Jooju Boobu 第58回

(2005.9.25更新)

Bip Bop(1971年)

 今回の「Jooju Boobu」は、ウイングスのデビューアルバム「ウイングス・ワイルド・ライフ」(1971年)に収録された『Bip Bop』を語ります。天才メロディ・メイカーとして、ポップやバラード、ロックなど多くの名曲を書き続けるポールですが、そんなポールの大きな持ち味であるポップ魂のエッセンスは、実は普段過小評価され気味である「お遊びソング」にこそ表れます。特に、ポールが自分の子供たちのために書いた童謡風ナンバーは、中でも「ポールらしいポップ・センス」を味わうことのできる宝箱です。今日紹介する『Bip Bop』もそんな一例で、一般的には決して高い評価を受けていませんが、ポールらしさを再確認するにはうってつけです。そんなこの曲の魅力を語ってゆきたいと思います。今回は、同じアルバムに収録された同曲の変奏曲『Bip Bop Link』もあわせて紹介します。

 まずは、『Wild Life』に続いてこのコラムでは2度目の登場となるアルバム「ウイングス・ワイルド・ライフ」の制作背景をざっと振り返ってみます。ビートルズ解散後、1970年にソロ活動を始めたポールは、やがて愛妻リンダと一緒にバンドを始める決意をします。元々バンドを組んでコンサートをすることを希望していたポールは、その中心に当時大きな心の支えとなっていたリンダを据え、夫婦共にステージに立つこととしたのです。ポールとリンダは早速そのバンドに参加してくれるメンバーを探します。結果、2枚目のソロアルバム「ラム」のセッションに参加したドラマーのデニー・シーウェルと、ポールの旧知の親友でギタリストのデニー・レインが加入することになり、ここに'70年代のミュージック・シーンを彩ることとなる一大バンド「ウイングス」が結成されます(1971年8月)。その結成発表もつかの間、ポールは、この新生バンドを早く世に出したいと考え(当時のポールが評論家からボロクソ言われていたことに対する焦りもあったことでしょう)すかさず新たなバンドメンバーと共にリハーサルを開始。この時正式なバンド名も決まっていなかったといいます。十分な練習もままならない中、なんとたった3日間でニュー・アルバムのレコーディングを終えてしまいます。さらに2週間に及ぶミキシングを経てあっという間にアルバムは完成。これがウイングスのデビュー作となった「ウイングス・ワイルド・ライフ」で、その年末にはもう発売されました。ウイングスが、世界に向けて大きな羽ばたきを始めた瞬間でした。

 しかし、この「ウイングス・ワイルド・ライフ」、アルバム全体に通じるラフな音作りと、ウイングスの知名度の低さが原因でチャートの成績は芳しくありませんでした(英国11位、米国10位)。さらに、ポールを批判し続けてきた評論家たちからもここぞとばかりにきついことを言われてしまいました。結成したばかりのバンドによる、リハーサル不足の中での短期間のレコーディングなので、酷評されるのも無理もないでしょうけど・・・。現在は、ラフさの中に光り輝くダイアモンドの原石のようなものを感じ取れ、再評価が進んできているものの、それでもまだポールやウイングスのキャリアでは地味なアルバムになってしまっています。特にラフさが目立つA面を中心に収録曲が注目されることもあまりなく、A面2曲目という位置にもかかわらず『Bip Bop』も一般的には知られない曲のままです。

 さて、この曲の話に移りましょう。この曲は、冒頭で触れたとおりお遊び感覚が光る童謡風ナンバーです。できたのは1971年の「ラム」セッション頃と思われます。ちょうどこの頃はポールの創作意欲が高く、「ラム」や「ウイングス・ワイルド・ライフ」で発表される多くの楽曲が生まれていますが、まさにそんな量産体制の中で生まれた曲でした。この曲ができたきっかけは、当時1〜2歳だったポールの娘・メアリーが何気なくつぶやいた「Bip Bop」という言葉で、それに触発されて書いたそうです。後に写真家として成長するメアリーですが、既にこの年齢にして父親の曲作りに貢献するんですからすごいですね。さすが音楽家一家。さらにこの翌年には『Mary Had A Little Lamb(メアリーの子羊)』という曲のモデルにもなっており、メアリーは2曲もポールの量産を手助けしたことになります。ポールは様々な事象に触発され、曲の題材にしていますが、やはり多いのは妻のリンダや息子・娘たちといった自分の家族についてですね。特にこの時期はポールが世間を嫌って田舎暮らしをしながら家族の大切さを噛み締めていた頃ですから、リンダへのラヴ・ソングや子供たちへの歌が多いです。ポールの場合も、やはり一番身近な出来事は家族との間のコミュニケーションですね。曲のインスピレーションを与えてくれたメアリーへの感謝か、この『Bip Bop』は子供たちと一緒に歌えるような、シンプルな歌に成長しました。

