Jooju Boobu 第22回

(2005.5.22更新)

Temporary Secretary(1980年)

 前回は『Mull Of Kintyre』という超有名曲でしたが、今回からはまた「Jooju Boobu」はマニアックに戻ります(苦笑)。今回は、1980年に発表された異色のソロ・アルバム「マッカートニーII」から、『Temporary Secretary』を語ります。既にこのコーナーでも『Coming Up』『Waterfalls』を取り上げた時に触れましたが、「マッカートニーII」は、ポールがスタジオにこもってすべての楽器を単独で演奏したことが話題となりました。それだけでも「異色」と呼ぶにふさわしいのですが、さらにこのアルバムは、ポールが当時の流行だったテクノ・ポップに挑戦したアルバムとしても知られています。常に新し物好きのポールが、この時期どんな新境地を切り開いたのか?そしてどのような成果を見せたのか?特にテクノ・ポップ色の強いこの曲を通して考えてゆきたいと思います。

 まず、また繰り返しになりますがアルバム「マッカートニーII」のあらましを。「くどい!」と思った方は読み飛ばしてください(汗)。結果的に「マッカートニーII」として発売される音源のセッションが行われたのは1979年夏のこと。ポールは「ウイングスとは違った音楽作りをしたかった」そうで、当初は発表する気のない、単なる息抜き(お遊びともいう)だったそうです。ウイングスも結成から8年が経過しようとしていて、その方針に行き詰っていたポールが、自宅に引きこもって作ったソロ・デビュー作「マッカートニー」になぞらえて再び原点に戻った、ともいえます。冒頭で述べたように、すべての楽器とほとんどのヴォーカルをポール一人で録音しています。この点も「マッカートニー」と共通しているのですが、ポールはウイングスでの人間関係をしばし忘れて、この単独セッションで1人盛り上がっていたのでした。ポールが車の中でプライベートに聴く予定だったこの音源はしばらく放置されていましたが、翌1980年(かの有名な日本での逮捕事件の年・・・)に友人たちから褒められたことがきっかけで、一転してアルバムとして発表されることとなります。これが、ポールにとって「ラム」(1971年)以来9年ぶりの実質的なソロ・アルバムとなりました。

 さて、この時期のポールがはまっていた音楽といえば、『Coming Up』の時にも触れたとおり、ずばりテクノ・ポップでした(あるいは、ニューウェーブもそうかもしれません)。この時期、ディスコやパンクも含め様々な新しいジャンルの音楽が生まれては世界を席巻し、まさに音楽界は岐路に立っていました。王道のポップやバラードを書くだけではなく、常に新しい音楽シーンを意識し流行の音楽を自分の楽曲に組み込んでゆくスタイルを取っているポールは、この時期も敏感に反応し、ニューウェーブやパンクに影響を受けた作品を多く作りました。まさに『Goodnight Tonight』の項で述べたとおりで、1979年のウイングスの「バック・トゥ・ジ・エッグ」にも、そうしたポールの積極性が反映された斬新な曲が多く収録されていました。

 そして、この「マッカートニーII」では、「エッグ」期のニューウェーブやパンクから前進して、テクノ・ポップを意識した音楽作りをしています。1978年にデビューした日本のYMOが欧米でも注目を浴びていた時期であり、ポールもTVでYMOを見聞きする機会に恵まれていました。そのTV番組に感化されてテクノ色に染まったのかは分かりませんが、「マッカートニーII」では「僕もテクノ・ポップを作るぞ!」という意気込みの元、普段は使わないシンセを多用し、さらにヴォーカルにエフェクトをかけて(ヴォコーダーを意識した?)斬新さを強調させています。中にはブルースに浮気した曲もありましたが(苦笑)、この1人多重録音セッションで録音された曲のほとんどがシンセを大々的にフィーチャーした、ポールにとっては異色の作風に仕上がりました。ポールの諸作品では、初めて機械的な香りが全体に漂うアルバムの完成した瞬間でした。そのせいで、当時も今も「これがポール!?」と耳を疑う、かなりの話題を誘う内容となりました(当時は逮捕事件の影響も大いにあるかもしれませんが・・・)。

 しかし、他の時代にも言えることですが、ポールは流行音楽の影響を受け、そのスタイルを取り入れるものの、自分なりに解釈して独自のスタイルの音楽を生み出すのです。いや、結果的にそうなってしまう、と言った方が正しいかもしれません。つまり、テクノならそのままそっくりテクノにならないで、どうしてもそこにポールが元々培ってきた独自の感性が入り込んで融和してしまうのです。これが、世間一般とは同じにはならないポールのマジックなのです。ポールからしてみれば、「一生懸命テクノ・ポップを模倣してみました!」という所なのでしょうが・・・。「マッカートニーII」も、テクノ・ポップを目指したものであったのにもかかわらず、その内実はテクノ・ポップではありません。その影響はシンセの多用や機械的な音処理に散見されるものの、実はポールならではのフィーリングあふれる曲なのです。ポールらしいメロディアスさ、ポップさがどうしてもにじみ出てしまっているのです。それは、『Coming Up』が単なるテクノ・ポップではなく極上の「マッカートニー・ポップ」であることが象徴的に示しています。(詳しくはそちらのページ参照!)

