ポール・マッカートニー
アルバム未収録曲・ヴァージョン一覧
〜未CD化曲・CD化はされているが現在・及び今後入手困難なアルバム未収録曲・ヴァージョン〜
PART 1(1970〜1986)
(太字は未収録曲、細字は未収録ヴァージョン)
Smile Away(Not Crossfaded) 【出典】Single「Eat At Home」B面 未CD化
ポールの未CD化曲・ヴァージョンの先陣を切るのは、(たぶん)この曲でしょう。 ドイツや日本などでのみ発売されたシングル「Eat At Home」のB面です。 基本的にはアルバム『Ram』収録ヴァージョンと同じですが、前曲の「Uncle Albert/Admiral Halsey」とクロスフェードしないように冒頭のアドリブをカットしてカウントから始まっています。
シングルにしか収録されていないので、微妙でマニアックな未CD化ヴァージョンということになります・・・。私は未聴なので本当にそうなのか確認は取れていません(汗)。 また、この曲含めウイングス最初期にかけてのポールのシングルではビートルズ時代のように各国で独自の別ミックスが作成・収録されているケースもある、という話も聞きます。 |
Give Ireland Back To The Irish(version) 【出典】Single「Give Ireland Back To The Irish」B面 未CD化
微妙なヴァージョン違いを除けば、これがポールのソロ以降最古の未CD化音源です。 ウイングスのデビュー・シングル「アイルランドに平和を」B面だった、同曲のインストです。 インストといっても、A面の純粋なカラオケではなく、ベーシック・トラックに手を加えた全く別のヴァージョンになっているのが注目点です。 エレキギター中心のオリジナルに比べ、リコーダーをメインに据えて、とぼけた雰囲気を出しているのが面白いです(笑)。また、所々ポールがバンドに指示を出す声が入るなど、全体的に雑な仕上がりで、悪く言えば陳腐なアレンジです・・・。個人的には結構気に入っているのですが。
2007年にアルバム『Wings Wild Life』がiTunesで発売された際にボーナス・トラックとなっていますが、CDには今なお収録されたことがありません。 |
Love In Song(Not Crossfaded) 【出典】Single「Listen To What The Man Said」B面 未CD化
これまた微妙なヴァージョン違いで未CD化です。 アルバム『Venus And Mars』では前曲の「Rock Show」とクロスフェードしていますが、シングルでは切り離されています。 イントロの12弦ギターとピアノがクリアに聞こえます。オリジナルCDを作るとき、これがあると便利かもしれませんよね。 |
Let 'Em In(Single Version) Beware My Love(Not Crossfaded) 【出典】Single「Let 'Em In」A・B面 未CD化
ウイングス絶頂期のシングルですが、両面ともアルバム『Wings At The Speed Of Sound』収録の内容をエディットしたものです。 A面の「Let 'Em In」は当時のライヴ・ヴァージョンと同じ長さに編集されていて、繰り返し1回分がカットされ、さらにアウトロではフェードアウトしたまま曲が終わってしまいます! B面の「Beware My Love」は前曲の「She's My Baby」とクロスフェードしないヴァージョンで、アコギが入る箇所からフェードインします(ただしアコーディオンの音は残っている)。
なお、A面のショート・ヴァージョンはプロモ盤では全世界共通に使われたものの、一般に発売されたシングルでは日本盤のみに採用されています。(英米ではアルバムと同じものを収録) ポールのシングル曲が日本だけ違う仕様で発売されるのは極めて異例のことです。 |
Girls' School(DJ Edit) 【出典】Album『London Town』(1989 reissue)
意外と見落とされがちなレア音源が「Girls' School」です。ここで紹介するエディット・ヴァージョンは、実は1993年までは容易に入手できたという珍しい経歴を持ちます。
1989年にアルバム『London Town』が初CD化され、そのボーナス・トラックとしてこの曲が収録された際は、オリジナルのシングルよりも1分ほど短いヴァージョンが採用されました。それが「DJ Edit」で、1977年発表当時のプロモ盤でも同様の編集が施されていました。 そのためしばらくは元々のシングル・ヴァージョン(演奏時間が4分半)は未CD化の憂き目に遭っていたのですが、1993年の『London Town』再発売(「Paul McCartney Collection」シリーズの一環)以降は一転してシングル・ヴァージョンがボーナス・トラックに採用されたため、先にCD化されていた「DJ Edit」の方が初回CDの廃盤で逆に入手困難となってしまったのです。
とはいえ、1989年の『London Town』初回CDは公式に量産されたものなので、探せばまだまだ見つかる方だと思います。 そういう私は、アルバム未収録音源を集めたブートを頼りに入手しようとしましたが、そのブートに収録されていたのは通常のシングル・ヴァージョンの方でした・・・(汗)。後日『London Town』セッションもののブートで無事入手でき一安心しましたが。 「DJ Edit」自体は、後半のインスト部分を大幅にカットして一気にエンディング付近に飛んでゆくのが大胆で、実に潔いと思います。フェードアウトする地点もシングル・ヴァージョンよりもずっと手前です。 |
Goodnight Tonight(12" Long Version) 【出典】12"Single「Goodnight Tonight」A面 未CD化
ポール史上初にしてウイングス唯一の12インチシングルより。 当時流行の真っ只中だったディスコ・シーンを意識した「Goodnight Tonight」のロング・ヴァージョンです。いかにもこの時期のディスコ風リミックスで、7インチでは約4分なのに対し約7分と全体的に引き伸ばされた感のある構成です(ただし、元々7分あった曲をシングルで発売する時に編集して短くしたというのが実際)。 長くなったとはいえ、ポールの一連のリミックスでは比較的聴きやすい部類で、間奏のツイン・リードギターの掛け合いを7インチ以上に堪能できたり、ボコーダーによる実験的なコーラスを楽しめたりと、聴き所満載です。そして何と言っても、7インチには登場しない幻の第2節の歌詞が登場するのにはびっくりです!
