Jooju Boobu 第82回

(2005.12.21更新)

Little Lamb Dragonfly(1973年)

 いろいろ事情があって更新が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。というよりこれは、最近変な時間に寝てしまうことが原因なのですが(汗)。今日も真夜中にひぃひぃ言いながら久々の更新です。以前はほぼ毎日更新できていたのに・・・。期待されている皆様には大変申し訳ないです。

 そんな状況は置いておくとして、久々の更新となってしまった「Jooju Boobu」。その復活第1弾は、初期ウイングスのアルバム「レッド・ローズ・スピードウェイ」(1973年)収録曲を紹介します。その曲とは、バラード・ナンバー『Little Lamb Dragonfly』です。「ポールと言えばやっぱりバラード!」と思っていらっしゃる方は多いと思いますが、この曲もアルバムナンバーとだけあって一般的には全く知られないものの、ポールをよく知るファンの間では定評のある完成度の高いバラードです。いわば「隠れた名曲」と呼べる類の曲で、ポールがこれまで書いてきたバラード作品の中でも、誰もが感動できる美しさをとりわけ持っています。ポールのバラードの魅力を存分に味わうことのできる、そんな『Little Lamb Dragonfly』を、今回は語ってゆきたいと思います。

 「ポール・マッカートニー&ウイングス」名義で発表されたウイングスのセカンド・アルバム「レッド・ローズ・スピードウェイ」(1973年5月発売)は、初めてウイングスそしてポールに正当な評価を与えた一枚です。それは主に先行発売されたヒット・シングル『My Love』のおかげであるのですが、アルバムに収録されたそれ以外の曲たちも、ポールの評価を上げるのに大きく寄与しました。前作にしてウイングスのデビュー・アルバム「ウイングス・ワイルド・ライフ」での失敗を教訓に、スタジオでじっくり時間をかけてレコーディングされた各曲は格段にその完成度を高めましたし、ウイングスのバンドとしてのまとまりが演奏に如実に表れたこともその原動力に挙げられます。しかし、何より「レッド・ローズ・スピードウェイ」がリスナーに好意的に受け入れられた要因となったのが、ポールのアルバムとしては久々にポールの得意分野であるメロディアスでキャッチーなポップやバラードが顔を揃え、ポールらしさが存分に発揮されたことでしょう。「ウイングス・ワイルド・ライフ」に収録されていたようなグルーヴィーで荒々しい曲はぐんと減って影を潜め、代わりに全体をポップやバラードによるゆったりとした甘〜いムードが漂います。テンションは下がってミニマムで地味な感じが強まりましたが(汗)、ポールのステレオタイプ的イメージが前面に出されたことが、従来のファンのみならず新規リスナーの関心を寄せるに至ったのです。歌詞もポールが得意とする「バカげたラヴ・ソング」が大勢を占め、その甘〜い雰囲気を助長させています。実は同時期に録音されてシングルに回された曲は逆に派手なロック・ナンバーが多く、これらが排除されたことでアルバムのポップ度・バラード度が増してしまったのは面白い結果です。

 「レッド・ローズ・スピードウェイ」と言えば、何かと『My Love』をお気に入りに挙げる方が多く、『My Love』ばかりが注目されがちですが、実はその他のいわゆるアルバムナンバーにも、「隠れた名曲」としてファンの間で人気の曲は多いです。これらは、いずれも演奏時間が2〜3分ほどのこじんまりとした小品であることが災いして『My Love』を前にあまり目立たないのですが(苦笑)、先述のようなポールらしさたっぷりの親しみやすい粋なメロディの上に歌詞もラヴ・ソングと、まさにポールの王道がぎっしり詰まっています!ポールに「天才メロディ・メイカー」のイメージを期待している方にはうってつけと言えましょう。そんな地味ながらもポール節炸裂中の各曲の中で、アルバム中では珍しく約6分半の演奏時間を有しとりわけ目を引くのが、今回ご紹介する『Little Lamb Dragonfly』であります。アナログ盤A面の最後に位置し、A面を壮大に締めくくるハイライト的な存在となっていますが、それではこの曲はどんな曲なのでしょうか?ポールらしさは散りばめられているのでしょうか?これから詳しく見てゆきましょう。