 さらに、この「マッカートニーII」がテクノ・ポップのアルバムになっていないもう1つの理由、それがポールの多重録音が生み出す音作りです。いくらポールがマルチ・プレイヤーとはいえ、自宅スタジオで1人録音した音はフルバンドでの演奏に比べてはるかにお粗末な出来です。さらに、ポールのこだわりでミキシング・コンソールを使わずたった16トラックで録音されたため、本場のテクノ・ポップの作りこみぶりに比べると明らかにチープです(汗)。これを「テクノ・ポップだ!」とポールが豪語したら、きっと熱心なテクノ・ポップのファンに袋叩きに遭うような(苦笑)、それほどの差があります。「テクノ・ポップ」とは呼べても、これを決して「テクノ・ポップ」とは呼べないのです。まぁ、元々セッション自体ポールが本腰入れずに気ままに作成したデモ・テープの延長線上にあるので、仕方ないのですが・・・。それでは、よく「マッカートニーII」でも1,2を争うほどテクノ・ポップしていると言われる、この『Temporary Secretary』はどうでしょうか・・・?

 この曲も、一聴するといかにも機械的なテクノ風サウンドが耳に残ります。その象徴的な音が、イントロからエンディングまで終始鳴り響き続けるシンセのシークエンス音でしょう!気がついたら耳にこびりついて離れないこの音、実はポールの発明ではなく元々シンセサイザーに内蔵されていたデモそのものだそうです。まぁ、作りこまないポールですから、このリフもどっかから取ってきたものだと言われても納得できますが・・・。そのシークエンス音に触発されて、コーラスを録音し、それを聴きつつ自然と出来上がったのが、この曲とのことです。曲ができるきっかけとなったシークエンス音が、やはりこの曲のイメージを決めています。図らずも、この曲を「テクノ・ポップ」ぽく聴かせる記号的存在となっています。また、ドラミングもいつもより力強く、またワンパターンぽく展開し曲をリードしてゆきます。この辺も、打ち込みサウンドを意識しているかのようですが・・・。そしてポールのヴォーカルも、『Coming Up』の時のようにエフェクト処理をしていて、無機質に聴こえます。タイトルフレーズを歌うコーラスも、どこか機械的に繰り返しているように感じられます。

 ところが、それはあくまでもこの曲がテクノ・ポップであるという先入観を通してのことで、実際はテクノ・ポップとは程遠い仕上がりです。その理由はなんといっても、ポールが単独で演奏を済ませてしまっていること・・・もっと言えばすべての楽器(シークエンス音を除く)が打ち込みではなく、ポール自らの手で繰り広げられているのです。まさに「人力テクノ」といった趣なのです。ここら辺は、コンピュータ音楽と疎遠な音楽活動をしてきたポールらしい点ですが、たとえば先述の力強いドラムスですら、打ち込みサウンドではなくポール自らの演奏なのです。そのため、どうしてもテクノ特有のデジタル・サウンドではなく、アナログ的(さらに言うとチープ)な雰囲気が出てしまっています。アナログ的雰囲気が一番味わえるのが、イントロで左の方から聴けるアコギのストロークです。時を駆けるテクノにさらりとアコギのフレーズを入れてしまうのも、アナログ人間・ポールらしいアレンジだと思いませんか?人力テクノということで実は、この曲で使用されているシンセは非常に少ないです。あのシークエンス音の印象が強すぎるのでどうもシンセを多用したイメージが強いのですが、実際は非常に最低限の音で構成されています。オーバーダブを幾重にも重ねた本場テクノに比べると、紙のようにぺらぺらのアレンジなのです・・・。