2007年にアルバム『Back To The Egg』がiTunesで発売された際にボーナス・トラックとなっていますが、残念ながら現在も未CD化のままです。 この曲は当初から私の大好きな曲なのですが、このロング・ヴァージョンを聴いてますます好きになりました。ウイングスの未CD化音源でも最も必聴と言っても過言ではないでしょう! |
Coming Up(Live at Glasgow) 【出典】Single「Coming Up」B面 未CD化
ポールにとって'80年代初のシングル「Coming Up」のB面には、1979年のウイングス全英ツアーよりグラスゴー公演(12月17日)での同曲の演奏が収録されていました。米国ではレコード会社の要請でスタジオ・ヴァージョンとA・B面を入れ替えて発売し、ライヴ・ヴァージョンの方がNo.1ヒットとなったのは周知の通り。 この音源、米国版『All The Best !』『Wingspan』でとっくの昔にCD化済みでは?と思われている方も多いのではないでしょうか。しかし、厳密には違うのです!
実は、ベスト盤でCD化されている音源は、エンディングが早くフェードアウトしてしまい、演奏後のMCが大幅にカットされているのです。一方、シングルに収録された音源は、その後に観客の「ポール・マッカートニー!」コールが続き、それにポールが呼応するという一連のやり取りまで収録されています。この日の会場の並々ならぬ熱気をより強く印象付けています。 また、2011年にリマスター盤『McCartneyII』のボーナス・トラックに収録された音源は、シングルでは丸ごとカットされていた途中の1節が復活する代わりに、カウントが「4」で始まり、演奏後のMCがベスト盤以上に早くフェードアウトしてしまう(さらに追加のオーバーダブが施されていない)、これまた別ヴァージョンです。
このように公式発表版はいずれもどこかが欠落しているグラスゴー公演の「Coming Up」ですが、演奏からMCまですべてを完璧に聴ける完全版は、今のところブートでしか出会えません。名盤『LAST FLIGHT』で聴くことができます。 |
Got To Get You Into My Life(live) Every Night(live) Coming Up(live) Lucille(live) Let It Be(live) Rockestra Theme(live) 【出典】Omnibus Album『Concerts For The People Of Kampuchea』 未CD化
ポールとワルトハイム国連事務総長(当時)の呼びかけで開催された「カンボジア難民救済コンサート」(1979年12月26〜29日、ウイングスの出演は最終日の29日)の模様を収録したオムニバス盤。ウイングスの1979年全英ツアーの最終日であると共に、結果的にウイングス最後のライヴにもなってしまった、'70年代ロック史を華やかに締めくくった一大イベントにもかかわらず、未CD化のため正規では入手困難な音源です。 しかし、同年のグラスゴー公演を収録したブートの名盤『LAST FLIGHT』のボーナス・トラックに収録されているため、非正規では簡単に入手できます。
ウイングスは当時のセットリストから3曲を抜粋して収録。このツアーがライヴ初披露だった「Got To Get You Into My Life」、エレクトリック・アレンジの「Every Night」、グラスゴー公演とは違いノーカット収録の「Coming Up」。ウイングス最終ラインアップのライヴ音源は公式発表されることが少ないので大変貴重です。 そして大トリに用意された、あの豪華なロック・プロジェクト「ロケストラ」(若干顔ぶれは変わりますが・・・)から3曲を収録。迫力あるバックに支えられてポールがリトル・リチャードばりにシャウトする「Lucille」、後にチャリティ・イベントでの十八番となる「Let It Be」を経て、最後はやはり「Rockestra Theme」の再現で締めくくります。これだけ大勢が集まって同時に演奏すると、音が本当に分厚くなりますね!ポールが最後の最後で叫ぶ「ハッピー・ニュー・イヤー!」の一言は、ポールにとっての「新年」を思うと複雑な気分になりますが・・・(汗)。
ポールの歴史にとっても、ロックの歴史にとっても重要かつ貴重な音源。これから入手される方は、ぜひ『LAST FLIGHT』でグラスゴー公演と共に! |
Dress Me Up As A Robber(Not Crossfaded) 【出典】12"Single「Take It Away」B面 未CD化
シングル「Take It Away」のB面(12インチのみ)に収録された「Dress Me Up As A Robber」は、とっても微妙なヴァージョン違いです。アルバム『Tug Of War』では前曲の「Be What You See(link)」の残響音がイントロにかぶってしまっていますが、シングルでは切り離されています。たったそれだけの違いですが(笑)未CD化です。 |
