Paul McCartney/ポール・マッカートニー
Memory Almost Full/追憶の彼方に
 1.Dance Tonight  ダンス・トゥナイト 2'54"
 2.Ever Present Past  エヴァー・プレゼント・パスト  2'56"
 3.See Your Sunshine  シー・ユア・サンシャイン  3'20"
 4.Only Mama Knows  オンリー・ママ・ノウズ  4'17"
 5.You Tell Me  ユー・テル・ミー  3'15"
 6.Mr Bellamy  ミスター・ベラミー  3'39"
 7.Gratitude  グラティチュード  3'19"
 8.Vintage Clothes  ヴィンテージ・クローズ  2'22"
 9.That Was Me  ザット・ワズ・ミー  2'38"
10.Feet In The Clouds  フィート・イン・ザ・クラウズ  3'23"
11.House Of Wax  ハウス・オブ・ワックス  4'59"
12.The End Of The End  エンド・オブ・ジ・エンド  2'57"
13.Nod Your Head  ノド・ユア・ヘッド  1'58"
〜日本盤のみボーナス・トラック〜
14.Why So Blue  ホワイ・ソー・ブルー
発売年月日:2007年6月4日(英国) UCCO-3001(日本・Hear Music)
全体収録時間:
「追憶の彼方に」

 アルバム「裏庭の混沌と創造」発売後、全米ツアーを敢行したポール。その後は、しばらく目立った音楽活動のニュースはありませんでした。一方、2002年に再婚したヘザーとの間に不和が生じ2人は別居、ここに泥沼の離婚騒動が繰り広げられることとなりました。2人の間に生まれた子供の親権や慰謝料などが裁判で争われ、音楽活動以外の面でクローズアップされてしまうことの多かった時期となりました。

 そんな中制作が始まったのがこのアルバムです。このアルバムでは、前作のナイジェル・ゴドリッチに代わってデヴィッド・カーンをプロデューサーに迎えました。カーンがポールのアルバムを手がけるのは「ドライヴィング・レイン」に次いで2度目。しかしながら、「ドライヴィング・レイン」が後にバンドを形成するメンバーとのセッションが中心だったのに対して、このアルバムでは基本的にはポールがすべての楽器を演奏するソロ・レコーディングで行われ、前作の演奏スタイルを踏襲する形となりました。一方、一部楽曲ではポールのツアー・バンドとして定着した気心の知れたメンバーたちと共にレコーディングを行っています。こうして完成したアルバムは、前作からあまり間を空けずに発表されることとなりますが、これを機にポールは古巣のEMIを離れ、スターバックス系列のヒア・ミュージックに移籍しました。このアルバムは、新たなレーベルに移籍し、心機一転で臨んだ最初のアルバムとなりました。アルバムはCD店の他にスターバックスの店頭でも販売され話題を呼びました。また、前作に引き続き日本盤のみ1曲がボーナス・トラックとして収録されています。また、後にアルバムの限定盤も発売され、未発表曲やインタビューが追加収録されました。

 このアルバムは、前作と同様ポールのソロ・レコーディングを基本としていますが、前作がそれを受けておとなしめの作風に仕上がったのに対して、このアルバムではアップテンポの楽曲も随所に盛り込まれています。これが、前作の弱点であった地味さ・物足りなさを打ち消し、現役感あふれる明るいポップ・アルバムにさせています。バンドのメンバーと録音した曲も含め、1113とエネルギッシュで若々しい作品が並びます。一方で、前作の流れを受けた歳相応の穏やかで枯れた味わいを見せる1012といった楽曲も入り、アルバムにほどよい緩急を与えています。また、「ドライヴィング・レイン」ではモノトーンの音作りが不評でしたが、このアルバムでは各曲ごとに個性的なカラーが出ており、カーンのプロデュースは前回の失敗点を克服しているといえるでしょう。また、アルバム後半は小曲をメドレー形式に仕上げています。かつての「アビー・ロード・メドレー」を意識したと思われますが、そこまでは及ばないものの、小曲を上手に聴かせるポールのアレンジャーとしての力量を感じさせます。詞作面では、タイトル「追憶の彼方に(Memory Almost Full)」に象徴されるように、12と自らの過去を振り返るような内容が増えてきているのに注目。特に12はこれまでのポールの音楽活動の集大成とも言える作品です。