 むろんポールは、一生懸命本場のテクノ・ポップに近づかんといろんな工夫をしてそれっぽく聴かせているのですが、あくまでも「テクノ・ポップ風」にとどまってしまっています。しかし、テクノ・ポップを極めればそれでいいのか、といえばそうでもありません。事実、後年ポールはより本格的にデジタル・サウンドに挑戦することになりますが(言わずもが「プレス・トゥ・プレイ」のことですが)、結果的にポールならではの味を殺してしまい、評価も高くありませんでした。ポールの長所は、最先端の音楽を常に意識し吸収しつつも、そこに自分の持ち味を混ぜて自らの音楽=「マッカートニー・ミュージック」として完成させてゆく、という点にあります。その結果、斬新で刺激的ながらも、ポールらしいメロディやアレンジを堪能できるという、一石二鳥の音楽が出来上がるのです。決して、自分の持ち味をないがしろにしてまで新境地に入ってはいけないのです。この曲は、ほどほどにテクノ・ポップを取り入れた(結果的にそうなってしまったのですが)ことにより、ほどよく斬新なシンセサウンドと、ほどよくメロディアスで楽しいマッカートニー・ミュージックを両方堪能できる、素敵な曲となったわけです。

 この曲は、「テクノもどき」なアルバムの中でも比較的普段のポールの楽曲に近い曲です(「テクノもどき」な部分をそげば)。メロディ面では、なんといってもキャッチーなタイトルフレーズが耳に残ります。先ほど機械的と形容したやつですが、1回聴いただけでもう覚えてしまいそうなのはポールならではです。曲中何度も登場し、非常に印象に残ります。その他の部分も、ポールらしくメロディアスです。アレンジ面では、独特の緊張感を携えながら展開してゆく構成が効果的です。例のシークエンス音がその立役者になっているのは言うまでもありませんが、アップテンポなリズムを際立たせているのがベースです。意外とこれがないと性急な雰囲気がなくなってしまいます。特に、演奏パターンを変える箇所が緊張感を強調しています(“She can be a belly dancer〜”やエンディング間近など)。その“She can be a belly dancer〜”の箇所は低音のシンセがダークな雰囲気を醸し出しています。ハイライトはその2度目、ポールの語り(後述)が重なる所でしょう!シンバルも随所でいい味を出しています。エンディングは意外とあっさりしていて、スパッと終わります。ここら辺も、奇をてらって作りこむことのないポール流ですね。

 そしてもう1つポールらしいのが、歌詞が作り出す独特の世界でしょう!曲がこんなに機械的で無機質な雰囲気の音作りにもかかわらず、歌詞は「マークスさんに美人秘書を派遣するよう依頼する」話なのです。韻を踏むように繰り返されるタイトル「Temporary Secretary」は、ずばり「臨時雇いの秘書」という意味。まさに、この曲の主人公(ポール?)が必要としている人そのものなのです。何をどうしたらそんな歌詞を思いつくか?と不思議に思うことでしょうが、実はこれにはちゃんと元ネタがあるのが面白い所。ポールのコメントによると、「秘書というものは膝の上に乗せるのが一番だという考え方をポール・マッカートニーが強調しているのを見るとヘドが出る」と書いた本があって、それにインスパイアされてできたそうです。一体どういう趣旨でそんな唐突な例えが出てきたのか問いたくなるような本ですね(笑)。ポールいわく「フェミニストの意見」だそうですが・・・ちょっと私には意味が分かりません。とにかく、これを笑いのネタにするかのように、ポールが膝の上に乗せるための美人秘書を求める内容の歌詞ができました。そして、この曲で秘書の派遣を迫られている相手「マークスさん(Mr.Marks)」にも、実はちゃんと元ネタがあります。ロンドンに実在する、「Alfread Marks Employment Bureau」という秘書派遣会社のアルフレッド・マークス氏がモデルだそうで、これは会社の広告を見て名前を取ったそうです。・・・奥が深いですな、ポール。しかも面白い後日談として、この曲のリリース後、その派遣会社がこの曲を自社の宣伝に使用したいとポールに申し出た、という話があります。これが実現していたら相当面白いものになったと思いますが、なぜかポール(MPL)側から拒否され実現しなかったそうです・・・。

 歌詞を見てみると、ネタが突拍子のないものだけに非常にコミカルなものに仕上がっています。主人公(ポール?)は、いつもの秘書が病気で休み今すぐ臨時秘書が必要な様子。ただし、そこには条件があって、「私のひざに似合う強くてかわいい娘」でないといけません。そのためには給料を弾ませ、夜まで働かすことはないとマークスさんに保証します。その条件に合えば誰でもよいようで、「ベリー・ダンサー」「外交官」「神経外科医」でもいいとまで言います(ただしいろいろ難癖をつけていますが・・・)。そして美人秘書との契約が切れた際には、彼女が常軌を逸していないか調べるよう、マークスさんに頼む主人公(ポール?)でした・・・。そして後半にはポールによる語りが入っていますが、これは「イマドキの女の子がすべてを前に常軌を逸せずにいることは難しいんですってね」という意味です。

