TUG OF WAR & PIPES OF PEACE SESSIONS
(2009.5.22更新)
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ポール・マッカートニーのソロ・アルバム「タッグ・オブ・ウォー」(1982年)は、今でも多くのファンに「名盤」として親しまれている1枚です。ポールの日本での逮捕事件、ウイングスの活動の停滞(さらにはデニー・レインの脱退によるグループの空中分解)、そして無二の親友であったジョン・レノンの暗殺事件と、ポールにとって最もつらい'80年代初頭を乗り切って制作されたアルバムは、当初ウイングスの新作用に用意していたセッションを途中でソロ・アルバム用に切り替えてレコーディングが続行され、完成に至りました。ポールの音楽の「師匠」であるジョージ・マーティンを久々にプロデューサーに迎えて生み出されたビートルズを想起させる「ビートリー」なアレンジ、完成度の高いメロディと社会的メッセージを帯び始めた詞作を有した珠玉の名曲の数々、そして楽曲ごとにプロの演奏者や大物ミュージシャンを招いて行われた豪華なセッションが発売と共に話題を呼び、英米で1位を獲得する大ヒット作となりました。
そして、「タッグ・オブ・ウォー」セッションで生まれた多くの楽曲のいくつかは、次のアルバム「パイプス・オブ・ピース」(1983年)に回され、発表されることとなりました。「パイプス・オブ・ピース」のために新たに録音された新曲が4曲しかないことがそれを裏付けています。「パイプス・オブ・ピース」収録曲の大半が、「タッグ・オブ・ウォー」のセッションで録音されたのです。「タッグ・オブ・ウォー」で問題提起した二元的対立の解決法を「パイプス・オブ・ピース」で示したこともあり、「タッグ・オブ・ウォー」と「パイプス・オブ・ピース」はよく姉妹関係にあるアルバムと言われます。
そんな「タッグ・オブ・ウォー」「パイプス・オブ・ピース」の2枚のアルバム用のセッションでのアウトテイクとしては、1980年8月に行われたポールによるデモ音源が残されていて、これまで様々なブートで発売されてきました。よく出回っているのは、このデモ音源を1枚にまとめたものですが、今回ご紹介する「TUG OF WAR & PIPES OF PEACE SESSIONS」(misterclaudelレーベル、mccd-44/45)は、これに加え、さらに現在出回っている「タッグ・オブ・ウォー」関連の単発アウトテイクと、公式発表されながらも未CD化の憂き目にあっている関連音源をCD2枚組のボリュームにほぼ網羅した、完全版と言える内容です。
それでは、本作の内容を見てみましょう。DISC 1は、これまでブートでの定番だった1980年8月のデモ音源です。以前は、ポールの自宅スタジオ(ルード・スタジオ)での録音と思われてきましたが、近年、サセックスのパークゲート・スタジオでの録音だと判明しました。このセッションは、当時はまだウイングスの新作として用意されていた次のアルバムに収録する候補曲を、ポール単独で試しに録音したものですが、この時点で「タッグ・オブ・ウォー」「パイプス・オブ・ピース」に収録される楽曲の多くが揃っているのには驚きです。ポールの創作意欲の高さをうかがわせます。まだデモ段階ということで、未完成の部分が多いのは否めませんが、『Ballroom Dancing』『Take It Away』『The Pound Is Sinking』といった楽曲では多重録音により完成テイクとあまり変わらないアレンジで、この段階で既にアイデアが固まっていたことが分かります。また、『Ebony And Ivory』『Wanderlust』は未完成ながらエレキ・ピアノの弾き語りで素朴な演奏が美しいです。また、未完成状態からギター・リフのアレンジができてゆく『Dress Me Up As A Robber』や、公式テイクでは『The Pound Is Sinking』の中間部に挿入された『Hear Me Lover』ではポールの試行錯誤を垣間見ることができます。未発表曲も5曲収録されていて、一連の楽曲では完成度に劣る面があったため公式発表にはならなかったと推測されますが、なかなかの佳曲もあります。特に『Seems Like Old Time』は隠れた名曲としてファンの間で高い人気があります。このように、ポールの創作意欲の高さ、アレンジにおける試行錯誤が楽しめるこの音源は、デモといえども一定の完成度はあるため非常に聴きやすく、さらに各曲の初期段階を知ることのできる貴重な内容です。
