パレードは行ってしまった
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演奏者 吉田美和:ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル
デイヴィッド・T・ウォーカー:ギター チャック・レイニー:ベース
ハーヴィー・メイソン:ドラムス ジェイ・ワインディング:キーボード
グレッグ・アダムス:トランペット
ライヴ履歴 1996年「beauty and harmony」
1995年の美和さんのソロ・アルバム「beauty and harmony」に収録された曲。美和さんのソロ・ナンバーはすべて美和さんが作曲していますが、この曲ではまささんが一部を手伝っています。暗い雰囲気のスイングジャズで、変拍子を多く盛り込んでいます。グレッグ・アダムスの吹くミュート・トランペットが渋い味を出しています。曲は途中で転調します。そのため、前半と後半ではキーが違っています。
歌詞は、同年夏に行われたDWL'95について歌ったもの。ブックレットにも「この歌をDWLに捧げます。」と明記されています。DWL(ドリカム・ワンダーランド)は、1991年以降4年に1度開催されている「史上最強の移動遊園地」と称されたコンサート・ツアーのことで、ファンからのリクエストによって選ばれるベスト盤的選曲のセットリストと、豪華なミュージシャン、ダイナミックな演出・パフォーマンスがファンのみならず多くの人に注目されています。'95年のDWLは、ドリカムが全国的に知られるようになって初めてのDWLで、埋立地など全国5ヶ所を舞台に全10公演行われました。パフォーマーのダンスや終盤の花火など、後のDWLに欠かせない要素が初登場しました。美和さんは、そんな夏の思い出をめぐらせながらこの曲を書いたのです。
歌詞は詩のような硬い表現を使っていますが、よく読解するとDWLのことを歌っていることが分かります。「しずかの海 はれの海」は、月にある地名のことです。つまり歌詞は、月が長月(9月)の夜のライヴ会場に昇っていることを意味し、北海道公演(9月9〜10日)のことを歌っている裏づけになります。「金属製の巨大な白い屋根持つ蜘蛛の巣」とは、DWL'95のステージとなった「ドリーム・キャッチャー」のこと。会場となった埋立地に突如設営されライヴが終わるとなくなる、という不思議な建造物(!?)でした。「叫び声も歌声も」は、もちろんファンの歓声のこと。「大輪の菊」は、『あの夏の花火』の演奏時に打ち上げられた無数の花火のこと。ハイライトのひとつでした。そして「パレードのバス」は、ドリカムたちが会場を後にするときに乗ったバスのこと。ファンとお互い手を振って別れを惜しむ様子が、「さらさらと手を振る」と表現されています。そしてタイトルは「パレードは行ってしまった」。過ぎ去っていったDWLの思い出を、懐かしむようなタイトルです。
この曲のミュージック・ヴィデオが、歌詞の題材となったDWL'95の模様を収録したDVDに収録されています。「FEATURE」の部の「SPECIAL」に収録されていて、DWL'95の概説・この曲の説明が最初についています。本編はDWL'95の映像だけで構成されていて、ハイライト的な感じもあります。DWL'95を実際に生で体験した方にとっては懐かしいものでしょう。美和さんの表情からとてもうれしい様子が伝わってきてこちらもうれしくなってきます。後半のドリカムたちと観客たちが手を振り合って別れを惜しむ場面は感動的です。賑やかで楽しいDWLの映像と、暗く渋い曲が絶妙にマッチしています。
私はこの曲は結構好きな方です。暗くて渋い感じがたまりません。変拍子を難なくこなすハーヴィー・メイソンのドラミングには目を見張るものがあります。美和さんのヴォーカルも渋い感があって味わい深いです。転調するのも効果的ですね。DWLに対する美和さんの思い入れが伝わってくる歌詞も、ドリカムファンにとっては特別なものがあります。直接的に歌わず、詩の形式にしてしまうのも美和さんらしいです。言葉の選び方にセンスのよさを感じますね。