LAST FLIGHT
(2008.10.18更新、2011.7.10追記)
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数あるポールのブートの中でも、「名盤」と称されているのがこの「LAST FLIGHT」です。このブートには、1979年12月17日に英国・グラスゴーのアポロ・シアターで開催されたウイングスのコンサートの模様を収録しています。なぜ、このブートは名盤なのでしょうか?
それは、数多くの変遷を遂げてきたウイングスの最終ラインアップによる貴重なライヴ音源を堪能できるからです。ポール、リンダ、デニー・レイン、ローレンス・ジュバー、スティーブ・ホリーから成る最終ラインアップのウイングスは、1979年秋に短期間の英国ツアーを実施し、それが唯一のライヴ活動となりました。この時の音源は、有名な「カンボジア難民救済コンサート」(1979年12月29日)の模様がオムニバス盤(未CD化)に収録されたのと、グラスゴー公演より『Coming Up』がシングル「Coming Up」(及び米国版「オール・ザ・ベスト」「ウイングスパン」)に収録された以外は当時公式発表されず、ライヴ盤も発売されませんでした。また、映像もほとんど残っておらず、コンサートの全容が掴みにくいのが現状です。
さらに、この英国ツアーは単に貴重なだけでなく、内容も非常に魅力的です。何といっても、他の時期(特に1975年〜1976年のワールド・ツアー)とはセットリストが大幅に異なります。前回のツアーで演奏されていた曲は『Band On The Run』など数曲にとどまり、代わりに多くの新曲・初めてライヴ演奏される曲が組み込まれました。しかも、そのほとんどがヒットしたわけでもない、いわゆるマニアックな曲。『No Words』『I've Had Enough』『Hot As Sun』などなど・・・、ヒット曲のオンパレードだった前回とは一線を画しています。また、当時の新作「バック・トゥ・ジ・エッグ」からは実に5曲も選ばれていて、ポールの自信の強さを感じます。他に、最新ヒット『Goodnight Tonight』や発売されたばかりの『Wonderful Christmastime』、さらには未発表だった『Coming Up』と、非常に濃い内容となっています。リンダの『Cook Of The House』、デニーの『Again And Again And Again』『Go Now』も披露されています。ビートルズナンバーも『Let It Be』『The Fool On The Hill』などが初めて演奏されています。これらの多くが、その後のツアーで演奏されることのない、このツアー限りとなっているため、大変貴重です。
演奏面では、当時のブームであったニューウェーブやパンクを意識して、かなりロック寄りの内容になっているのが注目されます。オリジナルよりテンポを上げて演奏されている曲が多く見られ、そうした中にはオリジナルよりメリハリがあり聴き応えある内容になっているものも少なくありません。また、メンバーのほとんどがキーボードを演奏した『Arrow Through Me』や、リズムマシーンをバックに演奏した『Goodnight Tonight』など、ステージ上でも実験的な試みが多く見られます。さらに、前回のツアーに続き4人編成のブラス・セクションを投入、各曲に華を添えています。
このように、他時期のウイングスとは違った独特の魅力を持つこのツアーの中で、特に名高いコンサートが最終日のグラスゴー公演。この時の音源を編集した『Coming Up』が公式発表されたこともあり、公式ライヴ盤の制作も予定されていたのではないか?と推測されますが、このブートに収録された音源も非常に高いクオリティで残されています。また、最終日だけあって演奏もヴォーカルもかなりこなれており、演奏するのが難しい曲もそれなりに上手く演奏できているのも大きなポイントです。さらに、この日はウイングスのMCと観客のテンションが両方とも最高で、ライヴの雰囲気を味わうにはこれ以上のものがないほどです(至る所で観客の「ポール・マッカートニー」コールが入る)。ポールや他メンバーも地元で演奏できることの喜びをMCで大いに表現しています。