続くDISC 2の前半は、それ以外の「タッグ・オブ・ウォー」セッションのアウトテイクを収録しています。未発表曲『Seems Like Old Time』は初期段階のピアノ・デモを2種類収録。1984年にエバリー・ブラザーズにプレゼントした『On The Wings Of The Nightingale』のセルフ・カヴァー・デモは興味深いです。さらに、スティービー・ワンダーとの有名な『Ebony And Ivory』はリハーサル・テイクを収録。これが和気あいあいとしていて面白いです。『Ballroom Dancing』は1980年秋のウイングスによるリハーサル・セッションより。欲を言えば、このリハーサル・セッションからの音源をたっぷり収録してほしかった所(他ブートでは全貌が明らかになっている)。ですが、従来の1枚ものブートではフォローできなかった音源も網羅しており、大変ありがたい内容です。
最後にDISC 2の後半では、「タッグ・オブ・ウォー」「パイプス・オブ・ピース」関連で公式発表された音源のうち、未CD化などで入手困難なものを一挙収録。この中にはファンの間で人気のある曲もあり要注目です。『Rainclouds』『I'll Give You A Ring』『Ode To A Koala Bear』や、『Ebony And Ivory』のソロ・ヴァージョンなど、いまだ公式では未CD化の佳曲がここですべて聴くことができます。また、レアものとしては、DJ用に配布された『The Girl Is Mine』のエディット・ヴァージョンと、オーストラリア盤シングル「Say Say Say」にのみ収録された『Ode To A Koala Bear』の別ミックスを収録。特に前者は他ブートでもなかなか入手できない目玉音源です。未CD化曲などを集めたブートなどでも入手はできますが、「タッグ・オブ・ウォー」「パイプス・オブ・ピース」セッションで生まれた全曲・全ヴァージョンをパーフェクトに集めるには最適です。
DISC 1のデモ音源だけでも、「タッグ・オブ・ウォー」好きな方ならきっと気に入る満足度十分の内容ですが、これから買い求めるのであれば、プラスアルファを収録した本ブートがお勧めです。このブートと、1980年秋のウイングスのリハーサル・セッションを収録したブートを持っていれば、「タッグ・オブ・ウォー」セッションの全貌をすべて知ることができます。本ブートには、セッション中のポールを撮ったポートレートが2枚収録されているので、それ目当てでもどうぞ(笑)。もちろん、ブート初心者の方も安心して聴くことのできる内容です。ぜひ、名盤「タッグ・オブ・ウォー」の制作の裏側を見てみませんか?
このブートで特にお勧めする音源は、『Take It Away』『Dress Me Up As A Robber』『Ebony And Ivory』『Wanderlust』の初期デモと、未発表曲『Seems Like Old Time』です!
[DISC 1]
1.Ballroom Dancing
DISC 1は、1980年8月にサセックスのパークゲート・スタジオにてポール単独で録音したデモ音源より。冒頭のこの曲は「タッグ・オブ・ウォー」収録曲。ここでも、公式テイクと同じ、ピアノメインのオールド・スタイルのアレンジで演奏されており、イメージがさほど変わらないのが驚きである。ベース、ドラムスも当然ポールによる多重録音で、第2節から1オクターブ上がるサビのヴォーカルもコーラスとして既に聴かれる。ここでは、第3節以降の歌詞が完成していないので第2節で終了する。
2.Take It Away
「タッグ・オブ・ウォー」収録曲で、第2弾シングルとして発売されたヒット曲。公式テイクにリンゴ・スターが参加したのは有名な話。ここではピアノをメインにしたアレンジで、サビとメロを公式テイク以上に何度も繰り返す。やや単調な演奏のため、徐々に賑やかになってゆく「ビートリー」なアレンジはまだ聴かれない。一部歌詞が違うほか、エンディングはフェイドアウトせずスローになって終わるアレンジ。途中でファルセット風ヴォーカルも聴かれる。
3.Keep Under Cover
「パイプス・オブ・ピース」収録曲。公式テイクではストリングスを効果的に使用したアレンジが斬新だが、ここではアコースティック・ギターとエレピによるシンプルなアレンジ。どこかフォーク風味も出ている興味深いテイク。スローな出だしからテンポアップする流れはこの時点で確立されていることが分かる。ただし曲構成はかなり異なる。ポールのヴォーカルは、ここでは流すような歌い方で統一されている。エンディングは、急にシャッフル調のアレンジに変わる。(なぜ・・・?)
