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2002年に発売された元ウイングスのデニー・レインのベスト盤。彼のベスト盤としては一番有名でしょう(というより唯一のベスト盤?)。'60年代はムーディー・ブルースで、'70年代はポール・マッカートニーらと共にウイングスで大活躍してきた彼の、ウイングス後の'80年代のソロ・ナンバーを20曲収録。「ジャパニーズ・ティアーズ」(1980年)から7曲、「ホームタウン・ガールズ」(1985年)から4曲、「ウイングス・オン・マイ・フィート」(1987年)から4曲、「ロンリー・ロード」(1988年)から5曲を収録。ムーディー・ブルースのレパートリーだった2を除けばすべてデニーが作曲にかかわっています。
デニーはウイングス解散後以降急速に知名度を落とし、いまや昔の栄光は一切感じられなくなってしまいました。しかし、彼の持ち味とする軽めのポップや枯れた味わいのバラードが死んでしまったわけではありません。このベスト盤を聴けば、それは一目瞭然。ヒットした曲はありませんが、佳曲がぎっしり詰まっています。ことにウイングス活動休止中に制作された「ジャパニーズ・ティアーズ」の諸作には名曲が多いです。時代を追うごとにだんだん勢いがなくなっていくのは否めませんが・・・(汗)。
詳細は各曲に譲りますが、ポップ(3・6・13)からロック(17)、時代の流行を追ったようなエレクトリック・ポップ風の曲(8・9)やお得意のやさしいバラード(4・7・16)まで、デニーもいろんな音楽に挑戦していたことが分かります。またコラボレーションもあり、11ではマギー・ベルと、12〜15ではリック・ウェイクマン(元イエスのキーボード奏者)と共演しています。そしてなんといっても最大の注目は、ウイングスのアウトテイクをソロで発表した4と5。うち後者はポールとの共作。もちろん、演奏はウイングス!ポールのコーラスもフィーチャーされています。ポール・ファンにとっても見逃せない一枚です。
このアルバムはデニー・レインという人のソロ時代を知る上で最適といえるでしょう。ウイングスを聴いてデニーに興味を持った方、「ロンドン・タウン」あたりの曲が好きな方、枯れた味わいを楽しみたい方にお勧めです。デニー・ファンである私も十二分楽しんでいます!デニーの魅力にますますひかれていってしまいました。個人的には1・3・5・8・11・17が大好きです。現在入手困難な一枚ですが、デニー好きなら探してみる価値は十分あります。私もアメリカから取り寄せました。音飛びがひどかったですが(笑)。あと海外版には歌詞が掲載されていないのが残念な点です。
1.ジャパニーズ・ティアーズ・・・ウイングス活動休止中に発表された1980年の同名アルバムのファースト・ナンバー。ポールの大麻不法所持による逮捕事件で中止となったウイングスの日本公演に落胆する日本のファンを思って作った曲。デニーなりに思いきり和風サウンドに仕上げていますが、なんだか中華風にしか聴こえないのはご愛嬌(笑)。ポールの『フローズン・ジャパニーズ』と同じ原理です。
2.ゴー・ナウ・・・デニーが'60年代に在籍したバンド、ムーディー・ブルースのレパートリーとしていたピアノ・バラードで、ムーディー・ブルースによるカヴァーはナンバー1ヒットに。ウイングス時代のライヴで披露するなど、デニーのお気に入りらしくたびたびリメイクしている。ここに収録されているのはアルバム「ジャパニーズ・ティアーズ」に収録されているヴァージョン。
3.セイ・ユー・ドント・マインド(構わないと言って)・・・、デニーらしい軽めのポップ。元々は1967年のエレクトリック・ストリング・バンド在籍時にシングル発売された曲で、ウイングスのライヴでも演奏していた。こちらはアルバム「ジャパニーズ・ティアーズ」に収録されたリメイク。オリジナルにはないシンセブラスをフィーチャーしているが、ポールの『ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ』を意識している?私は「ウイングス・アット・ザ・サウンド・オブ・デニー」に収録されたアコースティック・リメイクから聴きましたが、個人的にはここでのヴァージョンがお気に入りです。メロディアスでデニーのソロで一番好きかも?
