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この2枚組アルバム「夢の翼〜ヒッツ・アンド・ヒストリー〜」(以下「ウイングスパン」)は、ポールがビートルズ解散後に結成したバンド、ウイングス(1971〜1981)の歴史を、2001年に貴重な映像やインタビューを中心にまとめたTVドキュメンタリー番組「Wingspan」(米ABC)にあわせて発売されたもので、ベスト盤的な要素が強く一般的にベスト盤として扱われています。
このベスト盤には1971年のポールの家族による未発表音源で、今回のドキュメンタリーで陽の目を見た曲が1曲収録されています。またブックレットでは結成から解散までメンバーチェンジの激しかったウイングスの、その時々のメンバーの写真を見ることができます(上写真は絶頂期ウイングスのメンバー、左からジミー・マッカロク、ポール、妻リンダ、ジョー・イングリッシュ、デニー・レイン)。さらに日本版には日本でのみシングルカットされた『イート・アット・ホーム』が特別ボーナス・トラックとして収録されています。また、日本版には歌詞、解説やディスコグラフィもついているので、日本版を買うのがベストですが、残念ながら現在日本版は大変入手困難です。
41曲ある収録曲を見てみましょう。すべてポール自身による選曲です。ウイングスを焦点にしたドキュメンタリーに併せての発売となるベスト盤なのに、なぜかウイングス期以外のポールのソロナンバーも多く収録されています。また収録範囲も'84年のアルバム「ヤァ!ブロード・ストリート」までで、「プレス・トゥ・プレイ」以降4アルバムの曲が収録されていないなど中途半端な選曲となっています。ウイングスの曲は22曲(「ウイングス・ワイルド・ライフ」1曲、「レッド・ローズ・スピードウェイ」1曲、「バンド・オン・ザ・ラン」4曲、「ヴィーナス・アンド・マース」3曲、「スピード・オブ・サウンド」2曲、「ロンドン・タウン」2曲、「バック・トゥ・ジ・エッグ」1曲、シングル8曲)、それ以外のポールのソロ曲は18曲(「マッカートニー」5曲、「ラム」5曲、「マッカートニーII」2曲、「タッグ・オブ・ウォー」2曲、「パイプス・オブ・ピース」1曲、「ヤァ!ブロード・ストリート」2曲、シングル1曲)です。収録曲はすべて24ビット・デジタル・リマスタリングされていて、音質がはるかに向上しています。
2枚組のうちCD-1はHITSと呼ばれ、ほぼ全曲が英米どちらかのチャートで10位以内に入ったヒット曲です。全曲それまでのベスト盤に収録されていた曲(ボーナス・トラックを除く)であり、新鮮味には欠けますがウイングス及びポールがどれだけヒット曲を書いたかがよく分かる構成ではあります。「オール・ザ・ベスト」で収録もれになっていた『ハイ・ハイ・ハイ』が収録されているのはうれしいところ。また『ジュニアズ・ファーム』『ウィズ・ア・リトル・ラック』はショート・ヴァージョン。うち前者はこのCDで初リリースのヴァージョンです。あと政治的な歌詞の『アイルランドに平和を』も収録予定でしたが、リリース直前に北アイルランド過激派によるテロが起きたことへの配慮によりオミットされています。CD-2はHISTORYと呼ばれ、ポールがウイングスの歴史上重要だと思った曲を収録しています。しかし非ウイングスの曲が半分以上を占めています。とりわけ当時酷評だったリンダとの共同アルバム「マッカートニー」「ラム」からの選曲が多く、どれほどリンダがポールにとって力になっていたかが分かります。また5曲がCD初リリースのヴァージョンです。
ここまで「ウイングスパン」の長所を書いてきました。しかしそれまでのポールのベスト盤がそうであるように、このベスト盤にも欠点がけっこう多くあります。まずは収録曲。全曲がウイングスの曲でないのでコンセプトが薄れています。さらに時代範囲からもれているアルバムも多いため、このアルバムでポールの全キャリアを網羅したとはいえません。またHITSではスティービー・ワンダーやマイケル・ジャクソンとの共演曲がもれているのが痛いです。一方HISTORYはマニアックな曲が多いので初心者はポールの軌跡を知っていないとついていけなくなるおそれがあります。また、純粋に佳曲と呼べる曲が収録もれになっている例が多いので注意が必要です。さらに、日本版についている歌詞は結構間違いが多いです(特に『ジュニアズ・ファーム』『アンクル・アルバート』)ので過信はしないよう。このことから、私はあまり初心者にはこのベスト盤をお勧めしません。しかし、ポールの音楽にはまる、という保証がある人は買っても差し支えないでしょう。ただし、すぐにこのベスト盤だけでは満足できなくなります。また個人的には一部の曲で邦題が消えたのがとても残念です。確かに変な邦題もありますが、それらもポールと一緒に駆けてきた「歴史」であり、当時をしのぶために必要だと思います。邦題には邦題ならではの暖かみがあるのですから。