 その前に、「レッド・ローズ・スピードウェイ」を聴き始めの皆さんには驚きの事実(ポール・マニアなら周知の事実ですが・・・)をお伝えしなければなりません。実は『Little Lamb Dragonfly』は、「レッド・ローズ・スピードウェイ」の時期の録音ではありません!つまり、1972年を通してじっくり時間をかけて進められた一連の「レッド・ローズ・スピードウェイ」セッションで取り上げられたものではないのです。・・・それどころか、なんと!この曲はウイングスによる演奏でもありません!!これにはびっくりの方もいらっしゃると思います。それではいつの録音なのか?と言えば・・・。ポールにとっては前々作にあたる、ポールとリンダの共同名義のアルバム「ラム」(1971年)の頃なのです!と言うことは、この曲は「ラム」セッションで取り上げられたもののボツになったアウトテイクだったのです。ウイングス・ナンバーでないだけでも意外ですが、まさか「ラム」まで遡るとは・・・。信じられませんよね。さらに、同じく「レッド・ローズ・スピードウェイ」に収録された『Get On The Right Thing』も、実は「ラム」セッションのアウトテイクです。これまた意外ですね。

 この2曲が1971年当時お蔵入りになってしまったのには、ポールが「ラム」セッションにおいて怒涛の勢いで新曲を書き溜めていたことがあります。ビートルズの解散直後であった当時、ポールはビートルズという“束縛”から解放されて創作意欲を膨らませる一方で、自身に浴びせられていた不当な非難に対し質の高い音楽活動で対抗しなければならない状況にありました。そこで「ラム」セッションには20数曲を用意しそれらを一挙に録音したのですが、「ラム」にはそのうちの12曲だけが収録されることとなり、残りはお蔵入りになってしまいました。ちなみに、そのお蔵入り曲の中にはずっと後になって発表される『A Love For You』や未発表曲『Hey Diddle』がある他に、『Dear Friend』もそうであることが分かっています(以前「Jooju Boobu」で触れましたね)。こうして『Little Lamb Dragonfly』と『Get On The Right Thing』はしばらく未発表のままでいたのですが、その2年後の「レッド・ローズ・スピードウェイ」で一発逆転、見事復活を果たすこととなります!数年前書いたものをふと見直したのか、ポールはこの2曲を新作のラインアップに加えたのでした。この2曲はいわば敗者復活戦に勝ったと言えるでしょう。ちなみに、「レッド・ローズ・スピードウェイ」でもいつもの調子で楽曲を量産したポール、当初は2枚組アルバムにしようかと思っていたほどですが、結局こちらも1枚組・全9曲で発表することになり、またしても多くのお蔵入り曲が生まれてしまいました。そんな中で、新曲を差し置いて復活当選したこの曲と『Get On The Right Thing』の底力はすごいです。よほどポールの琴線に触れるものがあったのでしょうか?そのおかげで未発表になってしまった・・・例えば『Mama's Little Girl』なんかにとっては嫌な存在だったに違いありませんが(汗)、こうして2年越しに無事に陽の目を浴びることとなりました。

 元々が「ラム」のアウトテイクだけあって、演奏者は「ラム」セッションでのラインアップと全く同じです。ポールがベース、ヒュー・マクラッケンがエレキ・ギター、そしてウイングスにも加入するデニー・シーウェルがドラムス。そしてリンダがパーカッション(ベル)で参加しています。一方で、ウイングスのメンバーであるデニー・レインとヘンリー・マッカロクは演奏に参加していません。そんな曲を「ウイングス」名義で発表してしまうのが面白い所ですが(笑)、一応半分のメンバーが演奏しているのでポールにとってはOKなのでしょうか?しかし、録音した時期も演奏者も違うというのに、アルバムを通して聴いてもこの曲は「レッド・ローズ・スピードウェイ」の雰囲気に違和感なくはまっています。逆に、「ラム」に収録されているのがちょっと想像できないほど(この点は『Get On The Right Thing』の方が強いですが・・・)、アルバムのカラーにぴったりマッチしています。これは、この曲が「レッド・ローズ・スピードウェイ」の他の曲と同じバラード・ナンバーであったことと、後にオーバーダブされることとなるコーラス(これについては後述します)がウイングスらしさを引き出したからかもしれません。「レッド・ローズ・スピードウェイ」がアップテンポ中心のアルバムだったら確実に浮いていたでしょうが(汗)、くしくも周りも「ラム」の系譜を継ぐほのぼのまったりしたバラードの小品だったことが功を奏しましたね。「ウイングス・ワイルド・ライフ」一枚を飛ばしての奇跡です。

