Jooju Boobu 第17回
(2005.5.06更新)
Take It Away(1982年)
今回の「Jooju Boobu」は、管理人が5日(木)に一日かけてドライヴに行った影響で更新が遅れました。楽しみにしてくださった皆様、申し訳ございませんでした(汗)。さて、今回はポールの「最高傑作」と呼ばれることの多い、ソロ・アルバム「タッグ・オブ・ウォー」(1982年)からのヒット曲『Take It Away』を語ります。ウイングスとしての活動を挟み、ポールにとって久々の本格的なソロとなったセッションで生まれた曲ですが、ここでは彼がかつて活動していたビートルズとの接点をいろいろ見出すことができます。ビートルズ・ファンなら注目の1曲についていろいろ触れてゆきましょう。
1980年、ポールは一人で作った宅録アルバム「マッカートニーII」をリリースすると、活動休止をしていたウイングスのメンバーを久々にスタジオに集めてニュー・アルバムの制作を始めます。ところが、耳を疑うような衝撃的な知らせがその年末に飛び込んできます。言わずもが、ニューヨークで無二の親友ジョン・レノンが暗殺されたのです。ポールが15歳の時に知り合い、以後ビートルズに至るまで共に同じバンドで活動をしてきた、公私共々最高のパートナーだったジョン・レノン。1970年のビートルズ解散後は仲たがいしていましたが、暗殺直前には既に仲直りして、ポールが米国のジョンを訪問するなど再び交流を始めていました。そんな矢先のジョンの死に、ポールは耐え難いショックを受けます。翌年、ポールはウイングスとして作り始めたニュー・アルバムをソロに切り替え制作を続行。程なくしてデニー・レインの脱退宣言によりウイングスは自然消滅。「ニュー・アルバム」、つまり後のアルバム「タッグ・オブ・ウォー」は、ポールにとって激動の時期、再びソロとして一人で音楽活動を始めるという、不安を抱えながらの新たなスタートの時期に生まれたのです。
ここで、このコーナーで初登場のアルバム「タッグ・オブ・ウォー」について大まかな説明をしておきます。ポールは、このアルバムではひさしぶりにジョージ・マーティンにプロデュースを依頼します。マーティンはビートルズのプロデューサーとしてあまりにも有名ですが、ことポールにとっては「音楽の先生」に当たる人物です(ビートルズ時代のポールのクラシック系のマスターピースの数々は、マーティンの貢献が多大にあります)。ポール関連では、ビートルズ解散後もウイングスのシングル「Live And Let Die(007/死ぬのは奴らだ)」をプロデュースしましたし、この「タッグ・オブ・ウォー」制作直前にはポールがアニメ映画用に書いた新曲『We All Stand Together』のレコーディングにも携わっています。
ビートルズのプロデューサーであったマーティンがプロデュースを行うことにより、「タッグ・オブ・ウォー」には「静」から「動」へダイナミックに移動するアレンジがポールの音楽に久々に復活することになりました。'70年代つまりウイングス時代にはあまり見られなかった作風ですが、『Hey Jude』や『Let It Be』といった後期ビートルズの名曲(主にポールの作品)に似た、ビートルズをほうふつさせるアレンジは、ポール自ら「ビートリー(beatly)」と造語を使って称する仕上がりです。ちょうどジョンの死を受け否応にもビートルズのことを振り返らざるをえなかった時期でもありましたが、ビートルズで数々の名曲を生み出したポールとマーティンのコンビにより、ビートリーなアレンジが、時代を越えジョンの死を越えアルバム「タッグ・オブ・ウォー」で甦ったのです。ビートルズっぽいといっても、ビートルズ時代と全く同じ仕上がりではなく、10年の歳月を経てより大人の風格を帯びたポールの作風の変化が、穏やかな味わいを漂わせているのが特徴といえるでしょう。「タッグ・オブ・ウォー」セッションでは、「タッグ・オブ・ウォー」と(次作となった)「パイプス・オブ・ピース」の2枚のアルバムが生まれるほどたくさんの曲が録音されましたが、タイトル曲『Tug Of War』をはじめ『Wanderlust』『Here Today』『Ballroom Dancing』などなど・・・今でもファンの間で親しまれる質の高い名曲が生まれ、ことに「タッグ・オブ・ウォー」は英米共に1位を記録し、ポールの名盤としてよく挙げられています。そんなセッションで、今回紹介する『Take It Away』も生まれたのです。
左写真でポール(with ヘフナー・ベース)とリンゴ、ジョージ・マーティンが一堂に会しています!
