Jooju Boobu 第41回

(2005.7.28更新)

Helen Wheels(1973年)

 今回より、「Jooju Boobu」は私のお気に入り第4層に突入します。この第4層では、11曲(+a)が紹介される予定ですが、今回はかなりメジャーな曲が顔を出します。シングルナンバーはもちろん、ライヴでおなじみの「あの曲」や「この曲」までもが・・・!「筆者は有名な曲の中ではこんな曲が好きです」といった趣の選曲になっていますので、お楽しみに!(まぁ、メジャーな曲の方が話すことも多いですし、読み応えがある文章になりそうですね。)

 さて、そんな第4層の最初に紹介する曲は、早速シングルナンバー。ウイングスの『Helen Wheels』(1973年)を語ります。邦題は「愛しのヘレン」。「愛しの〜」がいかにも当時の邦題、といった感じですが(苦笑)、微妙に歌詞の内容にそぐってないのはこの後読んでいただければお分かりになるでしょう。個人的には結構使う邦題ですが・・・。この曲は、1973年末に発売されたウイングス会心作にしてポールの最高傑作と評されるアルバム「バンド・オン・ザ・ラン」の先行シングルとして発売され中ヒットしました。その後同じアルバムからシングルカットされた『Jet』『Band On The Run』に比べるとヒットせず、知名度もありませんが、この曲でもポールらしさ、ウイングスらしさが満開となっています。今回は、そんな『Helen Wheels』の魅力を語ってゆきます。

 アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」ができるまでのいきさつは、このコラムでも『Mrs.Vanderbilt』『No Words』の項で触れたとおり。1973年夏、メンバーの脱退(しかも2人!)を経験したウイングス。メンバーチェンジがつきもののウイングスですが、バンドの結成以来メンバーの脱退はこの時が初めてのことでした。しかし、残されたポール、リンダ、デニー・レインの3人はそれにくじけず、ナイジェリアのラゴスで次なるアルバムに向けてのレコーディングを行います。その時作られた曲などを元にして完成されたのが、同年冬に発売されるや否や世界中で大ヒットとなった「バンド・オン・ザ・ラン」でした。この時のセッションでは、バンドの危機的状況を打開するためあまり時間をかけられなかったせいか、セッションで取り上げたすべての曲が公式発表されましたが(未発表曲が発見されていないことが裏づけ)、その中で唯一アルバムに収録されず発表に至ったのが、『Helen Wheels』でした。

 ラゴスでのセッションは、先述のメンバー脱退のため基本的には残された3人のみで録音され仕上げられました。そのため、デニーのギターとリンダのムーグシンセ(一部楽曲のみ)を除いてはすべての楽器をポールが演奏しているのが大きな特徴です。本業のベースはもちろん、ギター・ドラムス・キーボードと大活躍しています。アルバムが無事完成したのも、幸いにもポールが元来のマルチ・プレイヤーだったためでした。もちろんポールもここでバンド崩壊という最悪の事態は免れたかったでしょうし・・・。そして、ラゴスで録音されたこの『Helen Wheels』も例外なく、ほとんどの楽器をポールが演奏するスタイルとなっています。人員不足による不完全なバンド編成による演奏は、スタジオの環境が悪かったこともあいまって一見貧弱に聞こえます(特にポールの上手いのか下手なのか微妙なドラミング)。中にはお世辞にも完成度が高いとは言えないまま発表されてしまったと言える演奏もあるのですが(汗)、それでもしっかりしたバンドサウンドをキープしている所にポールの力量とウイングスの団結力を感じます。また、不完全ならではの空気感は、他時期のフルバンド編成のウイングスとは違った、適当に力を抜いたリラックスした雰囲気が出ています。これは、ある意味この時期の長所ではないでしょうか。録音の地・アフリカの空気が絶妙に漂っているという面白い味付けもあり、不完全バンドサウンドはこの時期の奇妙な醍醐味となっているのです。

  

 話をそろそろ『Helen Wheels』に移します。この曲を大雑把にジャンル分けすると、「ロック」の部類に入ります。言うまでもなくポールがよく手がける分野のひとつでありますが、一口にロックといっても様々なスタイルがあるのは当然の話で、ポールもその時々によって様々なスタイルを取り入れ、果敢に挑戦しています。ではこの曲は・・・?といえば、軽快なリズムを基調としたポールらしいポップ・センスの入ったロックナンバーです。そして、ポールのロック史を見てみると、ちょうどこの曲がポールのロックスタイルのターニングポイントとなっているのが興味深い点です。