Get It(Not Crossfaded) 【出典】Single「Tug Of War」B面 未CD化
「Dress Me Up As A Robber」と同じく微妙な別ヴァージョンです。アルバム『Tug Of War』では次曲の「Be What You See(link)」と、この曲の最後の笑い声(カール・パーキンス)とがクロスフェードしていますが、シングルでは切り離されています。何とも形容しがたい不気味な感じは薄れたかも。 これもシングルにしか収録されていないので、未CD化です。 |
Ode To A Koala Bear(Australian mix) Say Say Say(remix) Say Say Say(Instrumental) 【出典】7"Single「Say Say Say」B面、12"Single「Say Say Say」A・B面 未CD化
世界中で大ヒットしたマイケル・ジャクソンとのコラボシングル「Say Say Say」には、未CD化音源が多いです。 まず7インチ・12インチ共通のB面だった「Ode To A Koala Bear」。アルバム未収録だったため2015年まで長いこと未CD化だった曲ですが、実はこの曲にはミックス違いが存在します。それもなんと!オーストラリア盤のみの収録らしい。唐突にオーストラリアなのは、やはりコアラだから・・・!?オリジナルよりもドライなミックスで、ピアノよりオルガンのような音が目立っていますが、各楽器のステレオ配置が極端なのがやや気になります。このミックス違いは現在においても未CD化です。正規の入手はまず難しいでしょう。
続いて12インチですが、A面の「Say Say Say」はJohn "Jellybean" Benitezによるリミックスに差し替えられています。間奏とアウトロがオリジナルよりも長くなっていて、しかもベースを前面に出したアレンジに変わっていて、よりダンサブルでクールな仕上がりです。このリミックスは、2007年にアルバム『Pipes Of Peace』がiTunesで発売された際にボーナス・トラックとなっていますが、未CD化であることには変わりありません。 さらにB面には「Ode To A Koala Bear」に加えて「Say Say Say」のインスト・ヴァージョンが収録されています。これもBenitezが手がけていて、A面の歌入りをさらにいじった格好となっています。ポールやマイケルのヴォーカルがない上に7分も続くので少々退屈しますが(汗)、ディスコ風のノリは楽しいですね。後半、手拍子のリズムだけになる所は特に面白いです。これまた未CD化。2015年のリマスター盤『Pipes Of Peace』に収録された「2015 Remix」はこのヴァージョンを下敷きに再アレンジしたものです(ヴォーカルも入っている)。
「Say Say Say」のリミックス2種類がリマスター盤『Pipes Of Peace』未収録に終わったのは、すべてをアーカイブ(=CD化)するつもりはないということで、少々意外に感じられました。 |
No More Lonely Nights(Playout Version Single Version) No More Lonely Nights(Extended Playout Version) 【出典】7"Single「No More Lonely Nights」B面(ファースト・プレス) 未CD化 12"Single「No More Lonely Nights」A面(セカンド・プレス) 未CD化
ヴァージョン違いが多く、非常に煩雑なのが「No More Lonely Nights」です。ヒットした「バラード編」がシングルとアルバムで2種類、そしてダンス・ヴァージョンである「プレイアウト編」はオリジナル・ミックスだけでも4種類もヴァージョン違いが存在します! 次の項で触れる通り、アルバム『Give My Regards To Broad Street』収録版はアナログ盤とCDで曲の長さが異なります。そして、もう1つややこしいヴァージョン違いが、シングル・ヴァージョンとベスト盤『Wingspan』収録のヴァージョンです。どちらもアルバム・ヴァージョン(CD)から途中の1節分をカットした約4分のショート・ヴァージョンで、同じ音源のように聞こえますが、実は微妙に、本当に微妙な所で違うのです・・・! 答えは曲を頭出しすればすぐに見つかります。『Wingspan』に収録されたものは冒頭に「プレイアウト編」特有の「みょーん」というキーボード1音がなく、いきなりブラス・セクションから始まります。その反面、シングル・ヴァージョンには「みょーん」がしっかり入っています。たったそれだけの違いなのですが(苦笑)、これもまた別ヴァージョンというわけです。しかも、シングル・ヴァージョンは未CD化です。