4.Average Person
「パイプス・オブ・ピース」収録曲。公式テイクは様々なSEを多用した賑やかなサウンドが特徴的だが、ここではオルガン弾き語りをメインにしたごくシンプルなアレンジ。途中からはドラムスも入る。この時点で、『Tug Of War』のエンディングにも出てくるメロディ(サビ最終部)が生み出されているのは興味深い。その部分含めポールは楽しそうに歌うが、公式テイクほどの大仰さはない。物語風の歌詞は完成している。
5.Dress Me Up As A Robber #1
「タッグ・オブ・ウォー」収録曲。このブートでは3つのヴァージョンが聴けるが、このテイクはその中でも最初期のもの。スパニッシュ・ギター弾き語りで歌われるが、イントロのメロディや中間部が全く完成していなくポールも苦慮している模様。演奏も長く続かない。とにかく録音したかったのだろうか。この時点で、公式テイクほどではないがファルセット風のヴォーカルを試している。
6.Dress Me Up As A Robber #2
続くテイクは、リズムボックスをバックにスパニッシュ・ギターやエレピを入れたもの。「#1」に比べてはだいぶ完成度が増したことが分かる。テンポもオリジナルに近くなっている。間奏のスパニッシュ・ギターのソロはここではエレキ・ギターとなっている。ヴォーカルはここでは完全にファルセットで、公式テイクに続くスタイルが確立されている。ただし、イントロのメロディや中間部は相変わらず完成しておらず、この点をプロデューサーのジョージ・マーティンから改善を求められることに。
7.Dress Me Up As A Robber #3
最後のテイクで、いよいよイントロのギター・フレーズが生み出される。歌は入っていないが、ここで徹底的にイントロを完成させようとしているようだ。ここでもリズムボックスをバックに、かなりハードな演奏を展開する。公式テイクの印象には一番近づいている。個人的には、このヴァージョンがダンサブルで何気にお気に入りです(短いけど)。このように、3つのヴァージョンにより曲が完成するまでの道のりをたどることができます。
8.The Pound Is Sinking
「タッグ・オブ・ウォー」収録曲。公式テイク以上にアコースティックなアレンジで、テンポもスロー気味。この曲の持つフォーク風味を十分に堪能できるヴァージョンと言えよう。アコギを中心に、ベースやドラムスが入る。構成は公式テイクとは大きく異なる他、中間部に挿入されることとなる『Hear Me Lover』がまだ登場しない。歌詞も未完成で、「円」が出てくるくだりは登場しない。
9.Sweetest Little Show
「パイプス・オブ・ピース」収録曲。アコースティック主体のアレンジは公式テイクと同じだが、オリジナルよりかなりテンポを落として演奏されているため、まだまだ明朗さに欠ける雰囲気がある。ポールはコーラスを多重録音している。また、ポールがアレンジで非常に試行錯誤を重ねたという間奏のソロ部分はまだ登場しなく、第1節〜第2節を繰り返すのみ。
10.Ebony And Ivory
「タッグ・オブ・ウォー」収録曲にして、アルバムからの第1弾シングルとして発売された大ヒット曲(全英・全米1位)。スティービー・ワンダーとのデュエットが話題になった。ここに収録されているデモは、スティービーが参加する以前のもので、公式テイクとは大幅にイメージの異なるエレピ弾き語りのアレンジ。ポールが自らハーモニーを多重録音している。この時点では、出だしの部分しか完成しておらず、歌詞もその部分を繰り返すのみ。まだまだ未完成の感は否めないが、公式テイクからは想像できないシンプルで美しい演奏は聴き所です。まるで『Waterfalls』のようですね。
11.Hear Me Lover
後に『The Pound Is Sinking』の中間部に組み込まれることとなる曲のオリジナル・ヴァージョン。メロディ・歌詞は公式テイクと同じであるが、『The Pound Is Sinking』『Sweetest Little Show』と同様、かなりスローで淡々とした演奏である。このヴァージョンにはエレピも入っている。公式テイクで聴かれる部分を繰り返す構成となっており、途中でファルセットスタイルで歌う箇所もあり、印象は異なる。公式では1曲となる2つのパートが、元々はバラバラの2曲であったことがよく分かります。それをくっつけてしまうポールの才能には脱帽です。
