Jooju Boobu 第28回

(2005.6.12更新)

Ou Est Le Soleil?(1989年)

 今回の「Jooju Boobu」で、マニアックな曲が中心だった私のお気に入りの第2層が出尽くします。そのトリを飾る今回の曲も、これまたマニアックです(苦笑)。1989年の大ヒットアルバム「フラワーズ・イン・ザ・ダート」に、CDのみのボーナス・トラックとして収録された『Ou Est Le Soleil?』です。邦題は「太陽はどこへ?」ですが、まぁ、あってしかりの邦題です(苦笑)。ポールがビートルズをほうふつとさせるバンド・サウンドに力を入れ始めた「フラワーズ・イン・ザ・ダート」ですが、この曲はそんなアルバムで異色の作品となっています。異色ゆえあまり人気のない曲であるのですが・・・、この曲を聴いてみるとポールの新しい音楽ジャンルへの尽きせぬ挑戦が続いているのが見えてきます。例のごとくマニアックですが、今日はこの曲について語ってゆきます。

 まず、『My Brave Face』の時に紹介したアルバム「フラワーズ・イン・ザ・ダート」のあらましをざっとおさらいしておきます。1986年のアルバム「プレス・トゥ・プレイ」の不振、そしてその後に行われたフィル・ラモーンとの幻の「The Lost Pepperland Album」セッションの挫折。'80年代の不振のどん底にいたポールは、再びゼロからアルバム作りを始めます。先述の2セッションが、いずれも固有のプロデューサーに依存していたことが結果的に曲にそぐわない作風になったと反省したポールは、このセッションでは個性的なプロデューサーを何人か呼び、曲にあわせて使い分けるという方法を取りました。その上で、念願のライヴ再開を考えてバンド・サウンドへの回帰を目指しました。後のツアー・メンバー、ヘイミッシュ・スチュワートやクリス・ウィットンが多数参加している点がその象徴でしょう。この結果、各曲の持ち味を壊すことなく、アルバム全体の統一感を整えることに成功しました。このような手法で、時間をかけて丁寧に作られたアルバムが、「フラワーズ・イン・ザ・ダート」となります。1989年6月にポール久々の新譜として発売されると、『My Brave Face』などでのエルビス・コステロとの共作・共演も話題となり、久々に英国で1位を記録するヒット作に。何年も不調が続いたポールの「復活」を高らかに告げたのでした。ファンの間でも、評論家からも絶賛され、今ではポールの「名盤」の1つに挙げる人が大多数です。日本のファンの皆さんは、初のソロでの来日コンサートの印象が強いことでしょう。

 「フラワーズ・イン・ザ・ダート」の醍醐味は、じっくり丁寧に作られ年相応の円熟味を帯びたアレンジと、ビートルズを見直したこともあってかウイングス以来久々に堪能できるバンド・サウンドでしょう!言うまでもなく前者は『Distractions』や『Put It There』などで、後者は『My Brave Face』や『This One』。そして、コステロとのコラボレーションの3点セットが大勢を占めています。しかし、そんな中異色な作品がいくつかあります。それが、トレバー・ホーン(元イエス)とスティーヴ・リプソンのタッグがプロデュースを手がけた曲です。前衛的な打ち込みサウンドを展開して一世を風靡していたトレバーと、その仕事仲間スティーヴによる凝ったプロデュースは、アルバムの中でも毛色を異にしています。中でも、『Rough Ride』と今回紹介する『太陽はどこへ?』は、前作「プレス・トゥ・プレイ」をも思わせるデジタル・サウンドです。

 この曲の斬新な異色ぶりを語る前に、ちょっとマニアックなお話を(苦笑)。驚愕の事実ですが、この曲が発表から遡ること14年も前の1975年頃に存在していることが確認されています!その証拠が例によってブートなのですが、'75年録音(「ヴィーナス・アンド・マース」期!)と伝えられているホーム・デモが残されています。詳しいレコーディング・データがないため、本当にこの年なのか、またレコーディングの詳細は不明ですが、いずれにせよ'70年代に存在していたことは間違いないでしょう。私の手持ちのブートでは「Flowers In The Dirt Sessions」と「Venus And Mars Sessions」に収録されていますが、公式発表テイクの斬新ぶりは微塵も感じられないラフで軽快なポップになっています。唯一変わらないのは、陽気加減でしょうか・・・。断片しか発掘されていないのが少し残念ですが、何にせよ驚愕の事実ですね。