たぶんポールはベスト盤を編集するセンスに欠けているんだと思います。いや、自分の音楽活動に専念しすぎて編集するのが苦手になっているんです。'87年のベスト盤「オール・ザ・ベスト」の時もそうでした。ポールは何年も前に未発表音源を集めたウイングスのボックス・セットをリリースすると宣言していますが、現在の所それは実現していません。ポールのこの性格からして実現するのはまだまだ先になりそうですが、とても期待したいと思います。
CD-1 HITS
1.リッスン・トゥ・ホワット・ザ・マン・セッド(1975年、ウイングス)・・・当時の邦題は「あの娘におせっかい」。絶頂期のウイングスのアルバム「ヴィーナス・アンド・マース」収録の大人気のポップ・ソング。シングルカットされ英国で6位、米国で1位。トム・スコットのサックスが印象的。ここに収録されているのはシングルヴァージョン。この曲が最初というのはなかなか新鮮味がある。また間奏後の音質がそれまでよりとても向上している。
2.バンド・オン・ザ・ラン(1973年、ポール・マッカートニー&ウイングス)・・・「ウイングス最高傑作」とも称される同名アルバム収録。シングルカットされ英国で3位、米国で1位。3つのパートをくっつけた大作で、ウイングスの代表曲として挙げられることが多い。キース・ムーンから絶賛されたドラムスはポール。
3.アナザー・デイ(1971年、ポール・マッカートニー)・・・ポール初のソロ・シングルとなったアコースティックなポップで米国で2位、英国で5位。リンダのコーラスが十分堪能できる。歌詞はポールお得意の第三者を主人公にしたもの。ジョン・レノンはこの曲をよく非難していた。
4.007/死ぬのは奴らだ(1973年、ウイングス)・・・007シリーズ8作目となる同名映画の主題歌。ちなみにこの映画よりボンド役がロジャー・ムーアに。シングルカットされ英国で9位、米国で2位。衝撃的な展開を持つ曲でプロデュースはビートルズ時代のジョージ・マーティンを久々に採用した。ライヴではマグネシウム花火の演出ですっかり有名になっている。
5.ジェット(1973年、ポール・マッカートニー&ウイングス)・・・アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」収録のロックンロールの傑作。シングルカットされ英米ともに7位。ポールのシャウトが聴けて痛快だ。ライヴでは2曲目に演奏されることが多い。「ジェット」とは当時ポールが飼っていた犬の名前。
6.マイ・ラヴ(1973年、ポール・マッカートニー&ウイングス)・・・アルバム「レッド・ローズ・スピードウェイ」収録。リンダへ捧げるバラードでウイングス初期の代表曲のひとつ。シングルカットされ英国で9位、米国で1位。もはやスタンダード化してきている。聴き所は当時のウイングスのメンバー、ヘンリー・マッカロクによる間奏のギター。
7.心のラヴ・ソング(1976年、ウイングス)・・・大好評を得たアメリカ公演中リリースされたアルバム「スピード・オブ・サウンド」収録。シングルカットされ英国で2位、米国で1位と大ヒット。ポールの秀逸なベース・プレイが聞ける。ストリングスやブラス・セクションのアレンジが見事。後半のコーラスはポールとリンダとデニーが3つのパートを歌っている。
8.パイプス・オブ・ピース(1983年、ポール・マッカートニー)・・・アルバム「タッグ・オブ・ウォー」と対を成す同名アルバムより。愛で平和になろう、とポールは歌う。少年合唱隊のコーラスが印象的。またプロモ・ヴィデオは感動的。シングルカットされ英国で1位。ここに収録されているのはシングルヴァージョン。
9.C・ムーン(1972年、ウイングス)・・・シングル「ハイ・ハイ・ハイ」のカップリング。同曲が放送禁止となったためこちらがラジオでたくさん流された。ポールお気に入りのレゲエ風ナンバーでピアノやシロホンが楽しい。タイトルは「物分りのいい人」の意味。それにしてもなぜこの曲がHITSのほうに入ってるの・・・?
