Paul McCartney/ポール・マッカートニー
Driving Rain/ドライヴィング・レイン
 1.Lonely Road  ロンリー・ロード  3'16"
 2.From A Lover To A Friend  フロム・ア・ラヴァー・トゥ・ア・フレンド   3'48"
 3.She's Given Up Talking  シーズ・ギヴン・アップ・トーキング  4'57"
 4.Driving Rain  ドライヴィング・レイン  3'26"
 5.I Do  アイ・ドゥ  2'56"
 6.Tiny Bubble  タイニー・バブル  4'21"
 7.Magic  マジック  3'58"
 8.Your Way  ユア・ウェイ  2'55"
 9.Spinning On An Axis  スピニング・オン・アン・アクシス  5'16"
10.About You  アバウト・ユー  2'54"
11.Heather  愛するヘザー  3'25"
12.Back In The Sunshine Again  バック・イン・ザ・サンシャイン・アゲイン  4'21"
13.Your Loving Flame  ユア・ラヴィング・フレーム  3'43"
14.Riding Into Jaipur  ジャイプールへの旅  4'07"
15.Rinse The Raindrops  雨粒を洗い流して  10'08"
16.Freedom  フリーダム  3'33"
発売年月日:2001年11月12日(英国) TOCP-65870(日本・東芝EMI)
全体収録時間:67'19"
「ドライヴィング・レイン」

 1997年にアルバム「フレイミング・パイ」をリリースし再び注目を浴びたポールですが、悲しい出来事が起きます。乳がんに冒された愛妻リンダが、一時の快方もむなしく1998年4月17日に亡くなったのです。病気が悪化した頃からリンダの看病につきっきりだったポールは、その後1年間は深い悲しみのうちに過ごします。やがてなんとか立ち直ったポールは、1999年にそれまでのリンダの曲を集めた「ワイド・プレイリー」と、リンダが望んでいたロックンロールのオールディーズを集めた「ラン・デヴィル・ラン」の2枚のアルバムをリリースしました。そして2000年初頭、ポールが25歳年下の元モデルのヘザー・ミルズと交際していることが報じられました。この時ポールは「いい友達だ」としかコメントしていませんが、ヘザーがポールにとって新しいパートナーになったことは間違いなく、2002年6月11日にポールとヘザーは結婚しました。このように世紀の節目を挟んで、ポールにはリンダの死とヘザーとの出会いという大きな転換点が訪れていたのです。またビートルズのベスト盤「1」(2000年)やウイングスのベスト盤「ウイングスパン」(2001年)といった風に過去の音楽活動も大きな節目を迎えました。

 そしてこのアルバムですが、2001年の2月と6月に集中的にレコーディングが行われました。全部でたった5週間で完成させてしまっているのは、初期ビートルズ時代のレコーディング方法を見直したことに由来しています。プロデューサーはデヴィッド・カーン。それまでのポールの人脈からは考えられない人選です。ミュージシャンもすべて若手のアメリカ人と、こちらも奇抜でした。セッション中に録音された曲からアルバムには15曲が収録されました。さらにアメリカで起きた同時多発テロを受けて書いた新曲『フリーダム』が急遽付け加えられ、16曲入りでその年の11月にリリースされました。ジャケットはじめ、アルバムブックレットの写真はポールがデジカメで撮ったもの。ポールのセンスのなさの表れなのか・・・?(苦笑)

 収録曲は、全体的にロック色の強いものとなっています。これまでのアルバムでたとえると「プレス・トゥ・プレイ」の系譜でしょうか。ただし、そちらが'80年代ポップの打ち込み系アレンジだったのに対し、こちらは最近の洋楽シーンを意識したような味付けがなされています。そのため、最新テクノロジーによる無機質なアレンジが普段のポールの作風とは違っていますが、そんな中にも今までのポールの曲にありそうなメロディアスな曲や味わい深いバラードもあります。さらに息子ジェームズとの共作が2曲(12)収録されています。詞作面ではヘザーを歌ったものあり、リンダを歌ったものありと興味深いものがあります。

 このアルバム、発売当初はワールドツアー(3度目の来日公演も含む)の話題性も伴って注目を浴びていましたが、現在では「裏庭の混沌と創造」(2005年)や「追憶の彼方に」(2007年)の登場もあり、目立たないアルバム、ましては酷評を浴びるアルバムとなってしまいました。その理由として、このアルバムの収録曲はポールらしくないアレンジがされていることが挙げられます。ここまでは「プレス・トゥ・プレイ」の酷評と同じですが、さらにこのアルバムは似たようなアレンジと似たような曲が集まってしまったことで各曲が没個性的となっています。曲それぞれのインパクトがない割に曲数が多いため、聴いていてだらけてしまう可能性もあります。バラード系の楽曲でも、のように変てこなアレンジでコケてしまった例もあり、強くお勧めできないのが実情です(汗)。最近のポールの曲を聴きたいのなら「裏庭の混沌と創造」か「追憶の彼方に」または「フレイミング・パイ」をお勧めします。