 以降、1989年まで10年以上もお蔵入りになっていた理由は、他でもない、この曲の単純さにあるでしょう!基本的にサビ(メロ?)の繰り返しで構成されているのですが、歌詞に至ってはたったの3文しかありません。しかも、奇をてらってか全部フランス語という有様。タイトルも例外ではなく、フランス語で「太陽はどこへ?」という意味で「ウ・エ・ル・ソレイユ」と読みます(曲中では「ウエレソレ」にしか聴こえないけど・・・)。邦題があってしかりなのは、こういう理由でした。それも含め、歌詞は「太陽はどこへ?/それは頭の中/さあ学ぶのだ」、これしかありません(汗)。単純なサビの繰り返しで、歌詞もフランス語3文ということで、当初ポールはお遊びで即興に近い形で作ったんだなぁと思わせるには十分でした。それで、ホーム・デモでは録音したけど正規のセッションでは録音しなかった・・・と。

 こんな単純で、下手したら(コステロではないですが)“ごみ”にしかならなかったこの曲ですが、忘れかけられた頃の「フラワーズ・イン・ザ・ダート」セッションでポールとトレバーに発掘されたことでその姿は大いに変貌します。ただの即興お遊びナンバーが、ポール随一のディスコ・ナンバーになったのですから!

 元々アナログ人間で機械的な音楽作りを嫌っているポールですが、時々思いきり打ち込みサウンドに凝る姿を見せてくれます。その例が「マッカートニーII」であり、「プレス・トゥ・プレイ」でありました。しかし、「プレス〜」はそのアレンジが曲の持ち味を殺してしまい、ファンの反応は芳しくありませんでした。それでもこの時期、ポールは懲りずに再び打ち込みサウンドに挑戦しています。その契機となったのが、いわゆる「ハウス・ミュージック」との出会いです。'70年代末に誕生し、この時期には専門のDJが登場するまでの人気を得ていました。いつの時代も、その時代の最先端を行く流行音楽を積極的に取り入れ自分のものにしてゆくポールですが、ハウスは大きな刺激となったのでしょう。以降、明らかにハウスを意識したと思われる作品をたびたび発表するポールでした。『Atlantic Ocean』(1987年、当時は未発表)や『Good Sign』(1989年)はその典型ですし、'90年代に入ってからの覆面ユニット「ファイアーマン」はそこからもう一歩前衛的に進んで取り組んだプロジェクトと言えるでしょう。そして、この曲でもハウスをはじめとしたダンス・ミュージックを意識しているのは一聴で分かります。残念ながら、これがハウスかと言われると、必ずしもそうではなくなっているというのが多くの論評ですが・・・(汗)。先述のように、ディスコに近いノリでしょう。元々ポールが流行音楽を取り入れる際には、ポール自身の音楽フィルターにかけているため、そのまんまではなく「もどき」になってしまうのは仕方ないですし、それが「マッカートニー・ミュージック」であるゆえんですね。

  

 それでは、その斬新な魅力について具体的に触れてゆきます。この曲のプロデュースはトレバーとスティーヴそしてポールというトリオ。打ち込みサウンドが大得意の2人に、「にわかハウスファン」のポールが組めば、アグレッシブに転ぶのは目に見えています(苦笑)。元々歌詞が短いのでほとんどインスト状態であり、その点もハウスにはぴったりかもしれません。構成は簡単に言えばサビを3度繰り返すだけ。そんな単純な構成を、前衛的なアレンジで聞かせます。ポールいわく、「それで、曲はどれ?コードは?インストゥルメンタルは?・・・と言いたくなる曲」に仕上がりました。