10.ハイ・ハイ・ハイ(1972年、ウイングス)・・・英国で5位、米国で10位を記録したシングル曲。ブギウギ風のナンバーで最後のテンポチェンジが刺激的。歌詞が猥褻であるとして英国BBCで放送禁止を食らった。この曲がベスト盤に収録されたのは1978年の「ウイングス・グレイテスト・ヒッツ」以来。
11.レット・エム・イン(1976年、ウイングス)・・・当時の邦題は「幸せのノック」。アルバム「スピード・オブ・サウンド」収録。なんてことないお遊び歌でメロディも歌詞も単調だがアレンジがめりはりをつけている。全米ツアー中にシングルカットされ英国で2位、米国で3位。意外な結果となった。アウトロで薄く聴こえるヴォーカルはデニーのものだろうか。
12.グッドナイト・トゥナイト(1979年、ウイングス)・・・アルバム「バック・トゥ・ジ・エッグ」と同時期のシングル曲で英米ともに5位。当時流行していたディスコをポールなりに解釈した曲で様々なジャンルの音楽要素が垣間見れる。未CD化のロング・ヴァージョンもある。私の大好きな曲のひとつ。
13.ジュニアズ・ファーム(DJエディット)(1974年、ポール・マッカートニー&ウイングス)・・・米国で3位を記録したシングル曲でポール流のロックナンバー。ウイングス在籍期間が最短のジェフ・ブリトン(ドラムス)が参加した数少ない曲のひとつ。ここに収録されているのは初CD化のショート・ヴァージョンで、第2節と間奏をカットしたあっけないもの。ロング・ヴァージョンは廃盤となったCDを除けば「オール・ザ・ベスト」米国版のみ収録。
14.夢の旅人(1977年、ウイングス)・・・ポールとデニーの共作。当時のポールの作風であった「伝統音楽風」のスコティッシュ・ワルツでシングルカットされ英国で1位、当時の売り上げ記録を塗り替えた。キャンベルタウン・パイプ・バンドによるバグパイプが印象的。タイトルはスコットランドにある岬の名前。このレコーディングを最後にジョー・イングリッシュ(ドラムス)が脱退、ウイングスは3人となってしまった。
15.アンクル・アルバート〜ハルセイ提督(1971年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・ポールとリンダの共同制作によるアルバム「ラム」収録。米国のみシングルカットされ見事1位に。弾き語りの曲とマーチ風の曲をメドレーでくっつけた。雷鳴や電話の音をSEに入れている。アルバートおじさんはポールの実在のおじで、歌詞は実話をもとにしている。
16.ウィズ・ア・リトル・ラック(DJエディット)(1978年、ウイングス)・・・当時の邦題は「しあわせの予感」。落ち着いた作風のアルバム「ロンドン・タウン」収録。シングルカットされ英国で5位、米国で1位。曲は洋上のヨットで録音された。波の音のようなシンセサイザーとユニークなコーラスが印象的。歌詞はポジティブ。このヴァージョンは間奏などを大幅にカットしたシングルヴァージョンで「オール・ザ・ベスト」米国版にも収録されている。ちなみに私の一番好きなポールの曲で、当サイト名(旧サイト)もこの曲からきている。
17.カミング・アップ(1980年、ポール・マッカートニー)・・・日本での逮捕事件のあった年にリリースされたソロ・アルバム「マッカートニーII」収録。ポールは全部の楽器を担当。サウンドは当時の流行だったテクノの影響を受けている。ポールが一人何役も扮したプロモ・ヴィデオは人気が高い。シングルカットされ英国で2位。米国ではウイングスのライヴからの音源が1位を記録。このアルバムの米国版にはこのライヴ・ヴァージョンが収録されている。このアルバムで聴けるスタジオ・ヴァージョンは所々違ったミックスである(実は2011年に陽の目を浴びた未発表のロング・ヴァージョンのミックス)。
18.ノー・モア・ロンリー・ナイツ(1984年、ポール・マッカートニー)・・・当時の邦題は「ひとりぽっちのロンリー・ナイト」。ポールが自作自演した映画「ヤァ!ブロード・ストリート」の主題歌で同名サントラにも収録。シングルカットされ英国で2位、米国で6位。ポールの'80年代を代表するバラードで、デヴィッド・ギルモアのギターが聴き所。ここに収録されているのはシングルヴァージョン。
19.イート・アット・ホーム(1971年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・このアルバムで日本版のみのボーナス・トラック。当時の邦題は「出ておいでよ、お嬢さん」。アルバム「ラム」収録。日本でのみシングルカットされた。ストレートなロックナンバー。1972年ウイングスのコンサートのオープニングだった。
CD-2 HISTORY
