Jooju Boobu 第42回

(2005.7.31更新)

Let 'Em In(1976年)

 今回の「Jooju Boobu」は格段とメジャーになります。今回は、1976年発表のウイングスのアルバム「スピード・オブ・サウンド」から、オープニング・ナンバーの『Let 'Em In』を語ります。邦題は「幸せのノック」。『With A Little Luck』『You Gave Me The Answer』と並ぶ、「幸せの〜」シリーズです(笑)。当時の東芝EMIさんらしい邦題ですな。この曲はアルバムからシングルカットされ、英米共に大ヒットとなります(詳細は後述します)。そのため、後のベスト盤にも収録され、ポールの曲の中では比較的知名度の高い、そして入手しやすい曲となっています。しかしこの曲、実は蓋を開ければ「なぜにこの曲が大ヒット!?」という感の強い楽曲です(そう言えてしまいます)。なぜそんな失礼なことを言うのか(汗)、それはこの後明らかにしてゆきますが、その後でちゃんと擁護しますのでご安心ください(苦笑)。「意外にもヒットしてしまった」この曲の、真の魅力を伝えるべく今回はこの曲に焦点を当ててゆきます。

 アルバム「スピード・オブ・サウンド」収録曲を紹介するのは、このコラムでは『Beware My Love』に続いて2度目となりますので若干おさらいしつつ、この曲がヒットするまでの背景を見てみます。1976年当時のウイングスは、一番有名で「絶頂期」とよく評される5人編成でした。前年にアルバム「ヴィーナス・アンド・マース」を発売しコンサート・ツアーを精力的にこなしていました。そんなウイングスを率いていたポールの目指していた夢は、難関と言われていた米国でのコンサート・ツアーでした。一歩ずつ、徐々に世界制覇に駒を進めていたウイングスにとって最後の大きな壁が、広大な超大国にして世界中の音楽が集まる地での成功だったのです。これを成功させるためには強力な新曲が必要だ・・・そう考えたポールはツアーの間を縫って作曲にいそしみ、1976年初頭の短期間に、ロンドンにメンバーを集め急ごしらえでアルバムを1枚制作しました。これが「スピード・オブ・サウンド」です。短期ヨーロッパ・ツアーが終わった3月にリリースされましたが、これが英国2位・米国1位の大ヒットを記録。そしてその翌月にシングルカットした『Silly Love Songs(心のラヴ・ソング)』がこれを上回る記録的な大ヒットに。当時のウイングスの勢いを象徴する出来事でした。これで上昇気流に乗ったウイングスは、いよいよ念願の全米ツアーをスタート。5月3日〜6月23日の間、全31公演が開催されました。全米ツアーの大熱狂ぶりは皆さん周知の通り。ウイングスの人気の1つのピークを迎えるに至りました。この曲のシングルジャケット(日本盤)ではないですが、ウイングスが「ビートルズ級」になった瞬間でした。

 そして、そんな全米ツアーの興奮覚め止まぬ中アルバムからシングルカットされたのが、今回ご紹介する『Let 'Em In』でした(1976年7月23日、B面は『Beware My Love(愛の証し)』)。そう、まさにウイングスが世界を制覇しその活動の頂点に立っていたちょうどその時のシングルリリースだったわけです。結果的に、チャートでは全英2位、全米3位(ただしキャッシュボックス誌では堂々の1位!)と、『Silly Love Songs』ほどではありませんがきらびやかな記録を残したのでした。シングルカットながら、全米ツアー大成功の直後という時代性がこの曲の大ヒットを後押しする形となったのでした。

 以上、この曲が大ヒットした要因は説明しましたが、ここで「なんでこの曲はヒットしたらおかしいの・・・?」という疑問・反論が聞こえてきそうです。しかし、同時期にヒットした『Silly Love Songs』とこの曲の間には決定的な違いがあるのです。それは・・・「曲の持つ素質」です。『Silly Love Songs』は、一聴すればお分かりの通りすべてが完璧に計算された隙のないポップナンバー。これがツアー中でなくても大ヒットしたことは間違いないでしょう。しかし、この曲は・・・時期を外していたら恐らくヒットしていなかったと思います(最高でも中ヒットくらいか・・・?)。全英2位・全米3位というチャート結果に見合うだけのヒット性が、この曲にはどうも見られないのです。それもそのはず・・・この曲の正体は「単調なお遊び歌」なのですから!『Mary Had A Little Lamb』辺りが1位を獲得したと極論すれば分かりやすいでしょうか(笑)。

