ディスコグラフィ 〜鈴木康博・ベスト盤〜
ニュー・ベストナウ
(1987年発売・東芝EMI)
1.Hello Again 2.愛をよろしく 3.瑠璃色の夜明け 4.夏の日の午后 5.SO LONG 6.素敵にシンデレラ・コンプレックス
7.帰らないで 8.SEASON OFF 9.微笑のうしろに 10.エレガントプログラム 11.ある晴れた日に 12.City Woman
13.東京っていう街で 14.Together
1987年にレコード会社の東芝EMI(エキスプレス・レーベル)から発売された編集盤「ベストナウ」シリーズの1つ。この企画ではアリスやチューリップなどもベスト盤を発売しています。レコード会社が独断で選曲・発売したもので、Yassさん(鈴木康博)本人はノータッチですが、一応これがYassさん初のベスト盤となります。収録されたのはソロデビュー作『Sincerely』から1986年の『SING MODE』までの14曲。
曲をアルバム別に見てみると、『Sincerely』から4曲・『Hello Again』から2曲・『Long Slow Distance』から3曲・『SING MODE』から3曲・そしてシングルから2曲選ばれています。名曲の多い『Hello Again』から実質1曲という点が気になりますが、それ以外はヒット曲・人気曲を中心に無難な選曲をしています。
このベスト盤は、レコード会社の企画ものであり、その後ベスト盤が相次いで出ていることから、現在では当然のように廃盤で入手困難です。しかし、Yassさんの意思は反映されていないものの、ヒット曲を中心とした選曲は初心者にとってはYassワールドに入りやすく第一歩としてはよいと思います。Yassさんのソロ活動でも特に華々しかった時期を堪能できる1枚です。驚くべきことに、Yassさん自らが選曲したベスト盤『Anthology 1983-1988』と曲の重複が6曲しかないので、そちらとあわせて聴くとより深く堪能できます。
また、マニアにとっても欠かせないマスト・アイテムです。というのも、この時期のアルバムは現在廃盤で、特に最初期3枚はCDでは入手困難であるため、本作は貴重な音源が聴けるアルバムでもあるからです。(1)(3)の2曲は他のベスト盤に収録されておらず大変重宝します。シングルのみの発売だった(9)も、11枚組ボックスセット「Yass Box」には収録されていますが、これまた貴重な音源。
そして、なんといっても特筆すべきなのが、郷ひろみに提供して大ヒットとなった(6)のオリジナル・ヴァージョンをCDで聴ける唯一のアルバムということです!Yassさんによるオリジナル版はシングル「Starlight Serenade」のB面のみで発表され、他のベスト盤にも未収録、シングルもCD化されていないので、ここでしか聴くことができない音源なのです!!(ベスト盤『AfTER』にはリメイクを収録。)この1曲のためだけにも、このアルバムは買って損はないです!
最後に、ジャケットに使用された赤セーターのYassさんの写真、後年本人が「はずかしい」とコメントしていました(爆)。
Anthology 1983-1988
(1991年12月18日発売・東芝EMI)
1.愛をよろしく 2.夏の日の午后 3.帰らないで 4.雨がノックしてる 5.SO LONG 6.もう一度 愛を 7.去りゆく日々よ
8.ある晴れた日に 9.Long Slow Distance 10.エレガント プログラム 11.MOONLIGHT SERENADE 12.Good Bye 昭和
13.遥かなる願い 14.時代(とき)を越えて 15.君について 16.おやすみマイ・ラブ
1991年に発売されたYassさんのベスト盤。『ニュー・ベストナウ』の発売はありましたが、Yassさん自ら選曲したという基準でいえばこれが初めてのベスト盤、ということになります。1991年には新作『Acoustic』が発売されていますが、ここではあえて『A MERRY LITTLE CHRISTMAS』が発売された1988年までを収録範囲とし、ソロデビューから1988年までの7枚のアルバムから16曲を選んでいます。