これに加え、12インチ(ファースト・プレス)収録のジョージ・マーティンによる「Extended Version」(CD化済)と、アーサー・ベイカーが手がけたのをポールが気に入りセカンド・プレスとして急遽差し替え発売された「Special Dance Mix」があるのですが、後者の「Special Dance Mix」は7インチと12インチでは曲の長さが異なるものが収録されています。うち、現在ボーナス・トラックとしてCD化されているのは7インチ収録のエディット・ヴァージョン(約4分半)で、12インチに収録された7分近い完全版はなんと未CD化です! この「Special Dance Mix」の完全版は裏ジャケットでは「Extended Playout Version」と表記されていますが、その名の通り7インチよりイントロとアウトロが長く、歌の方も1節分増えています。長くなったとはいえ、エディット・ヴァージョンと比べてアレンジが特に変わるわけでもないですが、アウトロはヴォーカルとスキャットのみのブレイクが1回多く、ファースト・プレスの「Extended Version」で採用されていたコーラスも登場します。
この他にも、プロモ盤では「Mole Mix」という歌にもなっていない変てこなミックス(2007年にアルバム『Give My Regards To Broad Street』がiTunesで発売された際にボーナス・トラックとなっている)や、ワレン・サンフォードによるリミックス「Extended Edit」なども存在し、本当に把握しづらいですね。 |
Good Day Sunshine(edit) Wanderlust(edit) Eleanor's Dream(edit) No More Lonely Nights(Playout Version edit) 【出典】Album『Give My Regards To Broad Street』(LP) 未CD化
いろんな意味で話題となったポール自作自演の映画「ヤァ!ブロード・ストリート」のサントラ盤。もちろんCD化されていますが、実はアナログ盤とCD(及びカセット)とでは収録内容が大きく異なっています。 それはLPに収録可能な演奏時間の都合上で、アナログ盤では「So Bad」「Goodnight Princess」がオミットされている他、「Good Day Sunshine」「Wanderlust」「Eleanor's Dream」「No More Lonely Nights(Playout Version)」の4曲はCD収録分よりも短いエディット・ヴァージョンが収録されています。
「Good Day Sunshine」は、間奏が終わると一気にエンディングを迎える構成になっており、それは歌詞カードにも反映されています(第3節が書かれていない)。ビートルズ・ヴァージョンで聴き慣れていると肩透かしを食らわされます(汗)。 「Wanderlust」も、1回目のサビが終わると2度目の間奏に飛んでしまいます。したがって間奏は1度きりであり、“Oh where did I〜”で始まるカウンターパートはアナログ盤では単独で歌われることがありません。 一番顕著なのが「Eleanor's Dream」です。CDでは7分程の大作を楽しめますが、アナログ盤では1分ちょっとしか収録されていないのです!しかも、のっけから編集が施されて途中から始まっています。そして、最初の楽章が終わった所で、曲自体が終わってしまいます(笑)。ポールが本気を出して作曲に臨んだあれほどの労作が、アナログ盤ではあっけなさすぎです。 最後に「No More Lonely Nights(Playout Version)」は、曲が始まった後の長さがシングルや『Wingspan』と同じ(CDより1節分短い)ですが、冒頭にジャズ・アレンジの導入部と映画の台詞をつなげているので、これもここでしか聴くことのできない別ヴァージョンです。
「アナログ盤の仕様を忠実に再現」を売り文句に2000年に発売された紙ジャケット版でも、CD版と同じ内容が収録されているため、上記4曲のエディット・ヴァージョンは未CD化です。 |
We All Stand Together(humming version) 【出典】Single「We All Stand Together」B面 未CD化
ポールが原作の版権を持ち、制作に携わった短編アニメ映画「ルパートとカエルの歌」の主題歌「We All Stand Together」のB面は、同曲のハミング・ヴァージョンでした。A面が「Paul McCartney & The Frog Chorus」名義なのに対し、こちらの方は「Paul McCartney & The Finchley Frogettes」名義でクレジットされています。 演奏はA面のオリジナルとは全く異なり、トランペットの短いパートで始まり、いかにも映画のサントラぽいアレンジのインタールード(プロモ・ヴィデオの冒頭で使用されている)を経て、アコギとフルート中心のゆったりとした雰囲気の中合唱隊の子供たちがハミングするという構成で、2分ちょっとで終了します。ポールはヴォーカル面では不参加(演奏に関しては不明)。
プロデュースを行ったポールの恩師、ジョージ・マーティン“先生”のアレンジャーとしての手腕をA面に劣らず存分に堪能できるヴァージョンですが、未CD化なのが残念です。 |