 ところで、ポールの「童謡ナンバー」というと何を思い浮かべますか?ビートルズ時代では『Yellow Submarine』『All Together Now』、ソロやウイングスでは『Mary Had A Little Lamb』『Let 'Em In』『We All Stand Together』なんかがその例ですね。まさに子供向けといった趣のあるこうした曲たちですが、残念なことにこういった曲はしばしば「単調でつまらない」「稚拙で陳腐だ」などといった評価がされ、敬遠されています。一般的な評価も、他のポップ・ソングやバラードに比べると高くなく、ポール・ファンの中でもお気に入りに挙げる人は少ないです。それは、『Ob-La-Di,Ob-La-Da』が「史上最悪の曲」と評されてしまうように(汗)、「童謡は大人が聴くポップやロックじゃない」という偏見があるからでしょう。しかし、こういった単純明快な童謡風ナンバーにこそ、ポップ・センスの真髄は色濃く表れるのです。まして、天才メロディ・メイカーとして数え切れぬほどの珠玉のポップナンバーを書いてきたポール。そんな彼が書く童謡風ナンバーには、極上のポップ節がたくさんあふれているのです。シンプルなメロディラインにシンプルな歌詞。誰でも気楽に歌えて、誰でも素直にノってしまう。そして誰でも楽しい気分になってゆく。子供向けゆえに作りこまず、何の複雑な工夫もない分、ポールが作るポップのエッセンスが分かりやすく凝縮されており、「ポップとは何か」を再確認させてくれるのです。それを「軟弱だ」といって一蹴してしまうことは、ポールのメロディ・メイカー節やポップ節の魅力に目をつぶってしまうのと同じことなのです。こんなもったいないことはありません!この曲も、単純な繰り返しを中心とした、辛口に言ってしまえば「つまらない、退屈する」曲なのですが(汗)、1回聴いただけですっかり覚えてしまいそうな分かりやすいメロディに、キャッチーな歌詞と、ポールのポップを堪能するにはうってつけの1曲なのです。ですから、実は何気に見逃せない存在なのです。そういった観点で聴くと、今まで敬遠してきたこの手の「童謡風ナンバー」も楽しめると思いますよ。

 この曲の歌詞は、もちろん童謡風に仕上がっています。そしてこれが、恐らくポールの全曲中で最も脈絡のない詞作のひとつといえるでしょう。大体、タイトルの「Bip Bop」からして意味不明です。訳しようがありません(汗)。それはもちろん、当時1〜2歳のメアリーが発した適当な言葉だから意味不明になるのも当然ですか。しかしメアリーは、一度聴いてしまうと頭に残って仕方ないこのフレーズを幼いながらよく思いついたものです。この曲の不思議なキャッチーさを引き出す、なくてはならない存在ですから、その貢献度は大きいです。無性に楽しいポップ・ソングを生み出してしまうのは、さすがポールの愛娘?そのフレーズを元に無性に楽しいメロディを生む父親ポールもさすがですが。歌詞の大半は、この「Bip Bop」の繰り返しですから、ほとんど意味を成さないことが分かります(笑)。その他の歌詞も他愛ないもので、別段意味はありません(むろんラヴ・ソングではない)。「いい子のように振る舞いなよ」という一節は子供に向けて歌ったもの、とも取れますけど。楽しみながらしつけができるというわけですな。メアリーはじめ子供たちもいい家庭に生まれたものです。父親が童謡を自分で作ってしまい歌って聞かせてくれるんですから!それも天才メロディ・メイカー!うらやましいじゃないですか!

