー・スコット:バッキングヴォーカル(11、12)
シャロン・デボラ・ベスウィック:バッキングヴォーカル(11,12) マリオン・パウエル:バッキングヴォーカル(12)
マイク・ピラ:バッキングヴォーカル(2,7)、語り(1)、ヴォイス(1,5,12)、とても親しい恋人(3)
エミリー&ナタリー・ピラ:ヴォイス(1) ダ・ダ・ダ・ボーイズ:バッキングヴォーカル(8)
SOLNクラッパーズ:手拍子(12) SOLNタッパーズ:タップ(12)
人気度 ★★★☆☆ お勧め度 ★★★★☆ 管理人お気に入り度 ★★★★☆
ベスト盤度 「BEST OF DCT」1曲、「7月7日、晴れ」6曲、「The SOUL」2曲、「DREAMAGE」3曲、「DREAMANIA」1曲
シングル度 12曲中2曲 作曲者度 吉田3曲、中村7曲、吉田&中村2曲 トレードカラー・・・オレンジ アルバム略称・・・MG
1993年12月にリリースされたドリカムの6thアルバム。ジャケットにあるタイトルのロゴは美和さんとまささんによるもの。オレンジが映えるCDレーベルにも描かれています。ブックレットにたくさん登場するひまわりは美和さんの好きな花ですが、この頃からドリカムの一種のトレードマークになっていきます。西川さんはこの時期丸坊主になっていますが、これ以降しばしば見られる光景になります(苦笑)。なお、ドリカムが音楽を担当したドラマ「長男の嫁」のサントラのジャケットやアートワークは、このアルバムのジャケットやアートワークのパロディになっています。また、このアルバムよりブックレットのクレジットのページにコメントがつくようになりますが、これはアルバム間のリンクとしばしば密接な関係を持つようになります。現在ドリカム名義の日本語のアルバムでいちばん収録時間の短いアルバムです。
さて、このアルバムは『決戦は金曜日』や『晴れたらいいね』、そしてアルバム「The Swinging Star」という怒涛の大ヒットの翌年に作られ発表されたものですが、明らかにそれらとは作風が異なっています。それまでのドリカムナンバーは「女の子らしく、元気で、キャッチー」というものが一般的でしたが、このアルバム以降4年間は落ち着いた感じの味わい深い曲が増えていきます。特にこのアルバムは、穏やかな中に暖かみがあふれた曲が中心となっています。
具体的に収録曲の特徴を見ていきましょう。まずは元気いっぱいの曲が減ったこと。アルバム前半の『LOVETIDE』『go for it!』『冬三昧にはまだ遠い』くらいしかありません。かえって目立つのは暗い感じの曲。『I'm a liar』『いろんな気持ち』『愛してる 愛してた』。こういった曲は悲しいラヴ・ソングであり、前作「The Swinging Star」の収録曲とは対を成します。さらに『a little waltz』『FANTASIA #1』といった秀逸なバラードも収録されます。この点がアルバムに穏やかさを与えています。そして次に挙げられるのはサウンド。前作で初めて取り入れられた生ドラムスはここでも大活躍していますが、さらに、このアルバムからは生ピアノ(大谷幸さん)が部分的ながら使用されます。大谷さんの奏でる生ピアノは、これ以降のサウンドの重要な部分となっていきます。このように、依然としてプログラミングは使っているものの、生楽器を多く使用したことによって暖かみのある音作りになっています。そしてアコースティックでシンプルな曲も多く収録されています。『a little waltz』『FANTASIA #1』などが含まれますが、特に顕著なのが『愛してる 愛してた』と『HAPPY HAPPY BIRTHDAY』。どちらもキーボードやプログラミングは一切使用していません。前者はギターとタップとヴォーカルのみ、後者は手拍子とタップ、ヴォーカルのみ。ともにシンプルでアコースティックなサウンドです。特に前者は今までなかった味わい深いドリカムサウンドを生み出した曲として注目できます。美和さんのヴォーカルも、今まで以上にじっくり聞かせるものが増えてきました。作曲者の比率では、前作と同じく半分以上がまささんの曲なのですが(意外!)、以上の点がそれまでのドリカムのイメージを覆すような穏やかなアルバムにした要因です。また、元気のよさで飾らない分、曲の完成度は高くなっています。ちなみにブックレットは1曲1ページという余裕のあるレイアウトで、それぞれの曲の雰囲気にあった写真を見ることができますが、それすら穏やかで暖かいものに仕上がっています。
また、このアルバムからは『go for it!』1枚しかシングルがリリースされていません。つまりアルバム・ソングが非常に多いということですが、そのためこのアルバムは全体的に地味な印象があります。2000年のベスト盤「The SOUL」には2曲しか収録されていないほどです(もっとも、このベスト盤には大ヒットシングル『go for it!』がなぜか収録されていないのですが)。ファンの中にもこの「進路変更」に首をかしげた人もいるかもしれません。そのためか、あまり人気のないアルバムとして位置づけられることがしばしばです。しかし、このアルバムはアルバム・ソングが多いからこそいいのです。『go for it!』に負けないくらいのパワーを持ったアルバム・ソングが多いのです!弾き語りの『愛してる 愛してた』はファンの間で定評が高いですし、かわいらしいワルツ『a little waltz』は2002年に爽健美茶のCMソングになりました。『HAPPY HAPPY BIRTHDAY』は誕生日に歌う曲としてドリカムファンには欠かせません。そのほかの曲も完成度が高く、感動する曲が多いです。DWLで演奏されたこのアルバムの収録曲が半数の6曲だけ、という事実に驚くほどです。初心者に強くお勧めはしませんが、買って損をすることのないアルバムです。キャッチーなイメージから一歩引き下がったドリカムも聴き応え抜群です。
私がこのアルバムを買って聴いたのは結構早く4枚目です。このアルバムの収録曲は、私自身ドリカムを知らなかった昔、どこかで一度聴いたことがあると思われ、『go for it!』『I'm a liar』『a little waltz』『いろんな気持ち』『HAPPY HAPPY BIRTHDAY』は全部、あるいは一部のメロディに聴き覚えがありました。このアルバムの特徴である落ち着いた感じが私は好きで、それゆえ結構好きなアルバムです。早くから聴いていて思い入れが強いのも事実ですが。中でも、私の指折りのお気に入りである『I'm a liar』『いろんな気持ち』が収録されているのは大きいです。そういえば、このアルバム以降徐々にニハの出番が減ってきているような気がして、なんだかかわいそうで仕方ありません。『a little waltz』ではまささんを差し置いてバッキング・ヴォーカルやっていますが・・・。同じく、ギターのモーリス・マイケルの活躍も日没(!?)を迎え始めます。そう、この時からドリカムは徐々に音楽の方向性をシフトしていたのです。
このアルバムは晴れた昼下がりの暖かい陽射しに包まれていると思いながら聴くといいかもしれません。『いろんな気持ち』や『I'm a liar』はたそがれ時で。そういえばこのアルバムの収録曲、ベスト盤「The SOUL」ではたった2曲、DWLで演奏された曲は半分の6曲(しかも出番は少なめ)というのに、映画「7月7日、晴れ」に使用され、そのサントラに収録された曲はなんと半数の6曲なんだからすごいですね。