1.レット・ミー・ロール・イット(1973年、ポール・マッカートニー&ウイングス)・・・アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」収録。シングル「ジェット」のB面でもあった。ヘビーなナンバーで当時はジョン・レノンへ和解を呼びかけた曲として話題となった。近年のライヴの定番曲となっている。クリスマスソングのようなオルガンが印象的。
2.ラヴリー・リンダ(1970年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・ポールのビートルズ脱退宣言に合わせてリリースされた初のソロ・アルバム「マッカートニー」に収録された、初めて録音されたソロ・ナンバー。その名の通りリンダについて歌った小曲で、録音機材のテスト用の録音だった。この曲を入れるあたり、ポールのリンダへの愛が伝わってくる。
3.デイタイム・ナイトタイム(1979年、ウイングス)・・・シングル「グッドナイト・トゥナイト」のB面だった曲で、ファンに人気の高い佳曲。ポールお気に入りのポップで歌詞は女性を応援している。2分4秒あたりでポールの長男ジェイムズ(当時1歳半)の泣き声が入っているので必聴。
4.メイビー・アイム・アメイズド(1970年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・当時の邦題は「恋することのもどかしさ」。アルバム「マッカートニー」収録。シングルカットされなかったものの、ファンの間でもっとも人気の高い名曲。ライヴでもすべてのツアーで演奏されている。ピアノを中心としたサウンドに、力強いポールのヴォーカルが響き渡る。
5.愛しのヘレン(1973年、ポール・マッカートニー&ウイングス)・・・ブギウギ風のロックンロールでシングルカットされ米国で10位。米国のみアルバム「バンド・オン・ザ・ラン」に収録。タイトルはポールがウイングスのツアー・バスにつけた名前。途中、明らかにミスでポールのベースが抜けている部分がある。
6.ブルーバード(1973年、ポール・マッカートニー&ウイングス)・・・アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」収録。ビートルズ時代の『ブラックバード』を思わせる甘美なアコースティック・バラード。ハウイ・ケイシーのサックスが味わい深い。
7.ハート・オブ・ザ・カントリー(1971年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・当時の邦題は「故郷のこころ」。アルバム「ラム」収録。英国でのシングル「バック・シート」のB面でもあった。ポールの田舎暮らしをそのまま歌にしたものでスキャットが楽しい。
8.エヴリナイト(1970年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・アルバム「マッカートニー」収録。ファンの間では人気の高い一曲で、当時のポールの心境を歌にしたもの。ハミング部がビートルズ時代の『ユー・ネバー・ギヴ・ミー・ユア・マネー』にそっくり。ライヴでもしばしば演奏されている。
9.テイク・イット・アウェイ(1982年、ポール・マッカートニー)・・・アルバム「タッグ・オブ・ウォー」収録。シングルカットされ米国で10位。ビートルズをほうふつさせるキャッチーなポップでドラムスはリンゴ・スターとスティーヴ・ガッド。前曲『タッグ・オブ・ウォー』の最後の音がかぶっていないこのシングルヴァージョンは初CD化。
10.ジャンク(1970年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・アルバム「マッカートニー」収録曲でも人気の高いセンチメンタルなアコースティックナンバー。ビートルズ時代の1968年に書かれた曲。すべてポールによる演奏。
11.マン・ウィ・ワズ・ロンリー(1970年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・当時の邦題は「男はとっても寂しいもの」。アルバム「マッカートニー」収録。リンダとの初のデュエットナンバーでカントリー風。マイナーなこの曲を選ぶところから、ポールは「マッカートニー」がお気に入りだということが分かる。
12.ヴィーナス・アンド・マース/ロックショー(シングル・エディット)(1975年、ウイングス)・・・アルバム「ヴィーナス・アンド・マース」収録。メドレーの形でシングルカットされ米国で12位。当時のツアーではこの曲と『ジェット』のメドレーがオープニングを飾った。このヴァージョンは部分部分を大幅にカットしたシングルヴァージョンで初CD化。しかし味気ないので、アルバムヴァージョンもぜひ聴きましょう。
13.バック・シート(1971年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・アルバム「ラム」収録。英国でのみシングルカットされたが不調に終わった。テンポチェンジの激しい大げさなバラードで最初聴いた時は首をかしげるでしょうが、何度も聴いていくうちにその味が分かってくる曲。それにしてもこのアルバムでも音質はそれほど向上していない。