そのグラスゴー公演を堪能できるのがブート「LAST FLIGHT」です。グラスゴー公演の音源が、オープニングのファンファーレからラストの『Band On The Run』まで、2枚のCDにわたって余すことなく収録されています。さらに、ボーナス・トラックとして先述の「カンボジア難民救済コンサート」の模様を、オムニバス盤からウイングスとロケストラの部分を抜粋して収録しているのが大きな魅力です。ロック史に名を残したロケストラが再現され、何と言ってもウイングス最後のコンサートとなった「カンボジア難民救済コンサート」ですが、現在は未CD化で入手困難。それをこうした形で収録してくれるのは大変ありがたいです。グラスゴー公演に「カンボジア難民救済コンサート」と、最終期ウイングスのベスト・プレイを両方一挙に堪能できる、何ともお得な1枚です。
「LAST FLIGHT」といえば、一番普及しているVIGOTONE盤がありますが、ここではそれでなく、misterclaudelレーベルから最近発売されたもの(mccd-05/06)を紹介したいと思います。というのも、既発のブートよりも良質なサウンドボード音源を使用し、さらにMCや歓声などをより長く、ノーカットで収録しているからです。また、一部楽曲で見られた音飛びをここでは完全にクリアしています。さらに、「カンボジア難民救済コンサート」はもちろん、あの『Coming Up』の公式発表版(エディット・ヴァージョン)を2種類収録していて、まさに「完全版」といえる内容だからです。英国ツアーのパンフレットのミニレプリカもついていて、misterclaudelレーベルの方が断然お得です。VIGOTONE盤はジャケットが難点ですし(苦笑)。
他時期のウイングス、特に全盛期ウイングスに比べてマイナーに甘んじている1979年のウイングスですが、この「LAST FLIGHT」ではその魅力を十二分に堪能できます。実験的でロックに前傾した演奏や、マニアックな選曲の成されたセットリスト、そして人間味あふれるユーモラスなMC、本国ならではの大歓声・・・。さらに「カンボジア難民救済コンサート」まで収録ときたら完全無敵です。ポールのライヴものブートの中では、間違いなくマストアイテムでしょう!ポールもそのことにようやく気づいてか、「ポール・マッカートニー・アーカイブ・コレクション」のボーナス・トラックにバラ売りの形で収録し始め、徐々に公式発表の波が押し寄せていますが、それでもまだほんの一部だけ。完全版は「LAST FLIGHT」だけです!ぜひ一度お聴きになって、ウイングスの最後の羽ばたきに酔いしれてみてください。
[DISC 1]
1.Got To Get You Into My Life
ブラス・セクションのファンファーレに導かれて始まるのは、ビートルズ時代のアルバム「リボルバー」(1966年)収録曲。オリジナル同様、ブラス・セクションの生演奏が非常に華やかでオープニングにぴったり。このツアーがビートルズ時代含めライヴ初披露となった。オリジナル以上のスピード感はたまりません。オリジナルにはないエンディングも最高!ちなみに、翌1980年に予定されていた来日公演でも演奏予定でしたが、この時はレゲエ・アレンジで演奏予定だったことが明らかになっています。
2.Getting Closer
続いて演奏されるのが当時の最新作「バック・トゥ・ジ・エッグ」(1979年)の実質的なオープニングナンバー。オリジナルほどではないが疾走感あふれる演奏を聴かせる。最終日のせいかポールの声があまりよく出ていない気もしますが・・・(汗)。エンディングはこちらの方が盛り上がっています。リンダの演奏するキーボードがいい感じです。この曲をはじめ、「エッグ」関係の曲はこのツアーのみの披露というのが残念な所。この曲の後、ポールのMCが入り「故郷に戻れてうれしい!」と語ります。そして「Have a Goodnight Tonight」の決め台詞に観客が沸き立ちます。
3.Every Night