 ビートルズ解散後のポールが書いたロックナンバーは、主に重々しいリズムを重々しく聴かせる、のっしりした雰囲気の作風が大半でした。中には、当時流行していたブルースに感化されたものもあったほどです。それが、この曲の登場で一変します。ポールが得意とするポップ路線をロックに融合させたかのような軽やかな作風は、明らかに初期ウイングスののっしり感とは異なります。ベースやドラムスといったリズム隊も、繰り広げられるギターサウンドも、重々しさが思いきり取り払われています。そのきっかけは、2人のメンバー脱退にあるのか否や。確かに、演奏者が変わると演奏のニュアンスも違ってくるかもしれません。しかし、ひとつだけ明らかなのは、ポールがグラムロックの影響を受けたことです。私はグラムロックがなんぞや?ということに詳しくないのですが(汗)、'70年代前半に流行したスタイルで、ハードロックやプログレと一線を画しキャッチーで分かりやすい演奏を披露していたそうです(T・レックスが代表格)。また、きらびやかなメイクや衣装をするのも特徴だったようです。ファッション面は置いておくにしても(苦笑)、グラムロックの特徴であるキャッチー路線はポップ職人・ポールの関心を大いに引いたのは想像に難くありません。しかも新し物好きで常に時代の流行を敏感に捉えた音楽活動をしているポールですから、早速この曲で時代に追いつかんとしたというわけですね。グラムロックとの出会いが、図らずもポールのロックスタイルを変えるに至ったのです。

 そしてこの後のポールは、この曲のような軽快なスタイルのロックを続々と世に送り出してゆきます。演奏はバンドが充実するにしたがって徐々にハードなものになってはゆきますが、メロディやリズムにはポールのポップ・センスが垣間見えるキャッチーな要素がたっぷり詰まっています。『Jet』『Junior's Farm』『Rock Show』『Girls' School』『I've Had Enough』などなど・・・。こうした曲はロックに耳の肥えた人からはよく「えせロック」だと非難を受けることがありますが(汗)、この「えせ」加減がポール、ウイングスならではの魅力ではないでしょうか。いつも前向きで明るい音楽で我々を楽しませてくれるポールには、このくらいの軽さがちょうどぴったりなのです。ポールが得意とするメロディアスなメロディラインや、ウイングスの美しいコーラスワークにもこの「えせロック」の方がしっくりきます。何はともあれ、楽しければいいんですから(笑)。時には思いきりハードに傾倒することもありますが、やはりポール流ロックといえばこの「えせロック」スタイルなのです。その源流がこの曲にあると考えると、この曲の重要さに気づかされますね。

 この曲の構成はいたってシンプルで、節とサビのセットが3回繰り返される(=第1節〜第3節がある)だけ。この曲が単純で覚えやすいのは、この曲構成の効果も大きいですね。さらに驚くべきことに、この曲で使用されているコードは、なんとAとEの2つしか使われていません!しかもEはほんのちょっと登場するのみで、ほとんどがAのみで出来上がっています。それなのに、メロディが単調になる様子を全く見せないのはポールの作曲能力のすごさでしょう。メジャーキーを多用して分かりやすいメロディを生み出すのはポールの得意技ですが、まさかほとんど1コード進行でこんなにキャッチーな曲を生み出せるとは・・・脱帽です。

 演奏は先述のグラムロックの影響を受けて、何も複雑なことをせずにシンプルなバンドサウンドです。シャッフルというかブギウギといった感もある軽快なリズムを刻むドラムスは、先述のようにポールが担当。これが例によって「ヘタウマ」で、フィルインなどはあやふやな面も露出しているのですが、そこがなんだかいい味になっています。曲が楽しいからなんだか許せてしまうんですよね(笑)。イントロやつなぎでは必ずドラムソロになっているのがアクセントになっていて、これも楽しいです。ドラムソロを入れたのはポールの自信の表れか・・・?本業のベースはずっと同じコードが続くためずっと同じフレーズを弾いています。興味深いのは、第3節の“Got no time〜”のくだりでベースが抜け落ちていること。演奏ミスなのかミックスミスなのか、それともそういうアレンジにしたのか・・・。でも、こういう適当さも面白いです。ヴォーカルが変な所でオフになる「ウイングス・ワイルド・ライフ」にも似た感じです。一方、ギターはかなり多様なフレーズを入れて単調になるのを防いでいます(リズムギターは単調ですが・・・)。どれがポールでどれがデニーかは不明ですが、曲の軽快さを崩さない程度にハードな演奏です。ドラムソロを導くかのようにイントロやつなぎで必ず入るフレーズが印象に残ります。アウトロで聴かせるかなり長いギターソロにも注目です。そして、愛妻リンダはムーグで参加。といっても、あのギターフレーズの部分で「みょーん」と入るだけですが・・・(苦笑)。でもあれがないとなんだか物足りないのも事実です。このように3人で協力して仕上げたバンドサウンドですが、チープさを感じさせない完成度です。