 曲をリードするのは、リズミカルな打ち込みドラムスでしょう!いわゆる「4つ打ち」ではありませんが、軽快さと力強さはディスコさながらのノリがあります。曲後半では(ほぼ)ドラムソロの箇所も登場し、その存在をアピールしています。そして、曲を彩るのは同じく打ち込みによるシンセ音の数々。1曲に何ヶ月もかけるというトレバー&スティーヴならではの凝った音作りです。リフを奏でる低音からベル系まで様々な音が至る所で鳴り響いています。中でもオルガン系の音色が結構フィーチャーされていて、節最後のメロディラインは特に印象に残ります(エンディングもこれで終わるし)。「フラワーズ〜」セッションの中でも多量の音が使用されていますが、凝っているわりには重々しくなっていないのは彼らの手腕でしょう。打ち込みによるシンセサウンドがメインの反面、生音はギターとベースのみ。ベースはスティーヴが、ギターは当時から片腕のヘイミッシュが演奏しています。ヘイミッシュのギターも、どこか逆回転風に聴こえるのが前衛ぽくて面白いです。中間部のソロがいいスパイスになっています。また、クリスがタムで参加、ポールは第3節(!?)のボンゴとウッドソー(=のこぎり)も演奏しています。ウッドソーのお話は、後でちょっと再登場します。以上、全体的に力強く、何かがみなぎってくるかのような熱っぽさを感じさせる、情熱的な演奏となっています。そのせいか、歌詞はフランス語なのに、どこか真夏のスペインの猛暑か、荒涼とした砂漠のようです。まさに「太陽」がイメージにぴったりです。

 このように、ずいぶんとシンセを多用したデジタル・サウンドなのですが、「プレス・トゥ・プレイ」のように失敗しなかったのは人選が適切だったのと、アレンジが曲にマッチしていたからでしょう。「プレス〜」の時は、一概にヒュー・パジャムにプロデュースを任せ、一概に打ち込みサウンドを仕込んでいたので、曲に合わない例がたくさん見られました。しかしこの曲では、打ち込みサウンドはポールのハウス嗜好とぴったりのアレンジですし、抜擢された2人のプロデューサーも適任でした。リズムの要であるドラムスが大仰なものにならず、曲のダンサブルさを引き出す軽快な仕上がりなのも好印象ですね。シンセも分厚くなりすぎず、すっきりした音の配置がされています。同じデジタル・サウンドでも、ポールは過去の失敗をちゃんと教訓にして果敢に再挑戦していったのでした。

 さっきから言っているようにフランス語3文の繰り返しという歌詞ですが、ヴォーカルもアレンジを変えて退屈させない構成となっています。クレジットによると、すべてのヴォーカルをポールが担当しているらしいです。第1節はシングル・トラックですが、第2節にはハーモニー・ヴォーカルが加わってきて、シャウト風の崩し歌いも見せます。バックで薄く入ってくるコーラスも雰囲気作りに一役買っています。そして一番のハイライトであり必聴なのがボンゴの入る第3節でしょう!この部分では、ポールのヴォーカルが男性の低い声(台詞?)の追っかけコーラスになっていますが、このコントラストが面白いです。思わず一緒に「ウエ、ウエー、レソレ、レソレー」と歌ってしまいそうです(笑)。この低い声の台詞はクレジットされていませんが、これもポール・・・?だとしたらずいぶん芸達者ですね。

 この曲の斬新な魅力に浸った所で、補足的な話を。まず、当初のリリースの話から。この曲は、新たなボーナス・トラック追加もあり今でこそアルバムの一部と化しているものの、当初はアナログ盤「フラワーズ・イン・ザ・ダート」には収録されず、CD版のみのボーナス・トラックでした。ちょうど、「プレス・トゥ・プレイ」の11〜13トラックのような感じです。まだまだCDが世間一般に広まってゆく途上とだけあって、CDを買ってくれた人だけへのうれしいおまけだったのでしょう。もちろん収録時間の関係もあるかと思いますし、やはりこの曲が異色であることも大きいのでしょう。蛇足ですが、この曲に負けず劣らずのハウスぶりを見せている『Good Sign』も、最終段階までアルバム収録曲候補に残っていたのには驚きです。