14.ロケストラのテーマ(1979年、ウイングス)・・・アルバム「バック・トゥ・ジ・エッグ」収録。オーケストラのようにソロ・プレイを順番に披露するロック・バンドを構想していたポールがザ・フーやピンク・フロイドなど'60年〜'70年代のロック・シーンを飾った32人を集結させた豪華メンバー「ロケストラ(ロック+オーケストラ)」による演奏。カンボジア難民救済コンサートでもほぼ同じ顔ぶれで演奏された。この曲から3曲は私の大好きな曲です。
15.ガールフレンド(1978年、ウイングス)・・・アルバム「ロンドン・タウン」収録。元々ジャクソン・ファイヴにプレゼントした曲でポールのファルセットヴォーカルが聴ける。マイケル・ジャクソンはこの曲をアルバム「オフ・ザ・ウォール」でカバーした。また後にポールとマイケルは大ヒット曲『セイ・セイ・セイ』(なぜかこのアルバムに未収録)などで共演した。
16.ウォーターフォールズ(1980年、ポール・マッカートニー)・・・アルバム「マッカートニーII」収録。シングルカットされ英国で9位。幻想的なサウンドとせつないヴォーカルが印象的なバラードの佳曲。歌詞に白熊が出てくるが、プロモ・ヴィデオにも登場している。このヴァージョンは第3節がカットされ、最後がフェイドアウトする初CD化ヴァージョン(2011年のリマスター盤「マッカートニーII」のボーナス・トラックにも再録)。私はこの曲をコンプリートに聴くのをお勧めするので「マッカートニーII」も買ってください。
17.トゥモロウ(1971年、ウイングス)・・・3日でレコーディングを終わらせたウイングスのデビュー・アルバム「ウイングス・ワイルド・ライフ」収録。バラードの佳曲で、リンダの父・リー・イーストマンお気に入りの曲だった。「ヴィーナス・アンド・マース」の時期にレゲエ・インストの形でリメイクしているが未発表。
18.トゥ・メニー・ピープル(1971年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・アルバム「ラム」収録。米国でのシングル「アンクル・アルバート〜ハルセイ提督」のB面でもあった。ポール版『ベイビー・ユーアー・ア・リッチマン』(ビートルズの曲)といえる曲で、歌詞は当時仲の悪かったジョン・レノンを非難したものに取れる。
19.コール・ミー・バック・アゲイン(1975年、ウイングス)・・・アルバム「ヴィーナス・アンド・マース」収録。ブラス・セクションがライヴ映えする曲で、ポールのシャウトが聴ける。しかし、なぜこの曲を入れて同アルバム収録の『ワインカラーの少女』(ポールのお気に入りでもある)を入れないんだろう・・・。
20.タッグ・オブ・ウォー(1982年、ポール・マッカートニー)・・・二元的対立を問題提起した同名アルバム収録曲で歌詞も同じ問題を提起している。シングルカットされ英米ともに53位。ジョージ・マーティンが久々にプロデュースしたせいか、ビートルズっぽいサウンドに仕上がっている。イントロに綱引きの掛け声がなく、アウトロが『テイク・イット・アウェイ』にかぶさらないシングルヴァージョンは今回が初CD化。
21.メドレー:ビップ・ボップ〜ヘイ・ディドル(1971年、ポール&リンダ・マッカートニー)・・・映像版「ウイングスパン」で初めて発表された未発表音源。前者はアルバム「ウイングス・ワイルド・ライフ」に収録されているが、後者は未発表曲(正式テイクは1971年に録音され、1974年にナッシュビルでフィドルなどがダビングされた。2012年にヒア・ミュージックから再発売されたリマスター盤「ラム」のボーナス・トラックに1971年のヴァージョンを収録)で、未発表曲集「Cold Cuts」に収録予定だった。ポールはギターを弾きながらリンダや娘たちと一緒に歌う。音質はよいとは言えないが、アットホームで和やかな家庭の雰囲気が伝わってくる。時々おどけるポールの声が楽しい。
22.ノー・モア・ロンリー・ナイツ(プレイアウト・ヴァージョン)(1984年、ポール・マッカートニー)・・・映画「ヤァ!ブロード・ストリート」の配給会社からエンディング用に急遽アップテンポな『ノー・モア・ロンリー・ナイツ』を要求されたポールが作ったディスコヴァージョン。同名サントラに収録されたほか、シングル「ノー・モア・ロンリー・ナイツ」のB面にもなった。ショート・ヴァージョンは今回が初のCD化。ただし、シングルでは収録されていた冒頭のキーボード1音がカットされているので、微妙に初登場音源です。ロング・ヴァージョンと2種類のリミックス・ヴァージョンはアルバム「ヤァ!ブロード・ストリート」に収録。それにしてなんでこの曲がこのベスト盤に・・・?どちらも同じ曲で終わらせたかったから・・・?