ディスコグラフィ 〜オフコース・ベスト盤&編集盤〜
(「SELECTION 1973-1978」「SELECTION 1978-1981」は紙ジャケット仕様で再発されています。)
SELECTION 1973-1978
(1978年5月5日発売)
1.やさしさにさようなら 2.通りすぎた夜 3.僕の贈りもの 4.でももう花はいらない 5.水曜日の午後
6.のがすなチャンスを 7.別れの情景(1) 8.眠れぬ夜 9.ワインの匂い 10.愛の唄
11.こころは気紛れ 12.青春 13.潮の香り 14.秋の気配
オフコース初のベスト・アルバム。SELECTIONシリーズ第1弾。1973年のデビューシングル(3)から当時の最新シングル(1)(2)(1978年4月)までの約5年間のキャリアから14曲が選曲されています。(1)(2)以外はアルバム発売順に収録されていて、『僕の贈りもの』から3曲、『この道をゆけば』から2曲、『ワインの匂い』から3曲、『SONG IS LOVE』から2曲、『JUNKTION』から2曲収録されています。いずれも松尾・清水・大間の3氏が正式なメンバーになる前の、2人時代の曲です(3氏は一部楽曲で演奏には参加している)。
ベスト・アルバムというと当時は「邪道」であり、ベスト・アルバムが出るとそのアーティストは「新曲が出ないんだな、もう終わりだ」と思われたそうです。また、「レコード会社的発想」というイメージが当時から根強く、オフコースのメンバーもはじめこのアルバムの発売に反対しました。しかし、「こんないい曲もあることを多くの人に知ってもらいたかった」というプロデューサー・武藤敏史の説得で了承、結局はメンバー本人が選曲しています。
メンバー本人の選曲だけあって、メンバーの意向がよく反映された選曲です。収録曲中シングルナンバーは(1)(3)(8)(11)(14)のみで、彼らが自信を持っていたアルバムナンバーに比重が置かれています。これらはいわゆる「隠れた名曲」として多くのファンに親しまれているナンバーで、ようやく人気が出始めたオフコースにとって新規のファンに知られていない曲ばかり。まさに武藤氏の意図にぴったりでした。また、Yassさん(鈴木康博)の曲が(2)(4)(5)(6)(12)(13)と約半数を占めており、小田さんを核に売り出そうとしていたレコード会社と正反対の、「小田=鈴木平等主義」が貫かれています。ベスト・アルバム1つをとってみても、オフコースが他のアーティストと一線を画していたことが分かります。
現在「ベスト・アルバム」と称するアルバムがあまたとあるオフコースですが、その中でこのアルバムを買う意味は薄れてきています。ただし、メンバー自らが選曲した正真正銘の「公式盤」。オリジナルを愛するファンから今でも大切にされている1枚です。さらに、(6)はオリジナル音源ではなく、1978年2月のライヴ録音が収録されています。これはこのベスト盤でしか聴けないレア・テイクです!!ジャケットも、『SELECTION II』と同じく凝ったデザインの美しいもの。このジャケットだけでも買いですよ〜。
SELECTION 1978-1981
(1981年9月1日発売)
1.風に吹かれて 2.夏の終り 3.愛を止めないで 4.せつなくて 5.生まれ来る子供たちのために
6.さよなら 7.Yes-No 8.愛の終わる時 9.一億の夜を越えて 10.いくつもの星の下で 11.I LOVE YOU
SELECTIONシリーズ第2弾。前回の続きにあたる1978年のアルバム『FAIRWAY』から1981年6月に発売されたばかりだった新曲(11)までの約3年間から11曲を選曲。前作と違い、曲順は時系列順となっておらず、曲の流れを考えての並べ方がされています。『FAIRWAY』収録の(2)以外はいわゆる「5人時代」の曲で、『Three and Two』より2曲、『We are』より4曲、シングルでのみ発売された曲が4曲(うち1曲はB面)。