ポールのソロデビュー作「マッカートニー」(1970年)収録曲。このツアーで初めてライヴで披露された。オリジナルはポール単独録音によるアコースティックナンバーだが、ここでは大胆にもエレクトリック・セットのバンドサウンドにアレンジ。さらにオリジナルよりテンポを落とし、コーラスを入れて気だるい感じを出しています。構成もしっかりしたものに直しています。この後、しばしばポールがライヴで取り上げる曲ですが、エレクトリック・アレンジで聴けるのはこの時期だけ!間奏のローレンスのギターソロがたまりません。マニアの間ではこのアレンジが完成版という意見も少なくありません。なお、2011年に再発売されたリマスター盤「マッカートニー」のボーナス・トラックに収録され公式発表されました。
4.Again And Again And Again
ここでデニーの出番。しっかり挨拶しています。そして、「バック・トゥ・ジ・エッグ」からの最新曲を披露。オリジナルより若干テンポを上げ、朗らかな演奏になっています。リンダのキーボードもちゃんと再現。スティーブのドラムロールが、オリジナル以上にはっきりしたものになっているのが印象的。ここでも、エンディングの盛り上がりはオリジナル以上。賑やかです。演奏後、ポールのMCが入りますが、変な喘ぎ声を出しているのが痛快です(笑)。
5.I've Had Enough
ポールが前置きで「曲にあわせて手拍子を入れて」と促して始まるのは、アルバム「ロンドン・タウン」(1978年)収録のこの曲。プロモ・クリップにローレンスとスティーブが参加していたためのセットリスト入りか?(オリジナルには2人は不参加)ライヴで演奏されたのは、このツアーのみ。オリジナルよりシャッフルぽさが強調されています。ポールの崩し歌いはオリジナルを凌駕したワイルドさです。それにあわせて演奏もどこかラフです。もちろん、イントロで観客の手拍子が起こったのは言うまでもない(笑)。
6.No Words
続いてデニーが曲紹介・・・と、出典を「バック・トゥ・ジ・エッグ」と言いかけて即訂正(苦笑)。デニーが「僕とポールが最初に共作した曲」として挙げたのが、名盤「バンド・オン・ザ・ラン」(1973年)からあえてマニアックなこの曲。観客から思わず「おー」と声が漏れています。このツアーのみの披露。ここでもオリジナルより若干テンポを上げているものの、基本的にはオリジナルに忠実なアレンジ。ブラス・セクションは本物です!デニーとポールのデュエットが堪能できますが、中盤のポールのソロ部分はヴォコーダーを通して歌っているのが実験的。エンディングはオリジナルが中途半端なフェードアウトに対し、ここでは節に戻ってちゃんと締めくくっています。ちなみに、デニーが後年ソロでこの曲をライヴ演奏する際も、この時のアレンジを元にしています。なお、2010年にリマスター盤「バンド・オン・ザ・ラン」が再発売された際に、ダウンロード予約購入のみのボーナス・トラックに収録され公式発表されました。
7.Cook Of The House
ポールのやけにマッチョなMCに続いて紹介されたのが、愛妻リンダ。そして、この時期のリンダといえば、アルバム「スピード・オブ・サウンド」(1976年)収録のこの曲。これもこのツアーのみの披露(なぜか前回のツアーでは演奏されなかった)。オリジナルよりもリズミカルに聞かせます。リンダのほのぼのヴォーカルは相変わらずですが(苦笑)。ブラス・セクションはオリジナルと同じ面子だけに見事に再現しています。最後は「Take it,Glasgow!」で締めくくります。
8.Old Siam,Sir
最新作「バック・トゥ・ジ・エッグ」から最もハードな1曲。ポールのやけに気張ったアナウンスで迎えられるのが、曲の雰囲気にぴったり。なかなか演奏が難しい曲ですが、オリジナル通りのハードで荒々しい演奏を聞かせます。ポールのしわがれたシャウトも健在!オリジナルもすごいですが、こっちのテンションもすごい!観客から手拍子が起こっている辺り、結構人気はあったのでは?と思わせます。
9.Maybe I'm Amazed
