Jooju Boobu 第14回

(2005.4.24更新)

Wonderful Christmastime(1979年)

 古今東西、「クリスマスソング」というものはたくさん作られてきました。私に言われなくとも、皆さんいろんなクリスマスソングをご存知でしょう。トラッド(伝統音楽)に限らず、現代音楽の世界でも数え切れないほどのクリスマスソングが作られ、世界のスタンダードとして毎年冬に彩りを添えている曲もかなりの数にのぼります。

 さて、ビートルズのメンバーはどうでしょう?クリスマスソングは作っているのでしょうか?ビートルズ自身はファンクラブ向けにクリスマスレコードを作っていた時期があり、その中で『Christmas Time(Is Here Again)』(1967年録音)は後に公式発表されました。そして、解散後も元ビートルたちは各自クリスマスソングを手がけています。有名どころはジョン・レノンの『Happy Xmas(War Is Over)』(1971年)でしょう。いまやクリスマスには欠かせない曲にまでなっています。ジョージ・ハリスンは、アルバム「ダーク・ホース」(1974年)で『Ding Dong,Ding Dong』を発表、リンゴ・スターは、クリスマスアルバムをリリースしています(1999年)。それではポールは・・・?

 というわけで、今回の「Jooju Boobu」では、ポールのクリスマスソング『Wonderful Christmastime』を語ります。クリスマスを直接的に歌ったものとしてはポール唯一のクリスマスソングは、1979年に録音・発表されました。クリスマスソングというと明るく陽気なイメージをよく思い浮かべがちですが、この曲も例にもれず非常に陽気な作風をしています。しかし、実はそんなこの曲の裏側には、ポールの「ある心境の変化」も読んで取れるのです。今回は、その辺も話しつつ、複雑な裏事情を抱えたこの曲を語ってゆきたいと思います。

 この曲は、1979年11月にシングルでリリースされました。シングルのB面は有名な「赤鼻のトナカイ」をレゲエアレンジにカヴァーしたもの(『Rudolph The Red-Nosed Reggae』)で、このシングルは完全な「クリスマス・シングル」でした(ただし、『Rudolph The Red-Nosed Reggae』は1975年の録音)。クリスマスソングとしてはよくありがちな(時期的にセールスが見込める)クリスマス1ヶ月前の発売で、英国では6位を記録しましたが、米国ではなぜかチャート・インせず。ジョンの『Happy Xmas』に比べてマイナーに甘んじているのは、どうもこのチャート・アクションが影響しているのかもしれません・・・。

 この曲が録音・発表された1979年当時のポールは、新たなラインアップで再スタートしたウイングスと共にアルバム「バック・トゥ・ジ・エッグ」をリリースした後でした。となると、当然この曲もウイングスで録音した・・・と想像されるかと思いますが、実はこの曲、そうではないのです。ウイングスのメンバーは一切参加していないどころか、ウイングス名義ですら発表されなかったのです。実はなんと、この曲はポールひとりで録音したものなのです。そして、シングル「Wonderful Christmastime」は、ファースト・ソロシングル「Another Day」以来のポールのソロナンバーなのです(アルバム「ラム」はポールとリンダの共同名義)。

 なぜ、みんなで録音すればとっても楽しいはずのクリスマスソングを、ポールはウイングスのメンバーたちとではなく、わざわざ単独で録音したのでしょうか?

 実は、この時ポールは、ウイングスと自分の関係を見つめ直していたのです。1971年の結成以来、何度かのメンバーチェンジと成功を経てきたウイングス。ポールはそのリーダーとして結成以来ずっと他のメンバーを牽引してきましたが、(些細ながらも)いざこざの絶えなかった(と言われている)メンバー間の仲を取り持つのに腐心し、幾多のメンバーチェンジと解散の危機を乗り越えて成功を手にすれば今度は「ビートルズ再結成」の噂にさいなまれ、ポールの抱く「ウイングス像」と世間とのギャップを埋めるのに苦労していました。

 そして1979年、新メンバーを加えて気持ちを入れ替え作った自信作「バック・トゥ・ジ・エッグ」が売り上げ不振に終わります。これにはさすがのポールもがっかりし、くたびれてしまったことでしょう。さらに、そこへデニー・レインが「ツアーに出よう!」とせがんできます。コンサートをしていないと気が済まないデニー。休息がほしいポール。ポールは自宅に引きこもり悩みます。ウイングスを再生させたことが、果たして本当によかったのか。自分にバンドは必要なのか。自分がバンドに縛られる必要はあるのか。自分は必ずしもバンドを優先しなくてもいいのではないか・・・。ポールの心の中で、何かが大きく変わった瞬間でした。