「タッグ・オブ・ウォー」セッションにはもう1つ大きな特徴があります。ポールはセッションで取り上げる曲ごとに、曲に合った様々なミュージシャンを招いて演奏に参加させたのです。これはプロデューサーのマーティンの「自分よりある分野では上を行く人をなぜ取り上げない?」というアドヴァイスを受けてのことですが、アルバム全体で同じミュージシャンを使うのではなく、曲によってミュージシャンを使い分けるという方式は、ポールにとっては珍しいこの時期特有のものであり、そのおかげか各曲の演奏も曲に合ったものになっています。参加したミュージシャンには、スティービー・ワンダー、カール・パーキンスそしてマイケル・ジャクソンと、大物ミュージシャンが名を連ねましたが、この『Take It Away』では・・・といえば、リンゴ・スターと共演を果たしたのです!
リンゴ・スターとは誰か?ということはポールのファンならあえて言われなくとも・・・ですが(汗)、言わずもが元ビートルズのドラマーであり、同じバンド仲間だったポールとは長らく交流を続けている人物です。リンゴの定番『Yellow Submarine』『With A Little Help From My Friends』は主にポールが書いた曲です。今となってはポールと共に生き残った元ビートルでもあります。ビートルズ解散前後はポールとリンゴの関係は険悪になっていましたが、ジョンやジョージ・ハリスンのように深刻にはならず、しばらくすると親交を再び深めていました。その証拠に、ポールはリンゴに『Six O'clock』『Pure Gold』などの曲を提供、レコーディングにも参加しています。'76年にはウイングスのコンサートをリンゴが訪問するという出来事もありました。そして「タッグ・オブ・ウォー」セッション直前の1980年にはリンゴのアルバム「バラの香りを(Stop And Smell The Roses)」のレコーディングに愛妻リンダやローレンス・ジュバー(ウイングス)と共に参加、『Private Property』『Attention』を提供しています。この「タッグ・オブ・ウォー」を挟んだ後も、ポールの映画「ヤァ!ブロード・ストリート」に出演したりポールのアルバム「フレイミング・パイ」に参加したり、ビートルズの様々なプロジェクトで一緒したりと、今でも時折活動を共にして仲のよさをアピールしているリンゴです。
実は、この曲も本来はリンゴに贈る予定だったようです。確かに、リンゴが歌いやすい音域・メロディで、比較的シンプルな構成です。ポールいわく「リンゴらしくなかった」そうで結局は自分で録音・発表することになるのですが、もしかしたら「バラの香りを」でリンゴのヴォーカルで発表されていたかも・・・と想像すると面白いです。(ちなみに、かのウイングスのヒット曲『Let 'Em In』もリンゴに贈る予定だったそうです!)しかし、ポールは「この曲はリンゴと一緒にやろう」という思いは捨てていなかったようで、ポールのヴァージョンにリンゴがドラムスで参加することになります。同じセッションで録音され、次作「パイプス・オブ・ピース」で発表された『So Bad』にもリンゴが参加していますが、リンゴはもちろん、元ビートルがポールのソロナンバー(ウイングス含む)に参加したのは、これが初めてのこととなります。やはりここは、ジョンの死が残る3人の間のわだかまりを徐々に溶かしていった・・・ということがあるのでしょう(当時リンゴの結婚式にポールとジョージが参加し『She Loves You』を演奏している)。ちなみに、「タッグ・オブ・ウォー」収録曲の『Wanderlust』にはジョージが参加する予定でしたが結局はかなわず、ジョンとジョージがポールの曲で共演することは実現せず2人はこの世を去ってしまいました・・・残念。