 この曲は、恐らく、ポールが軽い気持ちで書き、軽い気持ちで録音したものと思われます。一説には元々リンゴ・スターのために書いたものを自身で取り上げることに決めたという話もあるそうですから・・・。自分で歌わず人(しかもリンゴ)に譲る予定だった程度の曲、というわけです(こう書くとリンゴに失礼ですが)。そのためか、この曲は極めて単純明快なメロディ・歌詞・構成の繰り返しで出来上がっています。それはポールの長所でもあるのですが、この曲の場合悪く言えば「単調」でもあります。また、特別ヒットしそうなリズムだったりテンポだったりするわけでもなく(むしろチンタラしている・・・?)、さらに歌詞にいたっては(後述しますが)他愛ないものです。それが大ヒットを記録し、いまやベスト盤に多く収録され「名曲」と宣伝されているのです。曲そのものを冷静に見て考えると、その事実に「なぜ・・・?」と思ってしまうことでしょう(苦笑)。これはやはり、曲そのものの実力というよりは、当時のウイングス人気によるおかげといえるでしょう。「全英2位」「大ヒット曲」という称号は、この曲にはあまりふさわしくないものなのです。

 とはいえ、大ヒットしたことは似合わなくとも、この曲にもポールらしい、そしてウイングスらしい魅力がたっぷり詰まっています。「名曲」とまではいかないまでも、この曲には、単なるお遊び歌では切り捨てることのできないものがあるのです。というわけでここからはチャートうんぬんとは関係なくこの曲の真の魅力を語りつつこの曲を擁護してゆきたいと思います(笑)。

 先述したように、この曲のメロディは極めてシンプルで、2つのパートのみで成り立っています。すぐにメロディを覚えてしまえるほどのシンプルさは、ポールならではですね。しかも極めてキャッチー。基本的にはこれが交互に登場する曲構成となっているのですが、これがさっき言ったような「単調」さを出しています。ここで終わってしまえば、ただ繰り返しが延々と続く、聴いていて退屈する駄作に成り下がってしまうのですが・・・しかしそこはポール。単純明快な曲構成を魅力あふれる楽曲に仕上げてくれています。それが、効果的に挿入されたアレンジです。この曲では、ポールのアレンジャーとしての優れた手腕と発想が惜しみなく発揮されています。そこで、この曲の命ともいえるアレンジの妙について触れてゆきたいと思います。

 その前に、アレンジと密接に関係している要素を語らねばなりません。それが歌詞です。さっき思いきり「他愛ない」と言ってしまいましたが・・・(汗)。メロディや構成に負けじとシンプルな歌詞は、簡単な単語のみを使っているので英語を習いたての中学生でも内容を理解できてしまうほど(苦笑)。リンゴに贈る予定だったことを考えると納得いきますね。その内実は、タイトルの『Let 'Em In』どおりに「ドアを開けてみんなを中に入れて」と歌いかけるものです(蛇足ですが、「them」でなく省略形「'em」を使用しているのが個人的にツボです)。元々は全米ツアーと同年の1976年にちょうどアメリカが建国200周年を迎えるのに気づいたポールがそれを記念して書いたそうですが、そこから発展させて「みんなを家に誘って楽しくパーティーしようよ」という内容にしたそうです。ポールなりのアメリカ国民へのお祝いというわけですね。

 第1パートは、ノックしたりベルを鳴らしている人たちを中に入れておやりと歌いかけてくれます。それだけの内容です(汗)。繰り返し歌われると、たくさんの人たちがやってきそうですね。そして第2パート、ここでは一転して何やらたくさんの人名が登場します。パーティーに招かれた人たちでしょうか。節によって微妙に変化しつつ、計8名の顔ぶれです。ここで普段のポールなら、ストーリーテラーぶりを発揮させて架空の人物を列挙しそうですが、ここではちょっと趣向を変え、全員実在の人物となっているのが面白い点でしょう。ポールいわく「自分がホーム・パーティーに誘いたい人をリストにした」そうな・・・。いろんな名前が出てくると、なんだか賑やかそうでうきうきしてきてしまいますね。