 このように意外な素性を持つ「ウイングス・ナンバー」、『Little Lamb Dragonfly』。いよいよ曲自体について見てみましょう。

 この曲は、大きく分けて2つのパートに分かれていて、片方(『Little Lamb』)がもう片方(『Dragonfly』)をサンドイッチする格好になっています。2つのパートはそれぞれメロディが全く異なりますが、これは乱暴に言ってしまえばいわば2曲のメドレーと呼べてしまう構成です。『Treat Her Gently/Lonely Old People』に似た形で、つまりは『Little Lamb/Dragonfly』と表記できそうなのです(ちなみに、これは私の行きつけの某サイトさんでの指摘で初めて気づきました・・・)。複数の異なる曲を1曲に纏め上げるのはポールの得意技と言え、「レッド・ローズ・スピードウェイ」期も『Live And Let Die』『The Mess』といった曲で試みていますが、この曲もその一端なのかもしれません。しかし、普通に聴けば2つの曲から成っているとは全く意識させない所に、ポールの作曲の妙が光っていますね。この2つのパートは両方ともスロー・バラードで、ポールのバラードの醍醐味である美しいメロディを持っています。まさに「レッド・ローズ・スピードウェイ」らしい作風ですが、この曲では単に美しいだけでなく、ちょっと繊細で物悲しさが漂うのが他にない個性的な所です。この辺は「ラム」セッションの残り香を匂わせます。パート別に特色を見ると、『Little Lamb』パートは繊細さが強調されており、『Dragonfly』パートはゆったりと伸びやかなメロディが耳に残ります。『Little Lamb』パートの最後には毎回「ラララ〜」というコーラスのリフレインがついてくるのが印象的ですが、こちらも伸びやかなメロディであると共に、壮大さも併せ持っています。どこかポールが昔大ヒットさせた『Hey Jude』のコーダ部分をほうふつさせますね。

 繊細で美麗なスロー・バラードを演奏面で支えるのが、アコースティック・ギターです。これは実は演奏者クレジットに載っておらず、マクラッケンが弾いているのかポールが弾いているのか不明なのですが(デニー・レインとヘンリーではないのは先の経緯を見れば明らか)、この曲の機軸となっています。澄んだ音色で爪弾かれるイントロなどは、メロディに負けじと繊細です。『Little Lamb』『Dragonfly』両者でずっと弾きっぱなしで、そのおかげで曲のアコースティックさが強調されています。アコースティックがメインの牧歌的な演奏と言えば「ラム」がまさにその典型ですが、この曲も「ラム」生まれの曲だけあってポールが隠遁していたスコットランドの田舎の景色を想起させてくれるような手作りの肌触りが味わえます。聴き所は、やはりイントロのワンフレーズでしょうか。寂しげな雰囲気もにじませています。そしてそこに、『Dragonfly』パートを中心にマクラッケンのエレキ・ギターが絡み合います。エレキと言えども音色は控えめなまろやかさあふれるもので、バラードのイメージを壊してはいません。つなぎなどで聴かれるツボを押さえた味わい深い演奏はさすがベテランのセッション・ミュージシャン。その音はどことなく、この曲では惜しくも演奏していないヘンリーのギターに共通する所がありますが、それがこの曲を「レッド・ローズ・スピードウェイ」に収録しても違和感なくしているのかもしれません。シーウェルのドラムスは、特に目立ったフィルインなどもなく、淡々と曲を引っ張ってゆきます。大げさな所が一切ないのがいい感じですね。『Dragonfly』パートではピアノらしき音も地味に聞こえますが、クレジットされていません・・・。そして最後に、この曲には随所でストリングスが入っており、感動的なムードを盛り立てています。ゆったりとした壮大なメロディにふさわしいアレンジですが、オーバープロデュースになっていない所に好感を持てます。このように、生音を重視した音作りで大げさなアレンジがなくシンプルな分、美しいメロディの持つ感動を上手く引き出していると思います。『Dragonfly』パートは、曲が進むにつれ徐々に音が分厚くなってゆきますが、効果的な味付けですね。