 そもそもこの曲は、ポールが子供たちのために書いた曲だけあって、家族の中で歌えればいいわけで、演奏スタイルも初めはアコギ1本の弾き語りでした。まさに食後の一家団欒の席で爪弾きながら、子供たちがはしゃぐのを傍目に歌う、という感じです。これは、後述するホーム・デモが証明してくれますが、アットホームな1曲だったわけです。また、ロンドンから田舎に引っ込むのと前後して、ポールはアコギ弾き語りによる曲を大量に書いています(他に『Heart Of The Country』『Hey Diddle』『Mama's Little Girl』など)が、この曲もそうした環境を背景に生まれたと言っていいでしょう。スコットランドの田舎の空気が伝わってくるような、シンプルなギターサウンドです。童謡ながらどことなくカントリー風味が漂うのも、そうした農場生活と無関係ではないようです。

 そうした家庭用のアコギ弾き語りだったこの曲ですが、ウイングスというバンドとしてアルバムに収録する際には、しっかりとしたバンドサウンドにしています(そりゃあ結成したてのバンドで「2人のデニー」を無視してポール&リンダだけで録音するというのもおかしいですしねぇ)。とはいえ、メンバーが少なかったことや練習を重ねる暇もなく演奏慣れしていなかったこと、そして何よりレコーディングを短期間で済ませてしまったことがあり、非常にシンプルなアレンジになっています。演奏はデニー・レインのギターとポールのベース、デニー・シーウェルのドラムスのみという編成です。それも、いかにも3日間で済ませましたというような出来になっています(汗)。単純な構成も災いして特に凝った演奏もなくダラダラと進んでいる感があり、イントロのたどたどしいギターフレーズはじめ、まるでリハーサルを収録してしまったかのよう。さらにミックスもいい加減ぽいもので音質が悪く、「これが本番テイクか?」と耳を疑ってしまうことでしょう。お世辞にも完成度は高いとは言えない内容です(汗)。これが評論家の非難を浴び、ファンから敬遠される理由になってしまっているのですが・・・。さらにポール自身も1986年のインタビューで「未完成な曲」の例としてこの曲を挙げ、「うへっ、聴けたもんじゃない」なんてコメントをするほどです(汗)。

 しかし、よく聴けばこの曲には出来立てのバンドの持つ「勢い」と「ホットなバンド魂」が感じられます。そこが「ウイングス・ワイルド・ライフ」の持ち味であるのですが、飛び立たんとするウイングスによる演奏は上手くないけど(苦笑)生き生きとしています。この曲も見た目はお粗末ながらも、デニー・シーウェルのドラミングを中心に独特のファンキーなグルーヴを生み出していて、これがなかなか心地よいです。どこか'50年代のオールディーズを思わせるラフな雰囲気は捨てたものじゃあありません。そう考えると意外とかっこいいかも、この曲・・・(笑)。元々は子供向けのアコギ弾き語りでしたが、ここでは確実にバンド用のナンバーに変身しています。先述したたどたどしいギターフレーズに太いベースが入り、さらにファンキーなドラムスが入ってくるイントロは効果的でなかなか楽しいです。そして、バックがシンプルなおかげで、メロディラインや歌詞のシンプルさが際立つ要因となっているのでした。ポールも、「今聴くと好きじゃない曲」(1986年インタビュー)というのはちょっと言いすぎではないかと思いますが・・・。

 たった3日間のレコーディングと2週間のミキシングで完成してしまった「ウイングス・ワイルド・ライフ」は、演奏の貧弱さや音質の悪さなど手抜きが非難されてきたのですが、実は結構凝っている所は凝ってあります。例として『Dear Friend』のストリングスアレンジが挙げられますが、この『Bip Bop』もまた一工夫されています。というわけで、その一工夫が施されたヴォーカル面について語ります。この曲で聴かれるポールのヴォーカルは、ハスキーっぽい風変わりなものとなっています。まるでおどけたかのような素振りを見せてくれる歌い方ですが、これは実はテープの回転速度を上げているようです。そのため、ポールの声が高めの変てこな声になっていると言うのです。ブート(「Wild Life Sessions」など)には、この速度を実際のものに落としたものが収録されていますが、演奏などを聴く限りどうやらポールのヴォーカルだけ回転速度をいじっているようです(他のパートは逆に変になるため)。さらに、ヴォーカルを風変わりにさせているのは、過剰気味にかけられたエコーでしょう。このアルバムにしては凝ったエフェクトですが、ユニークな雰囲気を出すのに成功しています。間奏などで入れるアドリブがエコーで響いて聞こえるのは面白いです。さっき言ったオールディーズ風のファンキーな作風にもぴったりマッチしています。