 ちょっとその内訳を紐解いてみましょう。まず「Sister Suzie」ですが、これは愛妻リンダのこと。これはマニアックな話でちょっと分かりづらいですが、リンダはこの曲の翌年の1977年に「Suzy & Red Stripes」という変名で自作曲『Seaside Woman』(録音は1973年)をシングル発売しています。リンダの変名はこの曲の書かれた頃には既に構想されていたことをうかがわせます。「Brother John」は、もう言わずもがポールにとって唯一無二の相棒、ジョン・レノンのことです。ビートルズ解散以降はお互い悪口を曲に託してきたジョンとポールですが、この時期仲が戻りつつあることを匂わせます。「兄弟」と呼ぶほどですから、プライベートに何らかの進展があったのかもしれません。ビートルズ・ファンにとってはちょっとうれしい登場でした。「Martin Luther」は、黒人解放運動に尽力を注いだあのキング牧師。唯一ポールの知人ではないですが、きっとポールが敬愛していたのでしょう。「Brother Michael」は弟のマイク・マクギア。兄には到底追いつきませんがミュージシャンとして2枚のアルバムを出しています(ポールがその制作に全面協力したのは有名)。「Phil and Don」はエバリー・ブラザーズのこと。ポールとは親交があり、後年『On The Wings Of Nightingale』という曲をポールが提供しています。「Auntie Gin」はポールのおばさんのジンで、ビートルズ時代の『I've Just Seen A Face(夢の人)』の仮題が「Auntie Gin's Theme」だったというのはマニアの間では有名な話。残る「Uncle Ernie」「Uncle Ian」はちょっと不明ですが、恐らくポールの親類でしょう。

この曲をピアノで演奏するポール(映画「ロック・ショー」より)。

 この曲のアレンジはそんな「彼らを中に入れて」と歌う歌詞の世界を音にしたかのように効果的に挿入されてゆきます。まず、冒頭(アルバムの冒頭にもあたる)はチャイムの音で始まります。誰かが戸口でベルを鳴らしているのでしょうか。外に誰がいるのか?というような、期待感を与えてくれます。実はこのチャイムは実際にポールの家の玄関で使用されていたベルの音をそのまま採用しています。しかもそれは当時ウイングスのドラマーであり、当然この曲でもドラムスをたたいているジョー・イングリッシュからのプレゼントらしい・・・。メロディは日本では学校のチャイムそのまんまなんですけど(苦笑)。そのチャイムに導かれるかのように演奏が始まり、ポールのヴォーカルが入ってゆきますが、序盤はピアノ・ベース・ドラムスのみの本当に質素な音構成です。べーシック・トラックは一発録りらしく、ポールはピアノを演奏し、ベースはギタリストのジミー・マッカロクが担当しています(ちなみにこの曲ではギターは使用されていない)。第1パートは、この質素な音構成で進行してゆきます(この後の繰り返しも一緒)。

 続いて登場するリンクでは、ドラムロールにあわせて親しみ深いフルートのメロディが入ります(1回目にはドアをぎーっと開ける音が入る)。ドラムロールは本来ギターを弾いているデニー・レインがオーバーダブしているようです。まるで誰か(たち)が戸口に向かって列を作って足音を鳴らして行進してゆく様子のようです。これも、この後の繰り返しで随所に登場しますが、まるで次から次へと客が訪れてくるかのようで聴いていて楽しいですね。そして第2パートになると、それまでの不安げな雰囲気がぱっと明るくなり、先述のように招かれた人たちの名前が呼ばれてゆきます。ここでドアが開かれ室内が賑やかになったかのようです。しかも、名前を呼ぶたびに1回目はハイハットが、2・3回目はブラス・セクションが入るというアレンジが施されており、それが効果的です。フルート含めブラス・セクションは当時のワールド・ツアーに同行していたブラス・セクション4人組がそのまま参加しています。

 その後、ホルンの間奏(第1パート)を経て「第2パート→第1パート」の繰り返しとなりますが、基本的は先述のアレンジのままブラス・セクションやコーラスなどは配置が次々と変わってゆきます。これが、単調な曲を単調に聴かせないポールのアレンジの妙でしょう。また、序盤はあやふやな感じだった空気が徐々に賑やかでカラフルな、楽しい空気に変わってゆきます。何度も言いますがみんながやってきてパーティーが始まるまでの様子をそのまま演奏に表したかのようです。ストーリー性がある、といってもいいでしょう。そしてちょっとひねったのがエンディング。ドラムロールを交えたリンク部分を繰り返しつつ賑やかにフェードアウト・・・と思いきや急に音量が上がってしっかり終わっています。たまにあっと驚くエンディングをこしらえるポールですが、一筋縄でいかないのがポールらしいユーモアでお遊び歌らしい楽しさですね。

