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アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」の制作過程などの解説はこちらをごらんください。
ウイングスの名盤と言われるアルバム「バンド・オン・ザ・ラン」(1973年)の限定盤で2枚組。1999年にアルバム発売25周年を記念して米国のキャピトルが発売、日本含め世界中でも発売されました。
CD 1には「バンド・オン・ザ・ラン」のオリジナル版収録曲が収録されていますが、米国盤を元にしているので先行シングルだった『愛しのヘレン』も収録されています。現行の「ポール・マッカートニー・コレクション」(廉価版含む)にボーナス・トラックとして収録されている『カントリー・ドリーマー』は収録されていません。音質は「ポール・マッカートニー・コレクション」よりはるかに向上しています。
CD 2にはポールやデニー・レインなどアルバム制作にあたった人たちのインタビュー(もちろん英語)が収録されています。内容は下記解説に詳しく載せましたが、ラゴスでの災難続きのセッションからオーバーダビング作業、シングルカットやアルバム・ジャケット撮影に至るまで、関係者の肉声による証言がたっぷりで大変貴重です。インタビューのバックには収録曲が流れて雰囲気を出していますが、話の切れ目で瞬時に音量が上がるのがちょっと気になります・・・。また、収録曲の未発表ヴァージョンが数曲収録されていますが、これはアルバム・セッションでのアウトテイクではありません(セッションのアウトテイクはほとんど存在しないと言われている)。未発表の写真をフィーチャーしたブックレットには、アナログ盤に付属していたポスターが復元されています。また、ビートルズ研究の第一人者マーク・ルイソンによるアルバム制作の過程をつづったライナー・ノーツも掲載されています。
この限定盤は現在は入手困難で、特に日本盤は手に入れるのは容易ではありません(私が持っているのは米国盤)。「バンド・オン・ザ・ラン」の制作背景が貴重なインタビューと未発表ヴァージョンで紐解かれていて、ファンならぜひ持っておきたい所です。ただし、ポールやウイングスのことをよく知らない、聴き始めの初心者の方にはあまりお勧めできません。というのも、内容にややマニアックな所があり、大きな関心がないとついてゆけないおそれがあるからです。「ポール・マッカートニー・コレクション」(『カントリー・ドリーマー』も収録、11曲入り)の方がまだ無難でしょう。未発表ヴァージョンも少なく、断片的なものばかりなので、お得感もさほど多くありません。また、現在よく流通している米国盤にはインタビューやライナー・ノーツの解説・対訳は当然載っていないので(インタビューはブックレットにも記載されていない)、英語力のない方にとっては酷なものとなってしまいます(汗)。このアルバムは、相応以上のポール・ファンか英語力のある人か「バンド・オン・ザ・ラン」が大好きな人ならお買い得ですが、そうでなければ手を出さない方が無難です・・・。さらに、2010年にヒア・ミュージックから再発売された「ポール・マッカートニー・アーカイブ・コレクション」シリーズの「バンド・オン・ザ・ラン」には、このアルバムのCD 2が丸ごと収録されており(「スーパー・デラックス・エディション」のみ)、これを持っていれば、このアルバムはもはや不要の存在となってしまいます(汗)。これから買う方で、CD 2が気になる方は「スーパー・デラックス・エディション」を入手しましょう。解説はこちらから。
誤解のないように追加しておきますが、アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」自体は大変お勧めできますので、ぜひ聴いてみてください。
CD 1
曲目解説はこちらをごらんください。
CD 2
1.インタビュー(ポール・マッカートニー)・・・ポールがこの特別CDの世界へ誘ってくれます。雷鳴とともに『バンド・オン・ザ・ラン』のアコースティック・ヴァージョンが始まる。
2.インタビュー(ポール・マッカートニー)・・・『バンド・オン・ザ・ラン』をバックにポールがアルバム制作の地にラゴス(ナイジェリア)を選んだ経緯や2人のメンバー脱退を語る。バックの曲は第2パートを行ったり来たり。
3.バンド・オン・ザ・ラン(リハーサル)・・・1989年7月21日のリハーサルより。少しばかり構成が違っている。オリジナルよりはじけた感じ。
4.インタビュー(ポール・マッカートニー、デニー・レイン、リンダ・マッカートニー)・・・『マムーニア』をバックにポールがテープ盗難を語る。続いてデニーがレコーディングとこのアルバムについて語る。デニーは近頃までこのアルバムを聴いていなかったと言う。続いてはリンダ。キーボード演奏について語る。そして再びポール。リンダやデニーの協力について語る。それにしてもタイトルコールばかり繰り返す『マムーニア』、笑えます。
5.ブルーバード(ライヴ)・・・1975年、オーストラリアでのライヴ録音(コンサートではない)。絶頂期ウイングスによる演奏で、幻に終わった日本公演(1975年)のお詫び用に録音された。断片的なのが残念。
6.インタビュー(ポール・マッカートニー)・・・前曲を受け継ぐ感じでオリジナル版『ブルーバード』をバックにポールがラゴスのスタジオについて語る。
