Back To The Egg Alternate Mix
(2009.11.21更新)
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ウイングスのラスト・アルバム、「バック・トゥ・ジ・エッグ」。ローレンス・ジュバーとスティーブ・ホリーを新メンバーに迎え、さらに共同プロデューサーにクリス・トーマスを迎えたこのアルバムは、ポールが目指した「ロックへの回顧」という目標の元、パンクやニューウェーブといった最先端の音楽をも意識したアグレッシブなサウンドがたくさん詰め込まれた、ポールの意欲作でした。結局チャート上では不振に終わってしまいましたが、ロック・ミュージシャンが多数集まっての一大プロジェクト「ロケストラ」含め、多くの名曲を生み出したパワフルな一枚であることは間違いありません。
そんな「バック・トゥ・ジ・エッグ」期のセッションはアウトテイクが多く発見されており、それらはブートで聴くことができます。残念なことにそのほとんどが現在廃盤で入手困難ですが、今回はその中から、最新リマスターで音質向上を図った上で再発売された2枚組「Back To The Egg Alternate Mix」(April Recordsレーベル・ARCD-4018)をご紹介したいと思います。
このブートに収録されている音源は、「Alternate mixes」「Outtakes」「Studio sessions」の大きく分けて3種類に分類することができ、「バック・トゥ・ジ・エッグ」の裏側を幅広く知ることができます。
まず、1枚目の前半には「Alternate mixes」が収録されています。これは、「バック・トゥ・ジ・エッグ」の曲順を暫定的に決めた際のラフ・ミックスです。既にほとんど曲順が確定していますが、後に追加録音される『Baby's Request』がない代わりに、未発表曲『Cage』が収録されている所が面白いです(ただし、実際に『Cage』が収録されていたのは『Reception』と『Getting Closer』の間の2曲目で、本ブートで再現されていないのは残念な点)。また、半数近くの曲は公式テイクとは違うミックスで収録されています。構成の違う『Winter Rose』や、公式テイクではカットされた箇所も聴ける『So Glad To See You Here』、そしてフェードアウトしない『To You』辺りが聴き所。さらに、『Getting Closer』はデニー・レインとポールがヴォーカルを分け合うという全く異なるスタイルのテイクが収録されています!
次に、2枚目の前半には「Outtakes」が収録されています。これは、先の「Alternate mixes」以前の別テイクや未発表曲を一挙収録したものです。こちらは、公式テイクより荒削りなテイクが中心で、かなりアレンジが違うものも多く驚きの連続です。ブラス・セクションが入る前の『Arrow Through Me』、かなりソフト気味に演奏されている『Old Siam,Sir』、追っかけコーラスが入る前の『Daytime Nighttime Suffering』など、セッション中途の段階を垣間見ることができます。斬新なギター・ノイズを加えた『To You』は、実験的な試行錯誤をうかがわせます。『Maisie』はローレンス・ジュバーの未発表曲。また、『Old Siam,Sir』のプロトタイプ『Super Big Heatwave』や、『Cage』のデモ・テイクも聴くことができます。この中で一番の聴き所は、アコースティックからフルバンド・スタイルに変わってゆくアレンジが感動的な『Love Awake』の5分ヴァージョンでしょう。
最後に、CD各面の後半には「Studio sessions」が収録されています。これは、「バック・トゥ・ジ・エッグ」セッション中にバンドで気ままに演奏したジャム・セッションを集めたものです。ほとんどがインスト・ナンバーであり、単調気味のため玄人向けの音源ですが、そこはジャム・セッションですから致し方ないことでしょう。しかし、一口でジャムと言ってもいろんなスタイルがあることに気づかされます。ブルースにレゲエにシャッフル・ブギーにハード・ロック・・・。また、ムーグを多用した『Space Jam 2』などは結構凝った演奏であり、当時のウイングスの実験精神が旺盛な様子が分かります。この中で聴き所は、デニーがヴォーカルを取る約13分のレゲエ・ナンバー『Denny's Reggae』。
ウイングスの諸作品の中でも最も実験的で革新的な一枚と言われる「バック・トゥ・ジ・エッグ」ですが、このブートでウイングスがセッションにかけた並々ならぬ創作意欲を十二分に感じることができます。興味深いレア・テイクやミックス違いも多く、聴き所もたくさんです。さらに、ジャム・セッションまでも網羅したこのブートは、「エッグ」セッションを知る上でのマスト・アイテムと言えるでしょう!現在類似ブートのほとんどが廃盤状態のため、ぜひこのブートで入手してみてください。