前作がオフコースを知らない人のための「名刺」だったのに対し、今回は状況が異なります。前回の時はまだオフコースはお茶の間に知られないグループでした。しかし、(6)のヒットが一気にオフコースを全国規模の知名度にのし上げます。そのため、このアルバムは(6)でオフコースを知った人たちに他の曲を教える役割を担ったのでした。そのため、前作よりもレコード会社の意向が反映された「ベスト盤」的な要素が強くなっています。
とはいえ選曲はオフコースのメンバー自らが再び担当。前作よりはシングル曲を多く選んでいて、(1)(3)(5)(6)(7)(11)と約半数を占めています。そのため、シングルのA面をほぼ独占していた小田さんの曲の率が多くなっているのは仕方のないこと。しかしYassさん(鈴木康博)の曲が3曲、松尾さんの曲も1曲収録されていて、ここでもオフコースの平等主義が守られています。ただのシングルの寄せ集めにだけはしたくない、という思いが伝わってきます。
前作同様、この後多くのベスト盤が出てくるようになりこのアルバムの意義は薄れてしまったのですが、「オフコースらしさ」を感じられる選曲はオフコース・ファンにはうれしいものです。また、時系列順でないためアルバムによい流れができています。ベスト盤としてはまとまりがあるかと思います。もちろん「公式盤」です!!ジャケットも非常におしゃれな作り。ちなみに、(1)(3)(7)(8)(9)はオリジナルシングル・アルバムとは違うミックスまたはヴァージョンを収録。特に(1)(3)はこのアルバムのためにビル・シュネーがリミックスを行っています(迫力が全く違う)。こんな風にレア・ヴァージョンも入っているのです。
SELECTION 1984-1987
(1987年7月5日発売)
1.IT'S ALL RIGHT(ANYTHING FOR YOU) 2.君が、嘘を、ついた 3.夏の日 4.君の倖せを祈れない
5.緑の日々 6.call 7.たそがれ 8.LAST NIGHT 9.夏から夏まで
10.ぜんまいじかけの嘘 11.時代のかたすみで(せめて、今だけ)
SELECTIONシリーズ第3弾。同シリーズでは唯一、ファンハウス時代(=4人時代)の曲を収録。「IT'S ALL RIGHT」という副題の通り、(1)を収録したアルバム『as close as possible』が発表された1987年にリリースされました。
ただし、『as close as possible』からは(1)しか選ばれていません(人気ナンバー「もっと近くに」も未収録)。他の出所は、(2)(3)(5)がアルバム『The Best Year of My Life』からで、あとはすべてアルバム未収録曲。発売のわずか2年後にオフコースが解散してしまうため、このベスト盤の選曲範囲は非常にバランスの悪い中途半端なものになってしまいました。そのため、4人時代の後期オフコースの全貌を知るためには向いていません。
しかしこのベスト盤は無視できないものとなっています。それは、アルバムに収録されなかった佳曲の数々をこれ一枚で聴くことができるからです。うち、(8)(10)(11)は現在このアルバムでしか聴くことができません。(11)にいたってはシングルにもなっていません[映画「RONIN」の主題歌に提供された]。また、(1)は間奏がギター、(2)はミックス違い、(3)は若干短いイントロと、アルバムと違うシングル・ヴァージョンが収録されています。逆に、(6)(9)はシングルより短いショート・エディット。結局(5)以外は並み以上のレア音源なのです。
このようにこのアルバムは、ベスト盤としてでなくレア音源の宝庫として欠かせないアイテムとなっています。欲を言えば現在入手困難の「CITY NIGHTS」と「2度目の夏」も入れてほしかったです。そうすれば完璧だったのに。
オフコース・シングルス
(1998年4月6日発売)
[DISC 1]