 効果的なのはヴォーカル面においてもいえるでしょう。この曲でのポールのヴォーカルは、前回語った『Helen Wheels』のように(いや、それ以上に)非常にリラックスした歌い方がされています。気を抜いた、という表現の方が適切でしょうか。まぁ楽しい曲で気張ってもいけませんからね。序盤のどこか不安げなヴォーカルが前半の雰囲気作りに役立っています。さっきのストーリー性ではないですが、まるで一人家の中で誰かが来るのを待っている心境のようです。第2パートが登場して以降はその不安げな面持ちはなくなり、逆に楽しそうな姿がうかがえます。リード・ヴォーカル以上に楽しい雰囲気を出しているのがコーラスです。第1パート・第2パート共に随所で挿入されていますが、これまたリラックスしています。節によってアレンジが微妙に変わってゆくのが飽きさせません。どの箇所もいかにもウイングスらしいキャッチーなコーラスですが、個人的には第2パート最後の“Let 'em i----n”の箇所が一番ウイングスぽく(&ポールぽく)感じます。そして、この曲のリラックスムードを一番楽しめるのがエンディングでしょう。「ウー」のコーラスのバックでなにやら話し声が聞こえます。そして、誰か[いや、あれは間違いなくデニーであろう!]が“Someone's knocking at the door〜”と適当に歌っているのが小さいミックスで入っているのです!この部分が一番肩の力が抜けていて聴いていて楽しくなる瞬間ですね。そしてデニーはお茶目だな、と(笑)。楽しい雰囲気がたまらなくてついつい後ろで歌っちゃったというわけですか。

 このように、親しみやすく覚えやすいシンプルなメロディと歌詞に、楽しいヴォーカルワーク。そしてだんだん賑やかになってゆく、ストーリー性豊かな絶妙なアレンジ。これを単に「お遊び歌だから退屈、つまらない」と決め付けるのはもったいないです。単純に楽しめ、一緒に歌ってしまう。しかもアレンジがぴったりときまっている。天才メロディ・メイカーにしてポップ作りの名人、そして敏腕アレンジャー、ポール・マッカートニーならではの醍醐味じゃないですか。確かにこの曲にしては異様にヒットしすぎた感はありますが(汗)、だからといってこの曲の魅力がいささかも消えることはないのです。

 さて、この曲に関していくつか補足を。まずアウトテイクですが、これは残念ながら発見されていません(汗)。そもそも、「スピード・オブ・サウンド」セッションは短期間に行われたため未発表曲すら存在しないという有様で、アウトテイクもほとんど発見されていません(つい最近『Beware My Love』のアウトテイクが見つかったようですが・・・)。それと「ない」つながりでもう1つ、この曲にはシングルにつきもののプロモ・ヴィデオが存在しません(汗)。ポールのシングル曲はほとんどに何かしらプロモがあるのですが、やはり当時はツアーで多忙だったのでしょうか?1975年〜1976年のシングル曲はライヴ映像を元にしたものも多く多忙ぶりをうかがわせますが、それでも何かしらプロモはあるというのに・・・。

 続いてシングル発売に関して補足。チャートでの結果は先に述べたとおりですが、いくつかの国では本国(英国)とは違ったシングルリリースがされています。まずわが国日本ですが、他の国とは違ってなぜかプロモ・エディットが収録されています。このプロモ・エディットは、原曲の2'24"〜3'34"をカットし、1節分短くなっています。また、エンディングがフェードアウトしたまま音量が上がらずに終わってしまう、という妙な編集がされています(苦笑)。このプロモ・エディットは未CD化でレア・アイテムです(特に海外では!)。一方フランスでは、なぜか12インチシングルで発売されています(世界規模で見ればこれがポール初の12インチシングル?)。しかもレーベルには「Special Disco Mix」と記載されています!しかしながら、『Beware My Love』と同じく収録されているのはアルバムと全く同じ内容という有様です・・・(苦笑)。

 この曲のカヴァー・ヴァージョンはいくつか存在するのですが、中でも有名なのが2つあります。1つは黒人ソウルシンガーのビリー・ポールによるヴァージョンです(1977年)。オリジナルよりもアップテンポに、ジャジーでダンサブルな雰囲気がいっぱいのこのヴァージョンですが、英国で26位を記録しています。歌詞はかなり手を加えていて、ビリー・ポール版「パーティーに誘いたい人リスト」といった趣です。また、キング牧師の演説が入っているのは奇遇なのか何なのか・・・。アドリブ風に崩し歌いするのが上手いなぁ〜と思わせる名カヴァーです。もう1つが、2002年に女性シンガーソングライターのルルが発表した『Inside Thing』です。これはポール公認で、ウイングスの『Let 'Em In』のベーシック・トラックをサンプリングして全く別の曲に仕上げています(一部『Let 'Em In』のメロディラインも出てきますが)。ヒップホップ風のアレンジがされて現代に甦ったといった感です。リード・ヴォーカルはルルで、ラップ調のメロディが原曲の演奏に見事に絡み合っているのがすごいです!また、ポール自身も一部コーラスで参加していて、しっかり存在感を見せ付けています(目立ちたがり屋ならでは・・・?)。このヴァージョンを聴いてしまうと、原曲を聴いたときイントロで思わず“Outside,inside”と歌いたくなってくるはずです(笑)。

