ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜わたしたちの未来予想図〜
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演奏者 吉田美和:ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル
中村正人:ベース、プログラミング、パーカッション(ウィンドチャイム)
武藤良明:アコースティック・ギター
デイヴィッド・T・ウォーカー:エレクトリック・ギター コン・ツヨシ:エレクトリック・ギター
グレッグ・アダムス:トランペット バリー・ダニリアン:トランペット
デーヴ・マン:テナー&バリトンサックス オジー・メレンデス:テナートロンボーン
大谷幸:ピアノ 松本幸弘:ドラムス
他に、プログラミングされたストリングス
ライヴ履歴 2007年、DWL、アンコールで登場 2009年「WINTER FANTASIA 2009」、最初に登場
2007年10月6日に公開された映画「未来予想図〜ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜」の主題歌としてドリカムが提供したバラードナンバー。映画は、その名の通りドリカムの一大名曲『未来予想図』と『未来予想図II』をテーマにしたもので、その歌詞の世界を反映させたカップルを主人公としたラヴ・ストーリーになっています。かねてよりドリカムナンバーを「映像化」する話が多く寄せられるたびにオファーを断っていたドリカムですが、この映画も当初は断るつもりだった、とまささんは語ります。しかし、「歌詞の再現でなく純粋に映画の『未来予想図』を作りたい」というスタッフの強い熱意に押される形で、ドリカムは映画の制作に同意、この曲と、『未来予想図』『未来予想図II』のニュー・ヴァージョンを提供しました。また、まささんは映画の音楽監修をつとめています。この曲の方は、10月3日に先行してシングル発売され、最高2位を記録するヒットとなりました。また、この曲は映画の他に、花王「AUBE」のCMソングにも起用され、ダブル・タイアップとなっています。ファンの間では人気の曲で、ベスト盤「THE SOUL 2」にも収録されています。
ドリカムは、この曲を作るにあたって「単純な続編・総集編にはしたくない」と考えていました。つまり、『未来予想図III』という形にはしたくなかったのです。『未来予想図』シリーズの続編はかねてよりファンから多くのリクエストが寄せられており、同年のDWLに際してもファンから多くの願いが届けられていました。しかし、高校時代に『未来予想図』を生み出した美和さんにとって『III』という続き物はありえないものでした。そこで、ただ単に振り返ったり総括するのではなく、『未来予想図』シリーズのカップルが、今どうしているのか?その様子を思い浮かべ歌にすることにしました。
歌詞では、そうしたプロセスを経て『未来予想図』のカップルの「今」が描かれています。明確に『I』『II』から何年経っているかは分かりません。ここでは、2人で描いた「未来予想図」はまだどこかへ辿り着く途中にあると歌われます。そして主人公は、彼に愛しているという気持ちが伝わっているかどうか思いを巡らしています。「ア・イ・シ・テ・ル」のサインといえば、シリーズ中に登場した「ヘルメット」や「ブレーキランプ」が思いつきますが、ここではそれ以外にも様々なサインが登場し、目に見えるものから見えないものまでいろんなサインがあることを示しています。単なる続編としてこだわることのない工夫がされています。単純にハッピーな将来が描かれているのではなく、愛し合う中で今もなお新しいサインで「想い」を伝えることを模索している、等身大の2人がそこにはいます。
曲調は、『未来予想図』トリロジーを結ぶにふさわしい壮大なバラードスタイルになっています。ピアノを中心にストリングスとブラス・セクションで飾るアレンジは『I』『II』と共通します。『I』の女の子らしさと『II』の壮大さの中間点に位置するような仕上がりです。演奏は、この時期再録音された『I』『II』同様、生楽器の使用が多くなっています。ピアノは大谷幸さん。ギターにはドリカムとたびたび共演しているデイヴィッド・T・ウォーカーも参加しています。そこに入る美和さんのエモーショナルなヴォーカルがその壮大さを一段と強めています。特にサビでの伸びやかな歌い方とアウトロのアドリブが感動的です。なお、この曲が後にアルバム「AND I LOVE YOU」に収録された際には、エンディングのフェイドアウトが40秒ほど長いヴァージョンが収録されました。その演奏時間は6分20秒。現在ドリカムナンバーで3番目に長い曲です(オリジナル・アルバムに収録されているヴァージョンで計算。吉田美和のソロを含めると3位は『泣きたい』)。ちなみに1位が『未来予想図II』ということを考えると、その壮大さがお分かりかと思います。
この曲のミュージック・ヴィデオが制作され、現在は「AND I LOVE YOU」初回限定盤付属DVDで見ることができます。ヴィデオは、映画の主人公である「さやか」と「慶太」のとある一日をコンセプトにした内容となっており、各役を演じた松下奈緒さんと竹財輝之助さんがここでも登場しています。「きみにしか聞こえない」のミュージック・ヴィデオ同様、映画を見ていない人にも映画の世界が伝わってくるかのようなストーリーです。歌が終わった後のシーンが慶太の粋な計らいでちょっと感動的。また、杉崎美香さん・谷村美月さん・美保純さんがさやかのインタビューを受ける役としてゲスト参加しています。付属DVDではその撮影の裏側を知ることができます。
この曲がライヴで初めて披露されたのは2007年のDWLでのこと。当時まだこの曲は発表前でした。ツアー前から映画への書き下ろし、しかも『未来予想図』シリーズということで話題を集めていましたが、アンコールでMCを交えてお披露目され、早速ファンの大きな反響を呼びました。また、その年末の紅白歌合戦でも歌われました。
この曲は2010年のリミックス・アルバム「DREAM CATCHER -DREAMS COME TRUE MIX CD-」にも収録されていますが、オリジナルとほぼ同じ音源です。「ほぼ」というのは若干違いがあるということで、冒頭にタイムマシーンを動かすようなSEがかぶさっているのと、アウトロの繰り返しがかなり短くフェイドアウトしない点がそうです。
この曲は誰もが願っていた『未来予想図』シリーズの続編ですが、安易な続き物(つまり『未来予想図III』)にしなかったのはドリカムらしいし、そのおかげで曲のクオリティもとても高いものになっていると思います。とはいえ、やはりファンとしてはあのカップルのその後を知ることができるだけでうれしいですね。恐らくこれで『未来予想図』シリーズは終わりだと思いますが、映画にもなりましたし、『I』『II』はニュー・ヴァージョンが生まれましたし、この世界を膨らませてくれた美和さんに感謝したいです。個人的には、シリーズ中『I』に続いて好きな曲です(逆に『II』はちょっと・・・)。アルバムでは冒頭に置かれていますが、その辺りにドリカムの強いメッセージを感じます(バラードで始まる構成は珍しいですし)。この曲も、将来は『I』『II』と並んで永遠に歌い継がれるスタンダードとなることでしょう!