1.僕の贈りもの 2.めぐり逢う今 3.もう歌は作れない 4.はたちの頃 5.忘れ雪 6.水いらずの午後 7.眠れぬ夜
8.昨日への手紙 9.ひとりで生きてゆければ 10.あいつの残したものは 11.めぐる季節 12.ランナウェイ
13.こころは気紛れ 14.あなたがいれば
[DISC 2]
1.秋の気配 2.恋人よそのままで 3.ロンド 4.思い出を盗んで 5.やさしさにさようなら 6.通りすぎた夜
7.あなたのすべて 8.海を見つめて 9.愛を止めないで 10.美しい思い出に 11.風に吹かれて 12.恋を抱きしめよう
13.さよなら 14.汐風のなかで
[DISC 3]
1.生まれ来る子供たちのために 2.この海に誓って 3.Yes-No 4.愛の終る時 5.時に愛は 6.僕等の時代
7.I LOVE YOU 8.夜はふたりで 9.愛の中へ 10.Christmas Day 11.言葉にできない 12.君におくる歌
13.YES-YES-YES 14.メインストリートをつっ走れ
オフコースがエクスプレス・レーベルに所属していた時代のすべてのシングルのA・B面を収録した3枚組の編集盤(全42曲)。よって、1984年以降のファンハウス時代[4人時代]のシングルは収録されていません。また、実質的なデビューシングル「僕の贈りもの」からの収録なので、それ以前の3枚のシングル(ほとんどがオリジナルではなかった)も未収録です。収録範囲となるのは、小田・鈴木の2人によるデビューアルバムからの先行シングル(1−1)から、鈴木脱退前のラストシングル(3−13)までで、オフコースがフォーク・デュオからロックバンドへと成長してゆく過程が時代を追って分かります。
シングルのA面曲を網羅した“ベスト盤”は他にもありますが、このアルバムの大きな特徴は、シングルのB面曲を完全網羅していること。シングルナンバーはアルバムに収録されなかったものが多いのですが、特にB面曲は現在このCDでしか聴けない曲が(1−2)(1−6)(1−10)(2−8)(3−2)(3−8)と6曲もあり、全曲コンプリートに欠かせないです。また、アルバムとシングルでアレンジ・曲の長さなどが異なるものも多く、(1−13)(3−3)(3−7)などがそうです。特に(1−14)のシングルヴァージョン、(3−4)のコンプリートヴァージョンはここでしか聴くことができません。
そしてシングルB面にはYassさん(鈴木康博)の曲が多くあります。これは、レコード会社の意向でA面には小田さんの曲を収録せざるをえなかった背景があり、Yassさんの曲はB面回しとなったのです(A面となったのは(2−3)のみ)。これらの曲には「隠れた名曲」が多くオフコースを語る上で外せません。また、オフコースで初めて発表された松尾さんの曲(3−2)も収録されています。よく小田さんの曲一辺倒になりがちなベスト盤とは一線を画していて、「オフコースは5人が主役」という彼らの思いがもっともよく伝わる編集盤です。収録曲を作曲者別に見ると、小田さんの曲が21曲、Yassさんの曲が17曲、松尾さんの曲が1曲、他人の作った曲が2曲(「忘れ雪」A・B面)、そして小田さんとYassさんの共作によるオフコース唯一のクリスマスソング(3−10)。
さらにうれしいのが、当時のシングルジャケットを歌詞の掲載されている裏面と共にCDサイズに復元したものがついていること。資料的価値が高く、オフコースファンなら必須アイテムです。アルバムの紙ジャケット限定版もそうですが、レコード会社に本当にオフコースを理解しているスタッフがいることが伝わってきます。特にリアルタイムでのファンの方にとっては懐かしい限りでしょう。