[DISC 1]
-Alternate mixes-
1.Reception
まずは、アルバムの曲順を暫定的に決めた際のラフ・ミックスから。オープニング・ナンバーであるこの曲からまず大幅に異なります。公式テイクは1分ほどの短い演奏だが、ここでは2分半の完全版を収録。ブレイクを挟みつつ繰り広げられるファンキーな演奏が新鮮。ラジオ放送のSEも登場箇所が違う上に未発表となってしまった大幅に含まれている。その中には、『The Broadcast』の朗読&BGMも大々的にフィーチャーされていて、2曲間が強くリンクされていることをうかがわせる。
2.Getting Closer
当初のラインアップでは本来であればこの間に『Cage』が入るはずだが、本ブートでは公式発表された曲順となっている。ウイングス随一のロック・チューンで知られるこの曲も、大幅に異なるテイクを収録。なんと、ヴォーカルがポール単独ではなく、デニー・レインとポールがヴォーカルを分け合う格好になっているのである!歌い出しからデニーの枯れた味わいあふれるシャウトというのが衝撃的。歌詞も微妙に異なる。また、エンディングはギター・ソロがない代わりに手拍子がフィーチャーされ“I'm getting closer to your heart”のコーラスが繰り返される。公式テイクとは違った盛り上がりで、最後はポールとデニー(?)が“Closer,closer”とわめき散らすという、痛快な展開(笑)。また、フェードアウトせず完奏している点も特筆すべき点。デニー・ファンなら必聴、ウイングスのお茶目なヘタレ具合を楽しめるこのテイクは、本ブートの最大の聴き所と言えよう!
3.We're Open Tonight
この曲は、公式テイクとほぼ変わらない。ただし、ラフ・ミックスのためか各楽器の音量が違うようでもある。ピッチも若干高め。
4.Spin It On
この曲も、公式テイクとほぼ同じ。
5.Again And Again And Again
デニーのヴォーカルであるこの曲は、ミックスが公式テイクと異なる。かなりラフな上に、オルガンの音量が全体的に大きくなっているのが特徴。また、一部オフになっていたヴォーカルが聞こえる。
6.Old Siam,Sir
基本的には公式テイクと変わらない。また、公式テイクより早くフェードアウトしてしまう。
7.Arrow Through Me
ここに収録されているのはラフ・ミックス。全体的にムーグの演奏が大きくミックスされている。他の楽器も一部異なっており、ブラス・セクションは別テイク。ポールのヴォーカルはガイド・ヴォーカルで、間奏以降は特に歌い回しも違う。エコーがかかっていないシングル・トラックのため生々しく聞こえる。リンダ&デニーのコーラスはなし。エンディングは、演奏が終わった後もリズムボックスが鳴り続けている。
8.Rockestra Theme
ミックスが大きく異なる。公式テイクよりもキーボード類の音量が大きく入っていて、ポールが弾くピアノが聴きやすい。途中ブレイク部分で入るヴォーカルがポールのみとなっている。ラフ・ミックスのため、迫力から言うと公式テイクが上ですが、こちらも結構いいミックスだと思います。
9.To You
驚愕のヴァージョン。基本的には公式テイクとは変わらないテイク、ミックスなのだが・・・、何と!フェードアウトせず完奏します!あの曲が、こんな終わり方をしていたとは・・・。しかもなかなかかっこいい締めくくり方。個人的にお気に入りの曲なのでこれは驚きでしたね。
10.After The Ball
公式テイクとほぼ同じミックス。
11.Million Miles
これも公式テイクと変わらない。
12.Winter Rose
これまた驚きのテイク。今度は何と、構成が異なるヴァージョン!イントロに続いて登場するのは、公式テイクではつなぎとなっているインスト部分であり、そのために前半はインスト状態となる。そして、その後公式テイクのイントロに戻りようやくヴォーカルが入るという構成である。そして、ヴォーカルが終わると次曲へすぐ流れてしまう。元々は構成が違っていたことを証明する貴重なヴァージョンです。また、デニーのコーラスがまだ入っていない。
13.Love Awake
ラフ・ミックスを収録。基本的なアレンジは同じだが、公式テイクにはないスライド・ギターのフレーズが挿入されるなど、微妙に演奏も異なる。ポールのヴォーカルはガイド・ヴォーカルで、コーラスも入っていない。“the summer comes again〜”の箇所で微妙にダブル・トラックになるのが何だか感動的ですね。
14.The Broadcast
これは公式テイクとほぼ変わらないミックス。これが大量に『Reception』に投入されていたのには驚き。