4.ウィープ・フォー・ラヴ・・・アルバム「ジャパニーズ・ティアーズ」収録。ウイングスのラスト・アルバム「バック・トゥ・ジ・エッグ」のセッションでレコーディングされたものの、お蔵入りとなっていた曲。ここに収録されているのは、そのアウトテイクで演奏とコーラスはウイングス。デニーらしい田舎くさいアコースティックナンバー。
5.センド・ミー・ザ・ハート・・・アルバム「ジャパニーズ・ティアーズ」収録。ポールとの共作で、1974年にウイングスがナッシュビルを訪れていた時にレコーディングしていた。演奏はもちろん当時のウイングス。全編ポールと一緒に歌うのどかなカントリー。ウイングスの未発表曲集「Cold Cuts」にも収録予定だった。
6.クロック・オン・ザ・ウォール・・・アルバム「ジャパニーズ・ティアーズ」収録。複雑なメロディながらデニーらしいポップの小曲。ピアノとパーカッションが印象的。
7.ノッシング・トゥ・ゴー・バイ・・・アルバム「ジャパニーズ・ティアーズ」収録。バグパイプのような音が気だるさを出しているトラッド・ワルツ。こういう曲こそデニーの本領発揮です。
8.クルージン・・・1985年のアルバム「ホームタウン・ガールズ」の冒頭を飾ったファンキーなナンバー。意外と(笑)デニーがかっこいい!デニーがいろんな音楽に挑戦していたことが分かります。
9.ミストラル・・・アルバム「ホームタウン・ガールズ」収録。デニーと3人が共作したナンバーで、ジャム・セッションから発展した曲のように聴こえる。ウイングスの『モース・ムースとグレイ・グース』を思わせる2つの部分からなるファンキーな大作で、演奏時間はなんと7分以上!テクノを意識した?ちなみにタイトルはフランスで吹く寒い風のことだそう。
10.ホームタウン・ガールズ・・・同名アルバムのタイトルソング。モテモテっぽい派手なジャケット(笑)とは裏腹に、寂しい感じのバラード。シングルカットされました。
11.ストリート・・・アルバム「ホームタウン・ガールズ」収録。『ミストラル』と同じ作曲メンバーによる力強いポップ。パワフルなヴォーカルで知られる英国の女性ヴォーカリスト、マギー・ベルと共演した曲で、リード・ヴォーカルはマギー。こういう曲好きだなぁ。デニーは脇に回ってるけど。
12.ウイングス・オン・マイ・フィート・・・1987年発表の同名アルバム収録。同アルバムには元イエスのキーボディストでプログレ界にも多大な影響を与えたリック・ウェイクマンが参加。この曲は特に目立った特徴のない(汗)ポップナンバーです。コーラスは印象的だけど。シングルカットもされました。
13.ポートレート・・・アルバム「ウイングス・オン・マイ・フィート」収録。ミディアムテンポの穏やかなポップバラード。
14.イッツ・ネヴァー・トゥー・レイト・・・アルバム「ウイングス・オン・マイ・フィート」収録。コーラスを大々的にフィーチャーしたミドルテンポの曲。
15.ブラッシング・ブライド・・・アルバム「ウイングス・オン・マイ・フィート」収録。スローテンポのバラードで、タイトルから察するにウェディング・ソング?
16.ランド・オブ・ピース・・・1988年のアルバム「ロンリー・ロード」収録曲。シングルカットもされた。デニーの優しさが伝わってくる暖かなロッカバラード。聖歌隊のようなコーラスが印象的。
17.サクセス・・・アルバム「ロンリー・ロード」収録。渋いブラスをフィーチャーした、地味ながらもなんだかかっこいい曲。デニーという人を表現するとこんな感じになる?
18.ファースト・デイ・イン・ロンドン・・・アルバム「ロンリー・ロード」収録。エレクトリック・ポップ風のダンサブルなナンバー。でもデニーらしくおとなしめ。
19.イフ・アイ・トライド・・・アルバム「ロンリー・ロード」収録。デニーらしいトラッド風味のバラードにエレクトリック・ポップ風のドラムスを加えた感じの曲。
20.ブラック・シープ・・・アルバム「ロンリー・ロード」収録。デニーらしい軽めのポップロック。こういう曲はいかにもデニーらしい。