 ウイングスの活動が途絶える中、ポールは自宅に引きこもり、気ままなレコーディングを行います。自宅の居間やキッチンをスタジオ代わりに、録音機材を友人から借りて思いつくがままに曲を制作。すべての楽器を自分ひとりで演奏、ヴォーカルもひとりで担当。当時流行のテクノ・サウンドに影響されて、シンセを使用した実験的な単独セッションが行われました。ウイングスという「バンド」に束縛されずに、自分の力だけを頼りに一から作り上げてゆくこのセッション。一見寂しいようにも感じられますが、ポールにとっては久々の単独作業に非常に刺激を受けた、有意義なセッションになったようです。

 ポールから溢れ出てくる尽きせぬアイデアは、このセッション期間中に多数の新曲を生みました。出来上がった曲は判明しているだけで19曲。1979年7月にはこの曲『Wonderful Christmastime』を、翌8月には翌1980年にソロ・アルバム「マッカートニーII」で発表される曲たちをレコーディングしています。そして、この気ままなセッションを満足いくものにできたポールは、徐々にウイングスを活動の中心から反らしてゆくのでした・・・。この後、ポールはウイングスとデニー念願の(笑)コンサート・ツアーに出るので、この思いが決定的となるのは翌年1月の例の「逮捕劇」が契機ですが・・・。

 バンドで取り上げたら最高に楽しいであろう陽気なクリスマスソングを、あえてひとりでレコーディングしたのは、このようなポールのウイングス観の変化を示していたのです。もちろんポールはそんなことを公言はしませんでしたし、ウイングスはその後もしばらく活動を続けましたから、リリース当初は誰も気づく由はなかったのでしょうけど・・・。

  

この曲をひとり自宅で録音してしまったポール。その姿を想像するとなんとも寂しくて痛々しい・・・(苦笑)。

 この曲のできるまでの過程を述べてきましたが、ここでこの曲自体について。ポールがなぜこの時期にクリスマスソングを作ったのか?という質問については、ポールが「クリスマスのスタンダード曲を書いてみたかった」という趣旨の発言をしています。この辺は、『Mull Of Kintyre』の時の「新しいスコットランド民謡を書いてみたかった」発言に似ています。ただし、ポールいわく「『ホワイト・クリスマス』には勝てっこないから、ポップ・ソングで勝負した」とのこと。ポールの得意分野であるポップ・ソングでクリスマスソングに挑戦したのです。バラード・タイプではジョンの『Happy Xmas』が既にあるので、それを避けた格好でもあります。

 誰でも歌えるクリスマスソング、ということでメロディは非常にシンプルで覚えやすく、かつキャッチー。構成も特にひねりもなく、歌詞も繰り返し中心でそれほど多くありません。まさにポップ・ソングのよい例で、そこはさすが天才メロディ・メイカーのポールならではですね。ポップで勝負したのは成功だったといえるでしょう。ポールを知らない人でも、クリスマス頃に街中で流れているのを聴いたら、すぐに覚えてしまうことでしょう。結果的には世界のスタンダード!とまではいきませんでしたが、「本国イギリスでは毎年のように流してくれるよ」とポールもご満悦の結果に。このメロディ・歌詞ならきっと100年後も歌い継がれていることでしょう。「マッカートニーII」収録の作品はアドリブで演奏してゆくうちにメロディが浮かんだものが多いですが、この曲ばかりはちゃんと練られて作られたと思います。それなりにセールスも意識していたでしょうし。

 サウンド面では、何度も言いますが、やはり「ポールの単独録音」という点が特筆すべきでしょう。元祖マルチ・プレイヤーの面目躍如、この曲でもキーボードからギターやベースからドラムスまで、すべての楽器をひとりで多重録音しています。ポールの単独録音作品にお決まりの一言ですが、やはり「チープ」な感じは拭い切れません(汗)。しかし、宅録(自宅録音)でここまでの作品に仕上げてしまうポールの腕には脱帽です。私になんか真似しようたってできないですから。