12.Wanderlust
「タッグ・オブ・ウォー」収録曲。公式テイクは生ピアノを中心としたバンドスタイルだが、ここではエレピを中心としたシンプルな演奏。ポール自らハーモニーを多重録音している。構成は未完成で、主旋律に対応するメロディがまだ登場しない。そのため感動には欠けますが、『Ebony And Ivory』と同様シンプルな弾き語りになっていて、溜息が出るほど美しいです。メロディの美しさが再確認できます。
13.Stop,You Don't Know Where She Came From
未発表曲。別名「Take Her Back Jack」。ポールらしくシンプルなコード進行で聞かせるストレートなロックンロール・ナンバー。ポールのちょっと風変わりなスタイルのヴォーカルが楽しい。聴いていてなかなか楽しいし、公式発表していてもおかしくなさそうなのですが、この時期生まれた多くの名曲たちを前にしたら落選してしまったのでしょうね・・・。他の時期であれば正式に取り上げられていたかもしれません。
14.Unbelievable Experience
未発表曲。ミドルテンポのポップナンバーで、ここでもポールのちょっと風変わりなスタイルのヴォーカルが炸裂する。エレピのソロをフィーチャーしている。ただし、完成度が高くなく、ミドル部分はかなり適当に歌詞をごまかして歌っている辺り、即興で作られた曲ではなかろうか。構成もたいした展開もなく進んでゆき、未発表になったのも理解できます(汗)。
15.We All Stand Together
ポールが映画「ルパートとカエルの歌」のために書き下ろした童謡風ナンバーで、1984年にシングル発売され英国で3位を記録。レコーディングは1980年秋に行われ、ジョージ・マーティンが久々にプロデュースを任された。現在は「パイプス・オブ・ピース」のボーナス・トラックにも収録。ここで聴かれるデモは、エレピ弾き語りによるシンプルなアレンジだが、この時点でコーラス(公式テイクでは合唱隊が歌っている)のアレンジがほぼ出来上がっているのが興味深い。ポールは多重録音でファルセット風からカエル風まで様々なコーラスを担当(中にはおふざけみたいなのもありますが・・・)。ここまでアレンジが固まっていたら、マーティンもやりやすかったのではないでしょうか。エンディングはなぜか「しゃっくり」で終了。
16.Boil Crisis
未発表曲。ポールが、娘ヘザーのパンク好きに触発されて書いたパンク風のロック・ナンバー。タイトルは「Oil Crisis(オイル・ショック)」をもじったもの。1977年の「ロンドン・タウン」セッションで一度デモ録音を試みているがその時はお蔵入りに。再度このセッションで取り上げたものの、結局は未発表となってしまった。ここで聴けるヴァージョンは、1977年のデモに演奏やヴォーカルのアレンジがかなり似ており、元々のデモを聴き直してできる限りニュアンスを再現しようとしたのではなかろうか。完成度としてはこのヴァージョンの方が高いですが、個人的には意味不明なコーラスの入った1977年デモの方が勢いを感じられてお気に入りです(笑)。
17.Give Us A Chord Boy
未発表曲。「Give Us A Chord,Roy」と表記されているブートもある。タイトルコールを中心に繰り返す半ば実験的な曲。ポールのファルセットスタイルのヴォーカルやコーラスが耳に残る。演奏はかなりハード。途中のドラムソロでは低い声による台詞が入る。構成が単調で、お蔵入りになったことは理解できる内容であります(汗)。しかし、「マッカートニーII」辺りに入っていたら面白そうだと思う内容だとは思います。
18.Seems Like Old Time
未発表曲。ポールの穏やかな歌い方が耳に残るカントリースタイルのバラード。これがゆったりしていてなんとも和む曲です。なんとなく初期ウイングスにもありそうな雰囲気。一連の未発表曲の中ではメロディも構成も歌詞も磨き上げられており、公式発表されていてもおかしくないクオリティ。ファンの間では隠れた名曲として親しまれています。アルバム本編はもちろんですが、シングルB面なんかでもいいから公式発表してほしかったと思います。これは必聴ですよ!