  

 ポールのヴォーカルもいたって軽快で、気張ることなくリラックスして歌っているなぁと思えます。そんな中サビ(タイトルフレーズ)で思いきり高音になるのが印象的。追っかけコーラスで「ヘレ〜ン」と入るのも効果的ですね。思わず一緒に口ずさんでしまいそうです。なかなかあのサビは声が出なくて歌いづらいですが(汗)。コーラス面では、第3節で追っかけコーラスが入るアレンジになります(デニーの声がよく目立つ)。そして忘れちゃいけないのが、エンディングのほのぼのしたヴォーカルワーク(?)でしょう!ポールが“Say bye-bye!”と言って、やけに低い声(ポール?デニー?)が“ばーいばーい”と答える箇所です。この曲の軽快さ・キャッチーさそして楽しさを凝縮した箇所といえますね。その後に入るカウント(1,2,3,4の繰り返し)も面白いですが、私には歌っているのがリンダかデニーか聞き分けがつきません・・・(汗)。

 歌詞はアフリカ録音とは打って変わって、地元イギリスを題材にしています。タイトルの「Helen Wheels」は、邦題の「愛しのヘレン」から想像すると女性の名前かと思ってしまいそうですが、実はポールがウイングスのツアー・バスにつけた名前(「Wheels」は「車輪」の意味)。バスといっても大型ではなく、ワゴン程度の大きさのランドローバーだそうです。「ヘレン」にいつから乗り始めたのかは不明ですが(もしかして初期ウイングスの大学ツアーでも乗っていた?)ポールはこの車を愛用していたそうで、スコットランドの農場からロンドンまで「ヘレン」を使ってよくドライヴしたそうです。歌詞は、そんなドライヴでの道中を描いたものです。一種のご当地ソングと言ってもいいでしょう。ポールによれば、アメリカの「ルート66」の英国版を作りたかったそうですが・・・。

 歌詞で描かれている旅の様子は以下の通りです。第1節でホテルを出発し、グラスゴー、カーライルを経てケンダル高速を走ります。グラスゴーに満足している反面カーライルにケチをつけているのはポールの本心なのか韻のせいなのか(苦笑)。第2節でM6街道を走りポールの故郷リヴァプールに到着、しかしそこは通過してバーミンガムを経て目的地のロンドンに到着します。ここで興味深いのが、「船乗りサム(Sailor Sam)」の登場でしょう。実は、この曲と同時期に録音され、この曲の後に発表され大ヒットしたあの『Band On The Run』の歌詞にも出てくるのです。どちらの詞作が先に書かれたのかは分かりませんが、『Band On The Run』がヒットしすぎたため、こちらは外伝的雰囲気が漂います。「あぁ、あの船乗りサムはバーミンガム出身だったのね」といった感じに。ただし、船乗りサムが公に姿を現したのはこちらが先です。偶然なのかもしれませんが、こういうところもポールのユーモアのセンスが感じられます。最後の第3節はスコットランドの農場に引き返す準備を歌っています。ポールの物語風の詞作の妙も感じさせる歌詞ですが、実はかなりの頻度で韻を踏んでいます。それなのにちゃんとドライヴ・ソングとして成立しているのが素晴らしい。

 この曲は、リリースにおいて少しばかり二転三転しています。当初この曲はアルバム「バンド・オン・ザ・ラン」に収録予定だったそうです。しかし、この曲をリンダさんがいたく気に入りました。きっと「シングルにしたらどう?」と言ったに違いありません。その様子を見たポールは「それじゃあシングルで発売しよう」と愛妻の意見を聞くことに。急遽先行シングルとして発売されました(1973年10月26日、B面は前年に録音されていた『Country Dreamer』)。チャートでの結果は英国で12位、米国で10位とまずまずの記録に。ウイングスが3人に減ってから初めての新譜であり、ウイングスはどうなることかとハラハラしていたファンをとりあえず安心させるには十分でした。ここで先にシングル発売してしまったため、翌々月に発売された「バンド・オン・ザ・ラン」からはこの曲は外されました。これは、「シングルとアルバムで同じものは買わせたくない」という旧来からのポールの信条があったものと思われます。