 次にヴォーカルですが、これがちょっと面白いです。この曲は全体を通してポールがメインでヴォーカルを取っていますが(ポールの曲なので当たり前とも言えますが)、冒頭の『Little Lamb』ではポールと一緒にデニー・レインが歌っています。ここで少し前の文章を振り返ってみれば、「あれ?ウイングスでの録音じゃないから、デニー・レインは参加していないはずでは?」と思うことでしょう。しかし、デニー・レインは演奏でこそ参加していないものの、コーラスではちゃんと参加しています!これは、「ラム」で録音されたベーシック・トラックに後からオーバーダブしたため実現したものであり、それによって当初は全く参加していなかったデニーの出番が設けられることとなりました。デニーのコーラスも、この曲をウイングスっぽくして「レッド・ローズ・スピードウェイ」の作風にぴったり一致させている一因と言えるでしょう。ポールの後処理の妙を痛感させます。で、話を戻せばその冒頭の『Little Lamb』では、ポールよりもむしろデニーの声の方が目立っており、一瞬デニーのヴォーカル曲かと間違えてしまうほどです。デニー独特の枯れた味わいの声質がアコースティック・バラードにふさわしいです。続くつなぎの「ラララ〜」から『Dragonfly』にかけてはポールが主役で、ポールが単独でヴォーカルを担当しています。ゆったりと若干アマアマに歌う所は、「レッド・ローズ・スピードウェイ」ならでは。ポールのバラードと言えばこんなヴォーカル・スタイルを想像している人も多いでしょう。そんな中、せつなさ・寂しさも交えている辺りにメロディ同様物悲しさを感じさせます。特に『Dragonfly』パートのラストで感極まって若干シャウト気味になる箇所はせつなさが倍増しになっています。そこに彩を添えるのは、リンダとデニーによるコーラスです(デニーは当然後付)。ポールのヴォーカルに呼応するように直前の歌詞を反復するのが主ですが、これがまた効果的なんですね。ちょっといいアクセントになっています。さらに、演奏同様だんだんとコーラスパートが増えてゆくという構成になっており、じわじわと感動を呼び覚ますような仕組みです。そして、もう一度『Little Lamb』に戻りますが、この際はポール単独のヴォーカルにデニーがハーモニーを入れます(これが前半と比べると寂しげでいい感じなんだよなぁ)。最後は例の「ラララ〜」の繰り返しで締めくくりますが、コーラス隊も一緒に歌っていて、感動的ムードを高めると共に「『Hey Jude』に似ているなぁ」と思わせるのでした(笑)。手拍子も入っていますし、ね。

 このように感動的なアレンジによる演奏とヴォーカルでせつなく聞かせるバラードというわけなのですが、注目すべきはそれだけではありません。歌詞もまた感動的なのです。詳しく見てみましょう。歌詞は、『Little Lamb』『Dragonfly』両パートとも同じような心情をテーマにした一種のラヴ・ソングなのですが、その内容はそれぞれ微妙に異なります。前者の『Little Lamb』パートでは、死んでしまった友達を惜別する気持ちが歌われています。「僕の心は痛んでいる」「でももう会うことはないだろう」と、二度と会えない友達への深い悲しみを表しています。実はこのパートは、ポールが当時スコットランドの農場で飼っていた羊を亡くしたことに触発されて、その時の心情をつづったものです。そしてそれがタイトルの『Little Lamb』たるゆえんです。羊といえばくしくも「ラム」を思わせますが、そちらに収録されていたら面白かったかもしれません・・・(苦笑)。「ラララ〜」の繰り返しが羊の死(=友達の死)の無念さを代弁しているかのようで、歌詞を味わうとより感動的に響きます。一方、もう片方の『Dragonfly』パートは、羊から一転してトンボに歌いかける内容です。なぜ唐突にトンボなのかはポールのみぞ知る所ですが(汗)、動物と触れ合う機会の多かったポールらしいでしょうか。前半に似た格好で、友達のことをトンボにたとえていますが、こちらでは「なぜ僕の家を訪ねてくるのか分からない」と歌っているように、歌いかけられている相手はしっかり「生きて」います。しかし、「僕はもうここには住んでいない」「君が去ってから何年も経っている」というくだりから、今は離れて暮らしていることが分かります。恐らく喧嘩別れでもしたのでしょうか。そんな別れ別れの状況下で、主人公は「僕はいまだに君を慕っている」「なんで僕らは間違ってしまったのだろう」「僕の心に痛みが戻ってくる」など、友達に対する未練に似た思いをつづっています。友達とやり直したい、もう一度元通りの関係に戻りたい・・・という気持ちがひしひしと伝わってきます。最後には「僕のところに戻ってきて」とまで歌われていますから・・・。