Spies Like Us(party mix) Spies Like Us(alternative mix) Spies Like Us(DJ Version) My Carnival(party mix) 【出典】12"Single「Spies Like Us」A・B面 未CD化
「No More Lonely Nights」に続き、またもやヴァージョン違いの嵐。同名映画の主題歌となった「Spies Like Us」です。ポールにとって既に恒例となっていた12インチシングルには、3つのヴァージョン違いが収録されました。
まずはJohn Potokerによるリミックス「party mix」。これが12インチA面のメインに据えられました。7分にも及ぶロング・ヴァージョンで、至る所に映画の台詞が挿入されているのが一番の特徴です。映画を見ていなくても、台詞の内容だけでいろんな光景が浮かんできそうです。ポールのヴォーカルやコーラスにエフェクトをかけたり、途中でドラムビートを取り払ったりと、オリジナルにはない凝った細工が随所に施されていますが、いかんせん曲が長いので少し冗長に感じられるかもしれません・・・。全体的に派手さを抑え、ミステリアスな仕上がりです。 A面にもう1つ収録されたのがArt Of Noiseが手がけた「alternative mix」で、「known to his friends as Tom」という副題がついています。こちらは逆にオリジナルより短くなっている代わりに、より大胆にリミックスされています。リード・ヴォーカルもカットされ、ほぼインスト状態となっています。冒頭のドタバタ気味なドラミングと、甲高いブラス・セクション、そしてエンディングに突如登場するピアノのソロ・フレーズが印象的。また、序盤に挿入されているポールの「ジュッドゥクドゥク」というスキャットはガイド・ヴォーカルから採られたもので、ブート収録の初期テイクで確認することができます。 なお、「alternative mix」は本来5分半の長さで、カットされてしまった前半部分を含んだ完全版が、2012年にArt Of Noiseの所属レーベルから発売されたオムニバス盤『The Art Of The 12",Volume Two』に「Art Of Noise Remix」の名で収録され、陽の目を浴びました。
続いてB面には「DJ Version」が収録されています。これは7インチ収録のオリジナルのショート・ヴァージョンです。ゆえに、ミックスはポール、ヒュー・パジャム、フィル・ラモーンの3人。エンディングのタイトルコールの繰り返しの途中でフェードアウトし、1分ほど短くなっています。 最後に、ついでなのでしょうか7インチB面でウイングス時代の曲「My Carnival」もリミックスされています。それがGary Langanによる「party mix」で、6分ほどのロング・ヴァージョンです。ポールやウイングスのメンバー、ベニー・スペルマンといった参加者のアドリブ・ヴォーカルをいじりまくっていて、小刻みに繰り返したりテープの回転速度を変えたりと、あまりのバカバカしさ(褒め言葉)に思わず笑ってしまいそうです。さらに後半になるとテンポが徐々に上がってゆき、狂気ぶりに拍車がかかってゆきます・・・。 なお、「My Carnival (party mix)」は、2007年にアルバム『Venus And Mars』がiTunesで発売された際にボーナス・トラックとなっていますが、2014年のリマスター盤『Venus And Mars』には残念ながら収録されませんでした。
以上4つのリミックスは、すべて未CD化です。「Spies Like Us (alternative mix)」は、完全版は先述のオムニバスでCD化されていますが、この長さ(&ポール側)としては未CD化のまま。 |
Seaside Woman(remix) B-side To Seaside(remix) Seaside Woman(Extended Remix) B-side To Seaside(Extended Remix) 【出典】7"Single「Seaside Woman」A・B面、12"Single「Seaside Woman」A・B面 未CD化
ポールのついでに、愛妻リンダさんのレア音源もここで挙げておきましょう。リンダ存命中唯一のシングルとなったのがご存知レゲエタッチの「Seaside Woman」(1977年発表)ですが、実はこの曲、B面の「B-side To Seaside」と共に1986年にリミックスされ、シングルとして再発売されているのです。リミックスを行ったのはアルヴィン・クラークで、両曲とも直後に発売を控えたポールの新譜『Press To Play』に似たエレクトリック・ポップ風のアレンジが追加録音されています。パワフルなドラムビートとシンセを大々的にフィーチャーしていて、シンプルなバンド・サウンドのオリジナルとは一線を画しています。