続いてスティーブがMCを担当します。そのMCから、ここでポールがピアノへ移動したことが分かります。そのピアノコーナーの幕を開けるのは・・・と思いきや、ここでお決まりのフェイント曲の登場!ブラス・セクションも交えた面白おかしい演奏ですが、この曲が何であるかは情報ありません・・・(汗)。フェイント曲の後は一大名曲ということで、ウイングスのライヴで欠かせなかったこの曲(オリジナルは「マッカートニー」収録)でした。イントロで観客から早速大きな拍手が。オリジナルや有名な'76年全米ツアーの時とは構成を変えています。全米ツアー以上にポールの崩し歌いに拍車が掛かっている気がします。エンディングは全米ツアーと同じ展開。演奏後、ポールが観客に雄たけびを促しています。なお、2011年に再発売されたリマスター盤「マッカートニー」のボーナス・トラックに収録され公式発表されたものの、フェイント曲はカットされています。
10.The Fool On The Hill
ビートルズ時代のアルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」(1967年)収録曲。このツアーがライヴ初披露だった。ここでは、ブラス・セクションがリコーダーやフルートを再現。オリジナルよりも大人しめなせいか、どこか幻想的にも聴こえます。終盤デニーのハーモニーが入るのがいい味出しています。
11.Let It Be
デニーの「みんなも知ってる曲」というMCがまさに適切な、ビートルズの超有名曲。1970年のアルバム「レット・イット・ビー」がオリジナル。実は、このツアーがライヴ初披露である。オリジナルに忠実なアレンジで、この曲に関しては現在に至るまで同じアレンジを貫いている。ブラス・セクションもオリジナル通りのアレンジ(フィル・スペクターのアルバムヴァージョンに近い?)。このブートのDISC 2で聴けるように、年末の「カンボジア難民救済コンサート」では、復刻版ロケストラでの演奏が実現した。ここでピアノコーナーは終了。
12.Hot As Sun
再び元の編成に戻って、アルバム「マッカートニー」から実にマニアックなインストナンバーを演奏。オリジナルはミドルテンポだった所を、アップテンポにして行進曲風に聴かせる。ラテン風味も同時にアップ。思いきりマニアックな選曲ですが、ポールが少年時代に書いた曲なので思い入れでセットリスト入りしたのでしょうね。ポールが弾くリード・ギターや華やかなブラス・セクションなど聴き所もいっぱい!このツアーのみの披露。なお、2011年に再発売されたリマスター盤「マッカートニー」のボーナス・トラックに収録され公式発表されました。
13.Spin It On
再び「バック・トゥ・ジ・エッグ」より。演奏前のポールのMCが何か受けを狙っているようです(苦笑)。オリジナル自体パンクを意識しためちゃくちゃ速いテンポが演奏の難しい曲ですが、なんとか様になっています。オリジナルに負けないハードエッジさです。ポールのシャウトもオリジナルほどではないですが健在。そして、意外と観客の反応がよいのです、これが。当時売れなかったのが不思議なくらい。
14.Twenty Flight Rock
オリジナルは1956年のエディ・コクラン。ポールがジョン・レノンとの初対面時に演奏した曲として有名。ポールがデビュー後ライヴで披露するのはこれが初めて。さすがこの時期のウイングスはロックに長けているだけに、この曲もぴったり。ちなみに、ポールはこの後ロックンロールのカヴァーアルバム「バック・イン・ザ・USSR」(1988年)でカヴァーし公式発表した他、1989年〜1990年のツアーでも取り上げている。
15.Go Now
ここでまたフェイント曲が・・・!しかも今度は何やら滑稽な歌い方。それを歌うのがデニー・・・とくれば次に演奏されるのはデニーの曲ということで、十八番にして一大名曲のこの曲。ウイングス時代・ソロ時代あわせて、デニーのライヴには欠かせない、ムーディー・ブルース時代の大ヒット曲(1964年、アルバム「ムーディー・ブルース・ファースト・アルバム」収録)。ウイングスでは1976年全米ツアーの模様が公式発表されている。やはり、この曲では歓声がひときわ大きいです。ここでも基本的にはオリジナルに忠実な演奏(デニーはピアノ)ですが、この時期らしいのはエレキギター入れまくりという点でしょうか。しかもそれがまたぴったりでローレンスのセンスには脱帽します。この曲の後、4人のブラス・セクションが紹介されます。