初心者がオフコースを聴く上で、よく『OFF COURSE 1969-1989』が勧められますが、そちらはあくまでもA面コレクションであり小田さんの曲一辺倒。そのため、他メンバー・特にYassさんの魅力を堪能することができないのが問題です。『i(ai)』もしかり。それに比べこのアルバムは、4人時代の曲こそ収録されていないものの小田さんとYassさんそれぞれの曲を平等に聴くことができます。アルバムナンバーにも名曲は多いですが、初心者の方はまずこれを聴いて、そこからオリジナルアルバムに入ってゆくことをお勧めします(4人時代はベスト盤『君住む街へ』から入りましょう)。単に有名曲だけ聴きたい、ディープにオフコースを聴かないのであれば『1969-1989』『i(ai)』でもいいですけど・・・。レアなB面曲やシングルジャケットの復刻版など資料的価値も高い一枚です。
OFF COURSE 1969-1989
(1998年5月21日発売)
[DISC 1]
1.群衆の中で 2.夜明けを告げに 3.おさらば 4.僕の贈りもの 5.もう歌は作れない 6.忘れ雪
7.眠れぬ夜 8.ひとりで生きてゆければ 9.めぐる季節 10.こころは気紛れ 11.秋の気配 12.ロンド
[DISC 2]
1.やさしさにさようなら 2.あなたのすべて 3.愛を止めないで 4.風に吹かれて 5.さよなら 6.生まれ来る子供たちのために
7.Yes-No 8.時に愛は 9.I LOVE YOU 10.愛の中へ 11.言葉にできない 12.YES-YES-YES
[DISC 3]
1.君が、嘘を、ついた 2.夏の日 3.緑の日々 4.call 5.たそがれ 6.夏から夏まで 7.ENDLESS NIGHTS
8.IT'S ALL RIGHT(ANYTHING FOR YOU) 9.もっと近くに(as close as possible)
10.君住む街へ 11.she's so wonderful 12.夏の別れ
「完全版ベスト」と銘打たれて1998年にリリースされた3枚組の編集盤(全36曲)。東芝EMIとBMGファンハウスが初めて合同で取り組んだベスト盤であり、さらに実質的なデビュー以前の「ジ・オフ・コース」時代の3曲も収録されたことで、3人時代・2人時代・5人時代・4人時代のすべてのラインアップ時の楽曲が一堂に会した唯一のアルバムです。まさに、1969年のデビューから1989年の解散までを凝縮した内容です。
ただし、副題こそ「完全版ベスト」ですが実質的にはシングルのA面を網羅した、ある種の企画盤です。曲は時系列に並べられていて、DISC 1でジ・オフ・コースでのデビュー曲(1−1)から1977年まで、DISC 2で2人時代から5人時代、そして鈴木康博の脱退まで、DISC 3でファンハウス移籍後の4人時代を収録していて、割と分かりやすく区切られています。音源はすべてシングルヴァージョンでの収録ですが、ほとんど既に各社の編集盤に収録済みです。(ジ・オフ・コース時代の3曲は正規では初登場。また、(3−4)(3−6)は『SELECTION III』では短く編集されている)
さて、シングルのA面曲を集めたとなれば当然ヒット曲が多く収録されているわけで、「完全版ベスト」と銘打たれるのは当然、と思ってしまうわけですが、オフコースの場合A面曲のみを収録したこのアルバムは大きな欠陥があります。それは、小田さん以外のメンバーの曲がほぼ完全に入っていないこと。これは、レコード会社の意向でシングルのA面には小田さんの曲を入れる傾向があったためで、B面に収録されたYassさん(鈴木康博)の曲は唯一の例外(1−12)しか入っていません[(1−1)もYassさんのヴォーカルだが作曲したわけではない]。ファンハウス時代に多くの曲を残した松尾さんにいたっては1曲も入っていません。
これの何が問題かといえば、オフコースを初めて聴く人が「完全版ベスト」という名前にひかれてこのアルバムを最初に聴けば、当然「オフコースは小田さんが主役のグループで、他のメンバーはバックバンドだった」という誤解を招きかねないからです。当たり前ですがこれは大きな間違いです。特にYassさんの曲、後期の松尾さんの曲はオフコースを理解する上で必要不可欠です。