15.So Glad To See You Here
ラフ・ミックスのため、各楽器の聞こえ方がかなり異なる。『Rockestra Theme』同様、迫力では劣ってしまっている(汗)。ポールのヴォーカルはシングル・トラックで生々しく響く。コーラスがどこかやる気なさげ(苦笑)。そして注目すべきは、後半で1節分未発表の箇所が存在すること。これは公式テイクではカットされてしまった。このヴァージョンも、最後は別録音の『We're Open Tonight』に続くが、演奏終了後にリンダの「オイ!」という掛け声が入るのが公式テイクと違う。そして、元々はこの曲がアルバムのラスト・ナンバーであった。
16.Cage
「バック・トゥ・ジ・エッグ」セッションで録音された未発表曲。ポールらしいキャッチーなポップ・ナンバーで、別々に書いた2つのパートを無理なく組み合わせている。当初は『Reception』と『Getting Closer』の間の2曲目に収録する予定であったが、急遽収録された『Baby's Request』に取って代わってオミットされてしまい、お蔵入りに。その後も、ウイングスのリハーサルで取り上げたり、幻の未発表曲集「Cold Cuts」に収録されたりもしたが、現在に至るまで陽の目を浴びていない。コアなファンの間では大人気の曲で、未発表にしておくにはもったいない1曲です。本ブートではこの曲が2曲目という構成を再現できていないのが難点か。当初の曲順はオープニングのイメージがかなり変わると思います。
-Studio sessions-
17.Day After Rockestra
ここからはスタジオ・セッション中のジャム・ナンバー。当時のレコーディングの裏側が垣間見れます。まずは、ミドルテンポのロックナンバー。オーソドックスながら、シャッフルの要素も入っているのが楽しい。タイトルから察するに、「ロケストラ」セッションの数日後に録音されたのであろうか。
18.Blues
続いては典型的なブルース・スタイルによるジャム。どこか初期ウイングスにありそうな雰囲気(ライヴでのヘンリー・マッカロクのコーナーみたいな)。エコーをかけながら始まりつつも、控えめな演奏である。途中でノイズのようにゆがんだムーグが入るのが実験的な所か。
19.Reggae 1
お次は典型的なレゲエ・スタイルのジャム。ポールお得意のレゲエ路線だが、公式発表されたものよりもしっかりツボを押さえているのは気のせいか・・・?同じリフを繰り返すのみなので、ちょっと退屈するかもしれません(汗)。時々波音のように入るムーグがいい感じ。
20.Reggae 2
再びレゲエ・スタイルのジャム。前曲よりもスローで荒々しい演奏となっている。フィルインを大胆に織り交ぜたドラミングやリード・ギターのメロディが印象的。こちらも、同じリフを繰り返します・・・(汗)。
21.Emotional Moments
『Cage』のリハーサル・セッション。『Cage』の前後部分(原題『Emotional Moments』)を元にした演奏だが、『Cage』とは別曲の即興曲。速弾きのギターフレーズや『Cage』をほうふつさせるムーグ、パーカッションなどが楽しい。途中にはポールのアドリブ・ヴォーカルも入る。また、テープの不備からかなぜか音飛びが何度か発生しているが、それが妙にテンポに合っていて逆にいい味出しています(笑)。
22.Mood Jam 1
『Helen Wheels』『I've Had Enough』をほうふつさせるシャッフル・ブギー。この曲は、これまで見たジャムに比べるとしっかりした演奏で迫力も満点。これで歌が入っていれば公式発表してもよいのでは?と思えるレベル。弾きっぱなしのリード・ギターと、ディストーションをかけたリズム・ギターとの共演が聴き所。
23.Mood Jam 2
前曲に似たような演奏体制による前曲に似たようなリズムの曲(笑)。前曲がフェードアウトで終わり、この曲がフェードインで始まるので、もしかしたら同じジャム・セッションなのかもしれません。前曲よりかはハードさは抑え気味となっており、静かになる箇所もある。
24.Denny's Reggae
再びレゲエタッチのジャム・セッションが登場。しかし、これまでと大きく異なるのは、ヴォーカルが入っていること。しかも、ヴォーカルを取るのはデニー・レインである!オーソドックスなレゲエの演奏に乗せて、完全なアドリブで歌っている。へろへろヴォーカルから繰り出される「コカコーラ」とかインチキな歌詞が面白い(笑)。後半はポールもヴォーカルに参戦している。ポールやリンダのみならず、デニーもレゲエ好きであることが分かる興味深いテイク。このジャムだけ例外的に演奏時間がとても長く、何と13分近くも続きます!それでもあまり退屈しないのは、レゲエの陽気さとデニーのヘタレ加減が楽しいからでしょうか(苦笑)。とにかく、デニー・ファンは必聴!