この曲はポールお得意のキャッチーなポップナンバーです。ポールといえばこういうイメージを思い浮かべている人も多いことでしょう。先に触れたように元々リンゴに提供する予定だったことから、メロディも非常にシンプルで覚えやすく構成も単純明快。キャッチーさを増幅させています。基本的にはサビと節を繰り返すパターンで進行してゆきます。そしてアレンジ面では、まさに「ビートリー」の特徴である「静」から「動」への音の変化が感じられます。ビートリーの分かりやすい例と言えるでしょう。アルバムではオープニングの『Tug Of War』のストリングスにクロスフェードする形で始まります(『Tug Of War』もビートリーな構成なので、2曲連続して「静→動」が楽しめるわけですね)。冒頭はドラムソロ(どこかレゲエ風・・・)で始まり、そこにオルガンが絡み、ポールの気だるいヴォーカルが入ります。このリラックスしたムードは次のサビでしっかりとしたポップに切り替わります。ピアノやギターが加わり、ヴォーカルもはきはきした歌い方に。落ち着いた演奏・歌い方のされる節を挟み、次のサビで一気に賑やかになります。派手なブラス・セクションとドラムスをフィーチャーしたこの部分は、イントロの「静」に比べて「動」に当たり、ハイライトと言えるでしょう!節→サビをもう一度繰り返した後は再び静かなアレンジに切り替わり、意外にもサビに戻ることなくフェードアウトしてゆきます(ちなみにアルバムでは音の消え方がかなり強引)。華やかなコーラスとブラス・セクションのソロを携えながらのエンディングは感動的でもあります。このように文字で書くだけでも息をつかせぬ構成であることがお分かりかと思います(あとは実際に聴いてみてください!)。『Tug Of War』『Wanderlust』などはバラードでビートリーな展開を見せていますが、この曲ではポップでビートリーな「静→動」が堪能できます。シンプルな音作りから徐々に音が厚くなって賑やかになってゆく構成なのです。
歌詞は、「君の演奏が聴きたいよ」という一節から分かるように、誰かの演奏について歌っているようです(恐らく、曲をプレゼントする予定だったリンゴを念頭に置いているのでしょう)。タイトルでもある「Take it away」は直訳すると「それを捨て去って」という意味ですが、あまり深い意味はなさそうです。サビの部分は曲を通して全く同じ歌詞になっていて、その繰り返しが印象的です。一方の節では、音楽(恐らく「君」の演奏)が流れるいろんな場面を歌っていて、ポールの物語風詞作が光ります。一人カーラジオをかけつつ車を走らせるドライバー、バンドの演奏をメッセージボードを掲げて楽しむ観客たち、バーの隅っこで枯れかかっている花・・・といろんな光景が歌われますが、実は1文で3箇所韻を踏むという離れ業をやってのけています(例:Lonely driver out on the road with a hundred miles to go/Sole surviver carrying the load switches on his radio)。それでいてこれだけ自然で印象的な歌詞ができるのですから、ポールの詞作力には脱帽です。
「タッグ・オブ・ウォー」セッション全般にそうなのですが、参加ミュージシャンの豪華さが素晴らしいものです。まるでリンゴのアルバムのようにオールスター出演の様相を見せています(先述のようにポールにしては珍しい)。まず、先述のリンゴがドラムスで参加。しかし、ここではリンゴだけでなく、もう1人ドラマーが登場します。それがスティーヴ・ガッドです。セッションドラマーとしてその名をはせ、「神様」「天才」とも称されるドラムプレイを聴かせるスティーヴは、「タッグ・オブ・ウォー」セッションで『Somebody Who Cares』『Sweetest Little Show』『Hey Hey』そしてこの曲で参加しています。そしてリンゴとスティーヴという畑の違うドラマーが集って、この曲ではツインドラムスを披露しています!ヘッドホンで聴くと分かりますが、左右から違ったドラムスが聴こえてきます。これは左がスティーヴで、右がリンゴ。共にリズムをキープをしつつもドラムパターンが異なっていて、2人の個性が出ています。シンプルなリズムなのに結構複雑気味に聴こえるのは、このせいかもしれません。同じパターンだったり違うパターンを演奏してみたりと、聴き込めば聴き込むほどまさに絶妙です。そして、2人の天才ドラマーの同時共演を堪能できるのはこの曲だけです!ぜひヘッドホンで確かめてみてください。
(左)この曲で絶妙なツインドラムスを披露するスティーヴ・ガッドとリンゴ・スター。
(右)ポールの後ろにはリンダとエリック・スチュワートが見えます。'80年代ウイングス!?