7.インタビュー(ポール・マッカートニー、ジェフ・エメリック)・・・『ノー・ワーズ』をバックにポールがエンジニアのジェフ・エメリックについて語る。彼とはビートルズ時代にエンジニアを担当して以来の仲である。続いてジェフがスタジオについて語る。収録曲は録音された後ロンドンに持ち帰られオーバーダビングが加えられた。
8.インタビュー(ポール・マッカートニー、トニー・ビスコンティ)・・・『ノー・ワーズ』をバックにポールが数曲でオーケストラ・アレンジをしたトニー・ビスコンティについて語る。続いてトニーが数曲でのオーケストラ・アレンジについて語る。『バンド・オン・ザ・ラン』の第3パートへ導くブラスのメロディについて触れていて、彼のハミングと実際のヴァージョンの聴き比べができる。他に『ノー・ワーズ』『ピカソの遺言』『ジェット』のアレンジについても。
9.インタビュー(ポール・マッカートニー、アル・コーリー)・・・『ピカソの遺言』内の『ジェット』をバックにポールがシングルカットについて語る。続いて『ジェット』をシングルカットするよう提案したアル・コーリーがその理由について語る。『ジェット』は非常にキャッチーだとのこと。同曲のヒット状況を語り、永遠に聴き継がれる曲だと付け加えている。
10.ジェット(サウンドチェック)・・・1993年9月3日、ベルリンでのサウンドチェックより。オリジナルよりテンポが若干速い。ライヴになるとポールは"I thought the major・・・"の繰り返しを"Don't you know that・・・"って歌いますね。
11.インタビュー(ポール・マッカートニー、クリーブ・アロースミス)・・・ここからはアルバムジャケットについて。ポールがアルバムタイトルに基づいたジャケットを思いついた経緯を語る。続いて写真を撮ったクリーブ・アロースミスがアルバムジャケットとリアジャケットについて語る。スポットライトはもっと青白いものを意図していたらしい。写真撮影の際はパーティーのようだったと振り返る。
12.インタビュー(ポール・マッカートニー、ジェームズ・コバーン、ジョン・コンティ)・・・『西暦1985年』をバックにポールがアルバムジャケットに登場する「バンド」に招待した有名人たちについて語る。このアイデアはリンダのものだったらしい。まずは俳優のジェームズ・コバーンについて。続いてジェームズが招待された時の様子を語る。ポールにはそれ以前会っていなかったという。続いてポールがボクサーのジョン・コンティについて語る。そしてジョンが招待された時の様子を語る。彼が『バンド・オン・ザ・ラン』を歌うのも聴ける。彼はこの撮影用に「囚人が履くような靴」を用意したという。
13.インタビュー(ポール・マッカートニー、ケニー・リンチ)・・・『ミセス・ヴァンデビルト』をバックにポールが歌手・俳優のケニー・リンチについて語る。続いてケニーが招待された時の様子を語る。
14.レット・ミー・ロール・イット(リハーサル)〜インタビュー(ポール・マッカートニー)・・・1993年2月5日のカーディングトンでのリハーサルより。イントロにポールのインタビューがかぶさっているが、この曲とジョン・レノンとのつながりについて語っている。演奏は間奏のオルガンが印象的になっている。
15.インタビュー(ポール・マッカートニー、マイケル・パーキンソン、リンダ・マッカートニー)・・・再び『ミセス・ヴァンデビルト』をバックにポールがアルバムジャケットの撮影に招待した人たちについて語る。マイケル・パーキンソンはジャーナリスト。続いてマイケルが写真撮影について語る。間にリンダが写真撮影をする当時の音声が入る。それにしても『ミセス・ヴァンデビルト』の"Ho Hey Ho"が耳タコになりますね。
16.愛しのヘレン(クレイズド)〜インタビュー(ポール・マッカートニー、クリストファー・リー)・・・『愛しのヘレン』は基本的にはオリジナルと同じだが一部音を削ったり増やしたりしていて微妙に違って聴こえる(特に第3節)。続いてはインタビュー。ポールが俳優のクリストファー・リーについて語る。続いてクリストファーがジャケット撮影の招待を受けた時の様子を語る。ジェームズ・コバーンと会った時のことなど。
17.インタビュー(ポール・マッカートニー、クレメント・フロイド)・・・『バンド・オン・ザ・ラン』のアコースティックヴァージョンをバックにポールが政治家クレメント・フロイドについて語る。続いてクレメントが招待を受けた時の様子を語る。彼は後年サンディエゴに赴いた時通行人から「バンド・オン・ザ・ランのジャケットの人でしょ?」と言われたそうだ。
18.インタビュー(ポール・マッカートニー、ダスティン・ホフマン)・・・『ピカソの遺言』をバックにポールが同曲のエピソードを語る。ポールは休暇中に会った俳優ダスティン・ホフマンに曲作りについて尋ねられ、雑誌の記事にあったピカソの死について曲を書いてみないかと提案された。続いてダスティンがピカソの死についてとポールが一気に曲を完成させたことについて語る。
19.ピカソの遺言(アコースティック・ヴァージョン)・・・ポールがアコースティックギターの弾き語りで歌う。
20.インタビュー(ポール・マッカートニー)・・・『バンド・オン・ザ・ラン』のアコースティックヴァージョンをバックにポールが「バンド・オン・ザ・ラン」の制作にかかわったすべての人たちに感謝を述べている。
21.バンド・オン・ザ・ラン(ノーザン・コミック・ヴァージョン)・・・アコースティックギターの弾き語りでポールがおかしい声で歌っている。