 そんな冗談ぽい歌詞が影響してか、無機質なこの曲にもどこか楽しげな雰囲気が伝わってきます。歌詞の意味を知ってしまうと、それまで機械的にしか感じられなかったタイトルコールが「臨時雇いの秘書」を連呼していることが分かり、笑えてきます。ポールのヴォーカルもエフェクト処理された声で歌うのでシリアスに感じられますが、蓋を開けてみればこんな歌詞。そう考えて聴くと、なんだか楽しそうに歌っているようにも聴こえるのが不思議です。確かに、明らかにポールがお遊びをこめて歌っている箇所もあり、中間部の“I need a!”とか後半の語りとか、終盤のリフレイン部でのシャウトなんかそうなんですが・・・。曲の持つステレオタイプ的な「テクノ・ポップ」のイメージと、コミカルな歌詞のイメージとのギャップが面白いですね。

 以上、メカニカルでコミカルな魅力いっぱいのこの曲ですが、あまり知られない話(マニアならご存知の話)を。実はこの曲、英国のみ12インチシングルとしてシングルカットされていたのです!ポールにとっては、『Goodnight Tonight』に続く2枚目の12インチシングルでしたが、チャートインすらしませんでした。それもそのはず、なんと!25,000枚限定の発売でした。現在入手しようと思えば、入手が極めて困難な超レアシングルなのです。シングルジャケットは、歌詞の世界を再現すべく、美人秘書を膝に乗せているポールのイラストという、なんとも滑稽なものでした。シングルに収録されたのは、オリジナルと同じ内容ですが、どうせ12インチで発売するのならロング・ヴァージョンを入れれば面白かったのでは、と思うのは私だけでしょうか・・・?事実、このシングルのB面は10分以上にも及ぶ『Secret Friend』でしたから・・・。ちなみに、『Secret Friend』は当時アルバム未収録であり、「マッカートニーII」のボーナス・トラックに収録されるまではこのシングルでしか聴けず長いことレア音源でした。

 ちなみに、アルバム「マッカートニーII」は当初2枚組で発売される予定であり、その当初のヴァージョンがアセテート盤からの音源としてブートとして出回っているのですが、この曲は1枚目の5曲目に収録されています。そして、1枚目の冒頭4曲がすべてインスト(あるいは歌になっていない完全お遊び曲)のため、この曲がアルバムで初めて登場する歌入りの曲・・・という構成でした。また、ブートでは若干テンポが速くなっていて、よく「公式発表する際にテンポを落として収録した」という意見を目にするのですが、単にピッチが高くなっているだけなのだけでは・・・?と思います(私の手持ちブート「The Lost McCartney Album」だけかもしれませんが・・・)。基本的には公式発表されたヴァージョンと同じです。

 さて、問題作「マッカートニーII」の1曲であり、シングル発売されてもヒットせず・・・と少し目立たない位置にあるこの曲ですが、ポールの曲の中では非常にダンサブルということが幸いし、地味ながらも幾度もカヴァーやリミックスがされています。カヴァーに関しては、私が知る限り2ヴァージョン存在しているのですが、いずれも若手のグループによるもので原曲(=ポール)以上にテクノぽい[というより今っぽい]音になっているのが面白い所です。そして、ポール以上に音作りやアレンジに凝っています。ポールも、本格的に取り組んでいたら(そしてもう少し若かったら)こんな音になっていたかも・・・と想像させます。それにしても、マニアックなアルバムのマニアックな曲をカヴァーするなんて、本当にマニアックな人(たち)なんでしょうね(苦笑)。でも、どうせカヴァーするならそっちの方が断然面白いです・・・よね?

 そして、ポール自らの監修においても、この曲は2度リミックスされています。「マッカートニーII」は何かとポールが否定的な意見を示している、という論評がありますが、この曲が2度取り上げられている点を考えると結構ポール自身お気に入りなんじゃないかな、と思います。元々リミックス向きの曲であることは確かですが・・・。まず1つめは、2003年に「Radio Slave」ことマット・エドワーズがリミックスし直したヴァージョン、その名も「Radioslave Mix」です。これまた500枚限定のアナログ盤で発売された、超レア音源となっています(ちなみにこの時もポールwith美人秘書のイラストが使用された)。オリジナルは3分ちょっとですが、このリミックスは6分以上に引き伸ばされており、ポールの12インチではかなわなかったロング・ヴァージョンのお目見えということになります。基本的にはオリジナルの素材を使い、オリジナルの構成で進行するものの、途中途中が引き伸ばされています。また、新たに打ち込みドラムを加えてリミックスぽい出来になっています。もちろん、シークエンス音も健在!なお、この「Radioslave Mix」は、翌2004年7月に英国の雑誌「UNCUT」の付録として、ポールの監修で制作された付録CD「Something For The Weekend・・・」に収録され何とかCD化されています。それでも超レアには変わりないですが・・・。この付録CDはポールが選曲していますが、オールディーズから最近の曲まで、様々なジャンルをカヴァーしている辺りにポールの音楽嗜好性の広さをうかがえます。中には、ポール本人の『Calico Skies』や、ジョージ・ハリスンの『Marwa Blues』も収録されています・・・。