[DISC 2]
1.Seems Like Old Time [Demo]
DISC 2の前半は、パークゲート・スタジオ・デモ以外の「タッグ・オブ・ウォー」セッションでのアウトテイクを収録。まずは、未発表曲『Seems Like Old Time』のデモ・テイク。オリジナルはポール単独録音のバンドスタイルであるが、ここではピアノ弾き語りアレンジとなっている。若干曲に陰りが感じられるのはアレンジのせいだろうか。しかし、メロディの美しさはこちらでも絶品です。歌詞はこの時点で完成している。
2.Seems Like Old Time [Demo]
続いてもピアノ・デモ。このヴァージョンは前半に歌は入っておらず、代わりにポールが口笛を入れている。口笛ヴァージョンだとまた印象が変わるのが面白いですね。こちらもメロディはすべて完成している。デモまで何度も録音したのだから、公式発表してほしかったです・・・いい曲だけに。演奏後におどけるのもポールらしい(笑)。
3.On The Wings Of The Nightingale [Demo]
ポールがエバリー・ブラザーズに提供した曲で、エバリー・ブラザーズのヴァージョンは1984年に発表された。ここに収録されているのは、「タッグ・オブ・ウォー」セッション中にポールがセルフ・カヴァーしたデモ・ヴァージョン。エバリー・ブラザーズに「こんな風に演奏するように」と教えるために録音されたと言われる。アコギ1本の弾き語りですが、聴き応えはたっぷり。ポールのアコギ弾き語りの上手さを痛感できるテイクです。
4.Ebony And Ivory [Rehearsals]
ポールとスティービー・ワンダーとの超有名なデュエット曲のリハーサル・テイク。レコーディングはモンセラット島を舞台に1981年2月27日に行われた。前半はポールとスティービーがジャムのようにピアノやドラムスを演奏しながらヴォーカルを入れている。リラックスした雰囲気が聴いているだけで伝わってきます。間奏部のコーラスを2人で入れますが、2人の個性が出ています。途中には休憩中のポールとスティービーの会話も聴くことができる。スティービーは即興で歌も聞かせる(これが上手い!)。とっても楽しそうです。その後、公式テイクに近いベーシック・トラックに合わせてポールとスティービーが即興で歌入れをしている。スティービーに負けじとソウルフルで大げさな歌を入れるポールにスティービーもつい笑ってしまう。2人の仲のよさが伝わってくる、微笑ましいひと時です。
5.Ballroom Dancing [Rehearsals]
1980年秋に行われたウイングスによるリハーサルより。面白いのは、これ以前に行われた単独デモ(DISC 1の1曲目)では公式テイクと同じアレンジなのに対し、ここではウイングスらしいストレートなロックのアレンジで演奏されている点である。公式テイクのようなオールド・スタイルとは一線を画している。これが意外な程かっこいい!のですが、結局はこのアレンジはボツになりオールド・スタイルが逆転復活したという流れである。ちなみに、このウイングスのリハーサル音源は、他ブートで完全版が出回っており、そこでは『Keep Under Cover』『Average Person』『Cage』『Rainclouds』なども演奏されています。本ブートにももうちょっと入れてほしかったですね。
6.We All Stand Together [Humming Version]
ここからは、公式発表されたものの未CD化などで入手困難な音源を収録。まずは、1984年のシングル「We All Stand Together」のB面に収録された、同曲のハミング・ヴァージョン。演奏はA面とは全く異なり、ミュージカル風の穏やかな演奏にのせて子供たちがメロディラインをハミングするというもの。プロデュースを任せられたジョージ・マーティンの手腕が光る名アレンジのヴァージョンだが、未CD化。
7.Ebony And Ivory [Solo Version]
「タッグ・オブ・ウォー」からの第1弾シングル「Ebony And Ivory」の12インチのみに収録された、同曲のソロ・ヴァージョン。その名の通り、スティービー・ワンダーが歌う部分もポールが1人で歌っている。有名なスティービーとのデュエットとはまた一味違う、大人の香りたっぷりのハーモニーが堪能できます。このヴァージョンのプロモ・ヴィデオも制作された。未CD化。