 が、ここで例外が生じました。米国盤の「バンド・オン・ザ・ラン」のみ、この曲を8曲目(『No Words』と『Picasso's Last Words』の間)に収録したのです!なぜそんな現象が起きたのかといえば別に何かの手違いではなく、「ヒットシングルをアルバムに収録すれば売り上げも上がる」と思った米国のキャピトル・レコードがポールに要請したためでした。なんでも、ピンク・フロイドのシングル曲『Money』をアルバム「The Dark Side Of The Moon」に収録したところアルバムがヒットしたのに影響されたようですが・・・。後に『Coming Up』のA・B面入れ替えの時は反対したポールですが、この時はポールの了承をもらえました。このため、英国・日本などではシングルでしか聴けなかったのに対し、米国ではアルバムでも聴くことができました。「バンド・オン・ザ・ラン」がCD化された際も、米国ではこの曲をアルバムに収録しています。一方、英国・日本では初CD化は1993年のリマスターシリーズ「ポール・マッカートニー・コレクション」の一環で、「バンド・オン・ザ・ラン」のボーナス・トラック(10曲目)に収録されるのを待つことになりました。英国・日本の「バンド・オン・ザ・ラン」では一貫してボーナス・トラックとして扱われています。ただし、1999年に「バンド・オン・ザ・ラン」の25周年記念盤が発売された際にはちゃっかり8曲目に収録されています(苦笑)。このように、アルバムから外されたのに結局アルバムに戻ってきてしまったという妙な経緯を持つ楽曲でもあり、国によってアルバムに収録か未収録か違うという現象を持つ楽曲でもあります。

  

 「バンド・オン・ザ・ラン」セッションは、急ごしらえで制作されたためかアウトテイクがほとんど発見されていないのですが(ブートでも発見されていない!)、この曲のみアウトテイクの存在が確認されています。それどころか、公式発表されています!さっきちゃっかり8曲目に収録されていると説明した、「バンド・オン・ザ・ラン」の25周年記念盤です。「Crazed Mix」という名で収録されていますが、これはアルバム制作当時にポールとジェフ・エメリックがリミックスした別ミックスで、お蔵入りになっていたものです。基本的にはシングルで公式発表されたヴァージョンが元になっていますが、随所で各楽器のミックスが異なっており、公式発表版では入っていない音も聴くことができます。ギターやコーラスのフレーズが一瞬だけ大音量になってすぐ消えてゆく、というのがこのミックスの特徴でしょうか。採用されなかったのは・・・まぁ分かる気がします(苦笑)。ですが、ポールはアウトテイクを発表してくれることはほとんどないので、この音源は非常に貴重と言ってよいでしょう。

 この曲は、シングル発売されたためプロモ・ヴィデオが作られています。このプロモは1986年に公式ヴィデオ「Portrait - The Paul McCartney Special」に収録されたため、ウイングスのプロモでは結構有名どころではないでしょうか?プロモが制作されたのは1973年11月ということで、3人編成のウイングスが出演しています。後年のメンバーチェンジの際にも3人だけでプロモに出演することがありますが、これが初めてのことでした。基本的に演奏シーンと、歌詞に合わせて3人でドライヴするシーンが交互に登場する構成ですが、3人とも楽しそうな表情をしているのに当時のファンは安心したのではないでしょうか。笑顔が随所で見られ(特に後半)、曲と同様陽気な雰囲気が伝わってきます。このプロモを見ていると、ウイングスはやはりこの3人の仲のよさが機軸なんだなぁと思います。3人がウイングスの旗を広げて始まり、たたんで終わるというのも面白い構成ですね。

