ディスコグラフィ 〜小田和正・アルバム〜

 

K.ODA

K.ODA

(1986年12月3日発売)

1.切ない愛のうたをきかせて  2.冬の二人  3.哀しみを、そのまゝ  4.1985

5.夜の行方  6.信じるところへ  7.明日 あの海で  8.空が高すぎる

 小田さんにとって初となる正真正銘のソロアルバム。オフコース活動休止中の1986年に発表されました。タイトルはずばり「K.ODA」、自分のことです。当時オフコースは米国進出を夢見ていましたが、米国はどんな所か肌で実感したかった小田さんはソロ・プロジェクトとしてLAに8ヶ月滞在。その時できたのがこのアルバムです。現地で小田さんは家を借り、音楽コンピュータを独学で一から学んだといいます。プロデュースはオフコースでおなじみのビル・シュネー。小田さんがコンピュータで制作したデモ・テープを、ダン・ハフやジェフ・ポーカロなど本場のミュージシャンが再現する方法が取られました。8ヶ月本場の環境での経験は、その後のオフコース作品にも生かされています。

 収録曲は全部で8曲と少ないですが、どれもが洗練されたメロディとアレンジを持ち、隠れた名曲も多くあります。ロック風味の曲とバラードがちょうどよく混ざっています。若干シンセの使用が多いですが、本場のミュージシャンの演奏により当時のオフコースサウンドとは一線を画しています。ダイナミックに、時に静かに。メロディはいつもの「小田節」なのに、どこか洋楽に聴こえてしまうのが興味深いです。そしてなんといっても小田さんの柔らかな歌声。最近枯れた感じの声の曲の多い小田さんのソロの中でも、最初期のためまだオフコース時代のあのふくよかなスタイルが残っているのです。これは貴重です。

 聴き所は、ロックの曲ではデビューシングルにしてハードな(4)や、ライヴでもしばしば演奏する大人っぽいムードの(5)[その後の小田ソロの作風に通じる]など。バラードからロック、ポップへと展開してゆく(1)はファンの間で大人気の名曲。バラードでは全編アカペラの小曲(3)が光ります(生命保険のCMソングに)。そして、傑作と呼ばれる(8)。これはYassさん(鈴木康博)のいた頃のオフコースを回想しているかの内容で、シンセ弾き語りによる美しいメロディと小田さんの歌声が感動的。これを聴くためだけでも買うべきですが、何しろ全曲完成度が高くお勧めばかり。ここは全曲聴くために買うべきでしょう!買って損はありません。

 なお、歌詞カードは小田さんの直筆!!ただし、レコーディング前だった(1)は歌詞の代わりにメッセージが書いてあります。また、オフコースの『Love Everlasting』はこのアルバムのセッションのアウトテイクです。

 

BETWEEN THE WORD&THE HEART

BETWEEN THE WORD & THE HEART

(1988年3月5日発売)

1.a song of memories  2.僕の贈りもの  3.静かな夜  4.I miss you  5.一枚の写真  6.誇れるのはたヾ

7.in the city  8.between the word & the heart −言葉と心−  9.ためらわない、迷わない  10.moon river

 オフコース在籍中のソロアルバム第2弾。オフコースのラストアルバム『Still a long way to go』リリース前に発表されました。前作『K.ODA』に比べ参加ミュージシャンの数が激減していて、プライベートな空間で作られたことが分かります。中でも特筆すべきなのが、オフコースのドラマー・大間ジロー氏の参加。「オフコースのメンバー間の調整役」といわれる大間さんはここでは小田さんのよき補佐役として機能しています。当時のオフコースのメンバーの中で、小田さんが気軽に声をかけやすかったのはもしかしたら大間さんだったのかもしれません。歌詞カードにも仲良い写真があります。

 前作に比べると、アットホームなレコーディングのせいか静かでゆったりとした曲が多いです。そこにはアコースティックさすら感じさせます。ドラムスやシンセはプログラミングもありますが、同時期のオフコースとは違って違和感がありません。一方前作から引き継いでいるのが「これぞ小田節!」という質のよいメロディ。それをあの歌声で歌うのですから、美しいと言う以外何の言葉もありません。

 全体的にマイナー調の暗い曲が多く、またリリース時期がオフコース解散前とあって「小田和正のソロ」としての認識が薄いため地味で目立たないアルバムですが、隠れた名曲の宝庫です。ライヴでもおなじみで小田さんの決意宣言のような(9)、今なおTV番組の主題歌として親しまれている小品(8)、ムーディーな(3)は特に必聴です[個人的にはせつなさいっぱいのバラード(4)が小田ソロの全曲中いちばん好き]。また、小田さんが初めて作詞したオフコース初期の名曲(2)と、小田さんが初めて感動した音楽だった映画音楽(10)のカヴァーがあり、小田さんのルーツ探しを垣間見ることができます。