16.Arrow Through Me
「バック・トゥ・ジ・エッグ」収録曲。オリジナルでもシンセを多用した作風が実験的だが、ここでもそれを再現。一説によると、スティーブ以外のメンバーはキーボードを演奏しているらしい・・・です。さりげない変拍子もちゃんとクリアしていて、改めてその演奏能力に感服してしまいます。ブラス・セクションもオリジナルのニュアンスをちゃんと出しています。
17.Wonderful Christmastime
リンダやポールが、「クリスマス」を連想させる言葉を連呼し、観客も盛り上がってきます。そして演奏されるのはもちろん!当時の最新シングルにして久々のポールのソロ作品。まだ発売されたばかりで、しかも時期が時期だけに大歓声と手拍子の嵐。演奏自体は、オリジナルよりもテンポを速めにしています。ちょっとラフな感じが漂うのが残念な所ですが、ノリでカヴァーしています。それにしても、ポールがソロで発表した曲なのに、ウイングスのコンサートで取り上げ、プロモ・ヴィデオにもウイングスが出演しているのが謎です。どうせならオリジナルのレコーディングもウイングスとやればよかったのに・・・と思います(苦笑)。そんなポールの単独録音だったオリジナルを、比較的忠実に再現しているウイングスの面々でした。演奏後は、もちろん観客と共に大盛り上がりを見せています。ちなみに、このツアーでしかライヴ演奏されていません。
[DISC 2]
1.Coming Up
いよいよコンサートも終盤に差し掛かり、ここで未発表曲の登場!ちゃんとMCで前もって紹介しています。そしてその曲こそ、後にポールのソロアルバム「マッカートニーII」(1980年)で発表される世界的ヒット曲でした。「マッカートニーII」セッションがこのツアー以前に済んでいたのは周知の通りですが、このツアーで取り上げたことから、当初はウイングスで発表するつもりだったのでは・・・?と思わせます。そして言わずもが、このグラスゴー公演の演奏がシングル「Coming Up」のB面に収録され、米国ではA・B面逆にして発売、見事1位を記録しました。その後も、米国では「オール・ザ・ベスト」「ウイングスパン」にこのライヴ・ヴァージョンを収録しています。唯一公式発表されているため、どこか聴き慣れた演奏ですが、実はシングルB面で発表されたのは第3節を丸々カットしたもの。ですので、このブートでは実際演奏された完全版(約5分)を聴くことができるわけです!また、シングル発売の際に行われたブラス・セクションの追加録音もないので、まさにライヴ音源そのまま。もちろん、演奏後は観客の「ポール・マッカートニー」コールが始まります・・・!なお、2011年に再発売されたリマスター盤「マッカートニーII」のボーナス・トラックには、第3節復活&追加録音なしという本ヴァージョンが収録され公式発表されましたが、カウントが途中から始まっていたりエンディングのMCがカットされていたりと、相変わらず「完全版」はこのブートだけです。
2.Goodnight Tonight
「ポール・マッカートニー」コール冷めやまぬ中、ポールがリズムマシーンの説明をします。「デリケート・チューニング」されたそのリズムマシーンが鳴り始めると、観客はすぐ「あの曲か!」と気づいたようで一気にハイテンションに。そう、当時のウイングス最新ヒット曲(1979年)だったこの曲です。オリジナルはかなり実験的な手法を用いていますが、ここでもオリジナルほどでありませんが実験的です。スパニッシュ・ギターのメロディとパーカッションはリズムマシーンによるもの。オリジナルよりアップテンポで、熱い演奏となっています。迫力から言ったらオリジナル以上でしょう!構成は7インチヴァージョンをちょっと引き伸ばした感じで、ギターソロの部分は長く聴くことができます。ポールのヴォーカルもオリジナル以上にアドリブ交じりの熱いもの。途中、7インチと12インチの歌詞がごっちゃになっている箇所がありますが・・・(苦笑)。ヴォコーダーを使用している箇所もあり。エンディングもしっかり決めています。個人的には、オリジナルよりこっちのライヴヴァージョンの方がお気に入りです。このツアー以外でのライヴ演奏はなし。