 そして、ヴォーカル面の面白さを引き出しているのが、随所で入るリンダの“Then you go”という合いの手。リンダらしいちょっと太い声がとぼけ気味に繰り返し入るので笑ってしまいます。しかも、時々入ったり入らなかったり、後半にいたっては早口になったりと、複数のパターンがあって面白いです。ポールと並んで、リンダも子供たちのために一緒になって歌って楽しそうです。こちらも子供思いの親ですね。間奏でうっすら聴かれる歌はあまり上手ではないですが(汗)、リンダらしくほのぼのしたコーラスです。いつの時代もそうですが、特にビートルズ解散後〜ウイングス初期にかけてはポール&リンダの掛け合いやデュエットが楽しい曲がいっぱい生まれていて仲の良さをうかがわせます。曲の最後には笑い声(リンダ&子供たち?)が入っていて、レコーディングが和気あいあいとしたものだったのかなぁ、と思わせます。

 この曲は先述の通り、「ウイングス・ワイルド・ライフ」のA面2曲目に収録されたのですが、そのB面(『I Am Your Singer』と『Tomorrow』の間)にはこの曲をアレンジしたインストナンバーが収録されています。これは、ポールがアコギ1本で弾いた1分足らずの曲で、恐らくアドリブで演奏したものではないか?と思わせます。『Bip Bop』に似たメロディを聞かせてくれます。収録曲不足の穴埋めのためだったのか、「ウイングス・ワイルド・ライフ」には、この曲の他にもう1曲短いインストが入っており、そこが散漫さを指摘される要因にもなっているのですが(汗)、こちらは短いながらも妙に心に残る演奏です。ちなみに、この曲はアナログ盤時代にはタイトルがついてなく、シークレット・トラックの扱いだったのですが、CD化の際には初めて『Bip Bop Link』と名づけられました。今だとさほど驚かないですが、タイトル表記のない当時では「おおっ!」と驚く存在だったかもしれませんね。

 この曲のアウトテイクは、先述の回転速度を落とした「オリジナル・ヴォーカル・ヴァージョン」と、後述するホーム・デモ以外は発見されていません。「ウイングス・ワイルド・ライフ」セッション自体、3日間で終わらせたこともあってアウトテイクなどがあまり発見されていないのです・・・。

 さて、元々は子供向けに書かれた『Bip Bop』、なんとウイングス初のコンサート・ツアーとなる1972年の英国大学ツアーのセットリストに入っているのです!さらにはそれにとどまらず、同年のヨーロッパ・ツアーでも取り上げているのです!当時オリジナル曲の数が足りなかったせいもありますが、こんな曲をライヴのレパートリーに入れて披露するとはウイングスも大胆なバンドですね・・・。しかもヨーロッパ・ツアーでは、序盤の7月のコンサートではなんと!オープニングナンバーとして演奏しているのです!(翌8月からはオープニングは『Eat At Home』に変更となっている。)私の手持ちのブート「Wings Over Switzerland」(1972年7月22日、モントルー公演)でもオープニングで演奏されていますが、司会者の「ポール・マッカートニー&ウイングス!」の掛け声の後に流れてくるのがあの頼りないギターフレーズ・・・このインパクトはすごいです(笑)。そんな曲でも観客の反応がよいのもまた驚きですが。しかし面白いのは、ライヴでの演奏はアルバムで聴かれる演奏よりもはるかにバンドサウンドと化している点でしょう。これが意外とかっこいいんです。ライヴならではかテンポも速めで、ドラミングのグルーヴも力強くよく出ていますし、かなりエレキ色が濃くなっています(新たなギタリスト、ヘンリー・マッカロクの影響もありそう)。間奏の迫力なんか、聴き比べてみると一目瞭然です。そしてポールのヴォーカルは、ここではシャウト気味に崩し歌いで歌われていてまたかっこいい。おふざけな雰囲気の一切ない熱唱です。リンダの“Then you go”も健在。こちらも心なしか力強く歌われている気がします。これなら、いくら童謡ナンバーとはいえライヴにぴったりですね。当時のウイングスらしいワイルドな演奏です。それでも、こんな曲をもライヴで演奏してしまうというのはやはり感心します。よほどの度胸がないとできないはずですから。さすがに、次作が出る1973年にはレパートリーから外れていますけど・・・。でも、『Let 'Em In』や『C Moon』がライヴの定番になるほどですから、ポールらしいといえばポールらしいのでしょう。ポールにはまたライヴで演奏してほしいですね(笑)。しかもオープニングで!