8.I'll Give You A Ring
「タッグ・オブ・ウォー」からの第2弾シングル「Take It Away」B面。ポールが10代の頃に書いた曲で、1974年に一度取り上げたがその時はお蔵入りとなり、この時期にオーバーダブをした上で発表された。『Let 'Em In』に似たポップ・ナンバーで、クラリネットをフィーチャーしている。コーラスはリンダとエリック・スチュワート。未CD化。
9.Rainclouds
シングル「Ebony And Ivory」B面。ウイングスのデニー・レインとの最後の共作曲で、元々はウイングスとしてレコーディングする予定だった。ポール、リンダ、デニーの3人が参加。デニーらしいアイルランド風のフォークナンバーで、間奏にフィドルをフィーチャーしている。この曲の録音中に、ポールがジョン・レノンの訃報を知らされたのは有名な話。未CD化。
10.The Girl Is Mine
1982年にシングル発売されたマイケル・ジャクソンとポールの共演曲で、全英8位・全米2位を記録したヒット曲。マイケルがポールの『Say Say Say』に参加してくれたお礼に実現したデュエットとなった。歌詞は女の子を取り合う内容で、エンディングでのマイケルとポールの会話が面白い。この後、ポールとマイケルがビートルズの版権をめぐって争うのは実に皮肉的である。マイケルのアルバム「スリラー」に収録され、CD化もされているが、ポールのCDには未収録。本ブートを持っていればマイケルのアルバムを買う必要がなくなります(苦笑)。なお、本ブートでは1'58"付近で音飛びを起こしている気がするが気のせいでしょうか・・・?
11.The Girl Is Mine [Edit Version]
DJ用に配布された、『The Girl Is Mine』のエディット・ヴァージョン。エディット・ヴァージョンといっても、単に途中をカットしただけではなく、マイケルとポールの会話の部分を割愛した上で、その部分に“Mine,mine”というコーラスを入れているという、結構凝ったヴァージョン違い。公式には発売されていなく、当然ながら未CD化。他ブートでも入手が困難なので、非常に貴重な、ありがたい音源です。
12.Say Say Say ['12 Remix]
「パイプス・オブ・ピース」からの第1弾シングルにしてマイケルとのコラボ・シングル「Say Say Say」の12インチのみに収録された、同曲のリミックス・ヴァージョン。ドラムスやパーカッションなどが差し替えられている他、間奏とエンディングが長くなっている。ポールが手がける一連のリミックスの走りになったヴァージョン。オリジナル以上にダンサブルなアレンジになっていると思います。未CD化。
13.Say Say Say [Instrumental]
12インチシングル「Say Say Say」のみに収録された、同曲のインスト・ヴァージョン。12インチのリミックス・ヴァージョン(12トラック目)のミックスをさらにいじった上で、ヴォーカルを抜いたもの。シンセがメインに出ているアレンジで、エンディングはさらに長くなっている。リミックスが好きでない方には退屈に感じられるかもしれません。未CD化。
14.Ode To A Koala Bear
シングル「Say Say Say」B面。邦題は「コアラへの詩」。ピアノをメインにしたロッカバラードで、エコーをかけた力強いドラミングが印象的。リンダとエリック・スチュワートのコーラスも美しい。この曲にはマイケルは参加していない。ファンの間では人気の高い1曲だが、未CD化。なぜコアラに捧げてしまったかは不明です(苦笑)。
15.Ode To A Koala Bear [Alternate Mix]
超レア音源!シングル「Say Say Say」の、なんとオーストラリア盤にしか収録されていないという『Ode To A Koala Bear』の別ミックス。唐突にオーストラリアなのは、やはりコアラだから?演奏はオリジナルと同じだが、全体のエコーが抑え気味になっており、控えめなサウンドになっている。かなり聴こえが違います。未CD化。未CD化曲などを集めたブートにも収録されていますが、本ブートで入手してしまいましょう!