 使用楽器の中でも、ムーグ・シンセが多用されていて非常に印象的です。今聴くと若干SFチックでチープな音をしていますが(汗)、これもテクノ・ポップに影響されてのことでしょう。「マッカートニーII」の曲にも共通する音です。このムーグと、タンバリンや鈴の音がクリスマスのイメージをかき立てます(タンバリンと鈴はクリスマスソングに常套手段ですけど・・・)。バックで絶え間なく流れるシンセ・ストリングスも聖なる夜のイメージにぴったりです。ドラミングはいたってシンプル。ポールらしいですね。エンディング付近でドタバタ風のフィルインを聞かせるのもポールらしい(苦笑)。シンプルなのはベースラインもそうで、この辺は気ままな単独セッションの影響が感じられます。『Coming Up』と同じ現象が起きています。バンドでやっていたらこうはなっていなかったはず・・・。ギターはほとんど入っていなく、そのせいかどこか無機質さが漂うのですが、後半に少しだけエレキ・ギターのソロが入ります(音はアコギ風)。こういうアレンジは粋な計らいでいいですね。エンディングは鈴の音がフェイドアウトで締めくくります。これもクリスマスソングでは常套手段。これがあればどんな曲でもクリスマスソングに聴こえてしまうと言っても過言ではないくらい(笑)。

 歌詞は当然クリスマスを歌ったもの。「ただ素敵なクリスマスを楽しもう!(Simply having a Wonderful Christmastime)」という繰り返しは、楽観的なポールらしい一節です。その一節どおりに「シンプル」極まりない歌詞ですが、クリスマス・パーティーで気持ちが高ぶり盛り上がってゆく様子を歌っています。やっぱり、クリスマスはこうあるべきですね。子供の聖歌隊が歌う光景も歌われています。楽観的なポールらしい、みんなで賑やかに過ごす聖夜・・・といった感じです。

 楽器と同じく、ヴォーカルもポール単独で、ひとり盛り上がっています(笑)。妻のリンダすら参加していなく、本当に「ひとりクリスマス」状態です。コーラスも全部ポールによる多重録音で、「ディンドン」の部分なんかはリンダが歌えば効果的に響くはずなのに、ポールがひとりで高音出しています(笑)。歌い方を前半と後半で微妙に変えていくのはポールらしい所。先述のパーカッションしかり、後半の手拍子しかり、ポールがひとりで録音を重ねています。結果的にはポールらしい楽観的な仕上がりを強調する役目になっていますが・・・。ひとりで朗らかに歌い、手拍子で盛り上がるのは想像していて実に寂しい光景ですね(苦笑)。痛々しいというか、いたたまれなくなりますな。まぁそこがポールらしいといえばそういえなくもないですし・・・、ウイングスとではなく単独でやるのがポールの(当時の)希望だったことは間違いないでしょう。それでもリンダくらいは参加させてもよかったのでは・・・?と思ってしまいます。愛妻ですし、パーカッションや簡単なシンセフレーズくらいは演奏できますし。コーラスなんか、リンダさんがいればもっと華やかになったはずですが・・・。「狂った教授」(ポール・談)のように引きこもって録音に没頭するスタイルには、リンダさんの出番はなかったのでしょうか。

 ちなみに、この宅録セッションの音源はブートとして出回っており、「The Lost McCartney Album」などがそうなのですが、この曲のアウトテイクは発見されていません。ブートのソースが「マッカートニーII」のアセテート盤(当初予定されていた2枚組ヴァージョン)なので、アセテート盤制作前にシングル発売されてしまった(=アルバム収録候補から外れた)この曲は未収録がためなのですが・・・。どこかにアウトテイクでもないものかと、期待はしているのですが・・・。

  

 そして、冒頭で述べたように突如ソロ名義でシングル発売されたわけですが、ウイングス活動休止期間中の発売にリスナーはもちろん、ウイングスのメンバーも驚いたことでしょう。元々各メンバーのソロ活動も、バンドとしての活動と共に尊重してきたポールですが、まさかリーダー格で牽引役のポールまでもがソロ活動を始めるとは、誰も夢にも思わなかったことでしょうから。まして突然のクリスマスソングで、ポールの単独録音。「いよいよウイングスも・・・」と深読みした人もいたかもしれません。その後ウイングスの全英ツアーで一安心したかとは思いますが。大ヒットにつながらなかったのは、この唐突さゆえにリスナーが驚いてしまったから・・・かもしれません。