3.Yesterday
前曲の興奮が冷めた後静かに始まるのが、ビートルズ時代の超有名曲(1965年、アルバム「4人はアイドル」収録)。1975年〜1976年ツアーに続いての演奏で、ここでもストリングスの代わりにブラス・セクションがバックを担当。そういえば、「ヤァ!ブロード・ストリート」もバックはブラス・セクションでした。この曲で観客の盛り上がりは最高潮に達しており、途中ポールから一緒に歌うよう促されると大声で歌い始めます。出だしと終わりで割れんばかりの大きな拍手が起きたのは言うまでもありません。さらに演奏後は再び「ポール・マッカートニー」コールが・・・。
4.Mull Of Kintyre
1977年にシングル発売され英国で記録的大ヒットとなったポールとデニーの共作曲。このツアーがライヴ初披露。ポールの「もう1曲一緒に歌える曲を」という提案で演奏されましたが、場所が場所だけに(スコットランド!)観客の盛り上がりが前曲同様尋常ではありません。それこそ大合唱状態です(マイクに上手に拾われていないので聴きづらいですが・・・)。ポールもそれに合わせて随所で雄たけびを上げています。オリジナルに忠実な演奏ですが、バグパイプは誰が演奏しているのかは不明。もしかしたら、バグパイプバンドが招かれているかもしれません。情報がないので不明ですが・・・。演奏後は、大盛り上がりの観客が「We want Paul!」の掛け声や「ポール・マッカートニー」コールを掛けています。ポールはコンサート・クルーやバンドメンバーに感謝の念を述べます。そして、「次にやる曲が最後です」とアナウンス。
5.Band On The Run
コンサートのエンディングを飾るのは、同名アルバム収録の一大ヒット曲。案の定イントロで大歓声。これもオリジナルや'76年全米ツアーに忠実な演奏ですが、ロック色の濃いメンバーだけに全米ツアーに匹敵するハードさで聴かせます。テンポも若干速いです。また、コンサートの終了を名残り惜しむかのように最後のリフレインを何度も繰り返します。ドラムソロになる箇所では観客も一緒になって歌い、オリジナル以上の盛り上がりで締めくくります。なお、2010年にリマスター盤「バンド・オン・ザ・ラン」が再発売された際に、ダウンロード予約購入のみのボーナス・トラックに収録され公式発表されました。こうして、グラスゴーの熱い一夜は幕を降ろします・・・。
6.Coming Up(Single Version)
7.Coming Up(Edit Version)
ここからはボーナス・トラック。まず、misterclaudelレーベルのみのボーナス・トラックは、『Coming Up』の公式発表されたエディット・ヴァージョン2種類。先述のように、グラスゴー公演の『Coming Up』は、シングルB面に収録される際に第3節をカットした上にブラス・セクションを追加録音して公式発表されています。しかしここからがマニアックで、そのシングルB面の音源と、後に米国版「オール・ザ・ベスト」「ウイングスパン」に収録された音源とでは微妙に違うのです!それは言わずもが演奏後のMCで、シングルB面ではより長く楽しめます(「ポール・マッカートニー」コールも収録)。シングルB面ヴァージョンは未CD化なのでその意味でも貴重です。misterclaudelレーベルの「LAST FLIGHT」は、曲の長さの違う同じ『Coming Up』を聴き比べでき、まさに「完全版」なのです(苦笑)。[このブートの発売後、2011年にポールが新たなヴァージョン違いを作っちゃいましたが・・・。]
8.Got To Get You Into My Life
9.Every Night
10.Coming Up
11.Lucille
12.Let It Be
13.Rockestra Theme
そして、このブートもう1つの醍醐味、「カンボジア難民救済コンサート」の音源。オムニバス盤に収録されたウイングスとロケストラの演奏全6曲を完全収録!公式発表されているものの、未CD化なのでここで聴けるのは大変ありがたい話です。「カンボジア難民救済コンサート」が、ウイングスにとって、ロック史にとってどれだけ重要な存在であるかは、言うまでもありません!