 死んでしまった友達と、離れて暮らす友達。それぞれとの別れを惜しむやるせない心情が、この曲のメロディやアレンジに合わせて実に感動的なのですが、この歌詞には実はとある憶測があります。どうも、ポールがジョン・レノンのことを歌ったのではないかと言われているのです。ジョンといえば言わずもがビートルズ時代のポールのよき相棒でありライバルでしたが、この曲が作られた「ラム」セッションの時期・・・つまりビートルズ解散直後はポールとジョンの仲は最も険悪でした。顔を付き合わして話し合うことはあるはずもなく、それぞれ自らの音楽活動にまい進しつつ、代わりにお互いへの気持ちを自分の曲に表現するというやり方で相手へ意思表示をしていました。「ラム」にも、ポールがジョンのことを歌ったと言われている曲がいっぱい存在します(『Too Many People』『3 Legs』『Dear Boy』など)。そして、同時期に書かれたこの曲も、その部類に入ると考えられているのです。確かに、「もう会うことはない」という一節は険悪な仲になってしまった2人の行く末を歌ったものとも言えますし、「君が去ってから何年も経っている」もまたしかり。そして、「なんで僕らは間違ってしまったのだろう」というくだりでは、ジョンとの関係がこじれてしまったことに対する後悔の念もにじませています。さらに、「僕はいまだに君を慕っている(I miss you so)」という箇所は、当時のポールがジョンのことを決して憎んでいなかったことの証明にも取れます。これらはポールの公式な発言もなく本当にジョンのことを歌ったという確証はありませんが(汗)、ジョンのことを歌ったと十分に推測できる詞作です。興味深いのは、この曲では一連の「レノン=マッカートニー戦争」で見られたような攻撃的な側面が影を潜めていることでしょう。この曲から読み取れるポールの心情は、ジョンに対する尊敬の念と諦めの気持ちです。「ラム」期のポールといえば詞作でジョンをなじったことがクローズアップされますが、その裏ではこの曲や『Dear Friend』のように、仲直りしたいという思いもポールの心に既に芽生えていたのです。結局こうした曲がやむなくアウトテイクになってしまったのですが、発表が遅れたことが「レノン=マッカートニー戦争」の早期終結を図れなかったのは残念です(ジョンからの手厳しい反撃がありましたから・・・)。

 ・・・と来た所でもう書くことがなくなりました(汗)。すみません、無名なアルバムナンバーなので・・・。ちなみに、この曲のアウトテイクは発見されていません。「レッド・ローズ・スピードウェイ」セッション関連のブートでは、しばしば公式テイクがそのまま収録されているほどです(まぁ元々「ラム」のアウトテイクだし・・・)。

 この曲は、私は歌詞をお勧め致します。これはホント感動できます!離れ離れになった友達や恋人を想いながら聴くと、すごく心を震わせてくれると思います。もちろん、当時のポールとジョンの関係を知った上で味わうとより感動的ですが、それを抜きにしても十分感動的です。私も、この曲を聴いていて不覚にも何度か涙を流しかけたことがありましたから(苦笑)。そんな歌詞に、美しいメロディや演奏・コーラス、効果的なアレンジが加わることにより、ポールが手がけた数あるバラードの中でも指折りにせつなく感動的な1曲になるのです。演奏時間が6分半もあり、テンポもスローなので少し冗長でだらだらした感も否めませんが(汗)、それを差し引いても十二分に高得点を与えていい曲です!まさにこれぞ、「隠れた名曲」の称号がふさわしいでしょう。この曲を愛する多くのファンがいるのにも納得です。少し暴論かもしれませんが、「レッド・ローズ・スピードウェイ」はこの曲のためだけに買ってもいいほどでしょう!個人的には、スタンダード化してしまった『My Love』よりもこっちの方がずっと好きです(笑)。この曲はライヴでは一度も演奏されていませんが、ポールにはジョンへのトリビュート・コーナーでこの曲を演奏してもらいたいです。いい加減『Here Today』も食傷気味ですし・・・(汗)。感動的な空気になること間違いなしですよ!日本にはこの曲を演奏するコピーバンドさんが存在するくらいですから、ポールにもできます!

 えーぇ、今回更新が遅れてしまい申し訳ございませんでした。今回もひぃひぃ言いながらの更新だったので、満足に書けたか振り返る余裕もないのですが、ちゃんと書けているでしょうか?(汗)とりあえず重要なポイントは押さえているとは思いますが・・・。

 さて、次回紹介する曲のヒントですが・・・「青い鳥」。そのまんまですが・・・(笑)。お楽しみに!

 P.S. 執筆中にブート「The Alternate Press To Play Album」を聴きました。「プレス・トゥ・プレイ」マニアの私にとっては大満足の内容!

 しかし、『Only Love Remains』が音飛びして修復しても直らない・・・(涙)。『Feel The Sun』の完全版が最高!

 (2010.1.23 加筆修正)

アルバム「レッド・ローズ・スピードウェイ」。ポールらしいバラードの佳曲が数多く収録された、初期ウイングスの名盤。この曲は必聴です!

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