確かにその時々のヒット曲を時系列に並べたこのアルバムで、オフコースの音楽の大雑把な変遷はうかがい知れるでしょう。しかし、それだけではオフコースを知ったとは言いがたいのです。もちろん小田さんの曲もよいですが、同様に他メンバーの曲もよいのです。小田さんのみならず他メンバーの曲も聴いて初めて、オフコースというグループを理解したことになるのです。
というわけで、オフコースを理解する上ではこのアルバムはあまりお勧めできません。「オフコースは小田さん主導のグループだった!」と、誤解してしまう初心者の方が増えてほしくないからです。また、付属ブックレットもそれほど価値はありません。さらに、「3枚あわせて155分」と収録時間の長さが強調されていますが、CD1枚の演奏時間は非常に短いです。このスペースに、B面曲を入れていたらどれだけよかったか・・・。シングルA、B面を全部網羅していれば間違いなく価値のあるアルバムになっていたことでしょう(「美しい世界」「CITY NIGHTS」「2度目の夏」と2曲のインスト・ヴァージョン、他人の提供曲ながら佳曲の「陽はまた昇る」「悲しきあこがれ」は現在入手困難なため)。Yassさん、松尾さんの曲を聴きたい!という方は、『シングルス』と『君住む街へ』、そしてもちろんオリジナルアルバムをお勧めします。
まぁ、オフコースにディープにはまってゆくつもりのない方には、手ごろに有名曲を聴けてお勧めかとは思います。時系列順になっているので彼らの音楽の大体の変遷が分かるでしょう。乱発された下手な“ベスト盤”、そして近年発売された『i(ai)』よりはお勧めできます。しかし、これだけは覚えておいてください。オフコースは決して小田さんのみが主役のグループではなかったことを。ここらへんはオリジナルアルバムを聴くとよく分かります。
君住む街へ 1984-1988
(1989年2月1日発売)
1.昨日 見た夢 2.夏の日 3.IT'S ALL RIGHT(ANYTHING FOR YOU) 4.君の倖せを祈れない
5.白い渚で 6.逢いたい 7.気をつけて 8.ENDLESS NIGHTS 9.もっと近くに(as close as possible)
10.she's so wonderful 11.I'm a man 12.君が、嘘を、ついた 13.夏の別れ
14.Tiny Pretty Girl 15.緑の日々 16.君住む街へ
オフコース解散後に発売されたファンハウス時代の曲を集めたベスト盤。『SELECTION 1984-1987』に比べ曲数も選曲した時代も充実しており、準公式盤とはいえ大変重宝するベスト盤です。4人時代の曲を手っ取り早く聴くにはこれほどいいCDはありません。
収録曲の出所を見てみると、『The Best Year of My Life』から(2)(7)(12)(15)、『Back Streets of Tokyo』から(8)、『as close as possible』から(3)(5)(9)(11)(14)、『Still a long way to go』から(1)(6)(10)(13)(16)となっています。(4)はシングルのB面に収録された曲。大半が小田さんの曲ですが、松尾さんの(4)(11)や清水さんの(6)、松尾&清水両氏の(14)と偏りなく選曲されています。(16)以外はすべてアルバムに収録されたヴァージョンが入っています。なお、(11)はリミックスが施されています。
このように万遍なく選ばれた曲たちは、くしくもオフコースのコンサート・ツアー「STILL a long way to go」のセットリストを意識した選曲になっています。また、『Still a long way to go』収録の(1)と(16)が全く逆の位置になっているのも新鮮で、これがやけにしっくりしています。