 しかし、これだけは言えます。このアルバムを聴いていると、音楽活動を始めて何十年も経つポールが、まだまだ現役感覚で音楽を作り演奏することを楽しんでいることが伝わってきます。現にポールはアルバムリリースの翌年の2002年からワールドツアーを行い、日本にも来ました。そして欧米ツアー(2004年)・ライヴ8(2005年)などポールがまだまだ現役であることを証明する活動が続いています。そうしたポールの姿勢を踏まえ、次作「裏庭の混沌と創造」が生まれたのです。特に、ロックヴォーカリストとしての貫禄を見せ付けた15や、そこにポールのポップセンスが融合したはお勧めです。このアルバムの曲では私は1115が好きです。

 アルバム「ドライヴィング・レイン」発売10周年記念!収録曲+aを管理人が全曲対訳!!


 1.ロンリー・ロード・・・2002年1月にインドのゴアに行った時書いた曲。2002年のワールド・ツアーで演奏された。聴き所はポールのシャウト風ヴォーカル。

 2.フロム・ア・ラヴァー・トゥ・ア・フレンド・・・このアルバムにしてはポールらしいバラードで、リンゴ・スターが気に入ったためシングルカットもされた(全くヒットせず)。ただ、コーラス含めアレンジが変てこなため、あまりポール・ファンには訴求しないかも・・・。個人的には苦手な曲(笑)。

 3.シーズ・ギヴン・アップ・トーキング・・・最近のミュージック・シーンを意識したような奇妙なアレンジのヘヴィーな曲。歌詞はポールの友達の娘について歌ったもの。最後の"don't say a word"の繰り返しが間抜けた感じで笑えます。

 4.ドライヴィング・レイン・・・ポールのロックヴォーカルを堪能できる軽快なポップ・ロックチューン。ヘザーとドライヴに行ったときのことを歌った曲で、爽快なメロディがドライヴにぴったり。ただ、個人的にはもうちょっとはっきりしたアレンジをしてくれたらよかったなぁ・・・と。2002年のワールド・ツアーで演奏された。これをシングルカットすべきだった!

 5.アイ・ドゥ・・・ポールらしい美しいメロディのバラードで、オーケストラはサンプリングを使っている。第2節からはお得意の転調。

 6.タイニー・バブル・・・これも最近のミュージック・シーンを意識したか?最後のエフェクトは本当に「バブル」ぽくなっています。

 7.マジック・・・ポールが1967年に初めてリンダと出会ったときのことを歌った曲。アウトロのフィドルを絡めたドラムソロが斬新で印象的。

 8.ユア・ウェイ・・・ジャマイカで書かれた曲で、初期ウイングスを思わせるカントリー・スタイルの曲。素直に楽しいです。ここでも第2節からは転調。

 9.スピニング・オン・アン・アクシス・・・長男ジェームズとの初の共作。そのためポールの曲には見られない音楽要素が見られる。個人的には非常に退屈します(笑)。

 10.アバウト・ユー・・・リンダについて歌ったハードなロックンロール。ちなみにポールの曲をアルファベット順に並べるとこの曲が先頭に来ます。

 11.愛するヘザー・・・タイトルは、自宅のピアノでこの曲を弾いていたらヘザーが「いい曲ね。ビートルズの曲?」と尋ねたことから。華麗なメロディを持つ曲で、ずっとインストが続き、終わりで少しだけヴォーカルが登場するというユニークな構成。私の好きな曲。しかし、ヘザーと離婚した今となっては永遠に封印される運命か・・・!?

 12.バック・イン・ザ・サンシャイン・アゲイン・・・これも息子ジェームズとの共作。ブルース調だ。作曲時期はこのアルバムより少し前のため、リンダのことを歌ったと思われる。

 13.ユア・ラヴィング・フレーム・・・ニューヨークのカーライル・ホテルの36階のスイート・ルームで書いたバラード。2002年のワールド・ツアーで演奏された。ポールらしいピアノバラードだが、スタンダードにはならず。

 14.ジャイプールへの旅・・・ポールとしては珍しくインド風の曲。あくまでインド「もどき」ですけど。ビートルズにインド音楽を持ち込んだのはジョージ・ハリスンだが、彼はこのアルバムの発売直後の11月29日に亡くなっている。

 15.雨粒を洗い流して・・・『西暦1985年』(「バンド・オン・ザ・ラン」収録)・『モース・ムースとグレイ・グース』(「ロンドン・タウン」収録)に続き、アルバムの最後をハードに締めくくる長い曲で、演奏時間は実に10分。ジャム・セッションで演奏されたものを編集したもので、もとは30分もあった。アルバム中私が一番好きな曲で、冒頭のギターの演奏と、七変化してゆくシャウトが印象に残ります。

 16.フリーダム・・・2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロの直後にポールが作った、自由を求める曲。10月20日のチャリティ・イベント「The Concert For New York」で初めて披露された。このアルバムに収録されているのはそのスタジオ・ミックスで、スタジオ録音に先述のイベントでの手拍子・拍手を重ねたもの。アルバムには急遽収録された。エリック・クラプトンがギターで参加している。

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