 もう1種類のリミックスは、2005年に発売されたリミックス集「ツイン・フリークス」(アナログ盤及びネット配信のみ)に収録されたリミックスです。このアルバムは、ポールの2004年のコンサートツアーのプレショー用にDJ.フリーランス・ヘルレイザーが制作したものが元になっており、過去のポールの曲を複数マッシュアップさせて1曲にした音源がマニアの間で話題を呼びました。この曲は他の曲が混ざってはいないのですが、それでもリミックスならではのアレンジでよりダンサブルになった、強力な仕上がりです。こちらはオリジナルとは構成を変えており、“She can be a belly dancer〜”の箇所は割愛しています。代わりに、長い間奏が追加され、いかにもリミックスなアレンジで聞かせます。また、タイトルコールの部分もコーラス抜きのためメロディラインがかなり新鮮です。音的には、「Radioslave Mix」以上にアップテンポでリズミカルなビートに生まれ変わっていて、踊るにはうってつけです。ここでもシークエンス音は健在で、それだけオリジナルと同じアレンジなのが妙に面白いです。あと、このリミックスでは“I need a!”が至る所で使用されており、これがおかしくて笑えます(他にも変な声がたくさん入っていてそれも笑えます)。個人的には、最近はオリジナルや「Radioslave Mix」よりもこの「ツイン・フリークス」リミックスの方がお気に入りです!

 私がこの曲を聴いたのは、ポールのソロを聴き始めの頃でした。「バンド・オン・ザ・ラン」「オール・ザ・ベスト」に続いて、3枚目に聴いたのが「マッカートニーII」でしたから、普通なら考えられない異様な順番で聴いたことになります・・・。当時「マッカートニーII」は、夜聴くとお化けが出てきそうな不気味さを覚えて仕方なかったのですが、そんな中でもこの曲は当時からとても好きな曲でした。この曲と『Coming Up』だけは不気味さを感じなかったですね。この曲は、『With A Little Luck』に出会うまでは一番好きなポールの曲だったかもしれません(笑)。そして、今でも指折りにお気に入りの楽曲です。特にダンスナンバーとしては最上位と思っているほどです。イントロのシークエンス音を聴くだけで踊りたくなってきます。お気に入りの部分は、“She can be a belly dancer〜”のくだりですね。この箇所はリズムがノっていて、聴いていて面白いですね(後半の語りの部分はスピード感があって特に好きです)。そして、さっきも言いましたがお気に入りのヴァージョンは「ツイン・フリークス」のリミックスです(苦笑)。これを聴くと、今すぐにでも踊り出したくなる気分です。

 この曲や、以前紹介した『Coming Up』『Goodnight Tonight』では、ポールがいかに流行の音楽を意識していたか、そしてそれを吸収して自分なりの解釈でオリジナルのスタイルを確立してゆくかが分かります。「マッカートニーII」は、(特にポール初心者が)聴くとかなりつらいアルバムだというのが一般論ですが、そういった観点を踏まえて、あるいは元々は「お遊び」のアルバムということを念頭に置いて聴くと、純粋に楽しめると思います。特にこの曲は、ファンの間では(マニアになればなるほど)人気が高いようです(あまり否定的なコメントを見ない)。ポールの歴史の中でも異色ですが、気づけばその魅力にやみつきになって、ついつい踊り出していると思いますよ・・・!

 さて、次回紹介する曲のヒントですが・・・「音頭風レゲエ風テクノ風問題作」。マニアックの真骨頂ですので、お楽しみに!!

 (2008.9.20 加筆修正)

  

(左)英国で限定発売された12インチシングル。かなりのレア・アイテムです。今では両面ともCDで容易に聴けますが・・・。ジャケットにも注目!

(右)アルバム「マッカートニーII」。テクノ・ポップに影響されたポールが作った、全編宅録の問題作。お遊び感覚が面白いです。

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