ドキュメンタリー「Wingspan」より、この曲と『Hey Diddle』を歌うポールとリンダ。

 時代は流れて2001年。ウイングスが解散してから20年経過したこの年、ウイングスの歴史を追ったドキュメンタリー番組「Wingspan」がTVで放送されました。大人になったメアリー(この『Bip Bop』の考案者である!)が、父・ポールにインタビューを行う形でポールのビートルズ解散後からウイングス解散までの10数年を振り返るという内容は、さながら「ウイングス・アンソロジー」と呼べるものでした。その中に、ポールがスコットランドの農場でリンダや子供たちの一緒にこの曲を歌う様子を撮影した映像(1971年6月頃)が収録されました。このデモ・ヴァージョンは、以前にもウイングスのドキュメンタリー「Wings Over The World」などで公式に見ることができましたが、改めて再録された所、ポールがかなり思い入れを抱いている映像ということが分かります。この時はポールのアコギ弾き語りで、同時期に書いた未発表曲『Hey Diddle』(1971年に正式録音、後に幻の未発表曲集「Cold Cuts」に収録予定だった)とのメドレーで演奏されましたが、まさに「一家団欒」といった雰囲気で、リンダがハーモニーをつけ、子供たちがはしゃぐ声も聴こえます。当時のポールにとって唯一の安らぎの場所であった家庭生活がいかに充実した楽しいものであったかが伝わってきます。ポールも弾きながらおどけてみせて楽しそうです。音楽にあふれたマッカートニー一家といった感じですね。こんな家庭で育ったメアリーたちがうらやましいです。なお、この時は公式テイクよりはキーを低くして歌っています。元々の童謡ナンバーぽさはよく出ています。そしてこの音源、ドキュメンタリーにあわせて制作されたポールの何度目かとなるベスト盤「ウイングスパン」にも収録されました。『Hey Diddle』はこの時初めて公式発表され、ファンにとってはうれしい音源でした。当初は「ウイングスパン」は「ウイングス・アンソロジー」としてアウトテイクを大量に詰め込んだアルバムになる予定だったそうですが、ポールの整頓下手のせいか(苦笑)結局はこのメドレーのみが未発表音源となりました・・・そこはちょっと残念。しかし、これを「ウイングスパン」に収録した辺り、ポールにとってリンダや子供たちとの時間がいかに大切であったかがよく示されています。

 この曲、実は私、当初あまり好きではありませんでした(汗)。音も貧弱で、歌詞も意味不明で、取り柄などないものだと思っていました。もっとも、アルバムヴァージョンより先に「ウイングスパン」収録のデモ・ヴァージョンを先に聴いているのですが・・・(苦笑)。しかし、変てこなヴォーカルとリンダの合いの手、そして何より繰り返し繰り返し歌われるあのメロディを徐々に「面白い」と感じるようになりました。今では「ワイルド・ライフ」中屈指のお気に入り曲になっています。確かに、この曲は中毒性ありますね(笑)。何度も聴くと耳から離れなくなりますよ!

 さて、今回非常に困ったのがイラストです。タイトルも無意味の「Bip Bop」で、おまけに歌詞までも無意味・・・これほどイラストのネタに困った曲はこれまでありませんでした(汗)。仕方ないので、「ウイングス・ワイルド・ライフ」の裏ジャケットにあるポールが描いたイラストを適当に模写+色塗りしたものを描いてしまいました。はい、手抜きです(汗)。というより、「Bip Bop」で一体何を描けば・・・?

 これまでこの曲の存在を敬遠していた方、今一度「ウイングス・ワイルド・ライフ」を聴き直してみてください。ポールの「ポップ魂」の力を体感し、きっとはまることでしょう。音がラフでも、歌詞が適当でも、ポールは親しみやすい素敵なポップを生み出してゆくのです。あと、この曲は特にライヴ・ヴァージョンが最高ですね。ぜひ聴いてみてください。印象ががらっと変わるはずです。ポールにももう一度取り上げてほしいですね(笑)。

 さて、次回紹介する曲のヒントですが・・・「ポールご推奨ナンバー」。お楽しみに!

 (2009.5.05 加筆修正)

 

(左)アルバム「ウイングス・ワイルド・ライフ」。音はラフなものの、バンドの勢いが感じられるウイングスのデビューアルバム。隠れた名曲多し!

(右)ベスト盤「ウイングスパン」。この曲と『Hey Diddle』の弾き語りデモを収録しています。

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