[DISC 2]
-Outtakes-
1.To You
ここからは、アルバム制作段階での初期テイクや未発表曲などを収録。まず、先の「Alternate mixes」で完全版を聴くことができたこの曲。このテイクは、完全版のエンディングのさらにその後が収録されたヴァージョン。アコギを爪弾きながら誰か(ポール?)の話し声が聞こえる。そして、さらに!このヴァージョンでは唐突なギター・ノイズが延々と収録されています!こんなエンディングも当初は考えていたのでしょうか。かなり実験的で斬新な出来で、この形で発表されていればまた違った評価を受けていたかもしれませんが、とても興味深いです。
2.Again And Again And Again
公式テイクの「Alternate mixes」とはまた違う別ミックス。一番の違いは、中間部の“Winter time is a coming now〜”の箇所をデニーのみならずポールも一緒に歌っている点である。また、コーラスにリンダが不参加であり、「デニー&ポール」という色が濃くなっている。エンディングは公式テイクより10秒ほど長い。
3.Winter Rose
「Alternate mixes」では、前半がインスト・後半がヴォーカル入りという構成だったが、ここでは完全インスト・ヴァージョンとなっている。ですので簡易カラオケができます(笑)。繰り返しも1回のみとハーフ・サイズ。また、一部楽器がまだ入っていない。
4.Love Awake
これは完全別物の初期テイク。構成が異なり、公式テイクの構成を2倍にした格好となっていて、5分ちょっとに引き伸ばされている。ヴォーカルはポールのシングル・トラックで、かなりおとなしめに歌われている。興味深いのがアレンジで、ここでは最初はポールのアコギ弾き語りに始まり、やがてベースやパーカッションが入り、そしてピアノやドラムスの入ったフルバンド・スタイルになってゆくという流れである。公式テイクには入っていないハーモニカはデニーの演奏か?いわゆる「ビートリー」なアレンジにも似た効果的な演奏は、まるで春がじわりじわりとやって来るかのようで感動的です。本ブートに収録されているアウトテイクの中でもかなりのお勧めですね!
5.Old Siam,Sir
これも初期テイク。既に構成やアレンジは完成しているが、公式テイクより圧倒的にソフトな演奏・ヴォーカルに驚き。イントロだけでもその違いが分かります(特にドラムス)。間奏のギター・ソロもずいぶん穏やかに聞こえる。また、一部でドラムパターンが異なる箇所がある他、間奏が若干長い。そして、このヴァージョンはフェードアウトせず完奏している。
6.Arrow Through Me
「Alternate mixes」のラフ・ミックスの初期ヴァージョン。基本的には先と同じだが、一番大きな違いが・・・ブラス・セクションが全く入っていない点である。そのため間奏・アウトロはずいぶんと地味なものとなっている。代わりに、ポールがブラス・セクションのメロディをスキャットで歌っているのが面白い。制作途中の様子が垣間見れる貴重なテイク。エンディングはスパッと終わらずにフェードアウトしてしまう。
7.Maisie
ローレンス・ジュバーの作曲によるインスト・ナンバー。「バック・トゥ・ジ・エッグ」セッションで録音されたもののお蔵入りとなり、ローレンスのソロ・アルバム「スタンダード・タイム」で発表された。ハーモニカをフィーチャーした陽気な小曲で、シングルB面くらいでならウイングスで発表してもよかったのでは?と思う秀逸な出来です。
8.Spin It On
別ミックス。イントロの掛け声“This is it”がない。また、テープを巻き戻すような効果音が公式テイク以上に強調されている。
9.Daytime Nighttime Suffering
「バック・トゥ・ジ・エッグ」セッションで録音され、先行シングル「Goodnight Tonight」のB面で発表されたポールのお気に入りナンバー。現在は「バック・トゥ・ジ・エッグ」のボーナス・トラックに収録されている。ここに収録されているのはラフ・ミックスで、一番の違いは中間部の追っかけコーラスが全く入っていない点であろう。これはかなり新鮮です。他にも、アカペラになる部分のミックスが違ったり、繰り返し部分のポールのヴォーカルが違ったりと、いろいろと別ヴァージョンです。
10.Super Big Heatwave
