松尾一彦のページ

このページでは、オフコース脱退後の松尾一彦について紹介します。

 

●オフコース「第3の男」・松尾一彦の音楽活動

  松尾一彦の音楽活動は、1973年に大間ジローと結成した「ザ・ジャネット」に始まります。翌1974年に東芝EMIからシングル「美しい季節」でデビューを果たし、アルバムも発表するのですが、ヒットには恵まれず解散の憂き目にあいます。しかし、プロデューサーだった武藤敏史が「このまま彼らの才能をつぶすわけにはいかない」と思い、松尾と大間をあるグループのレコーディングに参加させます。それが、小田和正・鈴木康博の2人で活動していた「オフコース」でした。松尾は、大間に遅れて1976年にシングル「めぐる季節」で初めてオフコースと共に演奏しました。

  その後、オフコースのコンサートのサポートをしつつレコーディングにも参加。ギタリストとしての演奏のみならず、とぼけたキャラクターはコンサートの要所要所で笑いを誘いました。そして1979年、大間と清水仁と一緒にオフコースの正式なメンバーに。翌1980年には「この海に誓って」でオフコースのメンバーとして初めて作曲・ヴォーカルを担当。ロックバンドと変貌してゆくオフコースの力強い演奏の立役者となりました。また、松尾の吹くハーモニカは多くの名曲で名演を生みました。1982年制作のオフコースのTV映画『NEXT』では、松尾のコミカルな演技・表情が光っています。

  主要メンバーだった鈴木が脱退し、1984年に4人でオフコースを再始動させてからは、松尾はオフコースの中で小田に次ぐコンポーザーの地位を与えられました。この時期のオフコースの作風は、松尾の音楽的志向が色濃く表れたロック色の強いものとなります。「君の倖せを祈れない」「LAST NIGHT」「I'm a man」など、小田にも鈴木にもなかった鋭角的でストレートな持ち味の名曲が登場します。

  オフコースとしての活動をする間に、松尾は個人で活動もしていました。'80年代前期だけ見ても、稲垣潤一・柏原芳恵らに多くの曲を提供しています。特に稲垣に提供した曲は、彼のデビュー作となった「雨のリグレット」(1982年)を筆頭に、それだけでも1枚のアルバムができてしまうかのような量があります。そして、オフコース活動休止中の1986年、松尾自身もアルバム『Wrapped Woman』でソロデビューを果たします。コンピュータ・サウンドを駆使した斬新なアレンジ、洗練されたシンプルなメロディ、そして作詞家・秋元康とのタッグと、オフコースでは発揮できなかった彼の才能が、このアルバムで一気に開花しました。翌1987年には、レコーディングに参加したベーシストの平田謙吾と、清水仁と共に「ONE」を結成、アルバムを発表します。

  1989年のオフコース解散後は、邦楽シーンの表舞台からは姿を消します。しかし、地味ながらも松尾は音楽活動を続けてゆきます。1990年には2枚目のソロアルバム『Breath』をリリース。前作とは一転したシンプルなアレンジでじっくり聞かせます。同年には安部恭弘とのコラボ名義でシングル「みどり」を発売、また当時の吉田拓郎のコンサートにも参加しました。1994年からは、女性ヴォーカリストの福田康子とユニット「EVERYTHING SHE WANTS」を結成、アルバムも制作しましたが短期間で解散してしまいました。

  1999年には、昔の仲間・清水仁と大間ジローと共に再びバンドを結成。「A.B.C.」という名前で現在もライヴハウスなどで活動中です(アルバムの発売している)。また、ソロにおいても航空会社に提供した曲を集めたインストアルバム『Untitled/23 Works』(2000年)や、お蔵入り音源を復活させたアルバム『Yesterdays』(2003年)を発売、ソロコンサートも小規模ながら定期的に行っています。他アーティストへの楽曲提供、プロデュースなども今なお行っています。吉田拓郎のバックバンドとしての活動も注目されます。

●松尾一彦の魅力、私と松尾一彦

  小田和正・鈴木康博の2人の影に隠れて、目立つことのない松尾さん。しかし、彼の持つ作曲・編曲の才能は、小田・鈴木の2人にはない独特の強い魅力を放っています。シンプルで分かりやすい中にも、複雑さと繊細さを併せ持ったメロディ。'80年代中期以降において、オフコースに新風をもたらしたデジタル・サウンドによる鋭角的なアレンジ。あるいは、メランコリックで美しいAORの世界。そして、これら松尾ワールドを包む、やさしく、時にシャウトも含んだ味わい深いヴォーカル。旧来からのオフコースのファンにはなかなか受け入れられていませんが、そのコミカルな人柄も含め、松尾さんの個性的な魅力はもっと評価されるべきと思います。

  私は、そんな松尾さんの持つ魅力に強くひかれている1人です。きっかけは、元々後期オフコースが好きで、特に「LAST NIGHT」と「愛よりも」にはまっていたことからですが、オフコース時代の曲・ソロ時代の曲を聴いてゆくうちに、徐々に小田さん・Yassさん(鈴木康博)よりも松尾さんの楽曲の方が好きになっている自分がいました(苦笑)。今ではカラオケでは松尾さんの楽曲ばかりを歌うくらいになっています(笑)。また、松尾さん経由で、最近では稲垣潤一にもはまっています。それほど松尾さんは、私が尊敬するミュージシャンのひとりになっています。

  ちなみに、私が特に好きな松尾ナンバーは、オフコース時代なら「僕のいいたいこと」「愛よりも」「LAST NIGHT」「ガラスの破片」で、ソロ時代は「エゴンシーレの夜」「ニュース」「ジャニスは死んだ」「There's No Shoulder」「街」、他だと「246:3AM」(稲垣潤一)です。

●松尾一彦・ディスコグラフィ

  [アルバム]

 〜オリジナルアルバム〜

 Wrapped Woman(1986年)

 Breath(1990年)

 Untitled 23 Works(2000年)

 Yesterdays(2003年)

 〜ベスト盤〜

 Being There(1991年)

  [シングル]

 普通のオフィスレディ/Wrapped Woman〜風 are you〜(1986年)

 

  [ユニット・コラボレーション]

 〜アルバム〜

 Green Speedway(1974年)[ザ・ジャネット]

 ONE NIGHT(1987年)[ONE]

 EVERYTHING SHE WANTS I(1994年)[EVERYTHING SHE WANTS]

 A.B.C. VOL.1(2000年)[A.B.C.]

 A.B.C. VOL.2(2003年)[A.B.C.]

 〜シングル〜

 美しい季節/恋はサーカス(1974年)[ザ・ジャネット]

 みどり/Save the Earth of MIDORI(1990年)[安部恭弘&松尾一彦]

 少年たちのいた夏/永遠のPLACE(1994年)[EVERYTHING SHE WANTS]

 秘密の出来事/遠いときめき(1994年)[EVERYTHING SHE WANTS]

 Zetsuai〜絶対の愛〜/月の輝く夜に(2004年)[THE UNIT]

 Zetsuai〜絶対の愛〜/月の輝く夜に/My Dream(2005年)[THE UNIT]

  [他アーティストへの提供曲]

 稲垣潤一

 その他

 

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