 この曲は、ライヴでは幾度も演奏されています。まず、アルバム発売直後のワールド・ツアー(1976年)で演奏されました。大成功に終わった全米ツアーでももちろん取り上げられています。全米ツアー対策で制作された「スピード・オブ・サウンド」からセットリストに加えられた新曲4曲の1曲でしたが、新曲だけあってハイライトの1つとなりました(ただし全米ツアー時点ではまだシングル発売されていない)。この時もスタジオ版と同じ演奏体制で、ポールがピアノ、ジミーがベースを担当し、デニーはスネア・ドラムスをたたいています!(下写真参照)映画「ロック・ショー」ではそんなデニーの雄姿を見ることができます(照明の関係で見づらいですが・・・)。また、デニーは曲の後に「Happy Birthday,America!」とまで叫んでいます(これは建国200周年を祝っての発言)。ライヴ盤「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」で確認できますが、スタジオ版と同様デニーの茶目っ気ぶりが表れていますね。この時はプロモ・エディットと同じショート・ヴァージョンで演奏されています。ちゃんとエンディングのフェードアウト→大音量も再現されています。ブラス・セクションはもちろん生演奏!

 ウイングスが解散しソロになってからも、ポールはしばしば取り上げています。まず、1990年の通称「ゲット・バック・ツアー」。この時は、なんでも「長い間ライヴをお預けにされていた日本のファンのために」特別に取り上げたそうで、日本公演で初披露されました。しかし、これは2度も入国を拒否されたポールの「僕たちを素直に入国させてよね」という暗示だという説があるようで・・・(苦笑)。相当根に持っているようですな。それはともかく、この時の演奏はシングル「Birthday」(現在入手困難)に日本公演の模様が収録されています。このツアーではリンダがスネア・ドラムスをたたき、ブラス・セクションはポール・“ウィックス”・ウィッケンズがキーボードで再現しています(ブラス・セクションはこの後のライヴも同様)。続いて、2002年〜2003年のワールド・ツアーで演奏されています。この時も途中公演からの演奏でしたが、日本でも生演奏を聴くことができました。ライヴ盤「バック・イン・ザ・ワールド」にその模様が収録されていますが、なんとこの音源も日本公演より。またしてもポールの「素直に入国させてよね」説を再燃させるに至ったのでした(苦笑)。その後しばらくご無沙汰でしたが、2007年から再びセットリストに復帰しました。ポールが気に入っているのか、演奏がしやすいのか、ソロ・コンサートでは冷遇されがちなウイングスナンバーでも比較的多く取り上げられています。

 以上、この曲をいろいろと擁護してみました(笑)。なんだかんだいってこの曲、いわゆる有名曲の中でも私は好きな方です。最初聴いた時こそタイトルから想像していた雰囲気と全く違い「これがヒット曲・・・?」でしたが(汗)、素直に楽しいですね。誰でも歌える、お遊び的な歌を作るのはポールらしい所ですね(『Yellow Submarine』『All Together Now』『Mary Had A Little Lamb』などなど・・・)。この曲はアメリカを祝って作られた曲ですが、私には英米の雰囲気が両方混ざった感じがします。アレンジ面では、個人的にはドラムロールとフルートの絡みが好きですね。あと、エンディングのデニーの歌がお気に入りです(笑)。あれ聴いていると、「デニーにもカヴァーしてほしい!」なんて思ってしまいますね。もちろんスネア・ドラムスもデニーの自演で、最後は「Happy Birthday,America!」で締めくくる、と。

 この曲は「スピード・オブ・サウンド」はもちろん、各種ベスト盤にも収録されていますので容易に聴くことができます。初心者受けしやすい曲なので、聴き始めの方もぜひこの曲をお楽しみください!

 さて、次回紹介する曲のヒントですが・・・「ウイングスの代表曲」。いよいよ、「あの曲」が登場しますので、お楽しみに!!

 (2009.1.17 加筆修正)

  

(左)当時のシングル盤。ジャケットがなんだか楽しそうです。ウイングスはビートルズ級です!(笑)

(右)アルバム「スピード・オブ・サウンド」。バンドとしてのウイングスを強調した絶頂期のアルバム。

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