かの名曲『Old Siam,Sir』の原曲。1977年の録音だと言われている。ギター・リフとシンセ・リフは『Old Siam,Sir』そのものであり、ここから『Old Siam,Sir』が出来上がったと考えると感慨深い。しかし、他の部分は全く違う曲となっている。途中まではヴォーカルは入っていなく、リンダが「Super Big Heatwave」「This is it」という台詞を入れている。そして驚きは、後半出鱈目気味に入るヴォーカルが、『Old Siam,Sir』のメロディ&歌詞であること。この時点である程度はできていたことが分かる。もしかしたら、この時即興で歌ったものがそのまま採用されて『Old Siam,Sir』になったのかもしれない。
11.Cage
『Cage』のデモ・テイク。1978年頃にスコットランドのポールの自宅で録音されたと言われている。この時点では前半・後半の部分である「Emotional Moments」の部分のみが完成しており、中間部(「He Didn't Mean It」)は全く違うオールド・ロックンロール調の激しいパートになっている。ヴォーカルは入っていない。この時既に印象的なシンセのメロディができているのには感心してしまいます。
12.Time Can Bring You Pain
前曲『Cage』のデモ・テイクに、ポールのヴォーカルを加えたもの。本ブートではタイトルが『Time Can Bring You Pain』となっているが、これはオールド・ロックンロール調のパートで出てくる歌詞であり、このパートのタイトルに相応するものであろう。このメロディは完成した『Cage』には登場せず、「He Didn't Mean It」に差し替えられた。「Emotional Moments」の部分はメロディは完成しているが、歌詞は未完成である。
-Studio sessions-
13.Mood Jam 3
ここからは再びスタジオ・セッション中のジャム・ナンバーを収録。まずは、若干ブルースチックでもあるロックナンバーから。ウイングスナンバーで言えば『Let Me Roll It』のイメージに近いか。こうしたジャムでは2本のギター、ベース、ドラムスとの息の合い方がいつも以上に堪能できますね。インストだからかもしれません。
14.Rocking
続いてはテンポ・アップしてかなり激しさを増した緊迫感あふれるロックナンバー。弾きっぱなしのリード・ギターとクラッシュシンバル入れまくりのドラミングがかっこいいです。これはウイングスではあまり見られない曲調ですね。本ブート収録のジャム・ナンバーでは珍しくフェードアウトせず完奏します。
15.Dad A Dia Jam
お次もハード・ロックナンバー。どこか後年の「プレス・トゥ・プレイ」の時期にありそうな硬質な演奏が耳に残ります。時々ムーグらしき音が右からぶわーっとやって来ます(笑)。これも『Mood Jam 1』同様歌があればそこそこ行ける内容ではないかと思います。
16.Diddley Da Jam
再び登場、陽気なブギー風ナンバー。『Helen Wheels』をほうふつさせるドタバタドラムスが楽しいです。リード・ギターの速弾きにも注目。こういう曲を演奏しながら、ポールたちも楽しい気分になっていたのでしょうか。
17.Replica Jam (Paul's Jazz Experiment)
「レプリカ」とは、ポールが「バック・トゥ・ジ・エッグ」期にアビー・ロード・スタジオに似せて作った自身のスタジオの名前。恐らくその時のセッションでのジャムだと思われます。副題から察するにポールがジャズ風アプローチで実験をした曲なのでしょうが、ギターフレーズと独特のドラムパターンのせいでファンキーぽさも出ています。ジャズっぽい所もなくはないのですが・・・。ポールがアドリブでヴォーカルを入れる辺りはジャズを意識しているはず。
18.Space Jam 1
これまでのジャムとは一転した演奏体制で臨んだ曲。エコーのかかった力強いドラムスを機軸に、ピアノとギターが壮大な雰囲気を繰り広げる勇ましい曲。どこか『C'mon People』と『Cosmically Conscious』を混ぜたような感じ(苦笑)。で、リズムは『Oo You』辺りが混じっているという。ていうか、このメロディどこか別のポールの曲で聴いた覚えがあるんですが・・・(何だったっけ?)。後半は音量が上がったり下がったりしながら、風のようなノイズ音が入ってきます。
19.Space Jam 2
一連のジャム・セッションでも一番実験的と言える曲。ムーグ・シンセのリフを延々と繰り返しながら出来上がった、文字通りスペーシーな幻想的な曲。ある意味『Venus And Mars』の拡大解釈版と言えるかも。『Arrow Through Me』のようにムーグがSEも含めてフル活躍しています。その点、「マッカートニーII」の序章とも言えそうですね。それにしても、気だるい音色で「ブーン、ブーン」ばかり9分近くも繰り返されるとだんだん眠くなってきます(苦笑)。