 演奏シーンでは、スタジオ版と同じくポールがギター・ベース・ドラムスを、リンダがキーボードを、デニーがギターを演奏していて、ここでもポールのマルチ・プレイヤーぶりを堪能できます。というより、ポールがマルチ・プレイヤーぶりを発揮した映像というのはこれが最初ではないでしょうか?特にドラムスに関しては、このプロモが初の「ドラマー・ポール」のお披露目ではないかと思います。ポールがドラムスなんて、当時のファンからしたらびっくり仰天の映像だったに違いありません。ポール独特のたたき方が見ていてちょっと滑稽ですが(笑)。それはともかく、本業のベースを弾きながら歌うのももちろんかっこいいし、エンディングなどで見られるギターさばきもなかなかなもの。何でも演奏できてしまうポールが改めてうらやましくなる映像です。ちなみに、唯一演奏していないシーンでポールの背景にある絵はポール直筆のものだそうです・・・。もちろん、リンダもデニーもちゃんとフィーチャーされていますが、特にリンダがノリノリなことが分かります(笑)。おどけた表情をしたり、ウイングスの「W」マークを両手で表したりと・・・。割かし落ち着いた表情のポールと対照的で見ていて面白いです。一方のドライヴ・シーンでは、3人がオープンカーに乗っていますが、これが例の「ヘレン」なのでしょうか・・・?ポールが運転し、隣にリンダとデニーが乗る格好ですが、ここでも3人ともハイテンションでリンダ&デニーは途中で立ち上がったりも(笑)。つい一緒にドライヴに同行したくなってきそうです。この3人とだったら、きっと素敵な旅になることでしょうね!なお、このプロモは現在はプロモ・クリップ集「The McCartney Years」にも収録されているので容易に見ることができます。

 ちなみに、このプロモは後年、先の「バンド・オン・ザ・ラン」の25周年記念盤が発売された際にリメイクされています(1999年)。基本は元々のプロモと同じですが、こちらは「サイケデリック・ヴァージョン」というべく随所に(というか全体に)グラフィック処理が施されています。背景がきらびやかで目が痛くなりそうなくらい(苦笑)。なお、「The McCartney Years」でポールがコメントしているように、このリメイク版ではドライヴ・シーンでリンダが着ていた毛皮のコートがすべてオレンジのグラフィックで塗りつぶされています。・・・動物愛護家らしい改変ですな。このリメイク版は「The McCartney Years」未収録です。

  

左が1973年当時のプロモ、右が1999年のリメイク版プロモ。リンダの毛皮のコートが塗りつぶされているのが分かります。

 この曲は、後にアルバムから『Jet』と『Band On The Run』という2大名曲が輩出されてしまうため、それらに比べると日陰に甘んじていますが、ポールらしい楽しさでいえばこちらの方が炸裂しています。底抜けた明るさがウイングスらしい、というか・・・。ウイングスの「えせロック」の代表曲のひとつではと思います。あまりヒットはしませんでしたが、リンダさんのシングルカットの判断は間違っていなかったと思います。こういうブギー風の曲は個人的には好きですし。TOP10シングルにもかかわらず、ウイングス当時からライヴでは一度も演奏されていないのがちょっと意外。盛り上がりそうな曲だけに、ポールには一度取り上げてほしいですね。この曲は、歌詞のようにドライヴしながら聴くといいですね。プロモをイメージしながら・・・。何度か車で聴いたことがありますが、ノリノリになりますね。暴走しがちになったら“Slow down driver〜”の部分を歌えばよろしいと(苦笑)。歌詞のようにポールが走るルートを走破するのは夢のまた夢ですね。遠く英国ですし、実際向こうに行っても走破には数日掛かるでしょうし・・・。英国のファンは既に真似している人多いかも。

 この曲は、現在ではアルバム「バンド・オン・ザ・ラン」の他に、ベスト盤「ウイングスパン」にも収録されています。「バンド・オン・ザ・ラン」は、英日盤と米国盤・25周年記念盤ではこの曲があるのとないのとでイメージがずいぶん変わってきます。英日盤はまったりしたB面ムードですが、米国盤はこの曲がそんな静かな雰囲気をぶち壊すB面になっています。マニアックな方はぜひ聴き比べてどちらが好みか考えてみましょう!(まぁ、英日盤もプログラム再生すれば米国盤の再現ができますけどね・・・)ちなみに私は英国・日本盤の曲順の方が好きです。

 さて、次回紹介する曲のヒントですが・・・「なぜかこんなに大ヒット」。お楽しみに!!

 (2009.1.11 加筆修正)

    

(左から)当時のシングル盤。強烈なロック・ブギーです(笑)。/アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」。たった3人で録音した、ウイングスの大ヒット会心作!

ベスト盤「ウイングスパン」。この曲は2枚目の「HISTORY」に収録されています。ポールのお気に入りなのでしょうか?

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