しかし、これが意外なことにオリジナルより聴きやすくなっています。オリジナルはウイングスによる演奏(それぞれ1972年、1977年)ですが、確かにほのぼの感はオリジナルに軍配が上がりますが、ちょっとたどたどしい、悪く言えば陳腐な仕上がりなのが気にかかります。これに対しリミックスの方は、リズムを強調することで軽快な感じが上手く引き出せていて、シンセが10年以上前の録音という古臭さを覆い隠しているため、そうした欠点をクリアしています。また、『Press To Play』ほどの大仰なオーバーダブもなく、オリジナルの陽気は残されたままでさながら「'80年代ウイングス」といった趣があります。 特に「B-side To Seaside」はオリジナルではポールの(ほぼ)ワンマン・レコーディングが災いして何をやりたいのか分からない中途半端な内容でしたが、ここではドラムスとシンセがかっこよく、ギター・ソロやコーラスもすごく映えて聴こえます。「Seaside Woman」はともかく、「B-side To Seaside」はオリジナルよりリミックスの方を断然お勧めします。 ちなみにオリジナルとは別に、このリミックスを使用した「Seaside Woman」のプロモ・ヴィデオが存在し、そこではリンダが実写で登場し、海辺を模したセットでレゲエ・バンドにサポートされながら歌を披露していました。
1986年の再発売の際には12インチも作られ、A・B面共にアルヴィン・クラークのリミックスをさらに編集したロング・ヴァージョンが収録されましたが、こちらはちょっと大仰な気もします。 「Seaside Woman」はイントロ・間奏・アウトロが引き伸ばされ5分以上の長さになっていますが、そのやり方はいかにも'80年代リミックスの王道。中盤でポールが犬の吠え声を真似する箇所がめちゃくちゃにいじられているのは面白いですが(苦笑)。「B-side To Seaside」は中盤にドラムソロが展開されますが、ドタバタと大げさすぎて逆に面白いくらいです。それ以外の箇所にあまり大きな変化はなく、4分半の長さになっています。
現在CD化されているのは、1977年発売のオリジナル・ヴァージョンのみ(リンダ没後のリリースとなったソロ・アルバム『Wide Prairie』に収録)で、一連のリミックスはすべて未CD化です。 |
Press(Hugh Padgham Edit) Press(Hugh Padgham Mix) Press(video edit) Press(dub mix) It's Not True(Hugh Padgham Mix) Hanglide 【出典】7"Single「Press」A・B面、12"Single「Press」B面、10"Single「Press」A・B面 未CD化
ヴァージョン違いといえば、もしかしたら「Press」が一番有名かもしれません。7インチ・12インチ・10インチといった多彩なフォーマットに、様々なヴァージョンが収録されたからです。それをしっかり把握するのはポール・マニアでも容易なことではありません。私も、大好きな曲だというのに混乱してしまうことがしばしばです(汗)。
アルバム『Press To Play』で現在聴くことのできる「Press」は、Bett BevansとSteve Forwardによるリミックス・ヴァージョンで、プロモ・ヴィデオに使用されたことから「Video Soundtrack」とも呼ばれています。これがオリジナルと思われがちですが、実は先述のようにリミックス・ヴァージョンで、元々は12インチシングル用に制作されたものでした。 ではオリジナルは・・・といえば、7インチ(ファースト・プレスのみ)と10インチに収録されています。それがヒュー・パジャムによるオリジナル・ミックスです。『Press To Play』の一部初回プレスに誤って収録されていたといういわくつきの音源ですが、Bevans/Forwardミックスとは雰囲気が全く違います!オリジナル・ミックスではシンセやドラムスのアレンジがシンプルでしつこくなく、理路整然とした打ち込みも最小限にとどめられ、生楽器の肌触りをダイレクトに味わえます。後半も繰り返しが少なく、冗長なドラムソロもありません。最後にはギター・ソロがクロスフェードで入ってくるおまけつき。リミックスより圧倒的に聴きやすく、こちらの方が好きという人も多いです。リミックスでは埋もれがちな、この曲のポップな魅力を再確認できるはずです。 なお、このオリジナル・ミックスは7インチと10インチとでは演奏時間が異なり、7インチにはエンディングのギター・ソロが少ししか入っていないエディット・ヴァージョンを収録。10インチにはギター・ソロが完奏する完全版を収録しています。微妙なヴァージョン違いというわけです。