前作『SELECTION 1984-1987』に比べ、アルバム・ナンバーである(5)や(7)、(14)があったり、収録もれになっていた(9)があるなど明らかにこちらがお勧めです。ただしアルバム収録曲を中心とした選曲のため、「call」「夏から夏まで」といったシングルナンバー、「LAST NIGHT」などのシングルB面曲が収録されていないのが少し残念。「たそがれ」は英語版の(8)が入っているので入れる必要はないですけど・・・。
4人時代をこれ1枚で語れるわけではないですが、とりあえず聴いてみるにはお勧めです。意外と名曲が多いことに驚かされますよ〜。
ディスコグラフィ 〜その他〜
forWard
(2004年12月8日発売)
1.明日の風に吹かれて 2.愛のゆくえ 3.素敵なあなた 4.汐風のなかで 5.潮の香り 6.恋を抱きしめよう
7.雨よ激しく 8.君におくる歌 9.ロンド 10.青春 11.いくつもの星の下で 12.一億の夜を越えて
小田和正と共にオフコースを引っ張ってゆき、1982年の脱退後はソロ活動をしている鈴木康博さん(Yassさん)によるオフコース時代の楽曲のセルフ・カヴァーアルバム。Yassさんは1996年に同様のセルフ・カヴァーアルバム『BeSide』を発表していますが、その続編と言ってもよいでしょう。
カヴァーされた曲はすべてYassさんの曲で、11曲が選ばれています。うち6曲は『BeSide』でもカヴァーされています(録音は違う)。1975年の(10)から1982年の(2)まで幅広く選ばれていますが、数あるYassさんソングの中でも全体的にバラードの選曲が多く、「のがすなチャンスを」「ランナウェイ」「メインストリートをつっ走れ」といったロック・チューンは収録されていません。
オフコースのセルフ・カヴァーといえば否応なく小田さんの「LOOKING BACK」シリーズを思い出しますが、過去を振り返り現在の等身大の自分で歌ったと、いう点では「LOOKING BACK」と「forWard」は共通しています。しかし決定的に違うのは、小田さんの方は自分の気に入らないアレンジ・歌詞をリメイクし独創的な世界を築いたのに対し、Yassさんの方はオフコースの味をそのまま残している点です。言い換えれば、オフコースのアレンジを忠実に再現しているのです。実際、(4)や(12)を除けばほぼオリジナルと同じアレンジがなされています。この違いは、2人の「オフコース観」の違いを象徴的に示しています。
さてバラードが多いことからか演奏はアコースティックな感じが漂います。そんな中、唯一ロックで十八番の(12)が光ります。ほとんどの曲をオリジナルのキーで歌うYassさんはやはり素晴らしいです。あたかもオフコースを聴いているかのような錯覚に陥ります。アカペラアレンジになった(4)も、大胆なアレンジ変更にもかかわらずオリジナルの雰囲気を壊していません(小田さんには残念ながらそれができなかった節がある)。もちろん曲自体もオフコース時代から人気の高い佳曲ばかりです。
ということで、小田さんの「LOOKING BACK」が賛否両論を呼んで失敗した要因を、このYassさんのセルフ・カヴァーはことごとくクリアしています。オフコースをリアルタイムで聴いた人にも、後追いの人にもとっつきやすいのです。どこか懐かしい、でも現在の鈴木康博の歌。Yassさんのオフコースへの愛情が感じられるセルフ・カヴァーです。なのでこれは決して「リメイク」ではありません(小田さんの方はリメイクですが)。オフコースを聴いてYassさんに興味を持った方はここから彼のソロアルバムに入るといいかもしれません。
そして、最大の注目が唯一の新曲の(1)。配置的に小田さんの「君との思い出」を意識しているようにも思えます。この(1)は「もし今もオフコースが続いていたら」をテーマに書いたものだそうですが、歌詞は名指しこそないものの明らかに小田さんへのメッセージです。そしてその内容は、「Yassさん、もしかしたら小田さんともう1度活動したいのでは?」と思わせる、「再結成?」といった感じです。さぁ、小田さんの反応はいかに・・・?