 このアルバムは、「ドライヴィング・レイン」と「裏庭の混沌と創造」それぞれの長所をうまく引き出した作品と言えるでしょう。前者は若々しさあふれるバンド・サウンド、後者はソロ・レコーディングによる歳相応の穏やかな作風。レーベルを移籍したということもあってか、このアルバムには近年のポールでは最も現役感が詰まっていると思います。シングルになったはもちろん、エネルギッシュなロック・チューンや後半のメドレーなど、ポールらしい親しみやすい楽曲がいっぱいあります。聴き始めの初心者の方にも十分お勧めできます。今なお現在進行形で音楽活動にまい進するポールの魅力を余すことなく堪能してください。ちなみに私の好きな曲は1013です。

 アルバム発売後、アルバムの宣伝を兼ねて様々なライヴ活動を繰り広げたポール。離婚騒動のいざこざも蹴りがつき、各国で一夜限りのコンサートを開くなどいよいよ音楽活動を加熱させていったポールでした。そして、まだまだポールの音楽史は続いてゆくのでした・・・。

 アルバム『追憶の彼方に』発売10周年記念!収録曲+aを管理人が全曲対訳!!


 1.ダンス・トゥナイト・・・米国以外でのシングルカット第1弾。レーベル移籍後最初のシングルでもあるというのに、意外にもヒット性のないアコースティックで牧歌的な曲。「ワイルド・ライフ」の頃の楽曲の雰囲気(特に『ビップ・ボップ』)がします。うたい文句は「シンプルな中にも大人の深みを感じさせるオーガニック・サウンド」(笑)。

 2.エヴァー・プレゼント・パスト・・・米国ではこの曲がシングル第1弾。こっちは売れ線のキャッチーなポップでポール節が炸裂!!『プレス』のポップさをもっと分かりやすく弾けさせた感じ。アルバム中私の一番のお気に入りです。

 3.シー・ユア・サンシャイン・・・イントロのコーラスが印象的なミドルテンポの曲。特筆すべき点があまりないのですが、うねるようなベースが密かに光っています。

 4.オンリー・ママ・ノウズ・・・暗い雰囲気のストリングスから一転して8ビートのハードロックに変貌する曲。ツアーバンドとの演奏がかっこいい。64歳と思わせないポールの溌剌としたヴォーカルが聴き所!

 5.ユー・テル・ミー・・・不気味なイントロとカウントから始まる、枯れた味わいのバラード。「裏庭の混沌と創造」と「フレイミング・パイ」を混ぜたような雰囲気。

 6.ミスター・ベラミー・・・様々なアレンジのパートから成る変てこな雰囲気の曲。低音ヴォーカルのポールが非常に珍しい。変てこだけどどこか気になる曲。

 7.グラティチュード・・・3拍子のピアノワルツ。冒頭こそ斬新だが、それ以外はむしろ昔のポールを思わせる。『オー!ダーリン』『コール・ミー・バック・アゲイン』共々、ポールのシャウトに注目!!間奏のブラスはいかにもキーボードですが(苦笑)。

 8.ヴィンテージ・クローズ・・・ここから『エンド・オブ・ジ・エンド』まではメドレー構成。メドレーの冒頭はポップな小曲。なんとなくジョージ・ハリスンの書きそうな雰囲気でもある。

 9.ザット・ワズ・ミー・・・オールド・ロックンロールを下敷きにしたような曲。少しラップ調のヴォーカルが面白い。後半で1オクターブ高く歌うのはポールがよく使うアレンジの手法。

 10.フィート・イン・ザ・クラウズ・・・ポールらしいちょっとした佳曲。初期ウイングスの未発表曲にありそうな雰囲気。コーラスがリンダさんだったらもっとそう感じるかも。

 11.ハウス・オブ・ワックス・・・雷鳴もフィーチャーした、荒々しさすら感じる少し大仰なピアノバラード。ポールがシャウトしまくっています。余談ですが、3'30"前後のリズムチェンジとシャウトが、オフコースの『愛よりも』を思わせてシリアスなのに笑ってしまいます(苦笑)。

 12.エンド・オブ・ジ・エンド・・・実質的にアルバムを締めくくる、ピアノバラード。これは将来多くの人に聴き継がれるであろう、まさしく名曲に値する曲です!「終わりの終わり」と題され、これまでの過去を振り返った歌詞も非常に感動を誘います。ポールの音楽活動の終わりを歌っているかのようで気になります・・・。

 13.ノド・ユア・ヘッド・・・感動的なバラードですんなり終わらないのがポール流。最後は『スパイズ・ライク・アス』のように大仰なブラスをフィーチャーしたファンキーなこの曲で終了。

 14.ホワイ・ソー・ブルー・・・日本盤のみ収録されたボーナス・トラック(限定盤では日英米共に収録されている)。ぼそぼそっと歌うハーフ・スポークンのスタイルから、一気にせつなげなスタイルに変わるのが感動的なバラード。こういうのを隠れた名曲と言うんですね。

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