 このアルバムで「自分の音楽とは何か」を見つめ直した小田さん。いよいよ本格的にソロ・キャリアをスタートさせます。

 

Far East Cafe

Far East Cafe

(1990年5月9日発売)

1.勝手に寂しくならないで  2.春風に乱れて  3.16号を下って  4.君が戻って来るなんて  5.Far East Cafe

6.恋は大騒ぎ  7.Little Tokyo  8.time can wait  9.good times & bad times  10.あの人に会える

 オフコース解散後にリリースされた、小田さんにとって実質的なファースト・ソロアルバム。オフコース在籍中にも『K.ODA』と『BETWEEN THE WORD & THE HEART』の2枚のソロアルバムを出してはいますが、このアルバムから小田さんの本格的なソロ・キャリアがスタートします。自身のレーベルLittle Tokyoからの初めてのアルバム、もうそこには小田さんひとりしかいないのです。

 解散前のソロアルバムはいわゆる「小田節」と呼ばれるバラードが中心でしたが、このアルバムで小田さんは大きく方向転換します。オフコースも含めてそれまでには見られなかった、アップテンポでダンサブルな曲や、キャッチーでポップ感を増した曲が多く登場したのです。(1)(2)(7)(8)などがそれで、特にモータウン・サウンドを取り入れた(6)は「これが小田さん!?」的ナンバー。この大きな変化は従来のファンを困惑させましたが、逆に大衆を意識したアレンジは若者を中心に新たなファン層を増やしアルバムは1位を記録、シングルの(7)(6)もヒットしました。次の年に大ブレークする「ラブ・ストーリーは突然に」の予感させるアルバムといえるでしょう。

 変化したとはいえ、小田さんの生み出すメロディの持つ力は変わりありません。また、新たな挑戦の曲と共に、「小田節」炸裂のバラードが収録されているのも見逃せない点。これらは『K.ODA』や『BETWEEN〜』の作風に似た所があります。(3)〜(5)(9)(10)がそうで、特に(9)はネスカフェのCMソングとなった力強いビートと詞作が印象的な名曲。(5)は言わずと知れた表参道のお店を思い浮かべてしまいます。これらバラードとアップテンポの曲がバランスよくアルバムにまとまっています。1曲1曲がインパクトあり、それぞれのカラーを主張しています(といってばらばらのカラーというわけではない)。

 以上の2つのカラーで分かれる収録曲は、いずれもソロの小田さんを語る上で欠かせない曲ばかり。シングル発売された(7)(6)はもちろん、(1)(2)(9)とコンサートでの定番曲がこのアルバムに集約されています。それほど小田さんにとって重要なアルバムであり、ファンにとっても重要なアルバムです。

 従来のオフコースファンは驚いたかと思いますが、もともと進化の止まることのなかった小田さん。このアルバムの登場も必然的だったのかもしれません。そしてこのアルバムで小田さんは一気にソロの作風を作り上げてしまいます。ポップなリズムにのせたメロディや、オフコースの頃とはまた違うコーラスワークなど、「ラブ・ストーリーは突然に」もこのアルバムなしには登場しえなかったのです。

 若者向けのアップテンポの曲と、オフコースファンが喜びそうなバラードがバランスよく収録されたこのアルバムは、そのカラーの割には意外と従来のファンの間でも定評があります。オフコース好きな人にも、小田さん好きな人にも受けがよいアルバムです。実際、私も小田さんのソロアルバムの中で一番好きなアルバムです。ちなみに、私の作ったオリジナルキャラクターで小田さんマニア(爆)の早川さがみもこのアルバムが一番好き(その中でも(6)がお気に入りだとか)、という設定になっています。

 

Sometime Somewhere

Sometime Somewhere

(1992年1月25日発売)

1.あなたを見つめて(INST)  2.恋する二人  3.ふたつの奇跡  4.思い出に変わるまで  5.あなたを見つめて/冬子のテーマ

6.君に届くまで  7.二人の夏  8.風と君を待つだけ  9.いつか どこかで  10.時に抱かれて/正木のテーマ

 映画「いつか どこかで」のサントラ・アルバム。「いつか どこかで」は、元より映像作品に興味のあった小田さんにとって初の映画監督作品となった劇場用映画で、時任三郎・宅麻伸・藤原礼実らが出演したラヴ・ストーリー。脚本・音楽も小田さんが担当しました。「異業種監督」への偏見などから、結局この映画の評価は芳しくなかったのですが、小田さんにとっては第2回監督作品「緑の街」へつながる重要な一歩でした。

 このアルバムには、その映画で使用された楽曲が収録されています。ただし(5)のインスト・ヴァージョンである(1)以外はすべて歌入りの新曲であり、映画抜きに気軽に聴くことができます。映画に合った音楽制作をしたため収録曲のすべてがラヴソングですが、面白いことに歌詞に「二人」というキーワードがある曲が多いです。