 こうして、見るからに寂しい(本人からしたら楽しい!?)セッションを終えると、ポールはこの曲のプロモ・ヴィデオを制作します。当時ポールは映像作品に力を入れていて、ウイングスのプロモ・ヴィデオ集を制作すべく精力的に撮影を行っていますが、これもその一環だったのでしょう。しかし、ここでポールはなぜか、ソロ名義の曲のプロモに、演奏にすら参加していないウイングスのメンバーを参加させます。デニーやスティーヴ・ホリー、ローレンス・ジュバー(特に後者2人はバンドに加入して日が経っていない)は何と思ったでしょうかね。「プロモに参加させるなら、なんでレコーディングもウイングスでやらなかったんだ・・・」というデニーたちの声が聴こえてきそうです(苦笑)。ここら辺が、ポールの心境を考える上で謎の部分です。やっぱりバンドの活動も大切だったのか・・・と思わせます。それとも、プロモはみんなと賑やかにやりたかったのでしょうか・・・。

 というわけで、ソロ曲なのにウイングスで撮ったプロモでは、こうした憶測をよそに終始楽しげなウイングスの面々が映っていて、我々からするとほっとする内容となっています。パブでのクリスマス・パーティーを中心に、パブ内や屋外、そしてステージ上と、いろんな場所での演奏シーンが混じってきます。ウイングスの他に多数のエキストラ(親族や友人も参加している?)が参加していて、家庭的で楽しいクリスマスの雰囲気を味わうことができます。『Mull Of Kintyre』のプロモもそうですが、こういう所は英国国民らしさがあふれていますね。ポールと一緒にクリスマス・パーティーなんて、ファンからしてみればこれほどうらやましい話はありません!パブや屋外での盛り上がりは、一緒したい!と思ってしまいます(ことに私はデニーのファンなのでそっち方面で)。それだけでも見ていて楽しいのですが、所々で画像合成などの映像処理が施されていてこれまた面白いです。特に、左右のポールがお互いを見合って驚いた顔をするという、なんとも滑稽なシーンが(笑)。

 演奏シーンでは、ポールがピアノ(ステージではベース)、リンダがキーボードとパーカッション、デニーがギター(ウッド・ベースも弾いている)、ローレンスがギター、スティーヴがパーカッションを担当。みんな楽しそうです。ステージ上でギター・ソロを披露するローレンスや、仲むつまじくコーラスをあわせるマッカートニー夫妻が印象的です。中途半端なダンス(振り付け?)をするポールも見ていて面白いです(笑)。あと、電車ごっこよろしく列を組んでパブに入ってゆくウイングス5人も見ていて面白いですね。本当にこの時の撮影は楽しいものだったに違いありません。エキストラもこのプロモに花を添えています。コーラス隊やサンタの姿も見られますが、なんか悪魔の格好をしたサンタ(!?)も紛れていますが・・・?このプロモは、現在はプロモ集「The McCartney Years」で容易に見ることができますので、ぜひチェックの程を。同プロモ集に寄せられたポールのコメントによると、作中に登場する馬に乗っているのはリンダで、屋外のシーンでポールが着けているマフラーは手編みらしいです。

  

プロモ・ヴィデオより、謎のサンタ(天使?悪魔?)と謎のコーラス隊。

 さらに、この曲は年末に始まったウイングスの英国ツアー(先述のデニー念願のツアー)でもレパートリーに入れられ、演奏されています。ここまで来たら、余計この曲はウイングスで演奏してもよかったのでは?と思ってしまいます・・・。直近のヒット・シングルであり、季節柄この曲を演奏しないわけにはいかない時期でしたから、レパートリーに加わったのは理解できるのですが・・・。このツアーでの演奏は、公式には発表されていませんが、例のブート「LAST FLIGHT」でその音源を聴くことができます。ちなみに、この曲の次に演奏されたのが、唯一音源が公式発表された、あの『Coming Up』です。

 演奏前には、リンダさんやポールが「次にやる曲がクリスマスソング」であることを匂わせるMCをしていて、大きな歓声が上がっています。ことに英国ではチャート・アクションがよかった曲なので、早くも注目されていたことを表しています。まして時期が時期ですから、生演奏への期待も高かったでしょう!観客は演奏中もリズムにのせて手拍子を入れています。演奏後の盛り上がり方もことさら大きいです。このツアーの演奏は、映像が残っていないので確認が難しいのですが、恐らくポールは(直前に演奏された『Arrow Through Me』と共に)キーボードを弾いていると思われます。ドラムスと共に鈴の音も聴こえるので、リンダさんはキーボードではなく鈴を演奏しているものと思われます。オリジナルよりも若干テンポを上げていますが、当時のウイングスらしいと思います。ギター・ソロも、生演奏だとより映えて聴こえます。全体的に今ひとつラフさが残っているような感も否めませんが・・・(汗)。でも、みんなで演奏して、コーラスを合わせた方が、楽しさが伝わってきますね。ポールも、こうなることならウイングスで録音・発表するべきだったのではないでしょうか。本当に、この辺りは不可解で謎が残ります。いずれにしても、この曲が演奏されたのは意外にもこのツアーのみなので、クリスマス前に生で聴けた英国のファンがなんともうらやましいです。