 また、アルバムからの第3弾シングル「Figure Of Eight」のB面にも収録されました。といっても、ここからがややこしいです。実は、「Figure Of Eight」は多数のフォーマットでカップリングを変えつつ発売されたからです。何しろ、タイトルに合わせて8種類も出たというのですから・・・!ポール史上最大の豊富なラインアップでマニアを泣かせたという、いわくつきのシングルです。ですので、この曲が収録されていない「Figure Of Eight」のシングルも存在します。『This One』の「club lovejoy mix」が収録された12インチがそうですし、『Loveliest Thing』が収録された5インチCDシングルにも収録されていません。

  

 さらに厄介なのが、'80年代ポールが多数手がけてきたリミックス・ヴァージョンの存在です。『Say Say Say』の辺りから本格的にリミックスの世界にのめり込んだポールは、特にダンサブルな曲のリミックスをシングルB面などで発表し、多くの別ミックスがこれまたマニアを泣かせたのですが、この曲にも公式発表されているだけで実に4種類の別ミックスが存在し、それらがいろんなフォーマットに散りばめられています!恐らく、『No More Lonely Nights』や『Press』に匹敵する別ミックスの数ではないでしょうか?それでは、早速その別ミックスをマニアらしく1つずつ語ってゆきます(苦笑)。収録盤を間違って解説しているかもしれませんが、もし間違っていたらご指摘願います・・・。

 まず、3インチCDシングル「Figure Of Eight」に収録されたリミックスから。通称「7 inch mix」です。7インチシングルには通常版が収録されているというのに、なぜこんな名がついたのかは謎です(汗)。このヴァージョンはCD化されている上、シングルが未発売だった日本でも「フラワーズ〜」の来日記念限定盤「フラワーズ・イン・ザ・ダート〜スペシャル・パッケージ〜」(日本のみ)にも収録されているので比較的容易に入手できます。この「7 inch mix」が一連のリミックスでも一番オリジナルに近いですが、随所でミックス違いとなっています。イントロは、かなり凝ったつくりに変えられていますが、個人的にはちょっと流れが悪くなったかな、と思います。本編ではドラムスが差し替えられていて、かなり軽めのビートになっています。ダンスナンバーとしては、こっちの方がよいかもしれません。他にもシンセやパーカッションが追加されたり、差し替えられたりしています。あの印象的なオルガンのメロディも、高めの音程になっています。

 次に、12インチシングル「Figure Of Eight」(一部のみ)に収録されたリミックス。7インチと、別の12インチ(片面エッチング仕様!)にはアルバムと同ヴァージョンが、3インチCDシングルには「7 inch mix」が収録されましたが、とある12インチ(ジャケットがオレンジ地で窓からポールが見えるやつ。同ジャケットで先述の5インチCDシングルには未収録!)には、この曲のリミックスが2つ収録されています。今度はどちらも未CD化です。その1つ目が、「tub dub mix」です。かなり前衛的なリミックスで、のっけから「ディンダ、ディンダ」の繰り返しに耳を奪われます。それ以降も実に奇妙な構成で、確かに部分部分で『太陽はどこへ?』なのですが、ほとんど別曲のような印象を受けます。中盤になってあのオルガンが出てくるのがほっとするひと時なのですが、それもつかの間、今度は一転してパーカッションを乱打しためちゃくちゃな展開を迎えます。この部分はあの低い声の台詞も入っていてちょっと面白いかも。最後はオリジナル通りに締めくくっています。