そして、注目すべきはリンゴ&スティーヴのドラム隊だけではありません。エレクトリック・ピアノ(オルガン)を弾いているのは、プロデューサーのマーティン先生なのです!ビートルズの頃からピアノなどで演奏に参加することが多々あったマーティンですが、ポールの曲では久々の参加となりました。なかなか聞き取りづらいですが、あの冒頭のドラムソロに絡んでくるオルガンなんかは彼の演奏です。ポールはもちろんベース、ギター、ピアノ、ヴォーカルで参加していますので、この曲ではポール&リンゴ&マーティンと3人のビートルズ関係者が勢ぞろいしたことになります。そう考えて聴くと、冒頭のドラムソロにベースとオルガンが絡んでくるのがちょっと感動的・・・かも。そして、コーラス隊にはウイングスに引き続き愛妻リンダの登場。そしてもう1人、'80年代ポールに欠かせない存在となってくるエリック・スチュワート(10cc)がコーラスに加わっています。ウイングス時代のリンダ&デニー・レインのコーラスも絶品ですが、こちらも味わい深いコーラスで印象的です。節やサビで随所に入っていて存在感を示しています(特にサビの“Down,down”が効果的)。単なる「ウー」「アー」でも、きれいなハーモニーです。もし当時ポールがバンドを組んでいたら、エリックがデニーの代役になっていたかも・・・と思わせます。そして、クレジットはされていませんが賑やかなブラス・セクションも忘れてはいけません。この曲の「動」の部分を象徴する派手な音色です。サビはもちろん、エンディングでも印象的なソロを聞かせます。後半は、コーラス隊とブラス・セクションが華やかさの中心になっていると思います。以上のように、演奏者を見てもまさにオールスター的。当時のポールのレコーディングの充実ぶりを示しています。
そんなオールスターぶりをお腹いっぱいに堪能できるのがプロモ・ヴィデオでしょう。なんと、この曲に参加したすべてのミュージシャンが勢ぞろいで登場しているのです!おかげで、ポールのプロモでも最も多彩な人脈が参加した作品となっています。プロモの内容は基本的には歌詞の再現となっていて、ドライバーや観客、枯れかかった花もちゃんと登場しています。しかし、それ以上のコンセプトを込めていたことがプロモ集「The McCartney Years」でのポールのコメントで判明しました。実は、このプロモに登場するポールたちは売り出し中のバンドで、それを一人の男が見初めてマネージャーを買って出る・・・という設定なのです。この話はどこかで聞いたような・・・と思ったら、それはポール自ら・・・つまりビートルズのデビューまでの道のりそのものでした。自宅での練習からスタジオ、コンサートそして成功と、ビートルズの成功物語をポールはこの「オールスターバンド」とダブらせたかったというわけです。リンゴとマーティン先生の参加があり何かとビートルズをほうふつさせる曲でしたが、やはりこの辺もジョンの死を受けてポールが自らの過去を振り返った結果・・・といえそうです。
その売出し中のバンドの演奏シーンは3場面にわたって登場します。順に自宅・スタジオ(歌詞に合わせてラジオ番組?)・コンサートとなりますが、それぞれ服装や楽器が異なり見ていて面白いです。そしてもちろん、ポール・リンダ・エリック・リンゴ・スティーヴ・マーティンの6人の演奏風景が楽しめる、それだけで十分興味深い内容です。見ものとしては、相変わらずリンゴがおどけた表情を随所で見せてくれます。'80年代は自分のアルバムの不調やアルコール中毒でよい話が少なかったリンゴですが、ここではいつもの元気なリンゴが見られます。