続いて、7インチ(セカンド・プレス以降)と、10インチB面に収録されていた「video edit」ですが、これはBevans/Forwardミックスのショート・ヴァージョンです。ミックス自体は『Press To Play』で聴けるものと同じですが、後半(2度目の間奏やドラムソロ)がかなりカットされていて、1分以上短くなっています。ある意味聴きやすいかもしれませんね。 最後に、Bevans/Forwardミックスを基にしたリミックス「dub mix」は12インチB面に収録されています。この時期ならではのロング・ヴァージョンで、「ダブ」と銘打っているだけあってヴォーカルが全くない箇所がほとんどです。カラオケはできそうですが、この曲が大好きな私ですら退屈に感じられてしまいます・・・(汗)。なお、この「dub mix」は2007年にアルバム『Press To Play』がiTunesで発売された際にボーナス・トラックとなっています。
「Press」以上に必聴なのが「It's Not True」のオリジナル・ヴァージョンです。このヴァージョンはヒュー・パジャムによるミックスで、7インチのB面に収録されていました。一方、ジュリアン・メンデルソンがリミックスを行ったロング・ヴァージョンが12インチに収録されたのですが、CD版『Press To Play』(後年の再発も含む)のボーナス・トラックには(運悪く)後者のリミックスの方が採用されました。つまり、現在普通に入手できるのはオリジナルを12インチ用にいじくり回したリミックスであり、それがこの曲への評価を不当に落としている原因となっています。 しかし、元々のオリジナル・ヴァージョンを聴けば評価はがらりと変わるでしょう。何しろ「これが本当に同じ曲なの!?」と疑いたくなるほどアレンジが全く異なるからです。リミックスでは大仰な打ち込みドラムスとコーラスを中心に据え、冷たく機械的な雰囲気が漂っていますが、オリジナルでは生楽器を多用したシンプルなアレンジで、シンセや打ち込みはほとんど登場しません。イントロなど要所に入るギターのフレーズが印象的です(リミックスではほぼ消されている)。本来は穏やかなラヴ・バラードであることがよく分かります。終盤も、リミックスで延々と聴かされるくどい繰り返しはなく、代わりにポールのアドリブが力強く炸裂します。 私も、かねてから『Press To Play』の熱心なファンですが、このヴァージョンを聴いて心の底から感動しました。今までの何千倍もこの曲が好きになり、いまや全マッカートニー・ナンバーの中でも屈指のお気に入りになっています。
そして、12インチB面にはもう1曲、「Hanglide」が収録されていました。この曲はアルバム未収録で、シングルでしか聴くことができません。『Press To Play』でポールと本格的にタッグを組み、多くの共作曲を残したエリック・スチュワートとの共作で、セッション中唯一のインスト・ナンバー。「Stranglehold」にも似たシャッフル調のロックナンバーで、どこか映画のサントラにありそうです。ポールのインストものとしては非常に緻密に作り込まれていて、クールなギター・フレーズやパーカッションたっぷりのドラムソロなどが斬新に展開されます。 2015年に「Rainclouds」「I'll Give You A Ring」「Ode To A Koala Bear」がCD化を果たした現在において、曲自体が未CD化なのはこの曲が最古となりました。
ここに挙げたすべての音源が、いまだCD化されていません。アルバム未収録の「Hanglide」もそうですが、「Press」と「It's Not True」のオリジナル・ミックスは、『Press To Play』の再評価のためにもぜひCD化して頂きたいです。特に「It's Not True」はお勧めなので、必ずや・・・! |
Pretty Little Head(Single Version) Pretty Little Head(12" Remix) Angry(remix) 【出典】7"Single「Pretty Little Head」A面、12"Single「Pretty Little Head」A・B面 未CD化
異色のシングルカット、そして見事なまでの玉砕で知られる(苦笑)シングル「Pretty Little Head」。ここにもアルバム未収録ヴァージョンがいっぱいあります。 まず、メインの「Pretty Little Head」がシングルのためにリミックスされました。リミックスを手がけたのはラリー・アレキサンダー。「It's Not True」に続き、これも『Press To Play』収録のアルバム・ヴァージョンとアレンジが大きく異なり、「同じ曲!?」状態です。打ち込みによるリズムが軽めのビートに差し替えられ、アルバム・ヴァージョンでの重厚な雰囲気が薄まっています。曲構成も見直され、特にイントロとエンディングが短くなって4分ほどに収まっています。また、アルバム・ヴァージョンで印象的だったビブラホンやギターのフレーズが小さくなった一方、カウンターパートとなるコーラスを新たに加えています。そして何より顕著な違いは、ポールのリード・ヴォーカルが「普通の」声に戻っている点でしょう!シングルカットするにはアルバム・ヴァージョンのままではさすがに売れないという判断があったのでしょうね・・・。プロモ・ヴィデオにもこのシングル・ヴァージョンが採用されました。 難解なアルバム・ヴァージョンよりも聴きやすく、シングルの方が好きという人が圧倒的のようですが、個人的にはエスニックで神秘的な雰囲気を携えたアルバム・ヴァージョンの方がお気に入りだったりします(笑)。