 そしてもう1つが、一連のリミックスでも最高の出来(と私は思っている)の「Extended Pettibone mix」です!このヴァージョンは、一連のリミックスで最長の7分にも及ぶ長編であり、それゆえに一番凝ったリミックスとなっています。れっきとしたミックス名はないのですが、リミックスを担当したシップ・ペティボーンにちなんで「Pettibone mix」という名で親しまれています。このリミックスが面白いのは、出だしがあの追っかけコーラスから始まる所です!しかもバックには何も音がないので、なんだか聴いていて滑稽です。思わず「ウエ、ウエー、レソレ、レソレー」と歌ってしまいそう。それに続いて、その台詞を小刻みに繰り返したりピッチをいじったりしたパートがありますが、これも面白いです。「ウウウウウ、タンスタンタンタン、ウーエー」って(笑)。それが2分ほど続いてようやく歌が入るのですが、その後も例の追っかけコーラスや台詞をふんだんに用いていて、そこが面白いです。そしてどんなに凝ったリミックスでも、エンディングは再びオリジナル通りに締めくくっています。

 さらに調子に乗ったポールは、この曲をA面にした単独シングルまで発売しています。これはかなりレアでプレミアがついているようですが、アナログ盤のみでCD化はされていません。ジャケットはタイトルのように太陽を表した記号があしらわれていました。このシングル、実はA面どころかB面もすべてこの曲のリミックスで占められているという超マニアックなもので、A面には「Pettibone mix」が、B面には「tub dub mix」が収録されていました。そして、B面のもう1曲が「instrumental」ミックスです。これは文字通りのインスト・ヴァージョンで、歌が入っていないリミックスです(厳密にはほんの一部だけコーラスは入っている)。ただし、構成やミックスなどは全く変えられていて、後半に入るシンセの音色がかなり前衛的なつくりです。歌がない分、ちょっと聴くのはつらい所があるかもしれません・・・。そこは自分で「ウエー」って歌うと面白いかも(苦笑)。ちなみに、このリミックスだけオリジナルとは違うエンディングを迎えます。

 そして、公式未発表のものでは、まだまだミックス違いが存在します。私が確認しているだけでもさらに2つあります(出所は不明)。1つはブートでは「Pettibone mix」と記されているものですが、「Shep Pettibone Edit」という通称名で知られているもので、先の7分ヴァージョンとは違います。逆に、「7 inch mix」に極めて近い音作り&構成です。恐らく、通常版よりもエンディングが早くフェードアウトする点以外は「7 inch mix」と同じかも・・・?もう1つは「Disconet Edit」という名で、デニス・ミュエットがリミックスを手がけています。これまた独自の構成を持ったリミックスで、これまで触れてきたいろんなリミックスを断片的に集めてきてくっつけたような感があります。さらに、ここでしか聴けない展開もあり、マニアにとってはたまらない内容となっています(苦笑)。このように、ただでさえ入手困難なのに、これだけたくさん種類あって、『太陽はどこへ?』好きな人でなければまずついていけないリミックスでしょう(汗)。私みたいなのは置いておいて、とりあえず1ヴァージョン聴くだけでいいかもしれません。お勧めは「Extended Pettibone mix」です!正規ルートでは入手困難ですが、アルバム未収録曲などを集めたブートでは比較的簡単に集められます。

  

 ポールの『太陽はどこへ?』好きは、多種のリミックスにとどまりませんでした。なんと、この曲のプロモ・ヴィデオまで作ってしまうのですから驚きです!そして、これがまたマニア受けしそうなユニークなものです。なんと大半がアニメーションで、しかも一昔前のファミコンに出てきそうなアドベンチャーゲームを模したものなのです!これで面白くないという方はまずいないでしょう。恐らく、サウンドの雰囲気からこの構想が出たのでしょうが、やけにぴったりはまっています。もしこの曲がファミコンのBGMだったら・・・と想像してしまいそうです。

 プロモは、基本的にそのファミコン風アニメになっています。主役となる男性(どことなくヘイミッシュに似ている?)が、敵を倒しながら遺跡や海を進んでゆくというストーリーで、敵キャラや背景、主人公の出すビームなんかがチープで見ていて面白いです。このページでもいくつか挙げておきますのでそのチープぶりを堪能してみてください(笑)。所々では実写のポールも登場し、歌いながら主人公の無事を見守っています。第3節でラスボスと思われるドラキュラと一騎打ちになりますが、あっさり勝ってしまうのはちょっとあっけないかな・・・と思います(苦笑)。追っかけコーラスの部分では太陽(!?)の中に唇が現れ台詞部分を話しているのが効果的。エンディングでは、ポールが主人公の勝利を祝ってあげています。