 よく、このアルバムの前年に大ヒットした「ラブ・ストーリーは突然に」で小田さんは変質して駄作を作るようになった、という意見を聞きますが、そのようなことはありません。むしろ、小田さんらしいラヴソングを十二分に堪能できる一枚です。このアルバムは、アップテンポの楽曲とバラードをうまく調和させています。アップテンポでは、「恋は大騒ぎ」のようにハッピーな(2)、ラテン・テイストも感じられる(7)、そして極め付けに「ラブ突」に酷似した(爆)(6)などが挙げられます。しかしここでのメインはやはりバラード。シングル発売された(5)(9)はもちろん、力強い(8)やシンプルなピアノで聴かせる(10)は人気の名曲です。

 

MY HOME TOWN

MY HOME TOWN

(1993年10月27日発売)

1.そのままの君が好き  2.またたく星に願いを  3.Come on  4.渚 ふたりで  5.風の坂道

6.だからブルーにならないで  7.今はきかない  8.それとも二人  9.let me hold you baby  10.my home town

 「ラブ・ストーリーは突然に」の成功と、初の映画制作。それを終えた小田さんが次の目標に設定したのが「MY HOME TOWN」。自らのキャリアの出発点を意識しながらも、今の自分を素直に表現しようとしたのです。そしてその結果生まれたのがこのアルバムです。

 レコーディング・セッション自体は今までどおりですが、曲作りに関してはより自分を意識しています。その証拠に、このアルバムには「恋」を歌ったラヴソングより、「自分」に身近な気持ちを歌ったものが目立ちます。「友情」をテーマにした感動的な(1)(5)。そしてこのアルバムのテーマであり、故郷・横浜への想いを歌った(10)。これらの曲がヒットしたことにより、アルバムの印象はどこか力強いものに感じられます。

 そんな力強さとは裏腹に、アルバム全体を見るときわめてポップな曲が並んでいます。ラテン風の(2)(4)、「Oh!Yeah!」を意識した(3)、ムーディーな(7)、少し「大人な」感じの(9)。実は、このアルバムも『Far East Cafe』と同じく小田さんのライヴの定番曲が多いのが特徴で、(2)(5)(6)(10)筆頭に何度も演奏されています。聴き所はやはり前述の(1)(5)(10)でしょう(特に後者2曲は小田ソロの代表曲)。(1)は小田さんが音楽監督を担当したアニメ映画「走れメロス」の主題歌です。小田さんはこの後ソロアルバム制作を休止しますが、確かにこのアルバムには一種のマンネリズムのようなものを感じさせる曲が少しあります。しかし、小田さんにとっての重要性は『Far East Cafe』と同じくらいなので、持っておかないと小田さんを理解するうえで(特にライヴ)不便です。

 また付属的ですが、現在発売のCDにはオフコース時代を含め当時までのバイオグラフィ・ディスコグラフィをきれいにまとめたミニ・ブックレットが封入されていて重宝します。ただし、Far East Cafeの情報は古いものだったりするのですが・・・。

 

個人主義

個人主義

(2000年4月19日発売)

1.忘れてた 思い出のように  2.また、春が来る  3.the flag  4.woh woh  5.青い空

6.君たちを忘れない  7.はるかな夢  8.19の頃  9.こんな日だったね  10.風のように  11.とくべつなこと

 前作『MY HOME TOWN』以来6年ぶりとなったオリジナルアルバム。そのため作風は前作とは異なっています。全体的に落ち着いた感じで、大人の風格が漂っています。小田さんの年齢がそのまま音に出たかのようです。多くの人が指摘しているように、収録曲は過去の曲にどこか類似した感がありそれは小田さん本人も認めています。しかし、あえてそういった類似した曲を発表し自分の方針を貫いたのです。それが、アルバムタイトル「個人主義」に色濃く表れています。「昔の曲にどこか似ていますね」と言われたとしても、開き直ってみせる、小田さんの気概が込められています。

 もう1つ注目すべきが詞作です。小田さんは1998年に大きな交通事故を起こしていますが、そのことが影響してか収録曲には過去を振り返るような内容[(1)(6)(8)(9)(10)]や、メッセージ性の強いもの[(3)(5)]が見受けられます。これも、大人の風格を出す要因になっています。歳をとったおかげか、このアルバムで見せる詞作はリラックスしながら素直な気持ちで書いたようなものが多く、またいつもの力強さにやさしさを兼ね揃えた秀逸なものが多いです。「このアルバムは歌詞を味わうアルバムだ」と言う人も多いです。また、かつてオフコース中期において鈴木康博に向けたメッセージを内包した曲にも似た、男らしい友情を感じるものが多いことも注目です。