これが12インチではJohn Potokerによるリミックスに差し替えられました。'80年代おなじみのロング・ヴァージョンで、7インチヴァージョンが基になっていますが(ポールのリード・ヴォーカルは「普通の」声)、アルバム・ヴァージョンでフィーチャーされていた音も随所で復活していて、シングルとアルバムの中間点と言えそうな音作りです。不気味な雰囲気とディスコ風の軽快なノリを同時に楽しめます。凝りに凝った仕掛けが散りばめられているのが面白いですが、リミックスものに耳慣れしていない人なら長くて退屈するかもしれません。
そして、12インチのB面(及び「Pretty Little Head」の代わりに日米で発売されたシングル「Stranglehold」B面)には、あの「Angry」のリミックスを収録!これもラリー・アレキサンダーによるミックス。基本的にはアルバム・ヴァージョンと同じ演奏を使用していますが、リミックスではブラス・セクションの出番が大幅アップ。これが功を奏して、元々疾走感あふれる曲がますますパワフルで凶暴になっています。その他、各楽器のバランスが再調整されていますが、アルバムでは若干スカスカ気味だったのでこちらの方が曲にぴったりだと思います。出だしのシャウトはアルバムほど本気ではないですが、スムーズな始まり方となっています。一度聴いてしまったら、アルバム・ヴァージョンが物足りなく思えてしまう、そんなリミックスです。
これら3つのリミックスは残念ながら未CD化です。「Pretty Little Head」「Angry」のリミックスはファンの間で結構人気が高いと思うのですが・・・。 |
Only Love Remains(Single Version) Tough On A Tightrope(12" Remix) Talk More Talk(remix) 【出典】12"Single「Only Love Remains」A・B面 未CD化
アルバム『Press To Play』からのシングルには未CD化のリミックスがかなり残っていますが、英国での第3弾シングル「Only Love Remains」にも3曲の未CD化ヴァージョンがあります。 「Only Love Remains」はシングルカットのためのリミックスで、7インチ・12インチ共にジム・ボイヤーによるものが収録されました。ベーシック・トラックはアルバム・ヴァージョンと同じですが、アルバムにはないシンセとパーカッション、そして極め付きにサックスを(かなり派手に)フィーチャーしています。また、第1節後にコーラスが追加されています。このシングル・ヴァージョンの方が心なしか暖かみがあり、こちらを推すファンも多いです。私にとっては大好きで大好きでたまらない曲なのですが、どちらのヴァージョンも素晴らしくて選べません(汗)。 なお、マニアの方ならご存知ですが、ポールが「ロイヤル・ヴァラエティ・ショー」(1986年11月24日)で演奏した時は、このシングル・ヴァージョンのアレンジが採用されています。プロモ・ヴィデオでもシングル・ヴァージョンが使用されました。
7インチB面だった「Tough On A Tightrope」は、12インチではジュリアン・メンデルソンによるリミックスに差し替えられました。オリジナルと比べてアコギとストリングスをメインに据えたミックスで、イントロはアコギのストロークと(オリジナルではエンディングで入る)コーラスが徐々にフェードインしてくるものに変更されています。また、リミックスの王道らしく第2節のヴォーカルがほとんどカットされていたり、後半に長い長いドラムソロを設けたりしていて、全体で7分ほどの長さに引き伸ばされています。エンディングはフェードアウトしません。この曲も私の大好きで大好きでたまらない曲なのですが、このリミックスに限ってはちょっと退屈に感じられます。そもそも、これはリミックスの対象にすべきでなかったのでは?と思っています。
12インチにはもう1曲、「Talk More Talk」のリミックスが収録されています。こちらは、なんとポール本人によるリミックスです!(厳密にはジョン・ジェイコブスとの共同作業)このリミックスは何と言ってもイントロに尽きるでしょう。胡散臭さたっぷりの始まり方はアルバム・ヴァージョンの100倍もいいです。「モモー、モモモー」ですから(笑)。本編では主にビートやヴォーカル(コーラスの有無)をいじっている他、間奏のギター・ソロが長くなっています(さらに途中の1節分がカットされて短い)。エンディングはドラムソロをバックに語りの部分をめちゃくちゃに切り貼りしているのが笑えます。この曲の雰囲気にぴったりな、バカげたリミックスです。
すべて未CD化の憂き目に遭っていますが、中でも「Only Love Remains」のリミックスを容易に聴くことができないのは惜しい所です。 |