 しかしながらポールにとって、もはやウイングスは「絶対一番に優先すべき存在」ではなくなっていたのです。事実、例の逮捕劇を挟んでポールは以降ソロ活動を進め、結果的にはウイングスも空中分解してしまいます・・・。

  

プロモ・ヴィデオより、楽しく演奏しているウイングスのメンバーたち。左の映像は、ツアー・リハーサルのものとも言われている。

 以上、この曲について語ってきました。現在、この曲はアルバム「バック・トゥ・ジ・エッグ」のボーナス・トラックに収録されています。ポールのソロにもかかわらずウイングスのアルバムに収録されたのは少し謎ですが(『Goodnight Tonight』の方がもっと不可解な収録でしたが・・・)。しかし、英国で6位を記録したヒット・シングルでポール随一のクリスマスソングにもかかわらず、現時点ではベスト盤には未収録。こっちの方がもっと不可解ですね。そのせいもあってか、ポールのクリスマスソングであるこの曲は、世界的にはそれほどスタンダード化せず、あまり知られていません。ジョンの『Happy Xmas』なんかは日本でも毎年のように街頭で聴かれますが、こちらはあまり聴かないですし・・・(汗)。先述のように、英国では定番となっているそうですけど。しかしながら、クリスマスソングを集めたオムニバス盤では定番曲となっているので、そちらでの入手もできなくはないし、年末になれば街のどこかで流れているとは思いますけど・・・ちなみに私は遭遇したことがありません。余談ですが、こうしたクリスマスソングのオムニバス盤、ジョンの『Happy Xmas』にポールの『Wonderful Christmastime』、そして(なぜか日本の)DREAMS COME TRUEの『WINTER SONG』も収録されていて、個人的にはにやりとしてしまう選曲です。ドリカムが紛れているのは、企画元のEPIC/SONYレーベルだからでしょう。

 個人的には、この曲はウイングスと一緒にやっていたら楽しい雰囲気がもっと出ていたろうに、と思います。プロモで確認できる和気あいあいとした様子や、ライヴでの演奏を見聴きしていると余計そう感じられます。まぁ、ポールの単独録音というのも興味を惹かれますが。「マッカートニーII」は大好きですし。ひとりで盛り上がっているポールを想像すると面白いです(痛々しいともいうのか・・・)。ひとりとはいえ、多重録音であたかも多人数で演奏しているような空気を作っているため、寂しさを感じさせません。楽観的なポールらしい、楽観的なクリスマスソングですね。クリスマスにはこの曲をみんなで歌うと、すごくはまりそうですね。ちなみに、この曲で一番ツボにはまっているのは、中盤の“Oh, don't look down”の部分で、ポールが変な声?を出している箇所です。

 今回は、あえて別の視点を切り口に語ってきましたが、そういう理屈抜きにも十分楽しめる曲です。別に冬じゃなくても、いつでも手拍子たたいて歌える曲です。むろんクリスマスには聴きたい、ぴったりな1曲です。この曲は、現在ポールのアルバムでは「バック・トゥ・ジ・エッグ」でしか聴くことができませんが、このアルバムの本編の曲もどこかパーティにふさわしい感じの曲が目白押しなので、クリスマスにはアルバム全曲をかけて楽しみましょう!そう、ただ素敵なクリスマス・タイムを過ごせばいいのです!!Simply having a Wonderful Christmastime!(そういえば解説しているの春ですね・・・)

 さて、次回紹介する曲のヒントですが・・・「ラジオ」。さらに、番外編第1回で、デニー・レインの「あの曲」もあわせて2曲紹介します!!お楽しみに!!

 (2008.5.10 加筆修正)

  

(左)当時のシングル盤。ポール久々のソロ・シングルで'70年代最後のシングル。サンタさんのポールがまた面白いジャケット(笑)。日本では別ジャケットでも発売された。

(右)アルバム「バック・トゥ・ジ・エッグ」。ボーナス・トラックのこの曲はもちろん、本編もクリスマスになぜか似合うロック・テイストのアルバム。

Jooju Boobu TOPページへ