 中間部では、このアニメでない実写部分もあり、そこでポールと当時のツアー・メンバーが登場します。ここで面白いのが、ダンスナンバーを意識してかアフリカの原住民の踊り(実写)を入れている点でしょう。『No More Lonely Nights(Playout Version)』のプロモもそうですが、ポールにとってダンスとくるとこういうイメージが浮かぶんでしょうね。ツアー・メンバーたちがしっかり真似して尺取虫みたいに踊っているのもまた一興(笑)。さらに、ディスコ・ホールと思われる実写シーンをバックにメンバーが高速で踊っていたり、ラテン風の格好で楽しげに踊っている姿がフィーチャーされます。これを見ていると、当時のツアー・メンバーの和気あいあいぶりがよく伝わってきます。そして、だいぶ前にお話した「のこぎり」もちゃんとプロモで再現されています。顔だけ出して箱に入ったツアー・メンバーたちを、リンダさんがのこぎりで切ってゆくという、よく手品であるような光景ですが、これもまた面白いです。元々まじめから程遠い存在の曲ですから、プロモでもかなり遊んでいます。そうした所から、ポールとその取り巻きのユーモラスな側面をうかがうことができます。残念なことに、プロモ集「The McCartney Years」には未収録です・・・。ちなみに、このプロモで使用された音源は、オリジナルヴァージョンのエンディングを早めにフェードアウトさせたものです。

 私は、最初に聴いた時からこの曲が好きです。ある意味『My Brave Face』を越えて「フラワーズ・イン・ザ・ダート」で一番好きな曲です(苦笑)。何しろリズミカルでダンサブルな曲調に、意味のない歌詞(しかもフランス語)を繰り返すだけという単純な構成なので、自然と歌い踊りたくなってきます。油断していると「ウエー、レソレー」と歌ってしまいます(笑)。特に追っかけコーラスの箇所がお気に入りですね。あの部分に差し掛かるのが毎回楽しみです。異色ゆえにあまり注目されませんが、この曲のダンサブルさはかなり強力です。これだけ踊れるのは『Temporary Secretary』『Good Sign』などごくわずかではないでしょうか?ライヴでやったら間違いなく盛り上がると思いますね(苦笑)。曲調からすればアルバムの雰囲気に合わないのに、なぜかすんなり溶け込んでしまっているのが面白いところです。数種あるリミックスでは、オリジナルと「Extended Pettibone mix」がお気に入りです。一番聴きやすいのは「7 inch mix」だと思いますが・・・。プロモ・ヴィデオも面白いです!

 さて、今回の『太陽はどこへ?』で一連のマニアック大会はおしまいです。次回から12曲は、私のお気に入り順「第3層」です。全体的に、「一般的には知られていないけど、ファンの間では肯定的な見方のされる曲」が多いですね。あと、今までの紹介分で少なかったバラードが結構あります。また、これまで一度も紹介されなかったアルバムが3枚初登場、2曲ずつ登場します。シングルのA面曲が2曲、うち1曲はベスト盤収録曲(かなりの名曲)。B面曲は4曲。残りはアルバム・ナンバーです。第1層・第2層に比べてだんだん私の曲への熱が冷めてゆくのが見えてきますが(汗)、それでも平均よりはだいぶ上です。まだまだ、最下位近くの「あの曲」や「この曲」には到底辿り着かないでしょう(苦笑)。

 そして、第3層の先手をつかさどる次回紹介する曲のヒントですが・・・「古風ロック」。お楽しみに!!

 (2008.10.11 加筆修正)

    

(左から)大ヒットアルバム「フラワーズ・イン・ザ・ダート」。今ではこの曲もアルバムの一部と化している。元々はCDのみのボーナス・トラックです。

多数のヴァージョンを持つマニア泣かせのシングル「Figure Of Eight」。上記ジャケット(7インチ)のB面に通常版を収録。

この曲単独のシングル。「Extended Pettibone mix」「tub dub mix」「instrumental」の3種類を収録。

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