 しかし、どう小田さんが開き直ろうとリスナーの意見は皮肉なことにシビアなもの。このアルバムは「傑作」と「駄作」の賛否両論に分かれています。前者は大人の風格、特に詞作を称賛する人たち。逆に後者は過去の曲に似通ったメロディに物足りなさを感じる人たち。(3)などの詞作は、小田さんと同年齢の「団塊の世代」の人々に受けがよいと聞きますが、同じ「団塊の世代」でもオフコースのファンだとメロディの酷似ぶりに落胆してしまうようです(苦笑)。このアルバムに関しては、音楽と詞作のどちらに重きを置いて考えるかによって評価が変わってきます。(ちなみに私の場合、「駄作」とまではいきませんがあまりこのアルバムを好きになれない人です・・・ごめんなさい)

 とはいえ、このアルバムには誰もが認めざるをえない名曲が含まれていて、完全に否定できないのも事実。小田さんがほくそ笑むのが見えてきそうです。CMソングになった(4)は久々の「小田節」バラード。(11)も定評の高いピアノバラードです。(9)はシングルやCMソングにもなったナンバー[個人的にはリズム音痴が気になって好きになれません(爆)]。そして(10)は、シングル「緑の街」のカップリングになったものとは異なるライヴ・ヴァージョンを収録。弾き語り風バラードに仕上がっていて、力強い小田さんのヴォーカルが堪能できます。このアルバムは、名曲的なメロディとそうでないメロディとの落差が激しい・・・と言っちゃってもいいのでしょうか(爆)。小田さんのライヴで演奏される曲が結構多いので、その点でも買っておくといいでしょう。

 最後にもう1つ私が気に入らないのが、曲間がほとんどないこと。その後の『自己ベスト』もそうですが、これはいただけない。余韻に浸る間もないので曲のインパクトが欠けてしまいます。

 

そうかな

そうかな

(2005年6月15日発売)

1.まっ白  2.静かな場所  3.大好きな君に  4.僕らの夏  5.Re  6.正義は勝つ

7.たしかなこと  8.僕ら  9.明日  10.風のようにうたが流れていた  11.そして今も

 大ヒットを記録したベスト盤『自己ベスト』で新たなファン層を得た小田さん。その最新作が、本作『そうかな』です。前作『個人主義』から5年ぶりとなるオリジナル・アルバムです。タイトル「そうかな」は、副題の通り「相対性の彼方」という意味。黒板を前にした小田さんのイラストが面白いです。

 『個人主義』からこのアルバムまで、小田さんは歌を全く作っていなかったわけではありません。この期間小田さんはTVドラマやCMのタイアップ曲を依頼され次々と作っていたのです。そのうちシングル発売されたのはドラマの主題歌(1)だけ。残りはCD化の要望がファンなどから多く寄せられていました。そこでこのアルバムで一挙に未収録だったタイアップソングを発表したのです。そのことから、アルバム発売時点で収録曲のうち、(5)以外の全10曲にはすべてタイアップがついていました。それも、TVアニメの主題歌&シチューのCMソング(3)から保険会社のCMソング(7)[直前にシングル発売された]まで様々。小田さんがいろいろな依頼に挑戦していたことがわかります。さらに、(5)が小田さんにとって17年ぶりに出演したCMとなったトヨタ「アリオン」のCMソングになったため、「そうかな」収録曲すべてがタイアップとなりました。

 タイアップばかりということで、あたかもベスト盤のような印象も受けてしまう収録曲。もちろん作った時期もばらばら。しかし統一感がないわけではなく、きれいにまとまっているのはさすが。(1)(5)(9)と全体的にポップな印象ですが、(3)(8)(11)などバラードも収録されています。

 まだ発表されてから少ししか経っていないので正しい評価はこれからですが、期待が大きすぎた分既に賛否両論分かれているようです。しかし、『個人主義』では急に年を取ったような感じだった小田さんが、ここではまた若返っています。これがまずなんといってもうれしいこと。また、かつての「小田節」満開とまではいきませんが、小田さんらしいポップ・センスあふれる曲ばかり。しかも、(1)(3)(9)(11)と今後スタンダード化しそうな人気曲がいっぱい。一回聴いただけではピンと来ませんが、何度も聴いてゆくうちにじわりとその暖かさが身にしみる、そんなアルバムです。

 白眉はなんといってもポスト「言葉にできない」のような(7)と、自身が出演した音楽番組のテーマ曲だった(10)でしょう。これを聴けば、小田さんの才能が枯渇するどころか新たなスタンダードを生む力を備えていることはすぐ分かります。57歳と9ヶ月にしてこのアルバムでオリコン初登場1位の最年長記録を更新した小田さん。その可能性はまだまだ期待できそうです。

 

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