ポールと一緒に演奏している、それだけでもビートルズ・ファンとしてはうれしいのは当然ですが。また、マーティン先生の演奏する姿を見られる貴重なプロモでありそちらも必見。冒頭の私服でピアノを演奏する姿は新鮮です。ポールと目配せするのが微笑ましい。意外とノリノリです(笑)。エリックは相変わらずのサングラスをかけての登場です。演奏シーンのうち、コンサートの場面は1982年6月23日にエルスツリー・スタジオでファンクラブの会員を招いて撮影されていることが判明しています。コンサートの機会がほとんどなかった'80年代ポールの、しかも強力なバックバンド(!)を従えてのライヴを生で見られたファンがうらやましい限りですね。なお、ポールは場面によって3種類のベースを使い分けており、そこも必見。
また、プロモでマネージャー役(第1節の歌詞のドライバーに該当する)を担当したのは俳優のジョン・ハート。先述のビートルズ物語にダブらせればブライアン・エプスタインに当たる役柄ですが、実は彼が抜擢されたのはポールが「ブライアンに似ている」と思ったからだそうです。確かに、ちょっと雰囲気が似ているかもしれません。また、ブライアン本人もポールと共にジョン・ハートが出演した映画を見に行ったことがあり、ジョンもブライアンを知っていたようです。そのためか、本当にポールのマネージャーか?と思わせるような演技を披露しています(特にエンディングのパーティーの場面でポールと仲良くグラスを交わす姿なんかが)。他に、パーティーの場面ではリンゴの奥さん・バーバラも顔を見せています。ブラス・セクションはポール・ヤングのバックバンドだそうですが、実際のレコーディングに参加したかは不明です。このように、ビートルズのファンはもちろん、見所いっぱいのプロモです。「The McCartney Years」で見ることができます。
プロモでは歌詞の再現がされています。左写真の男性はジョン・ハート演じるマネージャー。右写真は第3節の「faded flowers wait in a jar」の再現です。
ここで恒例のマニアック話を(苦笑)。例のごとくブート盤の出番です。この曲のアウトテイクとしては、1980年夏にポールがパークゲート・スタジオにて録音したデモ・テープが発見されています。この時のデモは、ポールの自宅スタジオ(ルード・スタジオ)での録音と思われていた音源ですが、「タッグ・オブ・ウォー」「パイプス・オブ・ピース」で発表される多くの曲の初期ヴァージョンが聴ける貴重なテープです。この曲もポールの単独録音によるもので(当然ながらリンゴなどは不参加)、ドラムス含めすべての楽器をポールが演奏しています。まだ公式テイクのようなビートリーなアレンジがなく単調なまま展開してゆく構成となっています。ピアノがメインに据えられていることが分かります。歌詞はほぼ完成していますが若干異なっています。また、構成はまだ決定していなく、サビと節を延々と繰り返してゆき、最後はフェードアウトせずスローになって終わるというものになっています。この辺はデモっぽいです。一部ダブルトラックのヴォーカルだったり、ファルセット風のヴォーカルを聞かせたりと、若干アレンジはされていますが、まだまだ未完成という感じでまだまだポップ感は足りません。この音源は「Rude Studio Demos」「Tug Of War & Pipes Of Peace Sessions」など「タッグ〜」関連のブートで聴くことができます。蛇足ですがこのデモで未発表曲が数曲残されていて、うち『Seems Like Old Time』は影の名曲です!