各アルバムからは1〜3曲が選曲されていますが、なぜか『SING MODE』(1986年)のみ1曲も収録されていないのが面白いところ(ジャケットにこのアルバムのジャケットも映っているのにもかかわらず)。また、『ニュー・ベストナウ』に比べてヒット曲が少なく、シングル曲も3曲しか収録されていません。Yassさんいわく「あえてヒット曲を選ばない手法をとった」と語っていますが、「City Woman」「Together」といったおなじみの楽曲がない反面、「もう一度 愛を」「Long Slow Distance」「Good Bye 昭和」といった日の当たることのないアルバムナンバーが盛りだくさんです。
ヒット曲が少ないため、そういう方向性のベスト盤を期待している人にとっては期待はずれになってしまうでしょうが、玄人好みの選曲のためただの「シングル寄せ集め」的なベスト盤とは一線を画しています。ヒットしたかどうかにかかわらず、Yassさんが本当によいと思った楽曲が詰まっているので、彼の本質的な魅力を堪能することができます。(ヒット曲は重複の少ない『ニュー・ベストナウ』で補うことをお勧めします。)(2)(4)(8)(13)といったファンに人気の楽曲も一通り押さえているので、Yassさんのライヴの予習としてもどうぞ。
このアルバムを聴いていると、ソロデビューしてからのYassさんの音楽の変遷が分かりやすくたどられていることに気づきます。オフコースの香りを残した最初期から、打ち込みサウンドを多用した時期を経て、アコースティックサウンドに戻ってゆく様子をこれ1枚で知ることができます。Yassソロの第一歩として、もっとも勧められるベスト盤かもしれません。ただ、欲を言えばもう少しヒット曲多めに・・・最低限『SING MODE』から1曲は入れてほしかったです(特にベスト盤未収録の「エンドレス・サマー」!)。
AfTER
(2004年11月17日発売・東芝EMI)
1.愛をよろしく 2.入り江 3.SO LONG 4.素敵にシンデレラ・コンプレックス 5.City Woman 6.DAYDREAM BELIEVER
7.TOGETHER 8.おやすみマイ・ラブ 9.サンクチュアリー 10.あなたに明日を 11.燃ゆる心あるかぎり
12.最後の約束 13.Dream Dream Dream 14.君を想うとき
13年ぶりとなるYassさんのベスト盤。Yassさんは自らのレーベル・Double Neck Recordsに所属していますが、このベスト盤は古巣の東芝EMIから発売されています。といっても、このベスト盤にはYassさんのソロにおけるオール・キャリアから、『Sincerely』(1983年)から『ダレか胃薬クレ。』(2002年)まで、レーベルを越えて選曲されています。
このアルバムにはYassさん自らが選び抜いた14曲が収録されていて、歌詞カードには本人によるコメントも掲載されています。Yassさんのその時々の思い出が語られていて、数あるYassさんの楽曲の中でも特に思い入れが強いことを感じさせます。また、ほぼ全曲が発表された当時のオリジナル音源で収録されているのもうれしいところ((4)のみ、『Reborn』のリメイクを収録)。今では入手困難な(2)(6)(11)といった楽曲も入っています。シングル曲が10曲と有名どころが中心ですが、ファンに大人気のアルバムナンバー(2)も収録されました。
しかしながら、約20年に及ぶYassさんのソロ活動(オリジナルアルバムのみでも12枚)を1枚に集めるとなると難しいもので、Yassさんの「代表曲」しか収められていないのも事実。1曲も選ばれていないオリジナルアルバムが3枚もあるなど、網羅できていない所があります。また、「夏の日の午后」「ある晴れた日に」「エンドレス・サマー」「遥かなる願い」「挽歌」といったファンに大人気のアルバムナンバーも収録されていません。せめて2枚組であれば、こうした楽曲も網羅できたかもしれません・・・。
こうした理由から、このベスト盤はYassさんのソロ活動を知る「ほんの第一歩」にしか過ぎないのです。20年の歴史を1枚に集めろというのも酷な話なのですが、残念ながらこれ1枚でソロのYassさんを知ることはできません。多少入手に苦労しても、ベスト盤『Anthology 1983-1988』を持っているといいでしょう。あとは、リメイク版の収録ですが『Reborn』は人気のアルバムナンバーがいっぱいです。これから聴く初心者の皆さんには、『Anthology 1983-1988』と『ニュー・ベストナウ』をお勧めします。
といっても、ファンに大人気の(2)のオリジナル音源は現在ここでしか聴けないので、このアルバムもマスト・アイテムになるのですが・・・(苦笑)。