さて、この曲はアルバム「タッグ・オブ・ウォー」発売の約2ヶ月後の1982年6月にシングルカットされました(B面はアルバム未収録で未CD化の『I'll Give You A Ring』)。曲の持つキャッチー性のおかげか、それともリンゴとの共演の話題性が手伝ってか、英国で15位、米国で10位を記録しました。シングルジャケットでギターを抱えコーヒーカップを持って微笑むポールが印象的。12インチでも発売され、そちらにはB面に『Dress Me Up As A Robber』が追加収録されていました。シングルに収録されたヴァージョンは、前曲『Tug Of War』とクロスフェードしていない独立したヴァージョン。冒頭のドラムソロをクリアに聴くことができます。当時のファンにとってはオリジナルテープを作るのに重宝したようです。なお、このシングルヴァージョンは現在はベスト盤「ウイングスパン」でCD化され聴くことができます。
私は、「ウイングスパン」で最初に聴いた時からこの曲が好きです。何と言ってもポールの直球ポップナンバーですし、ビートリーな構成で音作りが変化してゆくのが聴いていて楽しいです。特にブラス・セクションが賑やかなサビが好きですね。もう1回くらいサビが多くあったら個人的にはよかったのですが・・・それだと曲がくどくなっちゃいますね(汗)。ポールのソロを聴く前にビートルズを聴いてきた(皆さん大抵そうでしょうけど・・・)私にとっては、リンゴ・スター、ジョージ・マーティンとビートルズ関係者が顔を揃えているのがやはり感慨深いですね。『Wanderlust』へのジョージ・ハリスンの参加もぜひ実現してほしかった・・・。オールスターぶりのプロモもお気に入りです。6人編成のバンドも一緒に演奏したくなりそうな和気あいあいぶりですが、ジョン・ハートのブライアンぶりが個人的には好きです。この曲はリンゴのヴァージョンも聴きたいですね。ぜひリンゴが生きている間に!ライヴでポールと共演というのもいいかもしれません。でも実は、この曲はまだポールのライヴで演奏されたことがないんですけどね・・・(汗)。ヒット曲でライヴ映えしそうな盛り上がる曲なのにもったいない話です。それだけに、プロモ撮影でこの曲のレアなライヴを見聴きできた極めて少数のファンがうらやましいですね!
この曲は、ビートルズファンにはもちろん、そうでない皆さんにも聴いていただきたいですね。リンゴの共演という話題性を除いても、ポールならではの'80年代屈指のポップナンバーですし、後期ビートルズのようなマーティンのプロデュースによるアレンジも圧巻です。アルバム「タッグ・オブ・ウォー」自体、1曲ごとが味わい深い名曲で構成された名盤ですので、アルバムと共にぜひ!
さて、このコラムでは私の大好きな順に曲を紹介していますが、今回で、私がこのコラムを開始した当初「一番大好きな曲たち!」として挙げた曲が出揃いました。・・・が、よく考えると今でも順位が変わっているところがあります(汗)。まぁどれも大好きな曲であることは変わりないのですが・・・。ラインアップを振り返ると、やたらと「マイナーな」シングル曲が多いですね・・・。それが私の嗜好なのかもしれません。現在、次に好きな曲のゾーンに入る曲として11曲が挙がっています(飛び入りがなければの話ですが)。今までの『Coming Up』や『Goodnight Tonight』といった曲と違い、マニアックな曲だらけです(笑)。管理人の趣味の本領発揮の時がやってきました!(誰もマニアックな曲紹介なんて望んでいない・・・?)
さて、その11曲から最初に紹介される次回の曲のヒントは・・・「カントリー風」。かなりマニアックですので、お楽しみに!!
(2008.7.13 加筆修正)
(左)当時のシングル盤。B面の『I'll Give You A Ring』は未CD化。かなりの佳曲ですのでCD化希望!12インチのイエロー・レーベルは当時のファンに好評だった模様。
(右)アルバム「タッグ・オブ・ウォー」。大物ミュージシャンとの共演、ジョージ・マーティンのプロデュース、味わい深いメロディと歌詞・・・捨て曲なしの名盤です!